日大三打線に立ちはだかった好投手列伝 6/9

コラム

名将・小倉監督に率いられ、数々の名勝負を繰り広げてきた日大三。

その代名詞ともいえる強力打線は豊富な練習量に裏打ちされた技術と体力、気力によって培われてきた。これは、その強力打線と対峙した歴代の好投手たちの戦いの記録である。

2010年選抜  決勝 興南 10-5 日大三

球児はいま:帰ってきた「琉球のトルネード」 栄光と挫折、母校 ...

興南

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
0 0 0 0 1 4 0 0 0 0 0 5 10
0 2 1 0 0 2 0 0 0 0 0 0 5

日大三

島袋洋奨(興南→中央大→ソフトバンク)

2010年の選抜大会は開幕前は神宮決勝を戦った大垣日大、東海大相模に伊藤拓、山崎(ともにDeNA)、鈴木の強力右腕トリオを擁する3校が優勝争いの中心になると思われていた。

しかし、大会が始まると、前半ブロックは東京大会4強ながら逆転で選出された強打の日大三が力強く勝ち上がる。昨夏からのメンバーの山崎福(日本ハム)がエースとなり、吉沢・萩原ら打線が強力に援護。高山(阪神)、横尾(日本ハム)、畔上ら成長著しい2年生も活躍し、準決勝では広陵の剛・有原(ソフトバンク)も雨中の戦いの中で沈め、久しぶりの選抜決勝まで進んできた。

一方、後半ブロックは、好左腕・島袋を擁しながら打力に課題ありと言われていた興南の打線が本大会に入って変貌。当時ブームだったV字バッティング(捕手寄りのポイントでボールをとらえる打ち方)がはまり、変化球とのコンビネーションを苦にしない打撃で打ちまくった。1回戦から関西、智辯和歌山、帝京、大垣日大とV候補ばかりを相手に、すべての試合をワンサイドで圧勝。エース島袋もストレートの伸びが相変わらず抜群であり、まともに捕らえた当たりは数えるほどであった。

決勝戦が始まる前に振り替えると、やはりこの2校の戦いぶりは抜けており、決勝を戦うにふさわしい強者同士のマッチアップとなった。日大三は、前年の夏は2回戦で東北に屈したが、この夏は2回戦の向陽戦を除いてすべて2桁得点を記録。小倉監督が志向する「10-0で勝つ野球」を、まさに体現できるチームであり、2度目の選抜制覇の期待もいよいよ高まってきていた。

さて、そんなハイレベルな2校の決勝なわけだが、焦点はやはり、島袋vs日大三打線であった。島袋は左投手には珍しくプレートの3塁側を踏む投手であり、右打者へのクロスファイヤーは角度が付きにくいが、その分、左打者のインコースには独特の角度が付く。この武器で、2回戦では智辯和歌山の強打者・西川揺(ヤクルト)も封じ込んでおり、興南バッテリーが困った時の「必殺の鉞」と言えた。逆に言えば、日大三では右打者の方が攻略のカギを握っているとも言えた。

しかし、試合が始まると予想外の幕開けでスタートする。2回裏、先頭の5番山崎に四球を与えると、続く6番吉沢の犠打をサード我如古が悪送球。7番畔上にも四球を与え、無死満塁の大ピンチを迎えると、後続を連続で内野フライに打ち取ったにも関わらず、続く1番小林の打席で島袋がまさかのけん制悪送球。ボールがライトファウルグラウンドを転々とする間に2者が駆け抜け、日大三が2点を先制する。興南としては守備のミスが重なっての嫌な失点だ。

さらに、3回裏にはkeyになると思われた右打者が結果を残す。3番平岩はここまで4試合でヒット3本と確実性には欠けるものの、とらえた時の飛距離はチーム1の打者。島袋の高めの速球をとらえると、角度としてはセンターフライかと思われた打球がぐんぐん伸びる。打球はセンター慶田城の頭上を越え、なんとバックスクリーンに着弾!興南サイドの度胆を抜くような当たりでリードを3点に広げた。島袋の最も力のある高め速球をとらえての一発。経験豊富な興南バッテリーをしても、未体験ゾーンのパワーであった。

だが、ここからが興南の前年から成長したところ。2009年は富山商・横山、明豊・野口を打てずにエースを援護できなかったが、今年は違う。5回表、先頭の5番銘苅が巧みな流し打ちで出塁すると、四球などでつないで2アウト満塁に。ここで当たっている1番国吉大が山崎のボールをしっかり引き付けて三遊間を破り、1点を返す。

さらに、6回表になると、猛反撃を開始。先頭はこちらも最多安打タイ記録に王手をかけた3番我如古。山崎の速球に詰まりながらも、打球はふらふらっと上がってライト前にポトリと落ち、記録に並ぶヒットとなる。決していい当たりではなかったが、こういうヒットの方がダメージは大きいものだ。その後、2者が凡退して2アウトとなるが、我如古が盗塁で2塁へ進むと、6番山川がインサイドの速球をうまくセンターに打ち返して1点差に迫る。

中盤になって山崎の緩急に対応し始めたか、興南の各打者の対応が目に見えて良くなる。7番伊礼が死球でつなぐと、8番島袋は会心の流し打ちで左中間を破り、2者が生還して逆転。さらに9番大城(オリックス)もタイムリーを放ち、この回一挙4点を奪う。日大三の打者と比べると、体格は小柄な興南だが、相手のスキを逃さない集中力は一枚上手である。

2点のリードをもらって島袋は6回裏のマウンドへ。しかし、得点が入ると相手にも…という展開は野球にはよくある。1アウトから代打・大塚がこれまた島袋のストレートをとらえると、打球は右中間スタンドへ飛び込むホームランに。これまで数々の強豪を下してきた島袋だが、そのボールをスタンドまで2度も飛ばす日大三打線には恐れ入る。さらに9番鈴木がライト線へ落ちるラッキーな3塁打で出ると、続く1番小林が乾坤一擲のスクイズを決めて同点に。一歩も譲らない攻防はそのまま後半戦に入る。

試合が進むにつれて島袋の疲れが見えるかと思われたが、大会随一の強力打線を相手にひるまず投げるエースの投球が試合を支配していく。日大三打線も負けずにフルスイングを続けるが、7回以降ランナーこそ出るものの、ヒットがぱったりと止まる。速球だけに頼ることなく、巧みに変化球を織り交ぜ、投球の軸を先手必勝で変えていく興南バッテリー。そこには速球にこだわって打たれた昨夏の明豊戦の姿はもうなかった。

試合は延長戦に突入。勝負が決まったのは12回表であった。

1アウトから4番真栄平が日大三の内野陣の連係ミスで出塁。ここで小倉監督がついに山崎をあきらめてショートの吉沢をマウンドへ送るも、吉沢は思うようにストライクが入らず、2者連続で四球を与える。1アウト満塁となって7番伊礼の打球はサード横尾の前へ。横尾は半身の体勢からホームへバックホームを行うも、これが悪送球となって2者が生還。大きな大きな勝ち越しの2点が入る。

四死球や失策が重なってきた日大三に対して、興南はここぞとばかりに畳みかけ、島袋がセンターオーバーの2点タイムリーを放つなど、この回一挙5点を挙げる。島袋は準決勝までわずか1安打だったが、この試合は2点タイムリー2塁打を2本放ち、まさに千両役者の活躍であった。大量リードをもらった12回裏をきっちりと抑え、興南が沖縄勢として2年ぶり3度目となる選抜制覇を果たしたのだった。

この投打の白熱した攻防は、まさに2010年の高校野球でのベストバウトの一つに上げられると言っていいだろう。優勝インタビューで我喜屋監督は、「夏は日大三のようなパワーのある相手に勝てるようにしなくてはいけない」と、夏も日大三が必ず出場してくるし、その時は今のままでは勝てないと言わんばかりのコメントを残している。それほど三高打線の破壊力はすさまじかったのだ。ただ、その圧力を力と技でしのぎ切った島袋の投球も見事。まさに王者にふさわしいチームであった。

第82回選抜・決勝 興南vs日大三 ダイジェスト『前編』

第82回選抜・決勝 興南vs日大三 ダイジェスト『後編』

2011年選抜  準決勝 九州国際大付 9-2 日大三

asahi.com(朝日新聞社):高校野球「〈球音〉万能エース、先制 ...

九州国際大付

1 2 3 4 5 6 7 8 9
2 0 3 1 0 0 0 1 2 9
1 0 0 0 0 0 1 0 0 2

日大三

三好匠(九州国際大付→楽天)

2010年選抜で圧倒的な勝ちっぷりで準優勝を果たした日大三。当然、夏も出場してくると思われたが、西東京大会準決勝で同じ日大系列の日大鶴ケ丘に延長戦の末、6-5と惜敗してしまう。2番萩原のホームランなどで一時は4点をリードしたが、継投で出てきた日大鶴ケ丘の2年生投手・岡を打ち崩せず。14回を戦ったとはいえ、18残塁の拙攻であった。

また、投げてが2年生の吉永が踏ん張っていたが、延長のピンチの場面で内野陣があまり声をかけない場面も見られ、どこかまとまりに欠けているような印象もあった。V候補筆頭に挙げられながらの予選敗退。これは、2年生の有力選手が多く残った新チームに貴重な教訓を残す敗戦でもあった。

すると、新チームが始まってからの日大三の戦いは圧倒的なものとなる。俊足強打の1番高山(阪神)を筆頭に、アベレージタイプの3番畔上、スラッガー横尾とタイプの違う強打者が続く打線は破壊力満点。下位を打つ菅沼や鈴木・吉永も他校なら間違いなく中軸クラスであり、失投は逃さない怖さがあった。東京大会を問題なく制すると、神宮でも北海・玉熊、浦和学院・佐藤、鹿児島実・野田(西武)とタイプの異なる各地区のエースを粉砕。「この世代の中心は日大三」と感じさせるほどの強さで秋の王者に輝いた。

選抜では1回戦で、「初戦に負けない」明徳義塾と対戦。エース吉永が明徳打線に苦しめられ、一時1-4とリードされるが、中盤から腰を据えた攻撃で同点に追いつく。8回に再び1点のリードを許すが、その裏、直前の守りでボールが当たって歯を折っていた捕手・鈴木が逆転打!女房役を務めるガッツマンが仕事を果たし、明徳の初戦連勝記録をSTOPさせた。その後も、静清・野村(中日)、加古川北・井上と好投手を攻略。まずは順当に4強へと勝ち上がってきた。

その日大三を迎え撃つのが、当時のレアルマドリードになぞらえて、「九州の銀河系軍団」と謳われた九州国際大付であった。東北高校でダルビッシュ有(パドレス)など多くの名選手を育成した若生監督が就任し、強豪ひしめく福岡で年々存在感を増してきていた。東北時代からチーム戦術など型にはめずに伸び伸び戦わせる野球は、九州地区に合っていたとも言えるだろう。長打を狙うスイングを「是」とし、強打のチームを作り上げてきた。

九州大会では優勝した鹿児島実に惜敗したものの、各選手のポテンシャルが高いことは一目瞭然。また、1年時に野手で甲子園を経験していた三好(楽天)がエースに成長し、好捕手・高城(DeNA)とのバッテリーで、2年生の多いチームに落ち着きを与える。ディフェンス面も盤石であり、大会前から「影のV候補」と呼ぶ声も多かった。

すると、大会初日の第2試合・前橋育英戦でいきなり、その打棒を爆発させる。初回に4番高城の2ランで先制すると、打者一巡して迎えた3回が驚愕であった。2番安藤、3番三好、5番龍と1イニングに、何と3本のホームランが飛び出す猛攻。対戦相手の前橋育英の戦意をへし折ってしまうような攻撃であり、点差以上に差を感じさせる内容であった。これで勢いに乗った九国は、2回戦で日本文理、準々決勝で北海といずれも2年生の好投手を攻略。打率以上もさることながら、一発長打でいきなり流れをかっさらう怖さがあり、その意味では日大三にも引けを取らない打線であった。

こうして、日大三の前に、これまでの対戦相手にないタイプの強敵がたちはだかった。日大三の不安要素としては、エース吉永の調子がもう一つ上がっていなかったところ。初戦の明徳戦のあと、数字上は相手打線を封じてはいたが、変化球の精度が良くなく、どうしても速球に頼る配球になっていた。

試合がはじまると、その懸念点が、顕在化する。1回表、いきなり1番平原に四球を与えると、1アウトから3番三好に真ん中寄りの速球を救い上げられる。打球は左中間スタンドに突き刺さる2ランとなり、九国が2点を先制。力勝負では負けんと言わんばかりの九州男児の豪打に、日大三ベンチも静まり返る。

ただ、強打・日大三も簡単には引き下がらない。1回裏、早くも反撃に転じ、1番高山の3塁打を足掛かりに、好調の3番畔上がタイムリーを放ち、1点を返す。日大三はこれまで技巧派左腕の明徳・尾松、長身右腕の静清・野村、スローボールを駆使する加古川北・井上と、いずれも一癖ある投手とばかり対戦してきた。それと比較すると、三好はオーソドックスなタイプの右投手であり、あまり嫌な意識はなかったかもしれない。

しかし、1点を返してもらったものの、この日は吉永の調子が一向に上がらない。3回表、1番平原のヒットを足掛かりに2アウト1,2塁とチャンスを作ると、打席には2年生の5番龍。ここまで打率は高くないものの、速球にはめっぽう強いスラッガーだ。初球、吉永がストライクを取りに来た速球を真芯でとらえると、打球はあっという間にライト線を深々と破り、2者が生還。球威に全く負けていない一打であり、若生監督が伸び伸びと育てた強打者が神宮V腕を呑み込む。

この回さらに、6番花田にもタイムリーが飛び出し、4回には相手守備のミスにも付け込んで加点。前半を終えて九国が6-1とリード。この点差にはさすがの日大三打線も焦ったか、普段は選球できそうな外のスライダーにも手が出始め、悪循環に陥る。絶対王者にとって、まさかの展開となった。

ただ、試合はまだ前半が終了したところ。6回裏、日大三打線が反撃に転ずる。今大会好調の1番高山、3番畔上がヒットを放ち、2アウトながら満塁のチャンスに。しかし、ここでチャンスに強い6番菅沼が内野フライに打ち取られ、得点を上げられない。日大三としては惜しい逸機であった。

この場面、とらえたと思った打球が差し込まれたのだが、これは三好の長所が出た故でもあった。普通の投手より腕の長い三好は、リリースポイントが打者寄りになり、打者に近い位置で押し込める。そのため、ストレートがベース板の上での伸び、相手打者にとってはスピード以上に速さを感じるボールになっていた。このことは捕手の高城も当然把握しており、相手のストレート狙いがわかっている場面でも強気に速球のサインを要求できた。一見、オーソドックスに見える投手であるが、それゆえに実際に打席に立った時に恐ろしさを感じるのだ。

このピンチを逃れた九国は7回裏に1点を失ったものの、序盤から球数がかさんで披露していた吉永を打線が終盤に再度攻略。終わってみれば、9-2とまさかのワンサイドで神宮覇者を下し、同校初の決勝進出を決めたのだった。したたかでかつ力強い三好-高城のバッテリーに、2年生が多いメンツながら伸び伸びと長打を放つ打線。九州地区らしい豪快なチームカラーに仕上がったこの年の九国は、若生監督がこれまで手掛けたチームの中でも最高傑作のひとつだっただろう。

一方、無敵の進撃を続けていた日大三にとっては、多くの課題を残した一戦にはなったが、この反省を踏まえた夏は、無敗のまま突っ走ることとなるのだ。

2011 春甲子園準決勝 九州国際大付vs日大三1

2011 春甲子園準決勝 九州国際大付vs日大三2

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