名将・小倉監督に率いられ、数々の名勝負を繰り広げてきた日大三。
その代名詞ともいえる強力打線は豊富な練習量に裏打ちされた技術と体力、気力によって培われてきた。これは、その強力打線と対峙した歴代の好投手たちの戦いの記録である。
2017年選抜 1回戦 履正社 12-5 姫路工

履正社
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 1 | 0 | 3 | 0 | 1 | 0 | 7 | 12 |
| 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 5 |
日大三
竹田祐(履正社→DeNA)
「清宮協奏曲」と謳われたほど、清宮幸太郎(日本ハム)率いる早稲田実に注目が集まっていた2017年の高校野球。その早稲田実の最大のライバルと目されていたのが、同じ西東京の日大三であった。左腕エース櫻井(DeNA)と主砲・金成という投打の太い柱を擁したチームは、清宮がまだ1年生だった2015年にも西東京大会準決勝で0-2と敗れており、リベンジに並々ならぬ闘志を燃やしていた。
この両校は当然のように秋の東京大会決勝まで勝ち上がり、壮絶な打撃戦に。日大三・櫻井はスライダーを武器に清宮から5打席連続三振を奪う快投を見せるが、早稲田にはその他にも強打者が並び、8回までで6失点を喫する。日大三打線も早実のウィークポイントだった投手陣から6点を奪い、同点に追いついて試合は同点のまま最終回へ。早実は1年生の4番野村(西武)がライトへサヨナラ弾を放ち(現地観戦で目の前に飛んできた)、日大三は惜しくも敗れたのだが、早実に一歩も引かない内容が評価されて、選抜大会に出場となった。
その早実は神宮大会でも決勝まで進むが、最後は履正社に5-11と力負け。そして。その履正社が選抜初戦で日大三の対戦相手となったのだ。履正社のエースは右腕・竹田祐(DeNA)。履正社の「自分で考えて練習する」スタイルに惹かれ、府内のライバル大阪桐蔭を下すべく、修練に励んでいた。前年までことごとく大阪桐蔭に敗れていた履正社だったが、この年は秋の大阪大会で7-4とライバルを撃破。続く近畿大会も制し、公式戦無敗のまま神宮の頂まで上り詰めた。
このチームは前年から主力打者だった安田(ロッテ)、若林の左右の強打者もおり、打線にもかなり自信を持っていた。1年生も多くスタメンに在籍していたが、ポテンシャルの高い選手が揃っており、この年まで犠打にこだわっていた岡田監督もこの年は、神宮で打って繋ぐ攻撃をみせ始めていた。この理由はやはり前年夏の甲子園3回戦で常総学院に序盤で大量リードを許し、犠打主体の攻撃が枷となってうまく追いあげられなかったことがあったかもしれない。新しいスタイルの履正社打線にも注目が集まっていた。
さて、大会初日第2試合で早くも実現した東西横綱対決。試合は、初回から竹田が日大三打線に捕まる。1回表を櫻井が履正社から3者連続三振で打ち取ると、その裏、竹田がストライクが入らない。彼の持ち味はリリースに力を集約したストレートの切れの良さだが、体重がうまく乗らず、ボールはすべてお辞儀してしまう。これを強打の日大三の上位打線が逃すはずもなく、2番大西が右中間を破る3塁打で1番井上を返すと、4番金成の内野ゴロでもう1点追加。いきなり2点を先行する。
しかし、履正社打線も3回に履反撃開始。7番浜内が内角速球をきれいにセンターへはじき返すと送ってランナー2塁から9番西山が高めに浮いたボールをこれまた逆らわずにレフトオーバー。この1点は履正社に勇気を与える1点となった。上位打線が三振を多く奪われながらも下位打線が得点。9番の西山は昨秋は2番を打っていた。こういう打線の層の厚さはさすが神宮王者・履正社と思わせる攻撃だった。
履正社はその後も三振を多く奪われるが、打者が1打席ごとに細かく情報を伝達。徐々に櫻井の低めのスライダーを見極め始める。反撃は5回に再び下位打線から。8番片山四球、9番西山左中間2塁打でチャンスを作ると、1番石田がセンターバックスクリーン付近に逆転の3ランホームラン。ストライクゾーン高めへの目付と失投を1球で仕留める技術の高さ。3回に続き、さすが履正社と感じさせられた。
その後、6回付近で櫻井が苦しむのと対照的に、竹田は2回以降徐々に立ち直る。徐々に制球が安定するようになり、3回から6回は2安打無失点。リズムのいい投球で強打の日大三打線を封じ込める。このリズムに乗った打線は、7回表に制球の乱れた櫻井から2四球を選ぶと、2番溝部のタイムリーで1点を追加。5-2とこの試合最大の3点差が付く。
しかし、2回から無失点で踏ん張っていた履正社・竹田だったが、7回に捕まる。リリースポイントは定まってコントロールは落ち着いたとはいえ、やはり速球のスピードは彼本来のものではない。緩急がつけにくい中、甘く入った変化球を日大三の井上、大西、櫻井に3連打されて1点差に。この辺りはさすが日大三と思わせる攻撃だった。
そして、8回裏には1アウト2塁から9番捕手の津原が右中間3塁打でついに同点。この一打で日大三が確かに甲子園の空気を支配し始めていた。
しかし、9回に落とし穴が。櫻井が先頭バッターに四球を与えてついに力尽き降板。2番手の右投手・岡部は外角へのスライダーの制球がいい好投手。1番石田を三振に取り、いよいよ日大三の流れか思われた、しかし、勝負強い2番溝部が低めに決まったスライダーをレフト前へ強引に引っ張り、この日2本目のタイムリーでついに履正社が勝ち越し。
日大三としては配球・コースともに間違っていなかったのだが、こういう失点はだからこそ響く。続く3番安田のところで櫻井が再びマウンドに。だが、カウントを整えに行って甘く入ったストレートをレフトオーバーに運ばれついに万事休した。その後も内野強襲のヒットをアウトにできず、満塁から走者一掃をあびるなどこの回大量7失点。勝負は決してしまった。
竹田は日大三打線に13安打を浴び、5失点。こと竹田vs日大三打線という意味では、日大三打線の勝利だったかもしれない。しかし、制球が定まらない初回を2点でとどめたこと、同点に追いつかれた8回に勝ち越しまでは許さなかったことは、その後の試合の流れに大きく影響した。本調子ではなくとも試合を作るという、エースに求められる資質を、神宮優勝投手の竹田は確かに持ち合わせていたのだった。
履正社VS日大三 第89回センバツ高校野球1回戦 西の猛者VS東の猛者 高校野球ファン夢の対決
2018年選抜 3回戦 三重 8-0 日大三

日大三
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 5 | 0 | × | 8 |
三重
定本拓真(三重)
前年夏に櫻井、金成と投打の柱を擁し、全国制覇も視野に入れていた日大三。しかし、夏の大会ではライバル東海大菅生に0-5と完敗し、期待された夏は早い終幕を迎えた。東海大菅生は同年夏に4強入りしており、力のあるチームだったが、やはり悔しい結果である。
そして、迎えた新チーム。個の力ではどうしても劣るが、太い柱がない分、チーム全体のまとまりで勝負する力があった。エース右腕・中村を筆頭に井上・河村など力のある投手が複数いる投手陣は失点が計算でき、打線は昨年の選抜を経験した金子、日置の三遊間を中心に繋ぐ攻撃と堅守で援護した。秋の東京大会をしぶとく制し、2年連続の選抜切符を獲得。選抜初戦では由利工の速球派右腕・佐藤亜から日置のホームランなどで5点を奪い、記念大会の1回戦を突破した。
迎えた2回戦は、伝統校・三重と対戦。4年前の夏、タフネス左腕・今井の投球と強力打線がかみ合い、準優勝に輝いたことは記憶に新しい。東海大会では準決勝でそこまで練習試合も含めて無敗を続けていた東邦に敗れるも、9-10の大乱打戦であり、決勝を戦った上位2校(静岡・東邦)と力の差はなかった。
その三重は準優勝時のベテラン・中村監督が退任しており、28歳の小島監督が就任していた。若年監督らしく、犠打を使わない伸び伸び野球を掲げており、とにかく打って打って繋ぐ攻撃を心がけていた。そして、1番梶田を筆頭に、そのスタイルの応えられるだけの選手が揃っており、打力の高さには定評がある。日大三との対戦を前に、打ち合いを予想したファンも多かったのではないだろうか。
試合が始まると、日大三の2年生右腕・井上と三重の定本の投げ合いに。その定本、秋の成績は特筆すべきものはないが、序盤から毎回のようにヒットを許しながらも得点を与えない。体を後ろにのけぞらすような形から体重移動とともに前に振り下ろすフォームは、相手打者にとってはタイミングが取りづらい。特に落ちるボールにはタイミングが合っておらず、日大三打線のつながりを断つことに成功する。
日大三としては、サイド右腕の福田の先発も予想していたかもしれなかった(3回戦で乙訓を1失点で完投)。定本に関して、先発を予想することも、想定以上の力を発揮することも、想像は難しかったかもしれない。秋の戦いから時間が経って戦うのが、選抜大会の特徴。思わぬ選手の思わぬ活躍が出てくるのが、醍醐味でもある。
試合は0-0のまま後半戦へ。すると、6回裏についに日大三・井上が持ちこたえられずに3失点。さらに、継投した投手陣も三重打線のつながりを断てず、計8失点を喫した。投げては定本が7安打を浴びながらも四死球はわずか2で完封。あの独特のフォームも、どっしりした下半身が生み出せる業だったのかもしれない。打撃戦が予想された試合は、大差で東海の伝統校に軍配が上がった。

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