独断と偏見で選ぶ、2005年夏でベスト8へ進めなかったイチオシの好チーム

2005年

清峰(長崎)

1 古川 10 有迫
2 11 富尾
3 大石将 12 小佐々
4 広滝 13 萩尾
5 野元 14 池野
6 佐々木伸 15 佐々田
7 木原 16 田辺
8 大石剛 17 田渕
9 佐々木優 18 増本

選抜V校連続撃破した長崎の新星

北松南から校名を変更し、吉田監督、清水コーチのタッグで21世紀に入ってめきめき力をつけてきた清峰。当時全盛期を迎えていた鳴門工の練習を見学に行ったのは有名な話であり、質量ともに豊富な練習量を見て、吉田監督は「丸太トレーニング」など様々な体力強化練習を取り入れた。この成果か、清峰の選手たちは身長は高くなくてもがっしりした体格の選手が多く、パンチ力のある打者が並んでいた。

また、首脳陣の役割分担も明確に分かれており、選手たちのメンタル面の指導を吉田監督が、投手指導や相手チームの細かい研究を清水コーチが請け負っていた。そう、まるで横浜高校の渡辺監督と小倉コーチのような関係である。この2人の巧みなチーム操縦術により、清峰は新興勢力ながらスキのないチームに仕上がっていったのだ。

2004年夏は決勝で佐世保実に7-9とあと一歩で敗れ、出場はならなかったが(思えばこの時が清峰の名を初めて知った瞬間であった)、翌年夏はエース左腕・古川を中心に再び夏の長崎大会を勝ち上がる。決勝では瓊浦に一時7点差をつけられる苦しい展開となったが、打線が驚異的な反撃を見せ、エース古川の好リリーフもあって、終わってみれば13-8と大逆転勝ちを収めた。

しかし、初めての甲子園抽選会で引いた相手はその年の選抜優勝校・愛工大名電。強打とバントを絡めた攻撃で、当時一世を風靡した強豪である。

1回戦

清峰

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 2 4
0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 2

愛工大名電

清峰-愛工大名電 柴田のユニにボールが – YouTube

試合前、吉田監督・清水コーチが愛工大名電のバント戦法を分析。「このレベルのバントをやってくるのか」と衝撃を受けた。この戦法に柴田(オリックス)、佐々木、小島と2年生から経験豊富なメンツが2年生主砲・堂上直(中日)を囲むという、強打が加わるのだから相手からしたら厄介この上ない打線である。このV打線に対し、清峰サイドが立てた対策は、「正面のバント以外は投手に一切バント処理に加わらせない」というものであった。

この対策が功を奏したか、清峰野手陣は名電のバント攻撃をきっちりしのいでいく。サード野元、ファースト大石将が絶妙なゾーンに転がされたバントをことごとく処理して、エース古川を救った。古川も清水コーチの研究に沿って、名電の強打者たちに対してしっかり懐を攻めていった。

試合は清峰が先行すれば、名電が追いつく展開。先制点は満塁からのショートゴロが名電のショート柴田のユニフォームの間に入るという幸運から生まれた。このあたりも清峰というチームが甲子園に愛されていることを感じさせた。同点に追いつかれた直後の6回表には、3塁ランナーの木原が名電のお株を奪うような好走塁でホームを陥れ、優勝校を相手に一歩も引かない戦いを見せる。

試合は2-2の同点で延長戦へ。迎えた13回表、ランナー2,3塁で打席には古川が入る。名電は2番手でサイド右腕・十亀(西武)が上がっていた。シンカーの得意な投手だったが、名電バッテリーは直球勝負を選択。驕りがあったわけではないとは思うが、これを古川がきれいにセンターへ打ち返し、2者が生還して清峰が勝ちこしに成功した。

古川-森のバッテリーは結局、名電打線を8安打2失点に抑えて勝利。4番堂上直には3安打を浴びたが、後続をきっちり封じ、打「線」にさせなかった。初出場とは思えない老獪な戦いぶりで選抜王者を下し、記念すべき甲子園初勝利を果たした。

 

2回戦

清峰

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 5 0 0 0 0 3 0 1 9
0 0 0 0 2 0 1 0 1 4

済美

 

続く2回戦は前年の選抜優勝校・済美と対戦。優勝投手・福井(楽天)を強力打線が援護し、ともに同年の選抜に出場していたライバルの新田・西条とのつばぜり合いを制て、2年連続の甲子園に乗り込んできた。初戦の旭川工戦は初回の5得点で早々と流れをつかみ、エース福井が完封勝利を収めて、順当に2回戦へと勝ち進んできた。

パワー野球の済美に対し、しかし、清峰サイドも力負けしない。福井は速球、スライダーとも一級品のボールであるが、ややコースが甘くなる傾向があった。このボールを逃すと、終盤になるにつれて福井は調子を上げていってしまうが、清峰打線は2回表に早々と攻略。満塁から2年生の好打者・広滝の走者一掃打などで大量5点を奪うと、3点差に迫られた7回表には再登板した福井から4番森が3ランで勝負あり。古川も我慢の投球で4失点完投し、9-4と大差で選抜優勝校を連続撃破して見せた。

 

3回戦

清峰

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 0 0 0 0 0 1 1
3 0 0 0 1 0 0 0 × 4

大阪桐蔭

 

優勝候補を連破して迎えた3回戦。初出場の公立校ながら、大物食いとしてすっかり注目されるようになった清峰を侮る雰囲気はもはやどこにもなかった。待ち受ける相手は辻内(巨人)・平田(中日)と投打にスター選手を擁し、V候補筆頭の大阪桐蔭であったが、清峰なら何かやってくれるのではないかという雰囲気があった。

しかし、初回に大阪桐蔭が満塁のチャンスで6番米川の走者一掃打が飛び出し、3点のビハインドを許す。5回には1番篠原にも一発が飛び出し、試合は桐蔭ペースで進む。清峰打線は、辻内の高め速球を振らないように対策を立ててきたが、やはりどうしても手が出てしまう。足元から崩そうとセーフティバントを試みるが、これも桐蔭内野陣の落ち着いた守備の前にさばかれてしまった。

それでも、9回表、清峰は先頭の主将・大石剛が辻内の速球をしっかりとらえてレフトスタンドへ叩き込み、1点を返す。さすがに疲れの見える辻内を攻め立て、なおも2アウト満塁まで詰め寄ったが、最後は辻内の渾身の速球勝負の前に倒れてゲームセット。初出場の夏はベスト8を手前に惜しくも幕を閉じた。

 

桐蔭には惜しくも及ばなかったが、優勝候補ばかりを相手に3試合を堂々戦い抜いた姿は鮮烈であった。ここから5年間で選抜優勝1回、選抜準優勝1回、5度の出場で13勝4敗と圧倒的な成績を残すこととなる。一躍、高校球界の中心に躍り出た清峰の華々しい「デビュー戦」であった。

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