独断と偏見で選ぶ、2005年選抜でベスト8へ進めなかったイチオシの好チーム

2005年

市和歌山商(和歌山)

1 田島 10 星河
2 上野 11 谷口
3 中家 12
4 梶本 13 山本
5 皆本 14 曲田
6 川端 15 日高
7 伊藤 16 坪井
8 信下 17 谷奥
9 18 野田

智辯和歌山の黄金期に待ったをかけた伝統校

1994年から2003年の10年間で甲子園を席巻していた智辯和歌山。その間、優勝3回、準優勝3回と一気にスターダムにのし上がり、和歌山県内ではほぼ敵なしといった様相を呈していた。少数精鋭で徹底して守備力、体力、打撃力を鍛え上げる戦法は、酷暑が増す平成中盤の高校野球においてマッチしていた。和歌山県内の高校はまず、この絶対王者を倒さないことには甲子園への道は見えてこなかった。

しかし、2004年の夏は王者・智辯和歌山が準々決勝で日高に1-2と敗れる波乱の展開に。そんな中、名将・真鍋監督に率いられ、大会前から智辯和歌山と並んで2強に挙げられていた伝統校・市和歌山商が復活ののろしを上げ始めた。本格派右腕・玉置(阪神)に加え、川端(ヤクルト)・梶本・伊藤と下級生に有望な好打者をそろえた打線がかみ合い、1994年以来実に10年ぶりに夏の和歌山大会を制覇。甲子園でも初戦で宇都宮南を相手に11-6と豪快な勝利を飾り、久々に聖地での勝利を刻んだ。

そして、代が変わっても、野手陣に多くのメンバーを残した新チームは快進撃を見せる。俊足で長打力を秘める川端が恰好の1番打者として収まり、攻撃型の2番信下を挟んで、梶本・伊藤・皆本と続く中軸が返す攻撃陣は迫力満点。投げては小柄な左腕エース田島が内外を丁寧に投げ分ける投球で試合を作った。

和歌山大会予選では智辯和歌山との乱打戦を11-10で制し、久々に秋季大会で優勝。近畿大会でも東海大仰星に打ち勝って1勝を挙げると、準々決勝では優勝した神戸国際大付に1-2と食い下がって、ベスト8進出校の中で最も早く選出された。強力打線がエース田島を支える野球で、上位進出へ向けて手ごたえを感じるチームであった。

1回戦

市和歌山商

1 2 3 4 5 6 7 8 9
2 1 0 2 1 0 0 0 0 6
1 0 0 1 0 0 0 3 0 5

常総学院

 

初戦の相手は強豪・常総学院。2003年夏の優勝はまだ記憶に新しく、持丸監督に代わってからも、バッテリー中心にテンポよく守ってリズムを作る野球は健在であった。過去に藤田平(阪神)を擁して選抜準Vの経験もある市和歌山商だが、近年の実績では完全に常総に軍配が上がっており、名前負けしない戦いができるか気になるところではあった。

しかし、戦いが始まると市和歌山商が常総を圧倒する。常総サイドにらしくないディフェンスのミスが続いたとはいえ、四死球・失策で出たランナーを着実に返していく戦いは見事。初回に4番伊藤の先制タイムリー2塁打が飛び出すなど、勝負所でタイムリーが飛び出し、4回までにヒット3本で5点をたたき出した。これまで常総がやってきたような「うまい野球」のお株を奪う攻撃で、5回までに6-2と大きくリードを広げていった。

このリードに守られながら、田島は力投を見せる。四死球からくずれた相手とは対照的に、四死球なしでコントロールよく投げぬいていく。8回裏に2ランホームランを含む3失点を喫し、1点差に詰め寄られはしたが、被安打11を浴びながらも5失点で試合をまとめられたのは無駄なランナーを出さなかったからだろう。投打に持ち味を発揮した「市和商」が選抜の舞台でまず1勝をつかみ取った。

 

2回戦

神村学園

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 1 0 0 0 2 2 0 0 5
0 0 0 0 1 0 2 0 0 3

市和歌山商

 

初戦を突破し、迎えた2回戦は初出場の神村学園が相手であった。ソフトボール界の名将・長沢監督を招き、創部わずか2年で全国大会出場にこぎつけた新星である。しかし、エース野上(西武)、主砲・天王寺谷と投打に太い柱を擁し、1年生から試合経験豊富なメンバーを擁したことで、長沢監督が自在に打順を入れ替えても、各々が対応できる強さがあった。

試合は2回に神村学園が7番作増のタイムリーで先制すれば、市和商も5回裏に下位打線の作ったチャンスで1番川端の打球がエラーを誘い、同点に追いつく。しかし、6回、7回と神村学園は田島の投球をとらえ、6回には椎葉・天王寺谷の連打、7回には4安打を集中する猛攻を見せ、一気に4点を奪う。中盤までなんとか神村打線を抑えていた田島だったが、味方のミスも絡んだ場面で踏ん張り切れなかった。

だが、伝統校の意地にかけて反撃したい7回裏。この男のバットが火を噴いた。神村学園・野上のスライダーに苦戦していたが、1アウトから9番田島が四球を選ぶと、注目の1番川端のバットが野上のボールととらえる。打球はライトスタンドへ美しい放物線を描いて飛込み、一気に2点差に詰め寄った。

終盤になって野上のボールをとらえ始めた市和商打線は9回裏にも3安打を集中して1アウト満塁とビッグチャンスを迎える。一打逆転サヨナラもある場面だったが、ここで2番信下のライトフライに3塁ランナーが飛び出してしまい、惜しくも併殺に。最後はミスが響いて2点届かなかったが、準優勝投手となる野上を追い詰めた攻撃はさすが市和商であった。

結局、この年の夏はライバル智辯和歌山に8-11と打ち負けて敗退することになるのだが、この夏春連続出場を果たしたタレント軍団の活躍は、市和歌山商というチームに確かな手ごたえを残した。この年代の経験が、智辯和歌山1強にストップをかけ、2010年代からの躍進につながったことは間違いないだろう。

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