独断と偏見で選ぶ、2007年夏にベスト8へ進めなかったイチオシの好チーム

2007年

日南学園(宮崎)

1 有馬 10 湯野
2 畑中 11 日高
3 中本 12
4 川嶋 13 山滝
5 西井 14
6 大原 15 菅野
7 中崎 16 河野
8 持田 17 小池
9 大松 18

パワー野球全開、王者を追い詰めた夏

2007年夏は優勝した佐賀北をはじめとして長崎日大、楊志館と3校が8強入りしたように、九州勢が非常に好調な年だった。しかし、そんな九州勢の中で優勝する力があったと言われていたのが、宮崎・日南学園だった。1995年選抜で初出場で8強入りしたのを皮切りに、1998年の神宮優勝、寺原隼人(ダイエー)を擁した2001年の夏8強入りなど、着実に実績を積み重ねてきた同校。この2007年は優勝候補筆頭だった2001年に劣らないほどの実力を持っていた。

投手陣は2年生左腕の2人で形成していた。小柄ながら強気な速球勝負を見せ、マウンド度胸の光る有馬(ソフトバンク)と長身から角度のあるボールを投じる左腕・中崎(西武)。2人とも速球のスピードは140キロ台中盤を記録し、力のある投手であった。また、打線は3番捕手の畑中、4番中本を軸にパワーと柔らかさを兼ね備えた左打者が並び、県内のライバルを相手に競り勝ってきた。名将・小川監督が自信を持つチームが2007年の甲子園へと挑んだ。

2回戦

日南学園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
0 0 0 0 2 0 0 0 0 3 4 9
1 0 0 1 0 0 0 0 0 3 1 6

桐光学園

第89回(2007年)全国高校野球選手権大会 2回戦 日南学園 対 桐光学園 1/6 – YouTube

初戦は神奈川の桐光学園と対戦。21世紀になってから3度目の甲子園であり、常連校になりつつあるチームだった。2007年の神奈川大会も高浜(ロッテ)を擁する横浜や田中浩(広島)が引っ張る東海大相模などの強豪がひしめく厳しい戦いであった。その中を桐光学園はしぶとく勝ち上がり、決勝では東海大相模のエース菅野(巨人)を攻略して10-8で勝利。激戦区でもまれた、たしかな実力を備えていた。

試合は序盤、日南学園のエース有馬が緊張からかボールが高めに浮く。1回、4回と2本のタイムリー2塁打を浴び、2点の先行を許すが、5回からマウンドを引き継いだ中崎が試合を落ち着かせる。打線も5回に桐光学園の左腕・立野を攻略し、相手守備陣の乱れにも付け込んで同点に。試合は2-2の同点で延長戦に突入する。

しかし、この試合の本番はここからであった。延長10回表、日南学園はロングリリーフとなった桐光学園・丸山を攻め、3番畑中、4番中本がともに流し打ちのヒットで出塁。主軸にこういう打撃をされると、相手捕手はつらいだろう。さらに5番大松が犠打野選で満塁となると、6番西井がセンター横への2塁打を放って2点を勝ち越し。187㎝の大型打者が大きな仕事をやってのける。この回、暴投でもう1点を追加し、日南学園が勝利をぐっと引き寄せる。

ところが、10回裏にもう決まったと思った試合が大きく動き出す。

先頭の9番大石が追い込まれながらもしぶとい流し打ちで出塁すると、1アウト後に2番筒井・3番政野がともにアウトコースのスライダーに食らいつくような打撃で連打を放ち、1点差。中崎はストライク先行で決して乱れた投球ではなかったが、投功の各打者の気迫勝ちだ。さらに、ランナーが2人残ると、4番上田はカウント2-0から甘く入ったスライダーを引っ張ると、打球はレフト線を痛烈に破る2塁打に。筒井が、政野が相次いでホームに生還し、起死回生の同点劇で試合は振り出しに戻る。

今大会1番と言ってもいい熱戦。だが、ロングリリーフとなった両投手の限界も近かった。11回表、日南学園は2アウトランナーなしから4番中本がアウトコースの速球を流し打つと、打球は浜風に乗ってレフトスタンドへ飛び込む勝ち越しホームランに!ここから5番大松、6番中崎、7番西井といずれも痛烈な当たりを放ち(7番西井は記録はエラー)、2点を追加すると、8番堀はテキサス性のタイムリーでもう1点。怒涛の攻めでこの回4点をたたき出し、一気に試合を決めた。

神奈川の強豪を向こうに回し、パワーで振り切った日南学園。2番手左腕・中崎の好投と打線がかみ合い、会心の勝利を挙げた。この試合を見た智辯和歌山・高嶋監督は、「日南は優勝する力がある」とマークしたほどであった。

 

3回戦

日南学園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
0 0 0 0 3 0 0 0 0 0 3
0 0 0 0 0 0 0 3 0 4

常葉菊川

第89回全国高校野球選手権大会3回戦日南学園VS常葉菊川 – YouTube

 

そして、3回戦は選抜優勝の常葉菊川と激突する。前の試合で不本意な投球だった2年生エース有馬が速球主体の投球で、フルスイングしてくる常葉打線を真っ向から封じると、打っては5回表に選抜優勝投手・田中(DeNA)を攻略。角度のある速球をものともせず攻略し、5安打を集中して3点を奪い、KOした。しかも2アウトランナーなしから四球を挟んでの5連打であり、まさに力攻めで圧倒した得点であった。

このまま試合は3-0で推移。しかし、8回裏に落とし穴が待っていた。やや疲れの見えてきた有馬が1番高野の2塁打と四球でランナーをためると、打席には代打・伊藤。県大会までメンバーに入っていなかったが、成長を見込んで起用された伸び盛りの2年生である。ここで有馬-畑中のバッテリーは速球勝負を選択。一球でも変化球を挟めばバットは空を切る可能性は高かったが、自信のあるボールを選んだのだろう。8球目の速球を長いリーチで伊藤がとらえた打球はレフトスタンドへ弾み、試合は一気に振り出しに戻った。

初戦も延長戦で3点差を追いつかれていた日南学園。しかし、今回の同点劇のほうがやはりショックが大きかっただろう。常葉菊川の2番手左腕・戸狩の前に終盤、打線が沈黙すると、初戦で好リリーフを見せた中崎も10回裏に捕まる。2番町田の内野安打などでランナーをためると、最後は先ほどの打席で同点ホームランの伊藤にセンターへのサヨナラ打を浴びて試合終了。伊藤に史上初の「1試合でホームラン&サヨナラ打」という快挙を許し、日南学園の夏は幕を閉じた。

しかし、強豪2校を相手に激闘を演じた日南学園の実力の高さは誰の目にも明らかであり、2試合ではあったが、強烈な印象を残した夏であった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました