独断と偏見で選ぶ、2008年夏にベスト8へ進めなかったイチオシの好チーム

2008年

東邦(愛知)

1 下平 10 和田
2 山田 11 佐々木
3 清水 12 生田
4 古市 13 百瀬
5 野々川 14 森田
6 松永 15 吉野
7 小宅 16 高橋
8 橋本 17 春名
9 岩田 18 石黒

全国を震撼させた強力打線

2008年時点で過去4度の選抜優勝経験のあった東邦。名将・阪口監督の元、山田(中日)-原のバッテリーで優勝を果たした平成元年のように、好バッテリーを軸にした戦いに定評があった。2000年代に入ってからも長峰、三浦、岩田(中日)、木下(日本ハム)と投手力をベースにした戦いで甲子園に登場してきていた。

しかし、この2008年のチームは阪口監督から後を引き継いだ森田監督のもと、打力を前面に押し出したチームであった。西愛知大会を準決勝までほとんど大差で制した打線は、1番山田(現東方監督)、4番野々川を中心に下位まで実力者がずらりと並び、どこからでも長打が飛び出す強力さを誇っていた。

一方、投手陣は下平、和田の両左腕を中心に継投でかわすスタイル。絶対的エースは不在だが、打線の築いたリードを打たせて取る投球で守りぬく。「守り」の東邦から「攻撃」の東邦へ完全にイメージチェンジした夏を迎えていた。

1回戦

東邦

1 2 3 4 5 6 7 8 9
1 0 1 3 2 0 7 0 0 15
0 0 0 1 2 1 4 0 2 10

北海

 

初戦の相手は南北海道代表・北海。大会注目の速球派右腕・鍵谷(巨人)を擁し、ディフェンス面では絶対の自信を持つチームだ。140キロ台中盤の速球をコンスタントに投じる剛腕であり、地方大会の成績はイニング数を上回る三振を奪っていた。東邦と同様に、競った展開になったのは決勝戦のみ(6-4北照)であり、平川監督も自信を持つ好チームであった。

しかし、そんな北海と鍵谷の自信をプレーボールとともに打ち砕かれる。1回表、先頭の山田がアウトコースの速球をとらえた打球はなんと右中間スタンドへ飛び込む先頭打者ホームランに。いきなり相手の出鼻をくじく一打が飛び出すと、3回表には2番小宅が弾丸ライナーでライトスタンドへ運ぶホームランで2点目。さらに4回には4番野々川にもセンターバックスクリーンへ一発が飛び出すと、さすがの鍵谷もマウンドへ首をひねらざるを得なかった。

注釈すると、この日の鍵谷のストレートはいつも通り、140キロ台中盤をしっかりマークしていた。しかし、近年のスピードボールへの対応力と東邦の各打者の技術の高さが、そのボールを容赦なく打ち返していく。3ホームランを放った上位打線もさることながら、3人で10安打を放った6番橋本、7番古市、8番松永のトリオも凄まじく、低く強い打球で次々ヒットを量産していった。終わってみれば、15-10と自慢の打力で押し切っての圧勝。今年の東邦らしいスタートを切った。

 

2回戦

清峰

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 1 0 1 1 0 1 0 4
0 0 1 1 1 0 1 1 × 5

東邦

2008第90回選手権二回戦 東邦vs清峰① – YouTube

続く2回戦はこちらも初戦で2桁得点の強豪・清峰と対戦。代々、好左腕を輩出してきたチームだったが、この試合では2年生右腕・今村(広島)を先発させてきた。試合は序盤から取っては取られの展開となるが、清峰が単打で挙げた1点を、東邦は長打1本で取り返していく。この試合結局6安打だったが、そのうち3安打が得点につながる長打であった。「甘く入れば持っていかれる」という意識は清峰バッテリーの脳裏にかならずあっただろう。

そして、4-4の同点で迎えた8回裏、東邦はランナー3塁から8番松永が決死のスクイズを決め、貴重な勝ち越し点を挙げる。投げては、ここまで継投主体だったが、エース下平が11安打を浴びながらも4失点で完投勝ち。屈指の好ゲームを制し、3回戦へコマを進めた。

 

3回戦

大坂桐蔭

1 2 3 4 5 6 7 8 9
1 1 1 1 0 3 0 0 0 7
0 0 0 0 0 0 0 2 3 5

東邦

 

迎えた3回戦の相手は大阪桐蔭。2002年のせんしゅけんでは西岡剛(ロッテ)を擁した大阪桐蔭を東邦が5-3と好ゲームで下している。しかし、この日は立ち上がりから大阪桐蔭ペース犠飛などで着々と得点を重ねると、6回には集中打が飛び出して7-0。東邦も立ち上がりから攻め込んだが、ライト奥村の好返球で3塁を狙ったランナーが刺されるなど、なかなかチャンスを広げきれない。

しかし、7点差で一方的な展開となった8回裏、東邦打線がようやく目を覚ました。2番小宅が大阪桐蔭のエース福島由のインサイドのボールを叩くと、打球は1回戦と同様に弾丸ライナーでライトスタントへ着弾。この回4連打が飛び出して5点差に迫ると、9回裏には1番山田、4番野々川のタイムリーでさらに3点を追加する。継投でかわそうとした大阪桐蔭を攻め立て、西谷監督もタジタジの猛攻であった。

結局、2点届かずに5-7で敗退したが、3試合で25得点をたたき出した打棒は強烈そのものであった。名門・東邦のイメージがかわるような鮮烈な戦いぶりに、高校野球ファンは魅了された夏であった。

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