独断と偏見で選ぶ、2016年選抜にベスト8へ進めなかったイチオシの好チーム

鹿児島実（鹿児島）

好左腕打ち崩した薩摩隼人

2015年夏から夏春連続出場を果たした鹿児島実。高校野球100周年の夏の開幕戦で北海の好投手、山本・渡辺の両輪を打ち込んで18得点を挙げた打力はすさまじいものがあった。北海は、今や日本ハムの先発ローテーションを務める伊藤大がエースの駒大苫小牧など、並みいる南北海道の強敵を相手に競り勝ってきていた。その好投手を完膚なきまでに打ち込んだ「桜島打線」の破壊力は全国の高校野球ファンの脳裏に焼き付けられた。

その打線から主砲・綿谷が残った新チームもまた、打力は全国でもトップクラスであった。特に綿谷の長打力と確実性は高校野球のレベルを突き抜けたレベルに達しており、九州でもなかなかまともに勝負してもらえないほどであった。周りを打つ板越、中村、追立もツボにはまれば長打にする力を持っており、投手にとっては恐怖の打線である。

一方、投手陣は制球力のある右腕・丸山と右アンダーハンドの谷村の2枚看板である。谷村は千葉ロッテの渡辺俊ばりの低い位置からの投球で、相手打線を幻惑。ここという場面で丸山から継投することで、相手打線の勢いを止めることができた。九州大会では準決勝で海星に5-6と競り負けて4強止まりだったが、ひそかに優勝候補の一角に上がっていた。

1回戦

鹿児島実

常総学院

鹿児島実vs常総学院　2016年選抜 | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

鹿児島実業VS常総学院　第88回選抜高校野球大会1回戦　フルバージョン – YouTube

初戦の相手は好左腕・鈴木（ロッテ）を擁する常総学院。前年の選抜では松井裕樹クラスと言われた高速スライダーを武器に8強入りしていた。この年の関東勢はほかにも木更津総合・早川（楽天）や花咲徳栄・高橋昴（広島）、桐生第一・内池と好左腕が目白押し。関東左腕勢のトップを切って、大会初日に登場してきた。

その常総学院に対し、鹿児島実は初回に先発・丸山が2年生4番の宮里にいきなりタイムリーを打たれるなど2点を失う。打線も打者一巡目は無得点に抑え込まれる。

しかし、この年の鹿実はパワーに加えて賢さも兼ね備える。打者二巡目以降、「右打者はスライダーを捨て、左打者はラインを決めてスライダーを狙い打て」という宮下監督の指示を忠実に実行。綿谷、板越、井戸田兄弟らが、高めの浮いたボールをことごとく打ち返し、大会屈指の好左腕から4点を奪って見事な逆転勝ちを収めた。

この試合では、谷村が6回の満塁のピンチでマウンドに上がると、狙い通りの火消し役も務めた。いきなり角度の違うところから来るボールにさしもの常総打線もとまどってしまった。

2回戦

鹿児島実

智辯学園

智弁学園VS鹿児島実業　第88回選抜高校野球大会2回戦　フルバージョン – YouTube

続く2回戦の智辯学園戦では、その谷村が先発のマウンドに。開幕戦に快勝した智辯打線を谷村は見事に抑え込むが、打線も智辯のエース村上の巧みな配球の前に封じ込められる。すると、智辯打線が7回裏に谷村のスライダーを攻略。打たれそうな流れもある中で、配球の変更ないし継投が遅れたことが悔やまれた。しかし、この大会で智辯学園が優勝したことを考えると、互角に渡り合った鹿児島実のレベルもまたトップクラスであることを示していた。

その後、鹿児島実は夏の鹿児島大会決勝で好左腕・浜屋（西武）擁する樟南とのライバル対決を迎える。全国屈指のスラッガー綿谷vs全国屈指の左腕・浜屋の対決も含め、両チームの堅守も光ったこの試合は、伝説の決勝として今も語り継がれている。両チームともに甲子園に出させてあげたいと思わせる、ハイレベルな試合であった。

高校野球2016夏の記憶 ～決勝２４イニングの宝物～ – YouTube