2014年春の選抜振り返りまとめ

2014年

25年ぶりの近畿勢同士の決勝となった今大会は龍谷大平安の選抜初優勝で幕を閉じた。昨秋の近畿大会準決勝の再戦となったが、再び軍配は平安に上がった。OBたちの悲願であった優勝に原田監督も感無量の表情だった。

今大会は延長戦の好試合が続き、特に明徳義塾智弁和歌山線は白眉の一戦となった。また、桐生第一広島新庄は互いの好守で延長15回引き分け再試合に。日程の過密化が懸念される、連投となる投手の負担も増した。一日休養日を設けていても再試合があるとつぶれてしまうため、やはり複数投手の重要性は避けられない。

また、池田、海南などの古豪や久しぶりに姿を現した王者駒大苫小牧など懐かしい顔ぶれも見られた。

龍谷大平安は2年連続の選抜出場。出場38回目にして悲願の栄冠を手にした。このチームの強みは打線。特に2番大谷、6番常、7番石川とつなぎの打順にクリーンアップも打てる力を持つ打者を置くことによって攻撃の厚みが増し、バリエーション豊かになった。1番徳本は大会序盤は調子が上がらなかったが、準決勝・決勝で復調。大会No.1左腕の佐野日大・田嶋から1発を放ち、決勝では試合開始直後のスリーベースを含む3安打。攻撃の起点となった。4番河合は明るいキャラクターでチームを引っ張り、15-78四死球で出塁率は脅威の0.652をマークした。決勝では試合を決めるツーランホームランを放った。

投手陣はライアンサウスポーの2年生高橋(ヤクルト)と技巧派左腕元氏が交互に先発。3年生の右のエース中田が占める継投策で戦った。決勝では中田が1アウト満塁の大ピンチをしのぎ、優勝を手繰り寄せた。高橋は質の高い真っすぐとスライダーを軸に快投。準決勝では初の完投勝利を挙げた。投打に層が厚く、原田監督曰く「ピンチで監督の方を見なくなった」という大人のチームが悲願の選抜初優勝を成し遂げた。

https://www.youtube.com/watch?v=N-uxEzPIYJo

履正社は春夏通じて初の決勝進出。惜しくも準優勝に終わったが、新たな歴史を刻んだ。このチームのモットーはバント・守備・走塁。その3つを意識しながらの戦いであった。昨年は力のある3投手に甲子園経験のある野手も揃いながら、夏の大阪大会決勝で大阪桐蔭に苦杯。今大会は異なるタイプの2年生投手2人を掲げての戦いとなった。エースナンバーをつける溝田は外角低めにストレートとスライダーを丁寧に集める投球で初戦の小山台戦は91アウトまでノーホットピッチングの1安打完封。辻の満塁ホームランなどで打線も援護した。2戦目は駒大苫小牧に溝田がKOされ、6-2と苦しい展開。しかし、代わった永谷が回転のいい真っすぐで好投。高めのボール球に駒苫の打者が手を出さざるを得ず、得点を許す雰囲気がない。打線は後半6回に集中打で3点を返すと、9回裏には相手の守備ミスにも漬け込んで2点を奪い、7-6と逆転サヨナラ勝ちを収めた。振り返るとこの1戦で間違いなく波に乗った。打線の核となったのは3番吉田。準々決勝の福知山成美戦では前の試合完封のエース石原から2打席連続のセンターオーバーのタイムリ。履正社らしい走好守揃ったスマートなプレーヤーだった。52年生西村は21-12と大当たり。流し打ちのレフト前ヒットは彼の代名詞だった。7番絹田も小柄な体ながら打率5割をマーク。下位打線の核となった。準決勝では豊川との乱打戦で9回に先頭のキャプテン金岡が同点ホームランを放つなど控えで出た選手も活躍を見せる好チームであった。

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豊川は初出場でベスト4の快挙。東海地区屈指の好投手田中空良がベールを脱いだ。1回戦は優勝候補の日本文理との戦い。文理の強力打線を相手に真っ向勝負。力のある高めのストレートに低めに鋭く落ちるスライダーで9回まで1失点。9回裏に土壇場で同点に追いつくと延長10回裏には2点ビハインドから8,9,1番の三連打であっという間に同点に追いつき、最後は13回裏に佐藤の左中間を破るタイムリーでサヨナラ勝ちした。

2回戦の池田戦では上位打線が奮起、1,2,3番の中村、杉浦、氷見の三者連続タイムリーで4点を奪い、田中の力投で4-1 と名門を撃破した。準々決勝では沖縄尚学の山城を3回でノックアウト。中村・氷見が3安打と再び火を噴いた。準決勝では力投派の田中がさすがに疲れが残っていたため、先発回避。投手陣全員でよくつなぎ、一時は4点差をひっくり返す粘りを見せたが、最後は履正社の前に力尽きた。しかし、明治神宮大会の決勝を戦った2校を撃破した戦いぶりは素晴らしく初出場ながら鮮烈な印象を残した。

https://www.youtube.com/watch?v=Tira20xCwB4

https://www.youtube.com/watch?v=E2nI0XQv0fs

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佐野日大は大会No.1左腕の田嶋を擁して初のベスト4入り。田嶋の持ち味は球持ちの良さ。肘から抜ける投げ方で前で球を放し、切れのあるボールを投じた。課題と言われた打線も4番稲葉を中心にエースを強力援護した。初戦は鎮西を寄せ付けず2-0の完封勝利。2戦目は智弁学園と対戦。智弁の大会NO.1スラッガー岡本vs大会No.1左腕田嶋の対決となった。序盤智弁の先発尾田を攻略して4-1とリードしたが、8回に岡本のショート強襲ヒットを含む5連打を浴びて同点に追いつかれた。それでも勝ち越しは許さずに延長10回リリーフに立った智弁・岡本から小泉がサヨナラタイムリーを放った。準々決勝は明徳義塾・岸と左右の大会No.1投手対決。この試合も序盤から打線が援護し、リードを奪うが、田嶋が中盤に再び5連打を浴びて逆転される。しかし、その直後ランナー12塁から松本監督会心のダブルスチールでチャンスを広げると4番稲葉がきっちり犠牲フライを放って同点。10回裏には1アウト満塁とサヨナラ負けの大ピンチだったが、相手7番森のセンターへ抜けようかという当たりをショート竹村がスーパーキャッチ。併殺で逃れると11回表に再び稲葉が勝ち越し打を放った。2回戦、準々決勝での連続延長戦という戦いがきつすぎたため、田嶋が消耗して準決勝では平安の強打に敗れた。しかし、力強い戦いぶりで、最近作新学院に押され気味だった栃木の雄が甲子園で存在感を示した。

福知山成美は田所監督最後の甲子園で選抜初の8強進出を果たした。昨夏初戦敗退の借りを返した。投手の石原は切れのあるストレートとスローカーブを軸に好投。時折リズムを乱すこともあったが、試合の中で修正した。打線は田所監督らしい強硬策で大量点を奪った。バントを使わない攻めであったが、右打者が徹底してセンターから右方向を狙う攻めはバント以上のプレッシャーを相手投手に与えた。特に1番キャプテン西田、3番捕手佐野はシュアなバッティングを見せた。夏は龍谷大平安を倒さなくてはいけないが、間違いなく打倒平安の1番手である。夏に向けては2番手投手の育成が急務か。

昨秋日本一の沖縄尚学はエース山城の好投で8強入り。1回戦は報徳学園との投手戦となったが、山城が4安打で完封。ライアン投法からの力のある真っすぐで圧倒した。打線は1点に抑えられたが、初スタメンの2年生中村のタイムリーで少ないチャンスをものにした。2回戦は関東チャンピオンの白鴎大足利と対戦。序盤押され気味の展開だったが、山城が踏ん張ると中盤以降、相手の比嘉・大下を捕らえ、大量点を奪った。昨秋同様に終盤に畳みかける攻撃は迫力があった。準々決勝では山城が序盤に打ち込まれ、打線も豊川のエース田中に2点に抑え込まれて完敗。夏に向けてエースの連投対策と下位打線の強化が望まれる。

明徳義塾は夏春連続のベスト8入り。エース岸は回転のいいストレートにスライダー、カットボールで素晴らしいピッチングを披露した。特に1回戦の智弁和歌山戦の好投はこの大会1番の投球と言ってもいいだろう。打線は非力と言われていたが、大会の中で粘りを発揮。特に4番西岡、6番安田、7番森あたりの成長は夏への収穫となった。岸頼みと言われていたチームの成長が見て取れた。準々決勝では捕手・水野の配球ミスもあり、逆転直後に同点に追いつかれ、延長の末惜敗。2番手投手含めたバッテリーと打線の更なる強化で岸を支え、夏こそは頂点を狙う。

桐生第一は2年生主体のチームでベスト8入り。昨夏の前橋育英に続いて群馬勢のレベルの高さを示した。2年生エース山田は4試合を投げて防御率0.49と素晴らしいピッチングを展開。球速は130キロ台後半だが、長身から角度のあるストレートと多彩な変化球を丁寧に集めた。初戦は前評判では上だった今治西の強力打線をわずか3安打1点に抑えると、引き分け再試合となった広島新庄戦は計24回を1失点に抑えた。準々決勝では疲れから龍谷大平安の強力打線に捕まったが、今後が楽しみな好投手だった。打線も3番柳谷を中心に2年生が8人を占める中、積極的な打撃を披露した。これからに期待の持てるチームである。

それ以外で印象に残ったチームとしては、北の王者・駒大苫小牧が挙げられる。1回戦では2年生エース伊藤が創成館を2安打完封。上位に左の好打者の並ぶチームに対して低めに落ちる変化球を主体に寄せ付けないピッチングを展開した。2戦目は準優勝した履正社のエース溝田をノックアウト。一時は4点をリードしたが、守り切れなかった。5失策は駒苫らしからぬ戦いぶりで王者復活にはもう少し時間がかかりそう。しかし、復活への足掛かりはつかんだ大会となった。

池田高校は1994年夏以来の久しぶりの甲子園。初戦は21世紀枠の海南を相手に終盤に3点差をひっくり返して逆転サヨナラ勝ち。強打の池田の復活を印象付けた。エース名西もスリークウォーター気味の腕の振りから丁寧な投球を見せた。

智弁学園は1回戦で東海チャンプの三重を相手に3番岡本の2ホームランで快勝。打線に関しては、岩田・高岡ら下位まで力のある打者が並び、大会でも5本の指に入るぐらいの力を見せた。エース尾田は抜群のコントロールを披露。しかし、2戦目では制球が甘くなり序盤に失点を重ねた。どうしても球威は不足しているだけに調子が悪い時に抑える術を身に着けたい。

智弁和歌山は初戦で敗れこそしたが、明徳義塾と延長15回の激闘を展開。好投手・岸に12安打を浴びせた打力は素晴らしく、特に37番の山本、長、片山、西山、春野の破壊力は大会でも屈指のものだった。2年生サウスポーの斉藤も好投。最後はエース吾妻のサヨナラ暴投で散ったが、久々に強い智弁和歌山が帰ってきたと思わせるチームだった。

その他では横浜をねじ伏せた八戸学院光星の強打や開幕戦でホームランを放った神村学園の2年生4番山本、ライアン投法で好投した広島新庄のサウスポー山岡、終盤の粘りを発揮した関東一の戦いぶりなどが光った。

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