2016年春の選抜甲子園振り返りまとめ

2016年

劇的なサヨナラ打で智弁学園が春夏通じて初優勝を飾った。高松商業の準優勝も実に55年ぶりの快挙であった。大会終盤はサヨナラゲームが相次ぎ(ベスト8以降の7試合中4試合もあった)、超高校級の選手はいない中でも素晴らしい盛り上がりを見せた。

久しぶりに西日本勢が元気な大会で、8強中7校を占めた。特に、近畿勢は4校がベスト8入りし、8強が出そろった段階で近畿勢の決勝進出が決まった。逆に元気がなかったのが関東勢で木更津総合以外はすべて初戦敗退に終わった。大会前の評価は高かっただけに意外な結果であった。

智弁学園は戦前の評価は投手力以外は決して高いものではなかったが、エース村上の安定感のある投球と堅守、そして勝負強いバッティングで初優勝を成し遂げた。もともと秋の試合では、近畿大会で大阪桐蔭に敗れるまでは練習試合を含めてほぼ無敗で来たチームだけに力はあったが、今年は監督が日本一を口にすることで選手をその気にさせた。やはり日本一は本気で狙うチームによって成し遂げられるのである。村上は左肩の開きが少ないフォームで右打者のインコースをしっかりつけ、回転軸が垂直に近いキレのいいストレートで空振りを奪った。打線は2年生の34番の太田、福元が成長。福元は鹿児島実業戦でホームランを放ち、太田は大会終盤にかけて調子を上げた。この二人の成長によって、秋はクリーンアップを打っていた村上、大橋、高橋を57番に置くことができ、打線に厚みができた。これまで最高成績は4強で、天理と並ぶ奈良の強豪と言われながら一歩遅れを取っていたが、これで少し肩を並べることもできただろう。

https://www.youtube.com/watch?v=QhJalJ3MsbM

準優勝の高松商業は明治神宮大会の覇者として臨んだ中で、持ち前のバッティングとエース浦の成長で55年ぶりの決勝進出を果たした。投手の打ち込まれる試合もあった中で打線の破壊力はすさまじく、植田兄弟のアベックホームランや1番安西の俊足、3番主将米麦のスイングの鋭さなど長所を数えだすときりがない。が、なんといっても5番美濃のバッティングはその中でも際立っており、2回戦では創志学園の剛腕高田から満塁の走者一掃のツーベース、準決勝でも勝負を決めるツーベースを放った。ともに高めのストレートをレフトオーバーにしたパワーと技術もさることながら、その雰囲気が必殺仕事人を醸し出すような野生感があり、アクロバットなセカンドの守備と合わせ、ここまで存在感のある選手もなかなかいないだろう。エース浦は大会序盤はなかなか調子が上がらなかったが、準決勝の秀岳館戦では強力打線を相手に2失点完投。決勝でも好投を見せた。近年元気のなかった香川県勢で久しぶりの上位進出を果たし、夏への期待も膨らんだ。

https://www.youtube.com/watch?v=l_ygk2G1L7U

龍谷大平安は甲子園100勝目前で智弁学園に逆転サヨナラ負けしたが、そこまでの歩みは素晴らしかった。特にエース市岡は戦前はコントロールの安定しない波の激しい投手という評判だったが、大会では安定した投球を披露。相手が打つ気がないとみるや真ん中に投げ込むなど度胸の良さを見せた。打線は初戦で橋本・岡田の45番がアベックホームラン。特に5番岡田のホームランはバックスクリーンをはるかに超えていく圧巻の打球であった。2戦目以降は相手が好投手だったこともあって湿り気味となったが、各打者のポテンシャルは高く、下位まで好打者の並ぶ打線は夏に向けての強みになるだろう。伝統の守備は堅実で、準々決勝では果敢なプレッシャーで明石商業得意のバントを封じ込んだ。今大会でのメモリアル記録はならなかったが、一昨年の全国制覇に続く上位進出で、一時期の初戦敗退の続いていた流れは完全に断ち切ったといえるだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=yGgNsdeehxg

秀岳館は鍛治舎監督が枚方でリトルリーグ時代に率いたメンバーを中心に甲子園で躍動。自慢の打力を発揮して熊本勢としては2007年の熊本工以来のベスト4入りを果たした。鍛治舎監督の方針でツーストライク後はノーステップ打法に切り替え、低めの変化球の見極めを可能とした。花咲徳栄・高橋昴や南陽江・重富の特徴を研究して打ち崩し、木更津総合・早川には8回まで無得点に抑えられたが、9回裏の土壇場で2点を取り、サヨナラ勝ちを収めた。緊迫した場面でも冷静な選球眼が光った。投手陣は5人を状況に応じて使い分けるプロ野球のような布陣。基本は角度のある真っすぐが武器の堀江が先発して試合を作り、左腕の中井でつないで、最後は最も安定感のあるエース有村で抑えていった。守備では捕手・九鬼の強肩が光った。夏に勝ちやすい布陣であり、春夏連続の甲子園が期待される。

https://www.youtube.com/watch?v=cEj0eav4m0c

木更津総合は早川の好投と上位打線の勝負強さで東日本勢唯一のベスト8入り。早川は柔らかい肩関節の動きからボールを前でリリースする投球フォームで球速以上の打ちづらさを感じた。大阪桐蔭戦では強打者の並ぶ打線を相手に1失点完投勝利。敗れた秀岳館戦でも8回までは完璧なピッチングだった。打線は4番鳥海が3試合連続タイムリーと活躍。夏に向けて下位打線が奮起するとより一層手ごわいチームになるだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=MdufsobbeJQ

滋賀学園は同校初のベスト8入り。神村後藤の2年生バッテリーを強力打線が援護して、2試合連続9得点。神村はアウトコースへ低めの変化球を丁寧に集めて試合を作り、後藤は3番バッターとしても2回戦の釜石戦で5打数5安打を記録。また、4番馬越はバットを頭上でぐるぐる回すヘリコプター打法からホームランを放った。準々決勝では智弁学園に力負けしたが、まだまだ成長の見込めるチームだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=CR2G4PTT1F4

明石商業は初出場でベスト8入り。ここ6年連続で夏の兵庫大会で8強入りしている実力校だったが、甲子園でもその力を見せつけた。初戦の日南学園戦では得意のバント攻撃でサヨナラスクイズ。2戦目は東邦の好投手藤嶋から8安打放ったうち、5本がツーベース。高めのストレートを確実に長打にする打力の高さを見せた。エース吉高は130キロ後半の伸びのあるストレートとスプリットで強打の東邦を完封。一球一球腕の振る位置の微妙に変わるつかみどころのない投手だが、下半身は安定しており高めの失投の少ない投手であった。準々決勝の平安戦では得意のバントを封じられ、延長12回の死闘の末敗れ去ったが、初出場らしからぬ貫禄の戦いぶりであった。

https://www.youtube.com/watch?v=YyWvmtLHNOs

海星は前評判はあまり高いほうではなかったが、左の春田から右の土谷への継投で2勝をマーク。特に前年覇者の敦賀気比を退けた戦いは見事であった。打線は勝った2試合は湿りがちであったが、敗れた準々決勝では爆発。4番小畑・5番永石の長打力は相手の脅威となった。長崎県勢としては優勝した清峰以来7年ぶりのベスト8.何より海星高校自身として5回目の出場で春初勝利を飾る思いで深い大会となった。

https://www.youtube.com/watch?v=eCeF_-B9jVw

大会前優勝候補の呼び声高かった大阪桐蔭・東邦・敦賀気比は2回戦で姿を消した。

大阪桐蔭は木更津総合の早川の前に打線が沈黙。走塁ミスなどもあったが、印象としては完全な力負けといった感じ。秋から常々西谷監督が「監督が試合を動かすサインを出さないと何もできない」と言っていたように、好投手と対戦した時の試合の中での対応力が優勝した先輩との差か。エース高山も腰痛で本来の投球ではなく、木更津総合のクリーンアップに捕まった。個々の力はあるだけに、夏に向けてやるべきことははっきりしている。

https://www.youtube.com/watch?v=9IW3HtgZN_Y

東邦は1回戦で東京覇者の関東一を藤嶋が1安打完封。松山・松本・小西ら強打者も多く、躍進が期待されたが、明石商業戦で無念の完封負け。相手は藤嶋対策としてインコースを封じに来て甘い球をしっかりたたいた。打線は終盤チャンスをつかむも、吉高に踏ん張られてチャンスを逃した。3-0というスコア以上に紙一重の勝負だっただけに惜しまれる結果となった。https://www.youtube.com/watch?v=6LMpfyOy8Sw

敦賀気比は投打の柱が活躍。エース山崎は2試合で2失点と秋から成長を見せ、林中は2試合でタイムリーにホームランとチームの全得点をたたき出した。それだけにほかのメンバーの奮起が課題。海星戦では甘い球を打ち損じる場面も目立った。2014年夏に全国を震撼させた打線の復活へとまた歩みを進めて行きたい。

https://www.youtube.com/watch?v=OzPsnZbw0Fw

その他では創志学園の高田が評判通りのピッチングを披露。150キロのストレートに高速スライダーで松坂2世の名に恥じないピッチングを披露。東海大甲府の打線を封じた。

https://www.youtube.com/watch?v=RJA2gV3p2Eo

また、青森山田・堀岡や鹿児島実業のアンダーハンド丸山、日南学園のサウスポー森元の好投も光った。

https://www.youtube.com/watch?v=1JrktL4laWA

一方、大会前好投手と評判だった常総学院・鈴木、花咲徳栄・高橋、東海大甲府の松葉・菊池、桐生第一・内池は初戦敗退に終わった。秋に比べて少し小さくまとまってしまった感もあったが、力はあるだけに夏に向けて期待は高まる。

史上2度目の21世紀枠対決となった釜石小豆島戦は2-1の接戦で釜石に軍配。引き締まった好試合となった。長田高校も海星に善戦。エース園田の好投が光った。

https://www.youtube.com/watch?v=hZFXpmd1UOM

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