大会11日目第3試合
敦賀気比
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 |
0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 2 | 0 | 0 | × | 4 |
仙台育英
敦賀気比 笠島→黒田→松村
仙台育英 鈴木→大栄→笹倉
2015年の選抜の再戦となった試合は仙台育英が中盤に敦賀気比の2年生エース笠島(巨人)を攻略。前回対戦のリベンジを果たし、2年ぶりの8強進出を決めた。
試合
仙台育英は2試合で28得点と打線好調。2回戦では鳴門の好左腕・西野を硬軟織り交ぜた攻撃で攻略した。4安打を放った1番中里を中心にどこからでも点の取れる打線だ。投手陣も層が厚く、鈴木、大栄、笹倉と140キロ台の速球を投げる投手を複数擁する。連戦への不安も少なく、後半勝負になればなるほど有利に働きそうな布陣だ。
対する敦賀気比は2回戦で国学院久我山に19-3と大勝。2014年夏を彷彿とさせる強打で勝ちすすんできた。特にサイクルヒットを達成した3番杉田、4番木下(広島)の2人は広角に打ち分ける打撃でヒットを量産。2人の前にランナーをためれば再び大量点の可能性がある。投げてはエース笠島が2試合連続で安定した投球を披露。持ち味のコーナーワークで仙台育英打線をどこまで封じ込めるか。
星稜vs智辯和歌山の好試合の余韻が残る中で始まった試合の立ち上がり、まさかのアクシデントが起こる。2回戦でサイクルヒットを達成した3番杉田が仙台育英の先発・鈴木から頭部死球を受け、退場となってしまったのだ。不測の事態で敦賀気比は攻撃の柱の一角を失うこととなる。
試合は初回から両チームともにランナーを出し合う展開となる。ただ笠島がヒットを許しながらもコーナーに巧みに投げ分けていたのに対して、仙台育英の鈴木は初回の死球の動揺もあってか、落ち着かない投球となる。厳しくコースを突いていくが、カウントが悪くなるケースが多かった。
継投を視野に入れつつも、序盤は鈴木に踏ん張ってもらいたい仙台育英。しかし、3回表になっても杉田に代わって出場した3番長谷川から3者連続で四球を出すなど、鈴木の投球が落ち着く気配がない。けん制タッチアウトなどで2アウトにこぎつけるも、6番野道、7番長浜に2者連続でタイムリーが飛び出し、敦賀気比が3点を先取。2本ともいい当たりではなかったが、敦賀気比の巧打が鈴木のツーシームを攻略した。
3点のリードをもらった笠島は3,4回と落ち着いた投球で仙台育英を料理していく。2年生ながら完成度の高い投球で打者を牛耳る。対する仙台育英は4回から背番号1の大栄が登板。アウトコース主体に丁寧に投げ込んで、火の付きかけた敦賀気比打線の勢いを鎮火させる。敦賀気比もチャンスは作るものの、勝負所で失投の少ない大栄を攻めきれなかった。
すると、エースの持ってきた流れに打線が乗る。5回裏、2アウトランナーなしから9番水岡が真ん中低めのストレートを救い上げて左中間に3塁打を放つと、好調の1番中里もインコースやや甘めのストレートを完ぺきにとらえて右中間へタイムリー2塁打。初得点を刻むと、2番宮本もストレートをセンターへ返してもう1点を追加。右スリークオーターに対して相性のいいと言われる左打者が2アウトから3連打を放ち、あっという間に1点差に詰め寄る。
敦賀気比にとっては攻撃の核を1枚欠く苦しい展開。いつも以上に笠島にプレッシャーもかかっていたか。6回裏に仙台育英打線に完全につかまる。1アウトから5番千葉、6番大栄が連打を放ってチャンスメーク。ここで1年生の7番木村がスクイズを決めて同点に追いつく。さらに続く1年生の8番笹倉、9番水岡にも連打が飛び出して仙台育英がついに試合をひっくり返した。
序盤は投球が安定していた笠島だったが、中盤になってややストレートがシュート回転するようになってしまった。しかし、そこを逃すことなくとらえた仙台育英打線がさすがであった。
追撃したい敦賀気比は直後の7回表に2アウトから3者連続四死球で満塁のチャンスを築くが、先制タイムリーの6番野道が打ち取られて無得点。対する仙台育英も7回から登板した敦賀気比の黒田、松村からチャンスは作るが、スクイズ失敗もあって得点には至らない。
1点差のまま迎えた最終回、仙台育英は先頭で1年生の1番大島がレフトオーバーの2塁打を放ち、犠打で1アウト3塁と同点のチャンスを築く。大栄自慢のストレートをとらえられた一打を見て、仙台育英は継投策に出る。3番手で登板した笹倉は3番長谷川に四球を与えるも、続く4番木下を浅いレフトフライに打ち取って2アウトを取ると、最後は5番高原を自信のある真っすぐで空振り三振に切って取り、ゲームセット。
両チームの1年生が躍動した最終回の攻防を制し、仙台育英が2年ぶりにベスト8進出を決めた。
まとめ
仙台育英は3点を先制されたが、打線が腰を据えた攻撃で相手エースを攻略し、見事な逆転勝ちを飾った。特に笠島から放った10安打中8安打が左打者が放ったものであり、入ってくるボールに対してきっちり対応して見せた。投手陣も一人目が攻略されても二の矢、三の矢でしのぐしたたかさを見せ、この試合も分厚い選手層がものを言った。
須江監督になってから初のベスト8進出となり、勝負強い伝統がしっかり受け継がれていることを感じさせる試合であった。
一方、敗れた敦賀気比にとっては初回の杉田の死球による退場が戦力的な部分だけでなく、精神的にも与えた影響が大きかっただろう。そんな中でもよく相手に食らいついていたが、最後は1点差で及ばなかった。エースの笠島は好投を見せたが、「対左打者」という課題を甲子園からもらった形となった。
それでも2015年以来遠ざかっていた甲子園での勝利を成し遂げ、復活の一歩目を記した大会となった。
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