2019年選手権2回戦 岡山学芸館vs広島商(5日目第3試合)

2019年

大会5日目第3試合

広島商

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 1 0 0 1 2 1 0 0 5
1 0 0 0 0 1 1 3 × 6

岡山学芸館

 

広島商    倉本→中尾→中岡

岡山学芸館  丹羽→中川

隣県同士の顔合わせとなった2回戦最初の試合は終盤までもつれる接戦に。終盤に打線のつながった岡山学芸館が名門・広島商を逆転で下し、春夏通算3度目の出場で甲子園初勝利を果たした。

試合

広島商は岩本(広島)を擁して出場した2004年以来、実に15年ぶりの甲子園出場。かつて何度も甲子園の頂点に立った名門校も打撃全盛の時代にあって、堅守・犠打を貫く野球では勝てなくなってきていた。そんな中で、荒谷監督のもとで機動力野球を見直し、1番天井、2番北田の打って走れるコンビを中心に得点力を上げてきた。準決勝では近年苦杯をなめてきたライバル広陵を大差で撃破。甲子園でも倉本中尾中岡でつなぐ継投でかわしながら、競り合いを制していきたいところだ。

 

一方、岡山学芸館は夏は4年ぶり2回目の甲子園出場。岡山大会初戦では昨年の選抜に出場したおかやま山陽と対戦し、最終回に相手のエラーで逆転サヨナラ勝ちをおさめ、波に乗った。その後も持ち前のつなぐ野球で倉敷工、倉敷商といった伝統校に競り勝ち、代表権をつかみ取った。投手陣は球威のある右腕・中川と技巧派左腕・丹羽の継投が基本線。4番長船を中心とした機動力豊かな攻撃陣が援護する。春夏1度ずつの出場はあるが、まだ勝利はなく、今大会で初勝利を目指す。

 

試合は1回表にいきなりアクシデントで幕を開けた。広島商の3番水岡の打球が岡山学芸館の先発・丹羽の頭部を直撃。丹羽は担架で搬送され、岡山学芸館はいきなり先発投手を降板させざるを得なくなった。

 

騒然とした雰囲気の中で、先手を取ったのは岡山学芸館。1回裏、1番主将の好田がストレートをライトへはじき返して出塁すると、盗塁で2塁へ進塁する。2アウトとなって4番長船がセカンドはたたきつける打撃で内野安打を放ち、1点を先制する。広島商の倉本の動くボールに対して強いスイングで結果を残した。

 

しかし、岡山学芸館は2本柱の片割れを失ったばかり。右腕の中川がマウンドに上がるが、広島商がすかさず反撃に転ずる。先頭の4番真鍋が甘いスライダーをセンターに返すと、送って1アウト2塁から6番山路もセンターに返して1,3塁とチャンスを拡大する。ここで、7番杉山は伝家の宝刀・セーフティスクイズを敢行し、同点・広商野球ここにありをアピールする。

 

同点に追いついてもらった広島商・倉本は2回以降は落ち着いた投球を展開。多彩な球種でしかも手元で動くボールが多いため、相手打者にとっては見た目以上に打ちづらい。岡山学芸館打線に内野ゴロの山を築かせ、5回まで初回の1失点のみと試合を作る。

 

倉本の投球でリズムの出てきた広島商は5回以降打線がつながり始める。5回表に6番山路がストレートを狙いすまして振り抜き、レフトへのホームランで1点を勝ち越すと、6回表には自慢の上位打線が得点をたたき出す。1番天井が甘めのスプリットをセンターオーバーの2塁打とすると、犠打がフィルダースチョイスとなって無死1.3塁になる。ここで3番水岡のタイムリーと4番真鍋の犠飛で2点を追加。一気に試合の主導権を握る。

 

リードを広げた広島商だったが、懸念は継投のタイミング。県大会でも先発・倉本の球威が落ち始めたところで中岡、中尾につなぐスタイルで勝ち上がってきた。その懸念が6回裏に現れ、2アウトから2番金城、3番知念、4番長船と3連打が飛び出す。倉本の球筋にも慣れ始め、徐々にミートポイントを捕手寄りに寄せることで攻略。広島商・荒谷監督はこの回が限界ととらえ、倉本はマウンドを降りた。結果的に継投策が裏目に出るのだが、交代のタイミングとしては間違っていなかったと思う。

 

しかし、ヒットを打った長船の離塁を見逃さずに刺すなど、スキのない広商野球は流れを簡単に渡さない。7回表には相手の失策と四球で得たランナーを好打者の1番天井がきっちりタイムリーで返して1点を追加する。ここまでは広商ペースで試合は進んでいた。

 

ところが、2番手で登板した中尾が制球に苦しみ、2四球などで1点を失うと、広島商・荒谷監督はすかさず3番手の中岡をマウンドに送る。中岡は7回のピンチは無失点で切り抜けたが、勢いづいた岡山学芸館打線が8回に猛攻を見せる。

県大会で不振だった1番好田がこの日2本目のヒットで出塁すると、2番金城はバントヒットでチャンス拡大。送って2,3塁から代打・中川の内野安打で1点差とすると、さらに6番岩端がレフトへ流した打球は浜風にも乗って左翼手の頭を超える逆転のタイムリーとなり、土壇場で岡山学芸館が試合をひっくり返した。広島商にとっては相手の声援に飲み込まれた守りになってしまった。

 

最終回、粘る広島商も先頭の杉山のヒットからチャンスを作るも、当たっている天井は敬遠される。荒谷監督はこの日当たりのなかった2番北田に代打・川口を送るも、ファーストファウルフライに打ち取られて試合終了。最後まで目の離せない好試合は岡山学芸館が制し、同校初となる甲子園の勝利をものにした。

まとめ

岡山学芸館は先発の丹羽のアクシデントを全員でカバーして逆転勝ちをおさめた。リリーフした中川は中盤以降失点を重ねこそしたが、大量失点にならぬよう踏ん張り続けたことが最後の逆転を呼び込んだ。打線は大物うちこそいないが、センターから逆方向への打撃とたたきつける打撃を徹底し、広商投手陣を攻略した。中国地区同士の機動力野球の応酬を制し、見事に初めての凱歌を上げた。

 

一方、敗れた広島商も終盤までは自分たちの野球をしっかり発揮できていた。伝統の堅守・小技に加えて、犠打だけに頼らない攻撃も随所に見せ、新しい広商野球の形を甲子園で披露した。惜しまれるとすれば、3投手の継投だったが、球威で抑え込めるタイプの投手をリリーフに置けなかったことか。ただ、広島商復活の流れは確実にできつつあり、来年以降も楽しみになる試合であった。

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