2019年選手権3回戦 明石商vs宇部鴻城(10日目第3試合)

2019年

大会10日目第3試合

宇部鴻城

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2
0 0 0 0 1 0 0 1 0 3

明石商

 

宇部鴻城 岡田→池村

明石商  杉戸

ロースコアの接戦となった第3試合は両者譲らずに延長戦へ。明石商が延長10回に伝家の宝刀のスクイズを決め、ベスト8への扉をこじ開けた。

試合

明石商は初戦で花咲徳栄との強豪対決をエース中森(ロッテ)の力投で制し、3回戦へと進んできた。勝負強い上位打線がコツコツと重ねた得点をエースが最少失点に封じながら守り切った一戦はまさに明石商の目指していた野球を体現したものであった。この試合も明商らしい手堅い野球で先行しながら試合を進めたいところだ。

対する宇部鴻城は初戦で15安打を放つ猛攻で牛鬼打線の宇和島東に打ち勝ってきた。下位打線からでもチャンスメークできる打線は尾崎監督にとっても心強いだろう。投げては右の岡田がストレート主体の投球で要所を締めた。左腕の池村も控えており、左右2本柱を活発な打線が支えて明石商の牙城を崩したいところだ。

 

前の試合で優勝候補の東海大相模が敗れたこともあり、ざわざわした雰囲気の中で試合は開始。宇部鴻城が初戦と同様に右腕・岡田をマウンドに送ったのに対して、明石商は県大会でエース中森と2本柱を形成した左腕・杉戸を先発させた。明石商にとっては上位を見据えての投手起用であったが、県大会の実績から言っても違和感は全くない起用だっただろう。

ほぼ左サイドの腕の位置からスライダー主体に内外角を突く投球が持ち味の杉戸。落ち着いた入りができるか注目されたが、初回に宇部鴻城打線が捕まえる。1アウトから2番古川がセンターへのヒットを放って出塁すると、3番酒井は粘ってフルカウントから甘く入ったスライダーをジャストミート。打球は左中間スタンドに飛び込む先制2ランとなり、宇部鴻城が先手を奪った。

実力的にはやや不利と思われた宇部鴻城の先制パンチ。またもや番狂わせが起こるのかと思われたが、杉戸は2回以降は落ち着きを取り戻す。球威のあるタイプではないが、丹念に我慢強く投げる姿勢が狭間監督に買われており、ランナーは背負っても決定打は許さない投球で0を並べていく。特に左打者の背中から曲がってくるスライダーが威力を発揮していた。

対する宇部鴻城の岡田は序盤からランナーを背負う投球が続くも、初戦同様に要所を踏ん張って得点を許さない。2回にはエンドランでランナーが飛び出して併殺、3回には1アウト満塁で4番安藤の痛烈な当たりがファーストライナーとなって併殺と、明石商らしくない拙攻が続いた。

この嫌な流れの中でも先発・杉戸が我慢強く失点を防いで粘っていると、5回裏に主将が仕事をやってのける。岡田の伸びのあるストレートをコンパクトなスイングでとらえると、打球は風にも乗ってセンターバックスクリーンに飛び込み、1点を返す。再三のチャンスをつぶしてきたが、2アウトからの一発で流れを引き寄せる。

すると、序盤からランナーを背負うことが多かった杉戸の投球が後半に入って安定してくる。ボールが低めに集まるようにあり、徐々に宇部鴻城打線の自分のスイングをさせなくなる。決して目を見張るような決め球があるわけではないが、高校生投手のお手本になるような投球で相手打線を抑え込む。

この流れに乗った明石商が8回裏、ついに宇部鴻城の背中をとらえる。それまで9残塁とチャンスを活かしきれていなかったが、2番手の左腕・池村から5番宮崎がヒットで出塁。犠打で進塁すると、ピンチランナーで出ていた窪田が左投手のスキをついて3塁を陥れる。ここで7番清水にはフルカウントからエンドランを敢行。見事にファースト前に転がし、窪田が生還して同点に追いつく。少ないチャンスを好走塁と思い切った作戦で活かす、「ザ・明石商」と言える野球で同点に追いつく。

この後、9回の攻防を池村杉戸の両左腕が踏ん張って試合は延長戦へと突入する。明石商が押し気味の展開の中で宇部鴻城のディフェンスも踏ん張りを見せる。対する杉戸はもはや後半は満足にスイングすらさせないようになっており、水上(楽天)の配球もあって、完全にバッテリーの術中にはめていった。

熱戦は延長に入り、10回裏に決着となった。先頭の4番安藤がファーストへの内野安打で出塁すると、5番岡田の犠打がエラーを誘って1,2塁となる。すかさず犠打を繰り返して1アウト2,3塁とすると、宇部鴻城は敬遠策を選択する。

こうなると、互いに考えることは「どこでスクイズをしかけるか」。警戒された場面だったが、狭間監督は構わずカウント0-1からスクイズを敢行。8番河野が見事に投手前に転がし、明石商が延長戦に終止符を打って、夏は初めての8強進出を決めた。

まとめ

明石商は苦しい試合展開となったが、粘ってひっくり返した所に底力が垣間見えた。中森来田(オリックス)が注目されがちなチームだったが、初回に2ランホームランを浴びながらその後は相手に得点を許さなかった杉戸の投球も、終盤の少ないチャンスで好走塁も絡めて奪った同点のシーンも、チームとしての総合力の高さを感じさせた。

前年に1年生ながら甲子園を経験した投打の軸を、3年生が支えての快勝劇。勢いに乗って前年敗れた八戸学院光星への雪辱戦に向かう。

 

一方、敗れた宇部鴻城も前評判では不利が予想された中で、素晴らしい戦いぶりを見せた。初回に失投の逃さなかった酒井のバッティングで奪ったリードを岡田池村の2人がよく守り、あと一歩まで相手を追い詰めた。結果は惜敗となったが、2012年以来7年ぶりに3回戦へ進出し、投打に確かな実力を見せつけた戦いぶりだった。

[高校野球2019夏3回戦] 明石商がサヨナラ VS 宇部鴻城 – YouTube

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