高校野球ファンが待ちに待った甲子園大会が2019年8月以来1年半ぶりに幕を開ける。コロナウイルスの関係で昨年一年間全国大会が中止となる中で、様々な関係者のご尽力があって今年は開催が実現できそうである。
そんな中、昨年秋はコロナの影響で神宮大会が開催できなかったこともあり、各地区の実力を測る物差しが一つ欠けている状態である。秋から春にかけて期間が空くだけに選抜の優勝予想は非常に読みづらいが、今年はなお一層どこが勝つのかわかりづらい状況だ。それだけにより一層面白さが増しているのもまた事実である。
また、今大会から地区ごとの割り振りをなくすフリー抽選が実施され、同地区の強豪対決が初戦から多く実現。序盤からV候補同士のつぶし合いも多くなり、波乱の展開となりそうだ。
そんな中、優勝候補に挙がるのは2年連続で地区大会を制した面々や、大阪桐蔭・智辯学園の近畿勢、大会屈指の好投手を擁する市立和歌山などになりそうだ。
優勝候補
まず、今年もタレントぞろいの大阪桐蔭は優勝候補から外せないだろう。近年の高校球界を背負っていると言っても過言ではないチームは今年も戦力充実。松浦、関戸と左右の150キロ投手を擁し、ともに昨年から試合経験は豊富だ。昨年秋は本調子でない中でも順当に勝ち上がっただけに、選抜でピークを合わせられれば手が付けられない可能性はある。
打線は4番池田を中心に今年も破壊力抜群。長打力に加えて今年は1番繁永、2番野間を中心に機動力も使える。エンドランを使うのが好きな西谷監督だが、今年はより積極的に動いてきそうだ。何よりここ数年甲子園で勝ち続けてきたマインドが根付いており、かつてPL学園がそうだったようにユニフォームを見ただけで意識する存在になりつつある。現在11連勝となっている甲子園連勝の記録をどこまで伸ばせるか。
その大阪桐蔭を昨年秋の近畿大会で破った智辯学園はなんと初戦で大阪桐蔭と対戦。勝った方が優勝争いの中心になるのは間違いないだろう。
投手陣は一年生から甲子園のマウンドを経験した小畠と西村が2枚看板を形成。1年生時から小阪監督をして、「ものが違う」と言わしめた二人の好投が近畿大会を勝ち抜く原動力となった。左サイドから角度のあるボールが持ち味の西村に長身からの角度が武器の小畠と持ち味の異なることで継投の効果も大きくなる。
一方、打線はこちらも1年生から4番を打つ前川が軸。近畿大会で大阪桐蔭の関戸からホームランを放ち、スイングの強さは一級品だ。4番山下との2人で形成する中軸は今大会でもトップクラスだ。また、こちらも機動力豊かであり、戦局を変えるオプションは多い。1年生時からチームの中心だった面々が最終学年を迎え、満を持して2度目の選抜制覇を狙う。
昨年から公式戦負けなしが続く中京大中京も当然優勝候補に入ってくる。
昨年は高橋宏(中日)と松島の強力2枚看板を擁していたが、今年も150キロ右腕・畔柳が君臨する。速球派にありがちなもろさはなく、腰痛で本調子でない中でも試合を作ることができる。ただ、トーナメント表で最後に入ったことで、7日間で500球の基準に最も影響されることとなった。2番手の左腕・柴田の役割が大きくなってきそうだ。
打線は印出、中山(巨人)らスター選手を擁した昨年と比較して個の力では劣るものの、点の取り方を良く知っている試合巧者だ。4番原以外はやや長打力にかけるものの、俊足の選手が多く、相手のミスに付け込むのもうまい。伝統校らしいそつのなさを発揮し、県内のライバル東邦に並ぶ5度目の選抜制覇を目論む。
同じ東海地区では、名将・鍛治舎監督が率いる県岐阜商も戦力が充実している。野崎、松野の左右の両輪をはじめとして140キロ台を記録する投手を4人擁するスタッフは今大会でも屈指の陣容だ。好捕手・高木のインサイドワークも光り、連戦や試合終盤になるほど有利に試合を進められるだろう。
打線でも中心となるのは4番高木。プロ注目のキャッチャーは打撃もパンチ力があり、今大会注目度No.1と言えるだろう。秀岳館時代はパワー野球全開だった鍛治舎監督だが、投手力の充実している今年のチームでは1点ずつ刻むスタイルで来る可能性もある。県内最多の4度の全国制覇を誇る名門校が久々に優勝に向けて腕を撫す。
その県立岐阜商と初戦で対戦する市立和歌山もまた今大会屈指のディフェンス力を持つチームだ。エース小園は今大会最注目の好投手。150キロを超す速球にカットボール、ツーシームと高速系の変化球を混ぜる。オリックスの山本由伸を彷彿とさせる好投手だ。本調子なら相手チームは3点以上の得点は難しいだろう。2番手の米田も昨秋の大会で計算が立ち、連戦や球数制限にも心配はなさそうだ。
対する打線はやや非力な印象があるが、4番松川という軸が入りだけにやることははっきりしている。高校通算31ホームランを誇る主砲・松川に加えてチャンスに強い5番田中の前にいかにランナーをためられるか。失点が計算できるだけに、上位打線で確実に得点を挙げていきたい。和歌山屈指の効率の伝統校に初優勝のチャンスが到来している。
東北の雄・仙台育英は2年連続で東北大会を制覇。1年生から甲子園のマウンドを経験してきた伊藤が最終学年を迎え、ストレートはMAX147キロまで伸びた。4種類持つ変化球も精度は高く、大崩れはしないだろう。松田や古川ら控え投手陣も層は厚く、質量ともに豊富な陣容を誇る。
打線は吉野、岡田らパワーヒッターがいることに加えて、俊足の選手が多く、機動力も絡められる。例年のパワー野球だけでなく、足も絡められるのは相手にとって脅威だろう。須江監督就任以来、確実に走塁の意識は上がってきており、きめ細かい野球も今の仙台育英の魅力だ。悲願の白河の関越えに向けて戦力は整った。
その仙台育英と1回戦屈指の好カードを形成するのが四国王者・明徳義塾。こちらも2年連続で秋の四国大会を制した。ここ数年複数投手制が多かった明徳義塾だが、今年は左腕・代木が絶対的エースとして君臨。抜群の制球力が武器で、決め球のカットボールで相手打者の芯を外す。期待の右サイド右腕・矢野も控え、明徳らしくディフェンスは安定している。
打線は昨秋は集中打で得点を重ねた。上位から下位まで穴が少なく。犠打・四死球を得点に絡めるのがうまい。知将・馬淵監督のタクトに応えられる選手が揃っていることが何よりの強みだ。勝負強い中軸の米崎、加藤に加えて、秋は本調子でなかった高松が復活すれば、さらに破壊力は増しそうだ。夏の甲子園、国体、神宮と全て優勝経験のある馬淵監督に、最後のタイトルとなる選抜優勝を届けられるか、注目だ。
秋の練習試合、公式戦を無敗で駆け抜けた広島新庄も優勝候補に挙がってくる。投手陣は右腕・花田が台頭したことで、昨年からエース格の左腕・秋山をリリーフに回すことができた。2人ともストレートにキレがあり、攻略は容易ではない。秋の公式戦はほとんどの試合を2失点以下に抑えており、失点は計算できそうだ。内外野の守備も鍛えられており、守備からリズムを作っていく。
打線は昨年夏に交流試合を経験した1番大可を中心に機動力で相手のスキを突く野球が持ち味だ。中軸の瀬尾、花田、伊永の3人は勝負強く、得点力は数字以上に高そうだ。新チーム結成以降負けたことのないしたたかなチームが、大阪桐蔭vs智辯学園のカードの横で不気味に牙を研いでいる。
健大高崎も2年連続で関東大会を制覇。パワー全開の野球で優勝を狙う。「機動破壊」のイメージが強かった健大高崎だが、ここ数年は前橋育英の守り勝つ野球の前に後塵を拝してきた。その影響もあってか、打力アップに注力したことで近年はホームランを量産する結果に。3番櫻井、4番小澤を中心に長打力は出場校中でもトップクラスだ。
投手陣は故障で戦列を離れていたエース今仲が復帰予定。秋の大会でエース格だった野中は安定感が光り、ツーシームを武器に打たせて取る投球でチームを2年連続の栄冠に導いた。今仲と野中の二人を軸に今年も継投で乗り切る構えだ。生まれ変わった「NEW 健大高崎」が悲願の全国制覇に向けて走り出す。
2番手グループ
昨秋は関東大会の準々決勝でまさかの逆転サヨナラ負けを喫した東海大相模だが、上位陣を食う力は十二分に秘めている。8強からぎりぎりで選出されてきた分、かえって不気味な存在だ。エース左腕石田は1年生夏、昨年の交流試合と経験しており、コントロール抜群でテンポよく打ち取っていく。
打線は昨年の山村(西武)、西川(ロッテ)、鵜沼のようなスター選手はいないが、犠打・走塁を絡めた得点力は引けを取らない。相手校が最も嫌がる初回からのアグレッシブベースボールでまずは東海大甲府とのリベンジマッチに臨む。
2017年夏に4強入りを果たした東海大菅生は東京大会でなかなか勝てなかった時期を完全に払しょくした感がある。エース左腕の本田は独特のフォームから繰り出すクロスファイヤーを武器に東京大会決勝では強打の日大三を7回でわずか被安打1に抑え込んだ。全国の舞台でも好投が期待される。
打線は例年通り強力。福原、堀町ら昨年から経験豊富な面々を中心に今年も長打で圧倒する力を持つ。まだ選抜では勝利がないものの、2017年のベスト4以来風向きは確実に変わりつつある。1992年の帝京以来優勝のない東京勢に久々の紫紺の大旗を持ち帰れるか。
敦賀気比は2016年以来5年ぶりに秋の北信越大会を制覇。持ち前の強力打線は今年も健在で、北信越大会では4試合で33得点をたたき出した。1年生で大舞台を経験済みの大島と前川がいることも心強い。2014年の甲子園で全国を震撼させた打棒を再び見せられるか。
投手陣は細身の左腕竹松がエースを務める。変化球の精度が高く、県大会では1試合14三振も記録。2年生の上加世田も変化球がよく、技巧派投手2人で試合を作っていく。2015年に県勢初優勝を成し遂げた強豪が2度目の栄冠を狙う。
その敦賀気比と初戦で常連校対決となったのが常総学院。初出場した1987年にエースとしてチームを準優勝に導いた島田監督(横浜)が指揮官に就任し、ここ数年勝ちきれなかった母校を久々の選抜に導いた。投手陣はともに140キロを超すストレートを持つ秋元と大川の強力2枚看板を有する。関東大会では準決勝までの3試合で失点はわずか1.名投手だった島田監督仕込みの好投手が選抜で躍動する。
また、打線も3番三輪、4番青木を中心にコンスタントに得点を重ねる。先代の木内監督時代からの相手のスキを突く抜け目なさも健在だ。投打にたくましさ、勝負強さを取り戻した常総学院が5年ぶりの選抜でまずは6年ぶりの選抜1勝を目指す。
北海はなんと開幕戦に登場。エース木村は大会屈指の好左腕だ。白熱の投手戦となった旭川実との決勝では虎の子の1点を死守し、チームに10年ぶりの甲子園切符をもたらした。最速145キロとキレのあるスライダーはともに天下一品で、初見での攻略はかなり難しそうだ。玉熊、大西ら実戦派の好投手を輩出してきている近年の北海の中でも最上位に位置する実力の持ち主だ。
打線も決勝こそ旭川実・田中の前に1点どまりだったが、それ以外の試合はほとんどコンスタントに6点以上をたたき出した。大物うちこそ少ないものの、ミートのうまい打者が揃った北海らしい打線で、準優勝した2016年とよく似ている。昨年から経験している選手が多く、選抜では久々となる決勝進出を果たせるか、注目だ。
その北海と2017年の再戦となったのが、神戸国際大付。昨秋の兵庫大会を制し、近畿ではエース阪上の負傷もあってベスト8止まりだったが、実力を評価されて選出となった。阪上はMAX145キロの速球が魅力の本格派で、スライダーも精度が高い。2年生の中辻もストレートのスピードは140キロを超え、連戦にも不安はなさそうだ。
打線は中軸に特に力があり、武本、西川、阪上の3人で公式戦のチームの打点のほぼ半数をたたき出した。足の速い選手もいるが、まだ攻撃がかみ合いきっていない部分もあり、その辺の神戸国際らしい粗さが解消されていれば、さらに得点力は上がりそう。ベスト8からの選出でプレッシャーも少ない分、大舞台で大暴れできるか。
天理は近畿大会8強で大阪桐蔭にコールド負けを喫したが、県大会決勝で智辯学園を倒していたことと、長身右腕・達の存在が選考に大きく影響した。達は190㎝の長身から投じる角度と威力のあるボールが武器で、まだまだ成長途上ながらストレートの球速は150キロに迫っている。一昨年の近畿大会で当時も強力だった大阪桐蔭の打線を封じており、攻略は容易ではない。
打線は同じく一昨年の秋の公式戦でブレイクした眼鏡のスラッガー瀬が4番を張る。マークが厳しくなったこともあり、秋は本調子ではなかったが、本来の思い切りの良さを取り戻せば、近畿の決勝から神宮にかけて3試合連続ホームランを放った輝きを取り戻せそうだ。チームワークもよく、勝ち上がりながら強くなるスタイルで虎視眈々と頂点を狙う。
大崎は清峰、佐世保実を甲子園に導いた清水監督が就任し、地元の有力選手も集まって着実にチーム力を高めてきた。昨年の秋は勢いそのままに九州大会を勝ち上がって初優勝。清峰を強豪に押し上げた練習メソッドを取り込み、小柄ながらパワフルな選手が揃う。昨秋の公式戦でホームランを放った4番調を中心に、冬場の練習でさらなる打力強化を図った。
エース坂本はキレのあるストレートを武器に九州大会では準決勝まですべての試合を完投。明豊との延長戦では12回を投げ抜いたようにスタミナも十分だ。化粧で登板した長身左腕・藤本のめどが立ったのも大きい。奇しくも初戦で再戦することとなった福岡大大濠とのリターンマッチをものにして勢いを得たいところだ。
その大崎へのリベンジに燃える福岡大大濠は8強入りした2017年以来4年ぶりの出場。近年は浜地(阪神)や三浦銀二など毎年のように好投手を擁しているが、今年のエース左腕・毛利も大会屈指の好左腕だ。やや制球に苦しむことがあるものの、MAX140キロを超すストレートも多彩な変化球も球質は一級品だ。本調子ならどんな相手でも3点以内に抑えられそうだ。
対して打線は吉田、友納、山下の上位3人が2年生と若い構成となっている。九州大会では主軸の北嶋を欠いたことでやや得点力が落ちたが、選抜では間に合いそうだ。守り勝つ野球が身上だけに投手陣に先制点をもたらしたいところだ。まずは4年前に並ぶ8強まで勝ち進みたいところだ。
明豊は3年連続で全国の舞台に立つ(昨年は交流試合に出場)。長身右腕の京本と本格派左腕の太田の左右2枚看板は失点が計算でき、内外野の守備も鍛えられている。そのほかにも複数の好投手を擁しており、球数制限にも十分対応できる布陣だ。
打線は例年のようなスラッガータイプはいないものの、つながりという点では全く見劣りしない。昨秋の九州大会でも九州国際大付・山本や神村学園・泰といった好投手を攻略して見せた。近年甲子園に最も出場している大分の強豪が虎視眈々と頂点を狙う。
下関国際は春夏連続出場した2018年以来の出場。坂原監督の指導の下、着実に力を増してきている。2年生の本格派左腕・古賀からスライダーが武器の右腕・松尾につなぐ継投策で中国大会では4試合でわずか5失点に抑え込んだ。2018年のエース鶴田のような絶対的エースはいなくとも、失点は計算できる陣容だ。
打線は2年生主体の若い面々だが、下関国際らしいスキのない攻撃スタイルは健在。公式戦では1試合平均3つの盗塁をマークし、劣勢を跳ね返す攻撃も可能だ。一冬超してパワーも増しており、2度目の出場となる選抜でまずは1勝を刻みつけたい。
ダークホース
専大松戸は2015年夏に初出場を果たしたが、選抜は初めて。名将・持丸監督の指導のもと、安定したディフェンス力を武器に県内上位常連となった。エース深沢は右サイドから繰り出す130キロ台後半の速球を武器に一本立ち。2番手の右腕・岡本にも目途が立っており、失点はある程度計算できそうだ。
打線は長打力も備える左の4番吉岡が軸。俊足も兼ね備えた3拍子揃ったタイプであり、ドラフト候補にも挙がる好打者だ。打線全体のパワーアップはまだまだ必要な段階で選抜では吉岡の前に走者をためる展開を作りたい。後ろを打つ5番山口の役割も重要だ。まずは甲子園初勝利を達成したい。
東海大甲府は2016年以来5年ぶりの出場。関東大会では不利と言われた準々決勝の東海大相模戦で劇的な逆転サヨナラ勝ちで4強入りを果たした。粘り勝ちの要因となったのはエース左腕若山の好投。抜群のコントロールを武器に、相模の強力打線を封じ込め、9回1失点でまとめて見せた。
打線は1番猪ノ口、3番木下凌のホットラインで得点を重ねるのが得意なパターンだ。秋の関東大会では準々決勝、準決勝と相手投手のレベルが上がるにつれて沈黙しただけに、全国クラスの投手のストレートを攻略したい。まずは東海大相模とのリターンマッチを制して勢いに乗りたい。
柴田は春夏通じて初の甲子園。2013年に宮城大会で決勝まで進み、上林(ソフトバンク)を擁した仙台育英を苦しめるなど、年々実力を増してきている強豪校だったが、千載一遇のチャンスをものにして出場権をつかみ取った。エース谷木は昨秋は投げるたびにコントロールがよくなり、公式戦のほとんどを投げ抜いた。細身の体ながらスタミナは十分で、甲子園でも好投が期待される。
打線は仙台育英に敗れた2試合以外はすべての試合で6点以上をたたき出しており、得点力は高い。左打者がスイッチも含めると6人並んでいるが、左投手も苦にすることなく得点を重ねる。下位まで穴のない打線となっており、スラッガータイプこそいないものの、つながりの良さは脅威だ。初めての大舞台で1勝をつかみ取りたい。
鳥取城北は春夏連続出場した2012年以来の選抜。今年も投手陣の層は厚く、廣田、奥田、山内とタイプの違う複数の投手を擁する。絶対的な投手はいないが、それぞれが自分の長所を活かした投球で試合を作れる。その中でもコントロールの良い廣田が軸になりそうだ。
打線は昨年5割近い打率をマークした5番徳山を中心に強力。下位打線の方がけっかを残していたこともあり、選抜に向けて打順の入れ替えもあるか。2008年の八頭以来の鳥取勢の選抜1勝なるか。
宮崎商は実に52年ぶりの選抜出場。エース日高はコントロールよく投げ込んで打たせて取るタイプであり、昨秋はほとんどの試合で先発登板した。冬場の練習を経てさらに球威が増しているだろう。後ろには長身右腕の長友も控えており、ディフェンスに不安はない。
そして、持ち味の打線は昨秋の公式戦でほとんどの試合で8得点以上を記録。中村、建山、西原の中軸を中心に一発の魅力を秘めており、下位まで切れ目がない。エース日高が踏ん張っているうちに自慢の打線で得点を重ねられれば、初の選抜1勝が近づく。
上田西は夏は2度の出場経験があるが、選抜は初めての出場。昨年秋の公式戦ではすべての試合で2桁安打を記録し、チーム打率4割台の打線が自慢のチームだ。長打力のある笹原が一番に座り、試合開始から猛攻を仕掛けていく。下位にも飛鳥井らパワーヒッターが並び、一度火が付くと止まらなくなる。抑え込むのは容易ではない。
投手陣はエース山口が軸。球威、スピードが目立つタイプではないが、相手を見てかわす投球ができる。打線の援護が見込めるだけに最少失点で踏ん張る投球を見せたい。初めての選抜でまずは1勝を上げたい。
京都国際は近年京都大会で上位に顔を出していたが、今回近畿で2勝を挙げて初めての選抜に選ばれた。2年生主体ながら実力は高い。投手陣は左腕・森下、右腕・平野の2枚看板。森下はスライダー、平野はカーブがそれぞれ持ち味で、秋の近畿大会では神戸国際の猛追をかわし、準決勝でも敗れはしたものの、中盤まで大阪桐蔭打線を抑え込んだ。
打線でも森下と平野が中軸を形成。スタメンのうち4人が2年生の若いラインナップだが、パンチ力のある打者が並び、上位から下位まで穴がない。初めての大舞台で勢いに乗れば面白い存在となりそうだ。
聖カタリナは強豪・古豪ひしめく愛媛を創部5年で勝ち上がり、初出場を勝ち取った。守りの野球をする伝統校の多い愛媛にあって、あの上甲監督が率いた宇和島東や済美と同様に聖カタリナも打ち勝つ野球で勝負をかける。4番川口を中心に打って走れる面々がそろい、状況判断にも優れる。作戦のバリエーションも豊富で初出場とは思えない試合巧者ぶりを発揮しそうだ。
投手陣はエース櫻井が選抜のかかった四国大会準決勝の小松戦で好投。最速145キロをマークする本格派で、冬場の下半身強化でさらに力を増していそうだ。レッドソックス似の目新しいユニフォームで甲子園をかき回せるか、見ものだ。
旋風なるか
東播磨は加古川北を2度の甲子園に導いた名将・福村監督に率いられ、初の甲子園出場。福村監督仕込みの積極的な走塁を絡めた野球と安定感抜群のエース鈴木の投球で勝負をかける。昨秋の公式戦は神戸国際大付に0-2、市立和歌山に1-2と一般枠のチームに互角の展開を演じている。21世紀枠とはいえ、初戦を突破する可能性は十分ありそうだ。
具志川商は昨秋の沖縄大会を勝ち上がり、九州大会でも1勝をマーク。福岡大大濠の毛利を打ち崩せずに敗れたが、1番上原を中心に打線には力があり、下位にも高打率の打者が並んでいて切れ目がない。新川、伊波勢の2人の投手を支える守備陣に安定感が増せば、勝利は近づいてきそうだ。
具志川商と21世紀枠対決が実現した八戸西は190㎝の長身右腕・福島がチームを牽引。角度のあるボールが武器で、昨秋の東北大会では常連校の花巻東の打線も2点に抑え込んだ。チーム打率も3割5分を超えており、中軸の津嶋・廣田には一発の魅力がある。ここも一般枠とそう変わらないチーム力がありそうだ。
三島南は昨年の県大会で伝統校・静岡に勝利して自身を深めた。右サイドのエース植松は最速120キロ台ながらコントロールは抜群。サイドから繰り出すカーブも武器に最少失点で切り抜けたい。攻撃は走塁に力を入れており、少ないチャンスを確実に活かす野球が持ち味だ。初めての大舞台で1勝を狙う。
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