2021年選手権1回戦
近江vs日大東北
53% 47%
投打に近江が一歩リードしているか。粘りが持ち味の日大東北が食らいつく展開になりそうだ。
近江はエース山田、2年生岩佐の速球派右腕2人がマウンドを守る。好投手を毎年のように輩出する近江らしく、今年の2人もまとまった好右腕であり、県大会の失点はわすか1。四死球から崩れるタイプでもないため、失点はある程度計算できそうだ。守備陣も6試合で4失策と少なく、堅固なディフェンスを誇る。
対する日大東北打線は6試合中4試合で逆転劇を演じたように、しぶとさと粘り強さが持ち味だ。目立った成績の選手はいないが、決勝では光南の好左腕・星を3点ビハインドの状況から攻略し、自信をつけた。スタメンの選手が満遍なく打点をマークしており、上位から下位まで穴が少ないのも特徴だ。
一方、日大東北の投手陣は右腕・吉田と左腕・馬場央の左右2枚看板が支える。ともにストレートの最速は130キロ台だが、丁寧な投球で低めにボールを集められるのが強みだ。粘りが持ち味の日大東北らしく、1イニング1イニングを最少失点で封じていければ十分活路を見出せるだろう。
対する近江打線は不振だった主砲・新野が打率5割と復調したことが大きな安心材料だろう。1番井口は6割近い出塁率を誇っており、彼が出て新野が返すのが得点パターンだ。6試合で41四死球と選球眼のいい打者が並んでおり、そつなく得点を積み重ねられるのも強みだ。あとは県大会序盤で不振だった3番春山の復活が待たれる。
久々の登場の日大東北としては、常連校・近江を相手にまずは落ち着いた野球でアウトを1つ1つ積み重ねたい。聖光学院以外の代表校として福島県のレベルアップを見せていきたいところだ。
主なOB
近江…木谷寿己(楽天)、伊奈龍哉(ソフトバンク)、小熊凌祐(中日)、植田海(阪神)、京山将弥(DeNA)
日大東北…柳沼美広(ロッテ)、吉田康夫(阪神)
滋賀 福島
春 0勝 0勝
夏 1勝 0勝
計 1勝 0勝
対戦は2014年夏の一度。近江がエース小川の好投でリードしていたが、聖光学院が9回裏にしたたかな攻撃で逆転サヨナラ勝ちを収めた。今回はどちらが勝利を収めるか…
思い出名勝負
2014年夏3回戦
近江
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2× | 2 |
聖光学院
近江 小川
聖光学院 今泉→船迫
3回戦で強豪同士の息詰まる接戦が展開された。
近江は2年生のサイドハンド右腕・小川が大きく成長。滋賀大会をほぼ一人で投げ抜いた右腕は、武器であるシンカーを軸にした投球で左打者をむしろ得意とする投手であった。
打線も3番ショートの植田(阪神)を中心にむらがなく、初戦は鳴門の下級生中心の投手陣を打ち込んで8-0と大勝。湖国の強豪が勢いに乗って3回戦を迎えた。
対する聖光学院はこの代で県大会での連勝記録が止まってしまうという非常事態に直面していた。昨年の春夏の甲子園を経験したエース左腕・石井成の調子が上がらず、苦戦を強いられていたが、2年生右腕・今泉とサイドハンドのエース船迫が投手陣を支え、立て直しに成功した。
福島県大会決勝の日大東北戦では4点差のビハインドを9回に追いついて劇的なサヨナラ勝ちを収めると、甲子園でも神戸国際大付、佐久長聖と強打のチームを投手陣が封じ、したたかに3回戦までコマを進めてきた。
試合は序盤から近江・小川、聖光学院・今泉の2年生投手2人が好投を見せる。今泉は目立ったボールがあるわけではないが、右打者のインサイドを強気に突く投球が冴え、ヒットは許しながらも要所を踏ん張っていく。
対する近江も野手陣がエース小川を盛り立てる。3回には1アウト1塁から1番八百板(巨人)に右中間への2塁打を許すが、ライト笹治がクッションボールを素早く処理すると、ライト-セカンド-ファースト-キャッチャーと素早くつないでホームタッチアウトに仕留めた。こういう目に見えないようなプレーに常連校のスキのなさが表れていた。
こうなると、先制点の占めるウエートは大きくなってくる。そんな中で6回表に近江打線がついに今泉をとらえる。1番堀口がセンターへのヒットで出塁すると、ボークと犠打で1アウト3塁に。ここで3番植田の当たりはレフト後方を襲うが、八百板が背走しながら好捕。犠飛にはなったものの、続くピンチの芽を未然に摘み取り、近江にいきかけた流れを引き戻す。
ただ、この日も近江の右腕・小川は好調をキープ。左打者が主軸に並ぶ聖光学院打線をシンカーを有効に使って分断し、抜群のコントロールで仕留めていく。2年生ながら完成度の高い右腕と堅固な守備陣の前にしぶとい聖光学院打線もなかなかつながらなかった。
お互いに決め手を欠く展開となったが、聖光学院は9回表の近江の攻撃をエース船迫が3者凡退に切って取る。サイドハンドからのこのリズムの良い投球が味方の攻撃を乗せたことは間違いないだろう。
9回裏、あとアウト3つで8強入りとなるエース小川。だが、3番柳沼にシンカーをとらえられて出塁を許すと、続く4番安田のセーフティバントが内野安打となって無死1,2塁とピンチが広がる。5番伊三木の犠打で1アウト2,3塁となりおぜん立ては整っていく。
ここで、聖光学院の細かい野球が最後に活きた。代打・海老沼のセカンドゴロで3塁ランナーは守備体型を見て迷わずホームへ。セカンド仲矢が慌てて送球するも間に合わずに同点となると、続く1アウト1,3塁でファーストの守備位置を7番石垣は見逃さなかった。ファースト後方に守っているところに絶妙なセーフティスクイズを決めて勝負あり。
近江の動揺を隠しきれない守備陣をしり目に着実にできることを積み重ねた聖光学院が同校史上初となる1大会3勝を挙げて、8強入りを決めた。
聖光学院は続く準々決勝は日本文理の強打の前に力負けしたが、堂々の8強入りを達成。斎内(ヤクルト)、園部(オリックス)などスター選手のいた世代と比較して目立った選手はいなかったが、投攻守走にしぶとさをたくましさを増したチームが史上初となる1大会3勝を挙げ、聖光学院の歴史を塗り替えたのだった。
一方、近江にとっては9回裏の守備体型が何とも悔やまれる形となった。エース小川をはじめとして2年生が多いチームだったがゆえに、どうしても浮足立ってしまったか。2018年の選手権でも金足農に逆転サヨナラの2ランスクイズを決められており、「対東北勢 9回裏」が鬼門となっているようだ。
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