2022年選手権決勝 仙台育英vs下関国際(14日目第1試合)

2022年

大会14日目第1試合

下関国際

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 0 0 1 0 0 0 1
0 0 0 1 2 0 5 0 × 8

仙台育英

 

下関国際    古賀→仲井

仙台育英    斎藤蓉→高橋

2022年の栄えあるファイナリストとなった両校の一戦は、仙台育英打線が下関国際の左右の2枚看板を攻略した。先発左腕・斎藤蓉の好投で下関国際打線を抑えきり、投打に盤石の内容で下関国際を圧倒。みちのくのライオンがついに念願の「白河の関越え」を果たし、104回目の夏でついに優勝旗を東北の地に持ち帰った。

試合

仙台育英は準々決勝以来の先発となる左腕・斎藤蓉、下関国際は5試合連続の先発となる左腕・古賀がマウンドに上がった。

1回表、斎藤蓉は立ち上がり、下関国際のうるさい1,2番、赤瀬松本を内野ゴロで打ち取る。緊張感のあるマウンドだが、武器であるスライダーをコーナーに決め、落ち着いた様子である。3番仲井に死球を与えるも、4番賀谷をそのスライダーで空振り三振に切って取り、まずは初回を無失点で抑える。

その裏、下関国際の先発・古賀も当たっている1番本をセカンドゴロに打ち取ると、2番山田はインサイドのクロスファイヤーで見逃し三振を奪う。立ち上がりの制球が不安視されていた古賀だが、昨日の休養を経て、しっかり修正ができているようだ。3番も得意のスライダーで内野フライに打ち取り、上々の滑り出しを見せた。

下関国際は2回表に7番がチーム初ヒットを放つが、斎藤蓉は8番古賀を三振で打ち取り、全く危なげがない。一方、下関国際の古賀もこの日はすべてのボールがコーナー、低めに決まり、カウントが悪くなっても簡単に崩れない。仙台育英打線に対し、序盤はスライダーを軸に完ぺきな投球を展開する。

こうなると、先制点の占めるウェートはより大きくなってくるが、その兆しが全く見えない。仙台育英は3回裏に、9番尾形がスライダーをようやくとらえて初ヒットを放つが、1番橋本の強烈な打球をサードが体で止めてがっちりさばく。両ディフェンス陣が先発投手を支え、3回まで0-0で試合は中盤に突入する。

4回表、下関国際は斎藤蓉のカウント球に狙いを絞ったか、中軸の3人がいずれも早いカウントから打ち、4球で3者凡退。3回までの攻撃とは一転した内容であり、攻撃の指示が出ていることは明らかである。しかし、この指示の徹底ぶりが下関国際の強さの表れである。

すると、仙台育英もまた4回裏、2番山田が積極的に打って出る。ストライクゾーンに入ったボールにはすべて手を出していくと、初回に三振に取られたインサイドの速球をとらえてレフト線にはじき返す。無死2塁から3番の犠打で1アウト3塁のチャンスを迎えると、4番齋藤陽も初球からスライダーを打って出る。これが1,2塁間を鋭く破る当たりとなり、仙台育英が待望の先制点を奪う。

下関国際バッテリーの投球の軸であるスライダーを狙い打つ、仙台育英打線。しかし、ここで坂原監督が一度タイムを取ると、続く6番遠藤に対して配球が変わる。初球に緩いスローカーブを投じると、スライダーはボールゾーンに外し、最後は直球勝負。すぐに相手打線の狙いをかわしに行く。攻守ともお互いに対応が早く、決勝戦らしいハイレベルな攻防になる。

直後の5回表、下関国際は先頭の6番奥山が四球で出塁。続く7番には強攻策を命じると、ストレートに差し込まれながらも打球はセンター前のテキサスヒットとなって無死1,2塁の好機を迎える。しかし、8番古賀の犠打は斎藤蓉の正面を突いて失敗に終わると、続く9番橋爪を狙い通りセカンドゴロ併殺に切って取る。先制した直後の守りで、仙台育英内野陣が安定したディフェンス力を見せる。

リードを保った仙台育英は5回裏、1アウトから8番齋藤蓉がまたスライダーをとらえてヒットで出塁。暴投とファーストゴロで3塁へ進むと、1番橋本はカウント1-0からのスライダーをセンターに返して1点を追加する。初球の真っすぐに全く反応しなかったところから見ても、明らかにスライダー狙いだったが、下関国際バッテリーはスライダーでカウントを取りにいってしまった。さらに2番山田もスライダーをうまく合わせてセンター前に落とし、3点目。一気に試合のペースを握る。

続く3番に死球をあたえたところで、ついに坂原監督仲井への継投を指示。この日の古賀の調子はかなりよかったが、それだけに決め球のスライダー狙いでしっかり崩した仙台育英打線の実力が際立った。仲井は4番齋藤陽に粘られながらも高めのスライダーで空振り三振を奪い、なんとか3点差で踏みとどまる。

しかし、グラウンド整備を終えた6回は野球の流れがよく変わるイニングだ。先頭の1番赤瀬が珍しく高めに入ったボールをしっかりとらえると、打球は右中間を深々と破る当たりになって赤瀬は一気に3塁を奪う。2番松本は三振に倒れるも、3番仲井のファーストゴロの間に赤瀬が生還。仙台育英も前進守備は引かずにアウト優先であり、双方にとって狙い通りの結果で、スコアは3-1となる。

リリーフした仲井は準決勝でのロングリリーフの影響も少なく、この日も速球・スライダーともに切れ味抜群。140キロ台の速球に速遅2種類のスライダーを織り交ぜ、仙台育英打線の勢いを止める。今大会、幾度もチームを救ってきたキーマンが決勝の舞台でも持ち味を発揮する。

1点を失った仙台育英・斎藤蓉だが、7回は再び3者凡退で無失点投球。ここまでファウルで粘って相手を崩してきた下関国際打線であったが、中盤以降の早打ちもあり、この日は斎藤蓉の球数は7回までで100球であった。積極的にバットを出してくる相手に対し、ストライクとボールの境界ギリギリのところに投げ続けて、凡打に打ち取る投球は見事であった。

この流れを確実なものにしたい仙台育英は7回裏、先頭の9番尾形が死球で出塁すると、1番橋本には強攻策を選択。カウント1-1からのツーシームが甘く入るところをしっかり打ち返すと、打球は右中間を完全に切り裂く打球となって仙台育英が大きな1点を追加する。さらに四死球でランナーをためて満塁となると、1アウト後に5番岩崎が高めに浮いた速球をレフトスタンドに打ち込み、決定的な4点が仙台育英に入った。

仙台育英は8回表から2番手で2年生右腕・高橋が登板。下関国際打線の粘りに合いながらも、自慢の速球で押していき、3者凡退に打ち取る。8回裏には疲れの見える仲井をさらに攻め立てるが、ここは下関国際の守備陣が仲井を盛り立て、無死1,3塁のピンチを無失点でしのいだ。

仙台育英は最終回も右腕・高橋がマウンドへ。下関国際の先頭はこれまで数々の得点機に絡んできた2番松本だったが、サード頭上を襲ったあたりは途中出場の洞口のグラブに収まって1アウト。3番仲井、4番賀谷の連打でピンチを招くも、5番水安をセンターフライに打ち取り、ついに2アウトまでこぎつける。最後は代打・染川をサードゴロに打ち取り、殊勲のファースト岩崎のグラブにボールが収まって試合終了。

高校野球が始まってから107年。ついに東北の地に優勝旗が舞い降りたのだった。

まとめ

仙台育英は投打に厚い選手層を誇り、須江監督が標榜する機動力を絡めた野球も光っていたが、この試合では下関国際の2枚看板を打ち崩す「打力」がものを言った。この日の古賀の調子はこれまでと比較してもかなりいい部類に入ったが、その決め球となるスライダーを打者2巡目以降に確実に攻略。狙ったボールを仕留めきる打撃の精度の高さは素晴らしかった。

また、先発・斎藤蓉の好投も見逃せないだろう。しつこい打撃を誇る下関国際打線に対し、際どいコースに投げ切る制球力を武器に、7回を100球で3安打1失点。仙台育英打線が安心して攻撃に集中できたのも、斎藤蓉の好投があってこそだった。

これまで12度決勝の舞台で跳ね返されてきた東北勢の夢。数多くの関係者が力を注ぎ、多くの思いを背負っての戦いであったが、投攻守走全てに完成された内容でつかんだ勝利となった。この優勝は今年の仙台育英だけのものではなく、東北全体でつかんだ悲願のタイトルとなった。呪縛から解き放たれ、来年以降東北地区の優勝が続くのではないか、今そんな思いに駆られている。

 

一方、決勝では大差がついて敗れてしまったが、今大会の下関国際の戦いが決して色あせるものではなかった。惜しまれるとすれば、先発・古賀のスライダーにやや執着し、攻略を許してしまったことだったが、それも仙台育英打線が上回った結果だっただろう。

あまり目立っていなかったが、平成以降、中国地区のチームはなかなか夏の決勝まで勝ち進めていなかった。野球留学が進み、いい選手が流出する流れもあり、苦しい戦いが続いていた。しかし、熱血の坂原監督が生活面も含めて厳しい指導を行い、それに応えた選手たちがこの夏、山口勢として久々の決勝進出を達成した。それも大阪桐蔭・近江という選抜ファイナリストの2校破っての準優勝であり、非常に内容・価値の高い銀メダルになったのは間違いない。

来年以降、下関国際に対するマークが厳しくなることは容易に想像されるが、今年のような野球を続けていれば、また近い将来かならず甲子園に戻ってくるだろう。その下関国際を倒そうと周りのライバルが切磋琢磨することで再びレベルアップにつながっていく。今年の下関国際の躍進は、そんないい「循環」をもたらすという意味でも大きな意味と持つものであった。

2022年選手権決勝予想 下関国際vs仙台育英 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

【2022甲子園決勝】試合を決める満塁ホームランの場面 仙台育英vs下関国際 – YouTube

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