2022年選手権準々決勝 近江vs高松商(12日目第2試合)

2022年

大会12日目第2試合

高松商

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 2 0 1 0 3 0 0 6
1 1 1 0 1 1 2 0 × 7

近江

 

高松商   大室→橋崎→渡辺和

近江    山田→星野

大会注目の右腕と大会注目のスラッガーが激突した第2試合は、取っては取られの壮絶なシーソーゲームとなった。近江がエース山田の危機をチーム一丸の野球で救い、高松商との打撃戦を制して、4強へと勝ち進んだ。

試合

近江の先発は順当にエース山田、一方、高松商の先発はエース渡辺和ではなく、初戦でリリーフ登板をしていた左腕・大室であった。

1回表、いきなり「大会No.1スラッガー」vs「大会No.1右腕」の対決となる。山田浅野に対し、真っ向勝負をするが、カウント2-3からのスライダーを浅野がうまく拾ってレフト前にはじき返す。さらに深い外野守備を見て、浅野は抜け目なく2塁を陥れる。犠打で1アウト3塁となるが、ピンチを背負うとギアが一段も二段も上がるのが山田。3番渡辺升を三振に取ると、4番山田もサードゴロに仕留めて無失点で立ち上がる。

その裏、近江は先頭の1番主将・津田が四球で出塁。内野ゴロで二進すると、2アウト後に4番山田がスライダーをものの見事にとらえてレフトへタイムリーを放つ。さらに、2回裏には連続四球と犠打で得た1アウト2,3塁のチャンスに1番津田がきっちり犠飛を打ち上げて2点目を挙げる。

しかし、高松商にはこの男がいる。四球で出た8番大坪を犠打で送れなかったが、浅野が打席に立つと、そんな影響は吹き飛ぶ。ストレートで真っ向勝負に出た山田だったが、序盤はまだ直球のコントロールはいまいち。やや内寄りに入ったのが、浅野相手では致命傷だった。凄まじいスイングでとらえた打球はあっという間にセンターバックスクリーンに飛び込み、高松商が一瞬で同点に追いつく。

追いつかれた近江はその裏、2アウトから5番石浦・6番川元・7番岡崎とじっくり選球して満塁のチャンスを迎える。ここで女房役の8番大橋がインサイドの直球を引っ張ってレフトへタイムリーを放つ。しかし、2塁ランナーはレフト井桜の好返球でタッチアウト。3回まで毎イニング複数のランナーを出しながら、もう一つ近江は押し切れない。

すると、5回表、高松商は先頭の7番大麻が四球で出塁。併殺がなければ1番浅野に回ることとなる。ほぼ2イニングに1回はこの打者を相手にするのは、バッテリーにとってはこれ以上ないプレッシャーだろう。

後続のバントを失敗させて2アウトとなるが、浅野に対してはスライダーもストレートも打たれている。1打席で1球種を奪ってくる怪物バッターに対し、ツーシームとフォークで攻めるが、そのツーシームをレフト前に運ばれ、これで3打数3安打。続くラッキーボーイの2番井櫻のたたきつけた打球がバッテリーの間で高く弾んで内野安打となり、またも高松商が同点に追いつく。

この嫌な流れを変えたのはまたしても、女房役の岡崎。5回裏、5番石浦、7番岡崎のヒットでランナーを2人ため、大室をじわじわと攻め立てる。攻め切れていない感はあったが、近江の各打者の選球眼の前に大室の球数はとっくに100球を超えていた。先ほどストレートをタイムリーした大橋はスライダーを狙い打ち、センターへのタイムリーで3たび勝ち越しに成功する。

大室をあきらめた長尾監督は6回表に2番手で右腕・橋崎をマウンドに送る。しかし、百戦錬磨の近江ナインに対するのは荷が重かったか。四死球でランナーをためると、4番山田にストレートをはじき返されてタイムリーとなり、点差が2点に広がる。浅野に打たれたうっ憤を晴らさんとばかりにこの日はバッテリーでここまで4打点を挙げる。ここでようやく長尾監督はエースの渡辺和を登板させ、四球は与えたものの、後続を三振に切って取る。

再びビハインドとなった高松商。打順は7番からで、5回と同じシチュエーションとなる。しかし、近江バッテリーは浅野への意識が過剰になったか、8番大坪に四球を与える。続く9番ながら好調の横井にはストレートをセンターに打ち返されると、ランナー1,2塁にも関わらず近江は申告敬遠を選択。1人の打者の存在がここまで相手バッテリーを追い込む光景はなかなか見られないだろう。

だが、高松商の上位打線にも意地がある。2番井櫻がショートを強襲する内野安打で1点差に迫ると、3番渡辺升はライト線に落ちるタイムリーで同点に追いつく。ストレートを続ける近江バッテリーだが、高松商打線はファウルで粘り、ことごとく勝負球をとらえる。4番山田は高めのスライダーで三振に取るが、5番久保はフルカウントからの内角速球を見送り、ついに高松商が逆転する。

序盤からペースを握りながらひっくり返された近江。しかし、全国制覇を本気で狙うナインはここでも素晴らしい反発力を見せる。先頭の8番大橋がこの日3本目のヒットとなる内野安打で出塁すると、送って1アウト2塁から1番津田が執念でセンターに運んで同点。スクイズ失敗で2アウト3塁となるが、3番中瀬がレフト前に流し打ちのタイムリーを放って再度逆転に成功する。

再びリードを得た近江だが、山田の様子がおかしい。足をつったのか、明らかにボールのスピードが落ちる。7番大麻、9番横井に対してストライクがなかなか入らず、2四球でランナーをためて1番浅野に回してしまう。すると、ここで多賀監督がついに山田をあきらめて左腕・星野をマウンドに。こういう状況のために経験を積んできた左腕は浅野をレフトフライで打ち取ると、2番井櫻に内野安打は許したものの、3番渡辺升を打ち取って事なきを得る。

高松商は8回裏、エース渡辺和が近江の攻撃を3人で退けて攻撃をつなげたが、近江の左腕・星野は過去2試合と比較しても、この試合が一番いい出来であった。伸びのある速球にチェンジアップを混ぜ、四球を二つ出したものの、最後は8番大坪をセカンドゴロに打ち取って試合終了。近江が壮絶な打撃戦を制し、3季連続となるベスト4進出を決めた。

まとめ

近江は山田が今大会一番の苦しい投球となった。1番浅野にはすべての球種を攻略され、高松商打線の厳しい攻撃の前にかつてないほど追い込まれたと言えるだろう。しかし、最後は打線の粘り強い援護と2番手の左腕・星野の好投で逃げ切り勝ち。結果的に、チーム力が格段に上がったことを証明する試合となった。

エース山田の疲労や体調に不安は残るものの、強敵を退けての勝利はまたチーム力を高めていくだろう。滋賀県勢初の全国制覇に向け、夢は続く。

一方、高松商は敗れはしたが、近江・山田をほぼKOしたと言っていい内容だっただろう。特に山田から3打数3安打でスライダー、速球、フォークと全てとらえた浅野は個人の勝負では山田に完勝したと言える。また、その浅野が敬遠された後に上位打線で逆転に成功した攻撃は、こちらもチーム力の高さを示すものであった。

2002年夏の尽誠学園のベスト8を最後に長い間、全国大会で結果が出せなかった香川県勢だったが、2016年の高松商の選抜準優勝を契機に見事に立ち直りを見せた。長尾監督の粘り強い強化が実った結果である。公立校ながら甲子園を席巻した打撃力は圧巻の一言であったし、今後の躍進を確信させる戦いであった。

2022年選手権準々決勝予想 近江vs高松商 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

1番浅野vsエース山田 [2022夏 高松商vs近江] – YouTube

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