2022年選手権2回戦 九州国際大付vs明徳義塾(6日目第3試合)

2022年

大会6日目第3試合

明徳義塾

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 1 0 0 0 0 0 0 1
0 0 1 1 0 0 0 0 × 2

九州国際大付

 

明徳義塾    吉村

九州国際大付  香西

九州国際大付・香西と明徳義塾・吉村。全国屈指の好左腕同士の投げ合いは、今大会最高レベルの投手戦となった。中盤に逆転した九州国際大付がエース香西の力投でリードを守り切り、2015年以来7年ぶりの夏の甲子園1勝を手にした。

試合

九州国際大付は福岡大会では右腕・池田が中心となっていたが、甲子園では香西が先発。春以降のケガや福岡大会中の体調不良で苦しんでいたが、ここにきて調子を取り戻してきた。一方、明徳義塾は昨夏の準々決勝の智辯学園戦で逆転サヨナラ負けを喫した吉村が登板。悔しさをばねに変則トルネード左腕が聖地に戻ってきた。

立ち上がり、香西の投球がやや心配されたが、持ち味のコントロール・キレともに抜群。選抜で広陵の強力打線を翻弄した時の投球が戻ってきており、左打者の多い明徳打線に対して自分のスイングをさせない。内外の投げ分け、緩急も混ぜて、しぶとい明徳の打線を香西の世界に引きずりこむ。

一方、打力では明徳より頭一つ上回る九州国際大付だが、吉村の横の角度のある投球に苦しむ。プレートの1塁側いっぱいを踏んでサイドから繰り出されるボールは練習で体感することは難しい。右打者にとっては強烈な角度でボールが入ってくるし、左打者にとっては背中からボールがでてくるような感覚があるだろう。福岡大会で長打を連発した九国打線をもってしても序盤は攻略に苦しむ。

序盤から1点勝負の様相を呈してきたこの試合。先手を取ったのは試合巧者の明徳であった。3回表、先頭の8番本田が四球で出塁。制球力抜群の香西としては珍しい場面だ。試合巧者の明徳は次打者が初球からバントで送ってリズムを作ると、1番井上が2球目の高めに浮いた変化球をセンターに運ぶ。センターの黒田が後逸する間に2塁ランナーは悠々生還し、明徳が1点を挙げる。追い込まれると選択肢の多い香西だけに、井上の速いカウントからの好球必打が光った。

しかし、点が入ると相手にも入りやすいのが野球というスポーツだ。吉村も先頭を死球で出すと、九国も犠打で送って1アウト2塁。同じような形でチャンスを作ると、2アウト後に1番小田原が初球の甘く入ったストレートをライト線に打ち返し、すぐさま同点に追いつく。吉村の角度のあるボールに対して、しっかり内からバットをだしての右打ち。左の好打者が並ぶ九国にあって、左腕攻略のキーマンとなる右打者が結果を残した。

明徳義塾は4回表に2アウトからエース吉村がヒットを放つも、得点はならず。塁上にいたことで、すぐマウンドに登った4回裏に乱れる。

この回、先頭の2番中上が高めに浮いた速球を流し打って左中間を破る。九国らしい長打でチャンスメークすると、続く好打者・黒田はセーフティバントを敢行。これを処理した吉村が悪送球してしまい、中上が一気にホームを駆け抜ける。吉村に落ち着く間を与えない、九国のスピーディーな攻撃であった。

リードをもらった香西はリズムに乗る。THE軟投派左腕と呼べる技巧派は、明徳の早打ちの傾向を感じ取ったか、打たせる投球にモデルチェンジ。厳しいコースをついた投球で追い込み、手を出したくなるようなボールを打たせて明徳の打者を料理する。また、球速は決して早くないが、キレのある速球を活かした緩急の世界に明徳の打者を誘い込み、淡々と打者を打ち取る。

反撃したい明徳打線は、6回表に2アウトから4番寺地、5番池辺が連打。高知大会でビッグイニングを作った打線の反撃に期待がかかる。しかし、ここで6番吉村とのエース対決は初球の際どいボールを打たせた香西の勝ち。早いカウントから打ってくることを予期し、浅いカウントではより厳しいコースでの攻めで打たせて取る。

一方、2点を失った吉村だが、こちらも見事なピッチングで応戦する。特に九国の注目の2年生スラッガー佐倉に対しては、アウトコースの速球を武器に、見逃し三振2つと併殺打1つと翻弄。4打数無安打と全く仕事をさせなかった。全国屈指の強力打線に5安打しか許さなかった投球は、さすが明徳のエースであった。

だが、この日は序盤の失点があまりに重くのしかかってしまった。明徳打線は回を追うごとに香西の攻略の糸口が見えなくなっていったようであった。7回、8回と四球で出たランナーを犠打で送って一打同点の場面を作るが、決定打の出そうな雰囲気がない。内外、高低、緩急のすべてを駆使し、打者を翻弄した香西がこの日は一枚も二枚も上であった。

結局、香西も明徳打線に5安打しか許さず、1失点で完投。しぶとい打者の並ぶ明徳打線をものの見事に封じ込め、選抜で快投を見せた姿が鮮やかに蘇る投球であった。明徳の最終回の攻撃も危なげなく抑えた香西が九国に春夏連続となる勝利をもたらし、ベスト16進出を果たした。

まとめ

九州国際大付は左打者主体の打線が明徳のエース吉村に苦労するのはある程度見えていたかもしれなかった。それだけに、春以降苦しんでいたエース香西の復活は何よりの安心材料だっただろう。スピードはなくとも、タイミングが重要視される野球というスポーツでは、抑える術が十分あることを体現して見せた。

佐倉ら主力打者に快音が出なかったことは今後の課題ではあるが、まずは難敵を下して初戦を突破。次戦、スラッガー浅野を擁する高松商との対決に向けて、打者陣は腕を撫していることだろう。

一方、明徳義塾は高知大会決勝で乱れたエース吉村がこの日は素晴らしいピッチングを展開。昨年からの成長を感じさせる内容で、この日は敗戦後も昨年のような涙はなかった。

惜しむらくは、打線が香西の術中にはまってしまったことだが、このタイプの好投手を攻略するのは見た目以上に難しい。ミートのうまい明徳の打者をもってしても、致し方ない部分があった。負けはしたものの、投打ともにやれることはやったという充足感も漂わせながら、強豪が甲子園を後にした。

【第104回選手権】明徳義塾 vs 九州国際大付 ハイライト – YouTube

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