大会12日目第3試合

神村学園

おかやま山陽

神村学園　　　　　松永→黒木

おかやま山陽　　　西野→三宅→三浦→井川

両チームの投手陣の好投で締まった投手戦となった第3試合は、終盤に神村学園打線が爆発！松永→黒木の継投も決まり、6-0と快勝で初の4強進出を決めた。

試合

おかやま山陽は西野、神村学園は松永とともに3回戦と同じ投手を先発に起用。ここまで3試合連続2桁得点と強打を誇る神村学園打線を西野がどう抑えるかに注目が集まった。左打者に対し、インサイドをスライダーで突くことができるのを見越しての起用だった。

1回表、神村の1番は切り込み隊長の今岡歩。アウトコース中心の配球で追い込み、うまく追いこんだが、セカンドゴロを処理した藤井の送球がそれてしまう。犠打で2塁へ進み、打席には強力な中軸が入る。しかし、ここで西野は武器であるスライダーを徹底して低めに集め、まずは3番秋元を見逃しの三振。さらに4番の正林もうまくスライダーで打たせ、大事な初回の守りを無失点で切り抜ける。

これに対し、神村学園の松永は、右スリークオーターで、こちらも西野と同じ技巧派タイプ。3回戦ではなかなか右打者のインサイドを突き切れずに、北海・熊谷に痛打を浴びた。この試合でも、配球がややアウトコースに傾向があり、当然おかやま山陽打線はそこを狙ってくる。しかし、松永もまた決め球のスライダーが徹底して低めに決まる。おかやま山陽の打者陣も、外に張っている感はあるが、コース・高さがいいため、どうしても打たされる打撃になって、3番渡邉が併殺に終わり、初回は無得点に終わる。

先に得点のチャンスをつかんだのは神村学園。2回表、当たっている2年生の左打者コンビ、5番岩下・6番上川床がいずれも西野の決め球のスライダーをとらえ、連打で無死1，3塁のチャンスを作る。ともにボールをしっかり引き付け、センターから逆方向へ痛打した打撃。神村の強打の所以を感じさせる。おかやま山陽としては1点は仕方ない布陣を敷いて守る。

しかし、ここで西野が踏ん張りを見せる。左打者のインサイドへのスライダーを使い始め、8番松尾龍をファーストゴロに仕留め、3塁ランナーを挟殺プレーで挟んでまずは1アウト。この間に、1塁ランナーの3塁への進塁も許さず、守備陣も西野をバックアップする。さらに、8番品川も得意のスライダーで三振に仕留めて2アウト目を奪うが、9番松永には四球を与えて満塁に。ここで、強打の1番今岡歩に対し、西野は臆することなく勝負を挑み、スライダーを打たせてセカンドゴロ。1点は仕方ない場面で、余裕のある守備体系を見せ、結果的に1点も与えることなく守り切った。

この守りで乗っていきたいおかやま山陽打線だったが、神村学園・松永も今大会一番と言っていい出来を見せる。試合前、おかやま山陽の選手たちは「7点は取れる」と思っており、実際アウトコースに集められるボールを踏み込んでどんどん打っていく。しかし、神村学園の守備陣が広い守備範囲で難しい打球をことごとくさばいていく。打たせて取るタイプの松永としては理想的な流れ。また、小田監督は2回で捕手を品川から松尾大に変更。厳しい采配を見せ、守りに緊張感をもたらす。

一方、2回の大ピンチを抑えた西野は、3回以降コントロールが冴えわたる。アウトコース低めに伸びのある速球、決め球の変化球がバッターから遠い位置に決まり、強打の神村学園を今大会初めて沈黙させる。また、3回表の守備ではセカンド藤井が2つ目の失策をしたところで、堤監督が岡本にスイッチ。こちらも厳しい采配だが、やはりこのレベルに上がってくると、相手に一つの隙も見せることはできないのだろう。

試合は、0-0のまま5回を終了。おかやま山陽としては、西野が想像以上の好投で神村の強力打線を抑えていただけに、前半に先制点が欲しかったところだが、神村学園・松永をとらえることができない。アウトコースに目付をして打っていくのだが、痛烈な打球を神村野手陣がことごとく好捕。後ろには、好左腕・黒木が控えるだけに、松永がマウンドにいる間に点が欲しかったのだが、神村のチーム全体のディフェンス力が上回った形だ。

同点のまま、試合は後半戦へ。先にチャンスをつかんだのはおかやま山陽だった。6回裏、先頭の9番山崎がアウトコースの変化球をうまく流し打つと、ライトの一瞬のファンブルを逃さず、一気に2塁を奪う。ここで堤監督は1番田内に当然、犠打を命じるが、これがうまく決まらず。カウント1-1から強攻策に転じるも、ショートゴロで2塁ランナーが挟殺されてチャンスを広げきれない。その後、２アウトになって3番渡邊を四球で歩かせたところで、小田監督はついに松永から左腕・黒木にスイッチ。この継投がはまって、4番土井をきっちり打ち取り、おかやま山陽の攻撃を無失点で封じる。

代わった黒木は、後半からの登場ということもあり、余力十分の投球でおかやま山陽打線を圧倒する。伸びのある速球と縦に大きく割れるスライダーで、まったく相手を寄せ付けない。バックも堅い守りで黒木を盛り立て、大事な7回を「0」で切り抜けた。

こうなると、流れは神村学園へ。堤監督も流れの機微を察してか、8回から2番手で右腕・三宅をマウンドへ送ったが、神村打線が一気につながっていく。先頭の1番今岡歩がセカンドゴロエラーで出塁して無死2塁となると、2番増田の犠打は野選を誘って、無死1，3塁に。処理した三宅のフィールディングは決して悪くなかったが、間一髪セーフとなった。

ここで、三宅も踏ん張りを見せ、3番秋元は得意のスライダーで三振に切って取るが、神村の打線の軸はやはりこの男であった。2年生ながらどっかり主軸を務める4番正林。初球、やや真ん中よりに入った速球をとらえると、打球は1，2塁間を真っ二つに破る先制タイムリー！ついに均衡を破ると、5番岩下も1，2塁間を破る連続タイムリーを放って、2点目を奪取する。やはり、この打順の巡りは神村学園が最も自信を持つところだ。

おかやま山陽としては、この点差でデッドラインだっただろう。しかし、6番上川床は四球で満塁となると、2アウトから8番松尾大が真ん中よりのスライダーをとらえた打球は、レフト線を破る3点タイムリー2塁打に！点差を一気に広げ、事実上この一打で勝負は決した。

神村学園は、9回表にも代打・入木田のタイムリーで1点を追加する。大量リードに守られた黒木は最終回、ヒットを許しながらも落ち着きは失わず、最後は4番土井をサードゴロ併殺打に打ち取って試合終了。投打がかみ合った神村学園がおかやま山陽を寄り切り、6-0と完勝で西日本勢唯一の4強入りを決めたのだった。

まとめ

神村学園のこの日の勝因は右腕・松永の好投だろう。アウトコースに偏りがちな投球ではあったが、丁寧にコーナーのギリギリをスライダーで攻め、打たせて取る投球で淡々と打ち取っていった。また、バックも軽快な守備でおかやま山陽打線の強い打球をさばき、守りからリズムを作れたことが大きかった。2番手の黒木はもはや難攻不落という言葉がぴったり当てはまるスライダーを武器に危なげなく後を引き継いで0封。今大会初の完封リレーで打線の援護を待った。

その打線は、今大会初めて序盤に得点を奪えなかったが、つながった時の集中力はさすが。特に4番正林から5番岩下、6番上川床と繋がる2年生トリオの破壊力は本当に下級生なのかと思わせるほどのインパクトがある。1番今岡歩を筆頭に「攻めの姿勢を失わない」ことが、この代の神村学園の強みであった初出場での選抜準優勝が鮮烈だった同校だが、その後は1大会2勝の壁をなかなか超えられない時期が続いた。しかし、これまでの甲子園で得た教訓も生かせたのか、この大会で一気にブレイクスルーを果たした。

一方、おかやま山陽は最後に投手陣が力尽きたが、終盤までは先発・西野が見事な投球で神村学園を封じて見せた。あわよくば、松永が投げている間に先制点を挙げたいところだったが、そこは相手のディフェンス力をたたえるしかないだろう。それでも、日大山形・菅井、大垣日大・山田、そして、日大三・安田と好右腕を次々に攻略した攻撃は見事の一言である。堤監督のもと、新境地を切り開いたチームが、中国地区の新たな強豪に名乗りを上げる日は遠くなさそうだ。

【2023夏の甲子園✨】強打の神村学園❗️均衡を破り一気にビッグイニング❗️【高校野球】【はるきチャンネル】【第105回全国高校野球選手権大会】 – YouTube