大会8日目第4試合

大垣日大

おかやま山陽

大垣日大　　　　　山田

おかやま山陽　　　三宅→西野→井川

前の試合の中断の影響で開始からナイトゲームとなった一戦は、両チームの良さが随所に表れる好試合で、タイブレークに突入！最後は、延長10回裏、おかやま山陽が大垣日大バッテリーの乱れに付け込み、サヨナラ勝ちで3回戦進出を決めた。

試合

大垣日大は、1回戦に続いて絶対的エースの山田が先発。一方、おかやま山陽は初戦でスライダーを武器に2番手で好投を見せた右腕・三宅をスターターに持ってきた。

大垣日大は、初戦で機動力を武器に前年4強の近江を翻弄し、得点力が高い。立ち上がり、そのしぶとい打線に対して、三宅はアウトコース中心で丁寧にボールを集めていく。2番権田にはセンターへのヒットを許したものの、強打の3番米津をスライダーで詰まらせて投手ゴロ併殺に切って取る。

その裏、大会でも随一の好右腕・山田に対し、初戦で日大山形の本格派右腕・菅井を攻略したおかやま山陽打線が襲い掛かる。1アウトから2番湯浅が四球を選ぶと、3番渡邉の打席でエンドランを敢行。これに渡邉が応え、ストライクを取りに来たスライダーをきれいにとらえてセンターへ！湯浅が一気に3塁を陥れる。

1アウト1，3塁となんでもできる場面。ここで4番土井はスライダーで三振に倒れるが、その間に渡邉は盗塁を決める。ここで打席には春以降、バッティングが急成長した2年生の入江。大垣日大ベンチがタイムで間を取ってきたが、その間も集中力は保っていた。再開後の初球をスライダーが真ん中高めに浮いたところを逃さず叩いた打球は三遊間を真っ二つ。2人のランナーが次々ホームを駆け抜け、好投手の立ち上がりをものの見事にとらえた。

しかし、試合巧者の大垣日大もすぐさま反撃に出る。こちらも初戦のデータをもとに、ある程度三宅が来ることは想定していたか。

1アウトから打撃もいい5番山田がスライダーをうまくとらえて右方向へヒットを放つ。ここで左打者の6番日比野は、こちらは入ってくるスライダーを引っ張ってライト深い位置へのヒット。山田が3塁を奪い、初回のおかやま山陽と同様に1アウト1，3塁のチャンスを作る。名将・阪口監督としてはタクトを存分に振るえる場面。カウント0-2で一度スクイズを失敗し、そこから追い込まれたにも関わらず、スリーバントスクイズを敢行！これがまんまと決まって、取られた直後にすぐ1点差に詰め寄る。

ここから試合は両投手の好投で投手戦の様相を呈する。初回を終えて落ち着きを取り戻したエース山田は、持ち味の伸びのある速球でおかやま山陽打線から空振りを奪うようになる。4回、5回には2アウトからヒットを許すが、ランナーを背負ってからもう一つギアを上げ、得点を与えない。

対するおかやま山陽・三宅はスライダー狙いの相手打者に対し、チェンジアップを有効に活用。内外と高低の攻めをうまく組み合わせ、狙いをかわしていく。5回には味方守備陣のミスからピンチを招くも、後続を強気のインコース攻めで断ち、5回を1失点とスターターとしての役割を果たす。

試合はおかやま山陽が2-1とリードした状況で後半戦へ。ここでおかやま山陽の堤監督が先手を打つ。2番手で今大会初登板の右腕・西野をマウンドへ送る。テンポの良さと変化球の切れが武器の技巧派右腕。先発の三宅とは少しタイプが異なる投手である。

6回表、ぽんぽんと2アウトを取るが、ここから4番高橋、5番山田がいずれもスライダーをとらえて連打を放つ。バッテリーにして中軸、大垣日大の「肝」である二人が仕事を果たす。流れが変わりやすい6回という重要なイニング。西野の役割は非常に大きかったが、ここで6番日比野を得意の低めのスライダーでショートゴロに打ち取り、無失点。落ち着いた投球で自分の仕事を果たした。

追加点の欲しいおかやま山陽はその直後、先頭の3番渡邉がインサイドの速球を引っ張って、レフト線への2塁打を放つ。阪口監督が「6,7回と乱れることがある」と危惧していた展開。打席には4番土井だったが、さらに捕逸が飛び出してしまい、ランナーは労せず3塁へ進む。追加点は絶対やれない絶体絶命の状況だったが、ここで山田にかえってスイッチが入る。土井を前進守備のショートへのゴロで抑え、まずは1アウト。5番入江には死球を与え、盗塁で2，3塁とされるが、6番飯田、7番藤井に対し、強気の速球勝負で連続三振！魂のこもった投球で相手に得点を許さなかった。

山田は7回裏にもランナーを背負うが、落ち着いた守りでランナーを走塁死させ、無失点。すると、女房役の4番捕手の高橋がこの流れを得点に結びつける。代わった2番手・西野を打ちあぐんでいたが、2アウトランナーなしからインサイド低めのスライダーをすくいあげると、打球はライトポール際を巻く当たりとなって、同点のホームランに！技とパワーを兼ね備えた、まさに主砲の一撃。名将・阪口監督の孫にも当たる選手が、見事としか言いようのない打撃で試合を振り出しに戻した。

同点に追いついてもらった大垣日大・山田は投球数こそ100球には満たないが、やはりさすがに疲れが見え、逆球も増え始める。スライダーも高めに抜け、危険な兆候があったが、球威自体はまだ保っており、8，9回とストレート主体の投球で相手に得点を与えない。対するおかやま山陽も西野が一発を浴びた後はランナーを許さず。2-2と同点のまま試合は延長戦に突入した。

10回表、機動力野球の大垣日大が先に仕掛ける。この回から登板した3番手の右腕・井川に対し、無死1，2塁から9番袴田の犠打はフライになるが、1番高川の打席で重盗を敢行。これが捕手の悪送球を誘い、思わぬ形で勝ち越し点が入る。なおも得点圏に走者を背負ってのマウンドだったが、ここからおかやま山陽守備陣が踏ん張る。1番高川はレフトフライに打ち取ると、2番権田にはレフトへのヒットを許すが、途中からレフトに入っていた石井からサード田内、そして捕手・土井への中継プレーでタッチアウト！追加点を許さず、裏の攻撃に向けて流れを作る守備を見せた。

その裏、大垣日大はエース山田が続投。9番山崎の犠打をサード権田がブルドッグ守備で三塁封殺し、まず1アウトを奪う。さらに1番田内は高めのスライダーをとらえきれず、2アウトに。やや制球は乱れながらも、勝利まであとアウト一つのところまでこぎつける。

しかし、ここから野球の神様はあまりにも残酷な結末を用意していた。2番湯浅が粘って四球を選び。満塁となると、3番渡邉の打席で悲劇が起こる。カウント0-1からインコース高めに抜けたボールを高橋が後逸。同点のランナーがホームを駆け抜けると、さらにホームへのカバーに入っていた山田への返球が逸れる間に、2塁ランナーも生還。信じられないような幕切れでおかやま山陽が逆転サヨナラで屈指の好ゲームを制した。

まとめ

おかやま山陽は最後は、相手のミスでのサヨナラ勝ちとなったが、勝利の要因は攻守で先手先手を取ったことにあるだろう。初回は好投手・山田の立ち上がりを攻め、エンドランを絡めて2点を先制。山田を相手にビハインドの展開になると厳しかっただけに、この先取点の持つ意味は大きかった。

さらに、このリードを有効に使い、3投手の継投でしぶとい大垣日大打線を相手に踏ん張りを見せた。各投手が自分の持ち味を出すことに徹し、ランナーを出しながらも丁寧に低めをついて打たせて取る。目立った球威はなくとも抑えられるという、キレのある変化球を武器に抑える投球は、高校生のお手本となる部分が大いにあった。初勝利で勢いに乗る新鋭校が、大きな階段を1段駆け上がった一戦となった。

対する大垣日大は、エース山田が初回の失点以降は踏ん張り、主砲・高橋の一発、機動力による勝ち越し点と随所に持ち味が出ていたが、最後は守備のミスが響いてしまった。あとアウト一つまで迫っていただけに、野球の怖さをまざまざと見せつけられた思いである。しかし、初戦敗退に終わった選抜からおおきく成長したナインの姿は、阪口監督の目にしっかり焼き付いたことだろう。名将の大垣日大での最後の試合にふさわしい好試合であった。

【劇的な幕切れ】タイブレークに突入した第4試合は劇的な幕切れ！！おかやま山陽vs大垣日大 – YouTube