2023年選手権2回戦 仙台育英vs聖光学院(7日目第4試合)

2023年

大会7日目第4試合

聖光学院

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 1 0 1 0 0 0 0 0 2
1 2 0 0 0 0 3 2 × 8

仙台育英

 

聖光学院   小室→安斎

仙台育英   田中→湯田→高橋

前年夏の準決勝の再戦となった試合は、中盤まで聖光学院が1点差で食らいつく好ゲームに。終盤、仙台育英が突き放したが、東北のライバル校同士のハイレベルな攻防に、スタンドは酔いしれた。

試合

仙台育英は力のある投手陣をそろえる中、先発に本格派左腕の田中を指名。一方、聖光学院は1回戦で好投を見せた左腕・小室をマウンドに送った。

1回裏、田中は球威のある速球とスライダーを武器に力の投球を見せる。長打力のある1番高中、強打の3番捕手・杉山といった怖い上位打線を3者凡退。バックも好守備で支え、まずは上々のスタートを切る。

これに対し、仙台育英としては聖光学院の左腕・小室はよく知った投手だったろう。1回裏、1番橋本がたたきつけた打球は大きく弾み、サード頭上への当たりとなって内野安打に。続く2番山田の打席でボークで2塁へ進むと、セカンドゴロで3塁まで到達する。3番湯浅が死球でつなぐと、4番斉藤陽のファーストゴロが野選となって、橋本がホームイン。仙台育英が1点を先行する。しかし、続く満塁のピンチは小室が連続三振でしのぎ、大量点は与えない。

しかし、強打の仙台育英に対し、聖光学院もある程度の失点は覚悟の上だ。2回表、早くも反撃体制に入る。先頭の4番三好が入ってくるボールに対し、理想的な右打ちで出塁。続く5番横川の打席でけん制悪送球が飛び出し、労せず2塁へ進むと、セカンドゴロで3塁へ。1回の仙台育英と全く同じような形で進塁させると、6番松尾がきっちり犠飛を打ち上げ、すぐに同点に追いつく。低めのスライダーであり、決して簡単なボールではなかったが、打撃技術の高さが詰まった犠飛だった。

追いつかれた仙台育英だが、2回裏、再び突き放しにかかる。1回戦で19得点をたたき出した打線は上位から下位まで強力だ。8番田中がサードを強襲する内野安打を放つと、続く9番住石には強攻策。小室の速球を完ぺきにとらえ、打球はライトへのヒットとなってチャンスを広げる。普通は9番打者には犠打が多いが、迷いなく打たせるあたりに、王者の自信がにじむ。犠打で進塁させると、2アウト後に3番湯浅が打ち上げた打球は浜風に乗って、センターの前にポトリ。聖光学院にとっては、不運な当たりとなって2者が生還する。

2回までに3点を失った聖光学院・小室。しかし、左投手特有の角度のついたボールは決して悪くなく、強打の仙台育英打線に対して、丁寧にコースを突いていく。左投手にとっては背中から出てくるようなボールであり、さしもの仙台育英であっても、なかなか捉えるのは難しいボールだ。3回裏は3者凡退に打ち取り、チームに守りのリズムをもたらす。

すると、4回表、聖光学院が再び反撃体制。3番杉山が田中のスライダーを完ぺきにとらえると、打球は逆風をものともせずにスタンドへ飛込み、1点差に迫る。この後、得点にこそつながらなかったものの、4番三好にも逆方向への右中間2塁打が飛び出し、仙台育英の左腕・田中をこの回でマウンドから引きずりおろす。打力では仙台育英に分があるとはいえ、上位打線の迫力は聖光学院も全く見劣りしない。

しかし、仙台育英の投手層は大会でも随一。2番手で登板した右腕・湯田が、球威十分の速球で聖光学院打線を封じ込めにかかる。手の内をよく知り尽くした東北の強豪校同士の一戦は、1点差の緊迫した展開で後半戦に突入する。

聖光学院としては小室が投げている間になんとか同点に追いつきたいところ。6回表には2番西本、3番杉山がいずれも強いスイングで連打を放ち、圧力をかける。少しでも高め、甘めのコースに入ると容赦ない。仙台育英の須江監督もベンチで頭をかくほどの、鋭い攻撃だ。ただ、ここでタイムを取って締め直しにかかると、4番三好は外のスライダーで空振り三振に。5番横川も打ち取り、難を逃れる。インコースをうまく意識させて捕手・尾形のリードが光った。

こうなると、層の厚さに勝る仙台育英が終盤になればなるほど有利になるのは、自明の理である。

7回裏、先頭の1番橋本がサード強襲の内野安打で出塁。2番山田の内野ゴロで2塁へ進むと、3番湯浅の打席では聖光学院ベンチも途中でタイムを取るほど、両者にとって大事な場面となる。ここで湯浅は低めのスライダーに苦労していたが、2ストライクと追い込まれた後のスライダーに食らいつく。これがレフト線を破るタイムリー2塁打となり、膠着した試合を動かす大きな1点が仙台育英に入った。

続く4番斎藤陽は、聖光学院バッテリーの動揺を見透かしたように、初球のストレートを叩き、3塁線を破る。しかし、聖光学院サイドも斎藤陽の打球傾向を読んでいたか、レフト線を詰めており、2塁ランナーの生還は許さない。ただ、この守備位置の偏りを見て、打者走者の斎藤陽は抜け目なく2塁を陥れる。攻守に2回戦とは思えないハイレベルな攻防だ。

5番尾形は三振に倒れるが、続く打席には代打の濱田。選抜ではレギュラー格だった選手であり、出場機会に飢えていた。小室のインサイドを突いた速球がやや甘く入るのを逃さずとらえると、打球はレフト線を破る2点タイムリー2塁打に!大きな大きな追加点が入った。ただ、聖光学院も続く7番登藤のライトへの打球を、松尾がダイビングキャッチ。点差が開いても最後まで集中力を切らさなかった。

聖光学院は、8回表にも1番高中、2番西本が連打を放ち、最後まで仙台育英投手陣に食らいつく。しかし、経験値も実力も備わっている仙台育英を相手にしてはビハインドが大きすぎたか。後続が併殺に倒れると、9回は3番手で登板した高橋の快速球の前に3者凡退。東北勢のレベルの高さを満天下に示した戦いは、昨年に続いて仙台育英の勝利で幕を閉じた。

まとめ

仙台育英としては、点差は開いたものの、非常に苦しい試合内容だったのは間違いないだろう。聖光学院の鍛えられた攻守の前に、なかなか主導権を完全にもぎ取るには至らない展開だった。ただ、そんな中でも逆転を許すところまでいかなかったのは、本格派投手を何人も擁する投手陣の層の厚さによるところだ。特に2番手で登板した湯田は先発でもリリーフでも自分の仕事を全うでき、球威十分の速球で相手打線の勢いを止めて見せた。

挑まれる立場となった東北の雄。昨年よりはるかにプレッシャーがかかる戦いの中、1回戦に続いて強豪対決を制した。

一方、聖光学院は負けてなお強しの印象を与えた戦いぶりだった。立ち上がり、仙台育英打線に攻め込まれる場面があったが、大事な場面でコントロールを間違わない小室のコントロールが光った。さらに、鍛えられた守備や相手のスキを見逃さない走塁といった部分は、仙台育英以上に鍛えられており、聖光学院のチームカラーがよく出た戦いぶりだったと言えるだろう。

昨年の優勝監督である須江監督に、「苦しかった」と言わしめるだけの戦いを見せた聖光学院。翌年以降にもつながる試合で、胸を張って聖地を後にした。

試合は誰もが予想しなかった展開に!準決勝、初の東北勢対決を制し決勝へ駒を進めたのはどっちだ⁉︎仙台育英vs聖光学院 ハイライト [第104回 全国高校野球選手権 準決勝] – YouTube

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