大会7日目第3試合
土浦日大
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 3 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
九州国際大付
土浦日大 小森→伊藤→藤本
九州国際大付 田端→下酔尾
49代表校中、最後の登場となった九州国際大付と開幕戦でタイブレークを制した土浦日大の一戦は、緊迫した投手戦となった。九国の強力打線を見事な投手リレーで完封した土浦日大が、3-0で接戦をものにし、同校初の1大会2勝目を手にした。
試合
土浦日大は先発に、1回戦で登板のなかった右腕・小森を指名。一方、九国は2年生エースの田端をマウンドに送った。
九国は2年生左腕の田端を浅嶋、隠塚、佐倉ら昨年を経験した内野の上級生が支え、堅守で福岡大会を勝ち抜いてきた。田端は1塁からインステップ気味の投球だが、体重移動が非常にうまく、角度のついたボールを投じてくる。1,2回、初戦で延長戦を制して勢いに乗る土浦日大打線にヒットはおろか、ランナーすら許さない。
対する土浦日大は、初戦で好投した左腕・藤本でもリリーフした伊藤彩でもなく、第三の男の小森がマウンドに上がる。1回裏、いきなり先頭の1番秀嶋を四球で歩かせると、犠打で二塁へ。しかし、3番山口のショートフライの際に、一瞬ショートが落球しそうな動きを見せたことで、2塁ランナーの秀嶋が飛び出してしまう。まさかの内野フライでの併殺となり、九国としては4番佐倉の前で痛い逸機となってしまう。
その佐倉は昨年も春夏と甲子園を沸かせた長距離砲。土浦日大バッテリーは緩いボールを効果的に使い、慎重な攻めを見せる。カウント1-3からアウトコースのストレートをうまく打たせ、レフトフライに打ち取るが、スイングの速さ、高く上がった打球に、やはり土浦日大サイドも警戒を強めただろう。小森は後続も丁寧な投球で打ち取り、2回も無失点でしのぐ。
すると、不思議なもので、一人のランナーも出せていなかった土浦日大がいきなり先手を奪う。3回表、1アウトから8番大井が真ん中高めの速球を強振。打球は浜風の後押しを受けて、レフトスタンドへ飛込み、ホームランとなって1点を先行する。初めてのランナーがホームランとは、野球はわからないものである。田端は落ち着いて後続は打ち取るが、どこか両者のその後の行く末を暗示するような序盤の攻防であった。
1点は入ったものの、前半戦は静かに戦いが進んでいく。九国の田端は、許したランナーはホームランの一人のみで5回まで好投。クロスで入ってくる球筋に、土浦日大の各打者もなかなかバットの角度を合わせ損ねる。一方、土浦日大の小森は、おそらくベンチの想定以上の好投。こちらも4回まで四球のランナーこそ出すものの、140キロ台を記録する速球を腕を振って投じるため、徐々にその球威で九国打線をねじ伏せるようになる。
投手戦で試合は進み、どちらが次の1点を奪うかという展開。両チームの堅守も光り、なかなか得点が入りそうな気配がない。そんな状況のなか、先に動いたのは土浦日大であった。5回に初ヒットこそ許したものの、ここまでわずか1安打の小森をすぱっと代え、2番手で右腕の伊藤彩をマウンドに送る。
その伊藤彩は、6回表、角度のついた速球を武器に、1安打は許したものの、抜群のコントロールで九国の上位打線から3三振を奪取。4番佐倉に対しても真っ向勝負を挑み、インサイドを強気に突く投球で追い込むと、最後はスライダーで空振りの三振に切って取る。やや高かったものの、内外を突いたバッテリーの狙い通り、佐倉のタイミングが外れていた。同じ右腕でも全くタイプの異なる伊藤彩への継投は非常に効果的であった。
九国としては、先発・小森を捕まえられそうな気配が出始めたところで、後半戦の出鼻をくじかれた格好に。すると、6回までホームランのランナー一人しか許していなかった田端が7回に捕まる。
この回、先頭の2番太刀川がストレートがやや甘くなったところを逃さず、センターへの痛烈なヒットを放つ。続く3番後藤がプッシュ気味の犠打を行うと、これが九国内野陣の間をうまく抜けてライト前へ。1塁ランナーが3塁を陥れ、一気にチャンスを広げる。ここで4番香取は、ここまで苦しめられていたチェンジアップが高めに浮くところを逃さない。センターへのタイムリーとなって1点を追加。4番が仕事を果たす。
その後、2アウトとなるが、7番鈴木の打席でセカンドランナーが三盗を敢行。左投手のスキを突いた見事な走塁だ。ここで、田端に痛恨の暴投が出てしまい、ランナーがホームイン。両者にとって、あまりに大きい3点目がスコアボードに刻まれた。
3点を追う九国は後半に入って、単打が出始めるも、いずれも2アウトから。土浦日大は、8回裏から左腕エース藤本を登板させ、先手先手の継投でリズムを掴ませない。一方、九国の左腕・田端は8回までを投げて5安打3失点でマウンドを降りる。素晴らしい投球内容だったが、土浦日大のうまさにしてやられた。
最終回、九国は先頭の4番佐倉が高めの速球を見事にとらえ、センターへのヒットで出塁。主将が反撃の姿勢をチームに示す。1アウト後、6番浅嶋の打ち上げた打球は風に流れてセンターの前に落ち、1,2塁とチャンスを拡大。一発出れば同点の場面まで持ってくる。しかし、土浦日大・藤本は最後まで落ち着きを失うことはなかった。後続をスライダーで冷静に打たせて取り、最後は2年生エース田端を支えてきた8番捕手の下川をセカンドゴロに仕留めてゲームセット。土浦日大が見事な試合運びで接戦を制し、3回戦へとコマを進めた。
まとめ
土浦日大は、投打でタレントを擁す九州国際大付に対し、相手にリズムを与えない戦いぶりを見せた。相手の失投を一発で仕留める決定力、終盤に得点を引き寄せた小技や機動力バント、そして、相手打線に的を絞らせない3投手での継投リレー。木内監督の教え子である小菅監督に、「木内マジック」が乗り移ったような、「柔よく剛を制す」戦いぶりであった。
常総学院以外の出場校がなかなか結果を残せないと言われることも多かった昨今だが、そんな声を完全に封じる、土浦日大の戦いぶりであった。
一方、九国としては初回の走塁ミスで流れを逸し、唯一ともいえる序盤の失投をホームランにされるという、嫌な展開になってしまった。個々の能力では、佐倉をはじめとして能力の高い選手が揃っており、福岡大会無失策の堅守も十二分に見せたが、やはり開幕戦を制して勢いに乗る相手には目に見えない力が宿っていたのかもしれない。
また、2年生エース田端は、前年のエース香西に見劣りしない好投を見せたが、数少ないチャンスをものにした相手が一枚上手であった。投打で実力の片りんは見せた九国だったが、この日は「49番目の登場」という難しさを前に涙を飲む結果となった。
『土浦日大vs九州国際大付 ダイジェスト』投手戦による引き締まった試合展開 最後に見せ場を作る2023年8月12日 – YouTube
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