2023年選抜準々決勝 大坂桐蔭vs東海大菅生(10日目第3試合)

2023年

大会10日目第3試合

東海大菅生

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 1 0 0 0 0 0 1
0 0 4 0 1 1 0 0 × 6

大坂桐蔭

 

東海大菅生   末吉→島袋→日當

大坂桐蔭    前田

2015年、2021年に続く3度目の対戦となった両校の試合は、序盤に大阪桐蔭打線が東海大菅生の継投に惑わされることなく攻略。エース前田も盤石の快投を見せ、今大会一番と言っていい内容で2年連続の4強へ勝ち進んだ。

試合

大坂桐蔭は3回戦で温存したエース前田が先発、一方、東海大菅生は2回戦でリリーフ登板した末吉をマウンドにあげた。

大坂桐蔭の先発は絶対的エースの前田。初戦はなかなか真っすぐが走らなかったが、今日は初回から140キロ台を度々記録する。いつもの前田が戻ってきたか、あるいはいよいよ調子を上げてきたのか、どちらにせよ球威のある速球にスライダー、チェンジアップを混ぜられるとそう打てるものではない。東海大菅生打線の売りである、沼澤大舛酒井の上位3人をあっという間に片付けて、初回を0で立ち上がる。

対する東海大菅生の末吉は、1回表、1番小川に四球を与えると、1アウト後に3番徳丸島袋の得意球のカーブを狙い打ち、ライトへのヒット。小川が3塁を奪うと、ライトからの送球間に打った徳丸も2塁を陥れる。大坂桐蔭らしい攻撃でチャンスを得るが、ここは4番南川・5番佐藤と内角球を打たせ、東海大菅生も形はどうあれ、無失点で立ち上がる。

2回も両者スコアーボード「0」を刻むが、大阪桐蔭・前田はすこぶる調子がよさそうだ。序盤、ヒットこそ許すものの、進塁のチャンスすら与えず、後続を簡単に料理。0-0で進んでいるが、相手にかけるプレッシャーは確実にあるだろう。ダイヤのエースの稲実・成宮の様と言ったら言い過ぎか。

この空気を感じ取ってか、否か、東海大菅生は3回で早くも末吉に代えて代打を送る。先手先手の継投で大阪桐蔭にリズムをつかませず、終盤にエース日當を送るのが狙いだ。

ところが、この継投が裏目に出てしまう。3回裏、東海大菅生は2番手に城東戦でロングリリーフを見せた島袋を送る。初戦はスライダーを武器に好投を見せたが、この回先頭の1番小川がじっくりと選球して四球を選ぶ。さらに2番山田がカウント1-3から見事なセーフティバントを決めて1,2塁とすると、3番徳丸もバントが小飛球になりながら3塁線横で止まり、連続セーフティバントであっという間に満塁となる。外野に一球も打球は飛んでいないが、塁上はすべて埋まっていく。

ここで4番南川島袋のスライダー、スプリットをとらえられずに追い込まれるも、1打席の中で同じ失敗をしないのが桐蔭の4番たるゆえんだ。追い込んでから振らせにきた低めの変化球をしっかり見てミートすると、打球は狭い1,2塁間を破ってライトへ転がり、桐蔭が2点を先制する。レベルの高い打撃でチームに貴重な得点をもたらした。

さらに5番佐藤の犠打は捕手・北島の野選を誘って無死満塁。ここで菅生はとうとうエース日當をマウンドに送るが、立ち上がりボールの高い日當から6番長澤の犠飛と7番村本のタイムリーで2点を追加する。試合はまだ序盤だったが、相手が前田ということを考えると重い4点であった。

しかし、3度目の正直で桐蔭からの初勝利を狙う菅生も簡単にあきらめるわけにはいかない。4回表、ノーアウトから3番酒井、4番北島がいずれもしっかりとらえた当たりのヒットを放つ(酒井は内野安打もヒット性の当たり)。ここで5番新井がきっちり送ると、6番門馬はクロスファイヤーをうまく体を回転させてセンターに打ち上げ、1点を返す。この回、前田のボールがやや高かったとはいえ、そこを逃さず、とらえた菅生打線はさすがであった。

ただ、その後は5回表に3者三振を奪ったように、再び好調な前田に戻っていく。おそらくここまでの3試合で一番真っすぐが走っているだろう。狙われているとわかっている場面でもストレートで押し、そのぶんスライダー・チェンジアップ・ツーシームと多彩な変化球の威力が増す。昨年からそうだが、彼が本調子だと相手チームは1点がはるかに遠く感じるはずだ。

すると、このエースの投球に呼応するかのように打線が得点を挙げていく。5回裏、ここまで大会通じて無安打の5番佐藤日當のアウトコースの速球をとらえると、打球はセンターバックスクリーンへ飛び込むホームランとなって1点を追加。この回は4番南川を三振に取り、乗っていきそうだっただけに、悔やまれる一球となった。さらに6回には2アウト3塁のチャンスを作ると、2番山田の当たりそこないの打球が内野安打となって6点目をGET。菅生にとっては非常に嫌な形での失点であった。

リードを広げてもらった前田はほぼ毎イニング単打を許すが、そこから塁上を進ませない。ただ投げるだけでなく、けん制などフィールディングも非常に巧みである。昨年から試合経験が非常に豊富であり、勝負どころと駆け引きをわきまえた姿が相手にさらに何倍も圧力をかけていたことだろう。最終回は5番から始まる打順だったが、危なげない投球で3者凡退。調子を取り戻したエースの好投で前年王者が力強く4強へ駆け上がった。

まとめ

大坂桐蔭は2,3回戦と苦しい試合の連続だったが、ここにきてようやく投打ががっちりかみ合った大坂桐蔭らしい野球になった。試合前半、東海大菅生の継投策に苦しむかと思われたが、3回裏の犠打を多用した攻め方は見事。今年の大阪桐蔭の特徴である足を使ったスピード感ある野球を展開し、一気に試合を優位に進めた。5回裏にはそれまで苦しんでいた5番佐藤にホームランが飛び出すなど、この日はほとんどの選手にヒットが飛び出した。3回戦でわずか2安打に終わった残像は完全に払拭できたと言えるだろう。

そして、この日は何といっても前田の投球である。ストレートが走らず、初戦は苦しんだが、ひとたび走り出すとこれほどの投球になるのかと思わされた。菅生打線も7本のヒットを放ち、4回表には1点を返したが、正直中盤以降はあまり得点の香りがしなかった。それだけピンチの場面での安定感は図抜けていると言えるだろう。いつも、大会後半に向けて状態を上げてくる王者・大阪桐蔭。その姿が鮮明になってきたと感じさせる準々決勝の戦いぶりであった。

一方、東海大菅生は今回は打倒・大阪桐蔭の可能性も大いにありと感じていたが、継投のスキを突かれての失点は痛かった。日當が前日完投しているだけに致し方ない部分はあるが、自分たちの力を出し切れるような展開に持ち込めなかったことが悔やまれただろう。打線は7安打を放ったが、決定打となるようなヒットは少なく、序盤の失点で前田に余裕をもたせてしまった。

2年前も中京大中京・畔柳(日本ハム)に完封され、今回も高校No.1左腕の前田に封じられての敗戦。着実に実績を積み重ねている東海大菅生だが、ここから先はもう一つ新たな強さを身につけないと届かないのかもしれない、そう感じた試合であった。

2023年選抜準々決勝予想 大坂桐蔭vs東海大菅生 | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

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