2023年選抜3回戦 作新学院vs英明(7日目第3試合)

2023年

大会7日目第3試合

作新学院

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 1 0 0 0 0 2 4 2 9
1 0 0 0 0 3 0 4 0 8

英明

 

作新学院  川又→磯→市川→磯→小川→福冨

英明    寿賀→下村→百々

ベスト8最初の椅子を狙う試合は、序盤の投手戦から一転して終盤は打撃戦に。逆転ホームランの応酬となった見ごたえ十分の攻防を制し、作新学院が小針監督の選手時代以来となる、23年ぶりの8強進出を果たした。

試合

作新学院はエース川又がこの日も先発。一方、英明の先発はサイドハンドの下村ではなく、初戦でリリー登板した左腕・寿賀であった。

寿賀は立ち上がり、3番に四球を与えるも、1番髙森、4番齋藤と軸になる右打者をインコース低めのスライダーで空振り三振に切って取る。初戦で送球を左手に受けた影響が心配されたが、どうやら影響は少ないようだ。自らの投球で乗ったか、1回裏、打撃でも活躍を見せ、四球のランナーを1塁においてアウトコースのストレートを流し打つと、打球は左中間を深々と破るタイムリー2塁打となって英明が1点を先制する。

しかし、作新もすぐに反撃を開始。直後の2回表。先頭の5番武藤が粘って四球を選ぶと、6番東海林の当たりを取ったファースト大島のセカンドへの送球が尾中のグラブをはじく格好となり、無死1,3塁とチャンスが広がる。1アウト後、8番草野のたたきつけた打球がファーストへのゴロとなる間に、3塁ランナーがホームイン。ベースカバーをおらず、1塁もセーフとなってしまい、この回、英明はやや内野陣がバタついてしまった。

さらに追加点の欲しい作新学院。なんと、ここで9番川又に代打を送る。川又の調子が悪いと見たのか、初戦に続いての早い継投だ。大分商戦を見る限り、投手陣のやりくりに苦労していただけに川又には少しでも長いイニングを投げてほしいのではと思っていたのだが、小針監督はこの大会はこういう戦い方を貫くつもりなのかもしれない。

代わってマウンドに上がった2番手の右腕・は大分商戦で最終回に猛烈な追い上げを食らったが、この試合はカーブの制球が冴え、英明打線相手にランナーを出しながらも得点を与えない。野手兼任の選手だが、この日のピッチングは間違いなく、前半チームを救った。

が踏ん張っている間に逆転したい作新学院打線だが、想定外だったのは英明の左腕・寿賀の好投である。初回から左打者ならアウトコース、右打者ならインコースにくる低めのスライダーに苦しみ、相手守備陣のミスで追いついた2回以外は攻撃が機能しない。3,4回は3者凡退で封じられ、5回にランナーが出てと思っても、盗塁が阻止されて結局3人で攻撃終了となる。ストレートにはめっぽう強い打線だが、低めの変化球にはやや脆さを見せた。

1-1のまま試合は後半戦へ。しかし、両チームともまだ交代のカードを残しており、このまま終わるとは到底思えなかった。

終盤に向けて先行したい展開の中、6回裏、英明がついに磯をとらえる。1アウトから5番中浦が四球を選ぶと、続く6番大島が投球の軸となっていた低めのカーブを引っ張って、1,2塁間を破る。各打者がカーブの見極めができ始めると、7番尾中はストライクを取りに来た速球をとらえてライトへ勝ち越しのタイムリー。さらに8番清家大島と同様に低めのカーブを今度は右中間に流し打って追加点を挙げると、9番高松は鮮やかにスクイズを成功させ、この回3点の勝ち越しに成功する。

作新学院はここでに代わって、同じく初戦で登板を経験済みの右腕・市川を送る。英明はさらに追加点のチャンスだったが、1番鈴木が倒れると、2番平見の投手のグラブをはじいた打球は、ショートに回ったが懸命にバックアップし、1塁はアウト。作新学院としてはこの守りでの踏ん張りが、奇跡の逆転劇へとつながる余地を残したと言える。

6回まで強打の作新学院を1失点で抑えていた寿賀だったが、7回に入ってさすがに疲労から制球が乱れる。6番東海林にセンターへ痛烈なヒットを浴びると、暴投と犠打でランナーをためる。投手ゴロで2アウト目を取るも、9番にはストレートを痛烈にはじき返されて1点差に。作新打線もこの回、寿賀の低めのボールになるスライダーをことごとく見送り始めていた。さらに1番髙森は、今度は高めに甘く入ったスライダーを初球からとらえ、2者連続でレフトへタイムリー。このあたりの息を突かせない攻撃はさすが作新である。

追加点の欲しい英明は7回裏、1アウトから寿賀が自ら2塁打を放つも、その後は初球攻撃が実らず、2者凡退。すると、ここから作新打線が猛威を振るい始める。

8回表、先頭の3番が初球をセンターへクリーンヒット。ここで香川監督はついに準備していた下村をマウンドへ送る。英明としては勝利の継投パターンだったが、初戦の智辯和歌山戦を見た作新としては右サイド対策はばっちりであった。4番齋藤が粘って7球目のインサイドのストレートをセンターに打ち返し、チームメイトにお手本を見せると、5番武藤は死球を選んで満塁に。ここで6番東海林は四球後の初球を狙えの鉄則通りにインサイドの速球を引っ張り、打球はライトへ抜けるタイムリーとなって逆転に成功する。

下村としても終盤のピンチの場面でも継投は慣れていたとは思うが、この日はくせ球に対して素直に鋭く振り抜く作新打線が一枚上手であった。この後、代打・宮本、9番と浅いカウントから積極的にとらえられ、計4失点。遅いボールとくせ球を活かした投球の良さを発揮させてもらえず、下村はこの回でマウンドを降りた。

3点を追う展開となった英明だが、作新も投手事情は苦しい。ここから怒涛の展開が続いていく。

8回裏、再びマウンドに上がったに対し、先頭の7番尾中が四球で出ると、暴投と内野ゴロで3塁へ。ここで大会無安打の1番鈴木がアウトコースのカーブに気迫で食らいつき、打球は飛びついたレフトがわずかに及ばずタイムリーとなる。さらに2番平見もショート深い位置への内野安打で続くと、打席には2年生の3番百々。秋の大会で大活躍を見せながら、ここまではあまり目立たなかった男が高めの速球を完ぺきにとらえると、打球はライトスタンドへ飛びこむ逆転3ランに!信じられないといった表情のをしり目に百々がホームを踏みしめ、英明が試合をひっくり返した。

作新としてみればまさかの展開である。4点を奪ってリードしながら4点を奪われての逆転。しかし、互いに激しく攻め合ってきた、この試合はまだ終わらない。

劇的な逆転弾を放った百々香川監督は最終回のマウンドをこの2年生に託す。先頭の3番をショートゴロに打ち取るも、4番齋藤には警戒して四球を与える。一発だけはだめという細心の投球に映る。だが、作新学院には2011年夏、あの智辯学園戦で9回に強攻で試合をひっくり返したイズムが残っていた。5番武藤は四球後でストライクが欲しい百々の心理を見透かしたかのように、甘く来た速球を一閃。打球は打った瞬間それとわかる逆転2ランとなり、作新学院が土壇場で試合を再びひっくり返して見せた。

作新は最終回、英明打線に完全に特徴をつかまれているに代わって、本来エース格の右腕・小川をマウンドに送る。今大会軸となるはずだった右腕だが、5番中浦にヒットを許すと、犠打で二進したところで降板となる。ボールを見る限り、まだ本調子ではないか。小針監督はここで5人目の投手となる福冨をマウンドへ。内野ゴロと四球で2アウト1,3塁となるも、福富は攻めの姿勢は失っていなかった。最後は代打・遠山をインサイド攻めで3塁ゴロに打ち取り、ゲームセット。

作新学院が目まぐるしく動く展開の、厳しい試合をものにし、ベスト8一番乗りを果たした。

まとめ

作新学院はこれで2試合連続で打撃戦を制しての勝利。ある意味作新のチームカラーらしい勝利と言えるだろう。打線はやはり狙いを絞ってとらえた時の破壊力は凄まじい。特に初戦で智辯和歌山打線を翻弄した下村を、一瞬で飲み込んだ攻撃は見事の一言であった。基本に忠実で無理がなく、それでいて出るところでは一発長打が飛び出す、非常に怖い打線と言えるだろう。

対照的に投手陣についてはこの日も非常に苦しかった。先発の左腕・川又は何か引っ張れない理由があるのだろうか。内部事情は分からないが、彼がせめて5回まででも投げ切れば、などリリーフ投手の負担も減るはずだ。今日を見る限りは、2枚看板として期待していた小川の状態も上がり切っていないように見えただけに、今後の投手起用に注目が集まる。大会も後半に差しかかるが、作新としては今後も「打ち勝つ」スタイルで挑んでいくことになりそうだ。

 

一方、英明は強打の作新学院と互角以上に打ち合ったが、最後は相手の一発に沈む形となった。惜しむらくは、2番手で登板した下村がもう少し持ち味を発揮しやすい、落ち着いた場面でリリーフしたかったか。ただ、そこは結果論でしかなく、攻略した作新打線が素晴らしかったというしかない。逆点弾を放った2年生百々を筆頭にチームとして力は十分発揮した試合であった。

これまでは投打に豪快さと脆さが同居している印象の英明だったが、今年のチームは下村を筆頭に柔よく剛を制す戦いぶりで、結果を残してきた。特に初戦で智辯和歌山を下した勝利は、チームとして大きな自信になったはずだ。父から監督を引き継いだ若き指揮官・香川監督のもと、新たなスタイルの英明がこれから高校球界を沸かせてくれる予感がする。

2023年選抜3回戦予想 作新学院vs英明 | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

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