2023年選抜3回戦 大坂桐蔭vs能代松陽(9日目第1試合)

2023年

大会9日目第1試合

能代松陽

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
0 0 0 0 0 0 1 0 × 1

大坂桐蔭

 

能代松陽    森岡

大坂桐蔭    南恒→前田

8強の座をかけた早朝の第1試合は両チームの投手が素晴らしい投球を見せ、息詰まる投手戦となった。大阪桐蔭が南恒前田の継投でスクイズの1点を守り切ったが、能代松陽の健闘が非常に光った試合であった。

試合

能代松陽は初戦完封勝利のエース森岡が先発。一方、大阪桐蔭は右のエースとして期待されていた右腕・南恒が先発のマウンドに上がった。

大坂桐蔭の南恒は分厚い大阪桐蔭の投手陣の中でも指折りの球威を持つ本格派右腕。初回、力のある速球とスライダーの組み合わせで、能代松陽打線の上位3人を3者凡退で片付ける。能代松陽としては、最も頼りになるトリオだったが、まずは南恒の球威が勝った印象だ。

一方、能代松陽の注目のエース森岡は初回、1アウトから2番山田、3番徳丸に対して警戒して連続四球を出す。しかし、ここで4番南川を外角いっぱいの速球で見逃し三振に取ると、大阪桐蔭の仕掛けたスチールに惑わされることなく、5番佐藤も三振に取る。速球に強い大坂桐蔭打線相手に十分通用することを感じた初回だったのではないか。

好調な立ち上がりを見せた南恒森岡の両投手。すると、ここからなんと4回表2アウトからの能代松陽・3番虻川のセカンドゴロエラーまでお互いに一人もランナーを出さない投球を見せる。南恒はインサイドを強気に突く投球で能代松陽打線の踏み込みを弱めれば、森岡は角度のある速球を武器に大阪桐蔭打線を封じる。

特に森岡は全国でも屈指の強打者が揃う大坂桐蔭打線に対して、全く付け入るスキを与えない。真っすぐが来るとわかっているはずなのに、振り遅れて差し込まれる場面が続く。ここにスライダー、チェンジアップを交えると、いよいよ打てそうな気配がなくなってくる。

試合は早い展開で進み、5回までに両チームで10回ある攻撃のうち、3者凡退がなんと7回。両先発はここまで得点はおろかヒットすら許さない。また、守備陣も堅い守りで援護し、前半は点の入る気配がまったくしなかった。試合前は、大阪桐蔭優勢の声も多かったが、5回終了時点でこれはわからないぞという雰囲気に間違いなくなっていた。大阪桐蔭にとっては非常に嫌な展開だっただろう。

すると、グランド整備後の6回表、能代松陽が攻勢をかける。先頭の8番佐々木南恒のチェンジアップが落ち切らないところをとらえ、センターへ両チーム通じて初ヒットをマーク。犠打で送ると、1番大高は死球を受け、ランナーがたまる。ここでなんでもできる2番淡路に期待がかかったが、変化球を打たされて打球は南恒のグラブに収まり、投手ゴロ併殺となる。

その裏、大阪桐蔭も1番小川森岡のストレートをようやくとらえてヒットを放つが、2番山田の犠打が飛球となり、失敗。さらに好打者・徳丸西谷監督が仕掛ける構えを見せる中、ショートへの併殺打に打ち取られる。全国屈指のタレントを揃えている大阪桐蔭だが、間違いなく今日が一番「打線」が苦しんでいる試合だ。

試合は0-0のタイスコアだが、能代松陽の方が精神的には優位だろう。7回表、先頭の5番虻川がラッキーな内野安打で出ると、4番齋藤はストレートの四球でランナー1,2塁。絶好のチャンスを迎える。しかし、ここで南恒はインサイド高めの渾身の速球で5番佐々木を三振に取ると、暴投でランナーを進めながらも、6番柴田・7番森岡と力でねじ伏せる。この回、西谷監督はここぞとばかりにタイムを2回取り、選手を落ち着かせていた。2012年の選抜の浦和学院戦を思い出すような采配。ここと決めた場面で名将に躊躇はない。

この西谷監督の姿勢と南恒の意地の投球が大坂桐蔭ナインに火をつける。先頭の4番南川が高めの速球ととらえると、打球はライトフェンスにもう少しで届こうかという大きな当たりになって無死3塁のビッグチャンスを迎える。森岡は5番佐藤を球威で内野フライに打ち取るが、7番村本のカウント2-1と追い込まれた場面でスリーバントスクイズを決められ、ついに両チーム通じて最初の得点が大阪桐蔭に入る。押され気味の展開の中で、王者が少ないチャンスを活かす勝負強さを見せる。

しかし、西谷監督はさすがの采配だったが、それだけ「今日は打って取るのは厳しい」と森岡の投球が大坂桐蔭サイドに思わせていたのだろう。能代松陽のエースの投球が、チャンピオンチームを追い詰めていた。

1点を追う展開となった能代松陽。しかし、8回表に1アウトから9番保坂の内野安打が悪送球を誘い、1アウト2塁で一打同点の場面を作る。すると、ここで大阪桐蔭はついに準備していたエース前田を投入。前田は打ち気にはやる1番大高、2番淡路に対し、緩急を活かした投球で封じ込める。初戦はいまいち調子が上がらないようにみえた前田だが、2番淡路にはすべて速球で空振り三振と貫禄の投球で復活をアピールした。

7回に先制を許した森岡だが、8回裏は四球のランナーを出しながらも後続をしっかり打ち取る。この試合、大阪桐蔭打線の放ったヒットはわずか2本。ここまで抑え込まれた試合がかつてあったか。森岡が真っ向から力で強力打線をねじ伏せた。

最終回、能代松陽は好打者の3番虻川が見事な流し打ちで3塁線を破り、塁に出る。しかし、この場面で通常なら2塁打コースのところをレフト山田が詰めて守っており、虻川は2塁へ進めない。さらに4番齋藤の犠打が飛球となると、今度はファースト佐藤がダイビングキャッチ!飛び出した虻川が戻れず、併殺となってしまう。ここぞという場面で守り切れるのもまた、大阪桐蔭の強さだ。最後は前田が渾身の速球で5番佐々木を空振り三振に取ってゲームセット。

大阪桐蔭が苦しいゲームをものにし、2年連続で8強に勝ち上がった。

まとめ

大坂桐蔭は打線がわずか2安打に封じられる中、スクイズで得た虎の子の1点を守り切った。おそらく勝ちゲームの中では、近年でも最も苦しい試合だっただろう。そんな中、この日先発の南恒は素晴らしい投球を展開。打者の左右を問わず、インサイドを正確に突けるコントロールは素晴らしいの一言であった。また、救援したエース前田もこの日は吹っ切れたか、初戦より速球が走っており、だんだん本来のボールが戻ってきた。左右の両輪が揃った投手陣は大きな不安はないだろう。

一方、打線は完全に能代松陽のエース森岡に封じられた。森岡のボールが素晴らしかったわけで、大阪桐蔭の打者の実力に疑いの余地はないが、バッターにとってはやはりヒットが一番の良薬だ。いつも大会終盤に向けて調子を上げていくが、まだスタメンのうち4人は2試合無安打と沈黙している。ここから春夏9度の全国制覇を誇る強豪がどう立て直していくのか、日程が詰まっていく中で真価が問われる。

対する能代松陽は森岡の投球がとにかく素晴らしい、というより凄かった。ストレート一辺倒では大阪桐蔭相手には厳しいと思っていたが、まともにとらえられた場面はほとんどなく、スライダー・チェンジアップも駆使して完全に翻弄した。王者を相手に見せたこの日の投球は東北の高校球児に勇気を与えるものになったことだろう。最後は少ないチャンスを相手に生かされた敗れたが、「こういう展開に持ち込めるディフェンス力があれば勝つチャンスは生まれる」、そのことを証明した能代松陽の戦いぶりであった。

2023年選抜3回戦予想 大坂桐蔭vs能代松陽 | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

コメント

タイトルとURLをコピーしました