2024年選手権決勝
京都国際vs関東一
50.5% 49.5%
〇7-3 札幌日大 〇7-1 北陸
〇4-0 新潟産大付 〇3-2 明徳義塾
〇4-0 西日本短大付 〇2-1 東海大相模
〇4-0 智辯学園 〇2-1 神村学園
〇3-2 青森山田
ともに高い投手力、鉄壁の守備力、相手のスキを逃さない攻撃力を持ち、今大会の決勝を戦うに本当にふさわしい両チームが顔を合わせた。ほとんど両チームに差はないが、両チームの投手陣の切り札である京都国際・西村、関東一・坂井の出来を考えると、わずかに西村に軍配が上がるか。
京都国際は準決勝はエース中崎が初回にボールが高めに浮き、2失点を許したが、2回以降を抑えると、5回からは2年生左腕・西村にスイッチ。ここまで交互に完投して、疲労度を抑える起用をしてきたことがここにきて生きてきた。特に西村は準決勝でもチェンジアップの切れは抜群。捕手・奥井とのコンビネーションも抜群で有り、1点差の終盤でも慌てる必要が全くないような投球内容だった。特に右打者の高橋、越後が主軸の関東一打線にとっては、厄介な投手となる。ダイヤのエースの成宮鳴ではないが、「低めに決まれば魔球」と呼べるボールである。
これに対し、関東一は3試合連続で1点差勝利。破壊力というよりは、相手投手・守備陣が見せたちょっとしたスキや乱調を逃さない、ジャックナイフのような鋭さがある。決勝も接戦になることが予想され、競り合いの中で機動力・状況判断の良さが光る関東一打線は非常に怖いと言えるだろう。打てなくてもあの手この手で相手守備を混乱させ、打率6割6分7厘と絶好調の5番越後にチャンスでまわせるか。また、先ほど挙げた右打者の西村攻略法としては、「チェンジアップを見極め、取りに来たストレートを右方向へ返す」打撃となりそう。神村学園の今村を攻略した終盤の攻撃をみせられるか。
一方、関東一投手陣はここまで大後、坂本、そして畠中とタイプの違う左右の3投手が先発登板して試合を作り、最後をリリーフエースの坂井が締めるという必勝パターンを見せてきている。決勝戦で誰が先発してくるかは非常に読みづらく、米澤監督もしてやったりの起用でここまできている。また、継投のタイミングも絶妙であり、1試合の中で長期的な視野で相手打線との相性を見て、ここぞのタイミングで変えてくる。決勝戦でもそのタクトで相手打線をかわしたい。不安があるとすれば、坂井のストレートが神村学園戦の最終回にとらえられたことか。決勝戦は総力戦で臨んで、エースの負担を軽減したい。
対する京都国際打線は、準決勝は初めて2桁安打がストップすることとなったが、6回に青森山田のエース関を一気に打ち崩した集中打は見事だった。各打者がセンターから逆方向を意識して無理に引っ張らない打撃を見せており、上位から下位まで好調な打者が並ぶ。打線の層の厚さをという点では、京都国際に分があるだろう。懸念があるとすれば、攻撃の効率性か。細かな走塁ミスや犠打ミスでチャンスを逃していると、関東一の継投策にはまって目先をかわされ、気づけば終盤リードを許して坂井が登板というパターンにはまる可能性がある。投手陣に絶対の自信を持つだけに、できれば先行逃げ切りの展開に持ち込みたい。
両チームも内野を中心に守備力は非常に高く、特に関東一の内野陣の守備力の高さは、2007年の佐賀北を彷彿とさせる、「相手に脅威を与える」レベルだ。京都国際もセカンドの三谷を中心に守りが堅く、両者とも守りで崩れる絵は想像しにくい。両チームの投手陣を考えると四死球も考えにくい。となれば、流れを変えるのは攻撃の細かいミスと一発長打か。少ないチャンスをミスなく得点に結びつけ、相手投手のちょっとしたスキを突けるのはどちらの攻撃陣か。ハイレベル必至の両チームの攻防が、100周年の聖地のファイナルを飾る。
主なOB
京都国際…曽根海成(広島)、清水陸哉(ソフトバンク)、上野響平(日本ハム)、中川勇斗(阪神)、森下瑠大
関東一…三輪隆(オリックス)、山下幸輝(DeNA)、中村祐太(広島)、オコエ瑠偉(巨人)、石橋康太(DeNA)
京都 東京
春 4勝 11勝
夏 7勝 6勝
計 11勝 17勝
対戦成績は夏は京都勢が、選抜では東京勢がリードしている。
今回の決勝を戦う京都国際が初出場した2021年の選抜では、東海大菅生が京都国際に逆転サヨナラ勝ちを収めるなど、春は東京勢が相性の良さを発揮している。2013年の選抜では早稲田実が龍谷大平安の左腕・福岡に6回まで無安打に封じられながらも、7回に集中打で一挙4点を挙げて見事な逆転勝ち。龍谷大平安はこの敗戦をばねに翌年の選抜で優勝を飾った。
2021年選抜2回戦 東海大菅生vs京都国際(8日目第2試合) – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)
京都勢の勝利では1998年夏の京都成章が印象深い。選抜で2-18と岡山理大付に大敗したチームが一戦ごとに成長。3回戦では、東出を擁する敦賀気比や強打の智辯学園を下してきた桜美林に対し、エース古岡が初回に許した1安打のみで1失点完投勝ちをおさめた。勝ち上がるたびに強くなった京都成章は、この大会で最後まで勝ち残り、決勝で松坂(西武)擁する横浜に無安打無得点で敗れたものの、準優勝を達成。この夏一番成長したチームは間違いなく京都成章だっただろう。
また、2021年の夏には京都国際が登場。3回戦で二松学舎大付と対戦し、3本のホームランでリードを奪った。しかし、9回裏にまさかの同点3ランを被弾し、試合は延長戦に突入した。10回表、直前に痛恨の一打を食らっていた2年生エース森下(DeNA)は二松学舎の好左腕・秋山(ロッテ)から、自ら勝ち越し打を放ち、再び試合をリード。選抜で敗戦を喫していた同じ東京勢に雪辱し、この大会でベスト4まで勝ち上がった。
2021年選手権3回戦 京都国際vs二松学舎大付(11日目第1試合) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)
さらに、5季連続の甲子園出場を果たした早稲田実の荒木大輔(ヤクルト)は、その間になんと4回も京都勢と対戦している(1980年夏 〇9-1東宇治、1981年選抜 ●2-6東山、1982年選抜 〇3-1西京商、1982年夏 〇12-0宇治)。特に1981年選抜の東山戦は、5季連続で出たうち、唯一の初戦敗退となり、2年生だった荒木をはじめ、早実を大きく成長させる一戦となった。
これまで多くの熱戦を演じてきた強豪地区同士の対戦。甲子園球場100周年の記念すべき大会を制するのはどちらの「京」になるのか。
思い出名勝負
2018年夏3回戦
龍谷大平安
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 |
0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | × | 4 |
日大三
龍谷大平安 小寺
日大三 広沢→河村
甲子園100周年で沸いたのが、今年の甲子園なら、100回大会で沸いたのが2018年の高校野球だった。その大会でベスト8の最後の椅子をめぐる好ゲームを演じたのが、京都と東京を代表する強豪校だった。
龍谷大平安は前年夏に府大会決勝で敗れた悔しさをばねにエース小寺が成長。低めの制球力を鍛え上げて安定感を増し、府大会では四死球の数が前年と比較して激減した。一方、打線も4番主将の松田を中心に勝負強い打者が揃い、1番水谷、2番安井を中心に足を使った攻めも使えた。
初戦は鳥取城北の好投手・難波に苦しんだが、最終回に1番水谷が二盗、三盗で相手をかき回すと、2番安井がサヨナラ打を放って念願の甲子園通算100勝を達成した。勢いに乗った2回戦はここ5年で3度目の対戦となった八戸学院光星を14-1と一蹴。古都の伝統校が虎視眈々と上位を狙いだしていた。
対する日大三は2011年に圧倒的な強さで全国制覇を成し遂げたが、その後は3大会連続で初戦敗退。2013年夏は日大山形との日大対決に、2017年選抜では履正社とのV候補対決に敗れ、苦しい戦いが続いていた。2018年選抜では初戦で由利工の好投手を打ち崩して連敗を止めたが、2回戦で三重の定本の落ちるボールに対応できず、0-8と完敗。波に乗れない大会が続いていた。
しかし、例年のような長距離砲はいなくとも3番主将の日置を中心につながりのある打線は今年も破壊力十分。春夏連続出場で迎えた初戦は初出場の折尾愛真を16-3と圧倒すれば、2回戦では地元の大声援を受ける奈良大付を相手に冷静な試合運びで8-4と勝利した。速球派の右腕を並べた先発陣が試合を作り、左腕の河村が締めるパターンも確立し、戦い方が安定してきた印象だった。
日大三の先発はこの大会初登板の広沢。190㎝近い長身から繰り出すMAX140キロ台後半のストレートを前に、龍谷大平安打線が序盤全く手が出ない。ミート力の高い打者が多く並ぶが、高めに伸びるストレートにバットが空を切る。複数の投手陣が登板する日大三だが、まだこんな投手を隠し持っていたのかとびっくりするほどのボールを投げる。
この流れに打線が応えたのは3回裏。1,2回戦ほどボールにキレがない平安・小寺に対して、1番金子のホームランでまず1点。さらに2番木代の3塁打と3番日置のライト前ヒットとこの回わずか5球で2点をたたき出した。いずれも小寺のストレートをたたいたもので、相手の投球の軸となるボールを狙い打った。
ただ、伝統校の平安もただでは引き下がらない。5回表、ここまで飛ばしに飛ばしてきたことで疲れの見え始めた広沢から連続四球を選ぶと、送って2,3塁から小寺が自らセンターにタイムリーを放って同点に追いつく。押されっぱなしの展開の中で、わずか2本目のヒットで追いつく当たりは、さすがというかそつのない攻撃である。
6回裏、日大三は代打・飯村がサード強襲の内野安打で出塁すると、続く8番女房役の佐藤英がセンター横を破る3塁打で勝ち越し。小寺のスライダーにも徐々にタイミングを合わせ始める。一方、平安も直後の7回表に2番手河村を攻め、四球を足掛かりに2アウト2塁とすると、代打・生水のライト前タイムリーですぐに試合を振り出しに戻す。強豪校同士の激しいつばぜり合いに観衆も沸き立つ。
勢いに乗る平安は8回表、連続四死球を足掛かりとし、5番田島の内野安打の間に2塁ランナーの松田がホームを突く好走塁を見せる。しかし、これは間一髪タッチアウトとなり、流れを呼び込めきれない。非常にハイレベルな走塁であったが、落ち着いて守った日大三内野陣が一枚上手であった。
これで反対に勢いを得た日大三は8回裏、5番中村の幸運なテキサス性の2塁打でチャンスを迎えると、2アウト後に四球と相手のミスで満塁にチャンスを広げる。打席にはホームランを放っている一番金子。2-3から小寺の渾身のストレートは金子の背中に当たる死球となり、日大三の貴重な勝ち越し点が入った。
リードを得た河村は9回の平安の攻撃を三者凡退で封じ、優勝した2011年以来の8強入りを達成。強豪復活を印象付けた。
日大三はその後、準々決勝では下関国際の鶴田に7回まで無安打に抑えられながらも、8回に一挙3点を奪う会心の逆転勝利を達成。例年のような大型チームではなかったが、しぶとい打者と層の厚い投手陣で成し遂げた4強入りは小倉監督に新たな自信を与えるものだっただろう。
一方、この大会で通算100勝の呪縛から解き放たれた龍谷大平安は翌年春も主将となった水谷を中心に8強まで進出。そつのない戦いと勝負強い打撃、安定したディフェンスは脈々と受け継がれており、これからも平安が甲子園を沸かせてくれそうだ。
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