2024年選手権準々決勝
京都国際vs智辯学園
51% 49%
〇7-3 札幌日大 〇9-6 岐阜城北
〇4-0 新潟産大付 〇2-1 健大高崎
〇4-0 西日本短大付 〇6-3 小松大谷
2021年夏の準決勝以来となる両校の対戦。近畿勢同士の一騎打ちだが、今回は少し京都国際に分があるか。
京都国際は中崎・西村の強力な左腕2枚看板を擁し、交互に先発完投している。おそらく次は西村の先発が予想され、疲労度を考えてもある程度余裕がありそうだ。その西村は2回戦で強打の新潟産大付打線を完封し、自信をつけている。左腕からのチェンジアップは、相手打者が「止まって見えた」と評すほど、タイミングを外せるボールであり、攻略は容易ではない。6四死球を出しはしたものの、打たれたヒットはわずか3本であり、打者の左右を問わず、決め球として効果的だ。後ろには3回戦で完封した中崎もおり、不安はない。
対する智辯学園打線は、3回戦は効果的な加点で6得点を挙げ、ここにきて調子を上げてきた。1番佐坂、3番山崎の二人が当たっており、彼らの前にランナーをためることができれば、得点力はぐっと増すだろう。また、4番の中道にマルチヒットが出たことも好材料だ。1回戦から大幅に打順を組み替えており、好調な打者を上位に固めたことで得点力を増した印象。西村のチェンジアップを佐坂、中道ら右打者がいかに攻略するかがカギになる。
一方、智辯学園の左腕・田近もチェンジアップを武器とする好投手。非常にブレーキがあり、腕も振れているため、低めに決まりさえすればそうは打たれないだろう。ただ、3回戦では120球以上を投げており、7回まで投げたところで降板。疲労でボールが高くなると打たれる可能性が出てくる。智辯学園も後続に左腕・浅井、右腕・田中ら複数の投手は控えてはいるが、京都国際の2枚看板と比較すると、少し不安はある。田近が球数少なく、前半から打たせて取る投球ができるかがカギになる。
対する京都国際打線は、上位から下位まで満遍なくヒットが出ており、スタメンのほとんどが打率3割以上をマーク。特に1番金本から4番藤本までは全員が打率4割以上と打力に関しては自信を持つ。ただ懸念があるとすれば、3回戦で16安打を放ちながら4得点とややもったいない攻撃が見られた点か。ここからは試合巧者ばかりが相手になるだけに、ちょっとした攻撃のミスで流れを失いかねない。疲労がたまってくるであろう投手陣を援護するためにも、犠打・走塁を含め、きっちりチャンスを活かす野球をしていきたい。
試合展開としては、京都国際の打線を序盤、智辯学園の田近がどうかわすかがポイントになる。攻略されるようなら、京都国際のペースだが、3回戦のように突き放し切れない展開になると、終盤勝負に強い智辯学園が後半盛り返す可能性はある。智辯打線としては序盤ビハインドを背負ったとしても、焦らずじっくりと京都国際のW左腕攻略の布石となるような打席を積み重ねたいところだ。
主なOB
智辯学園…秦裕二(横浜)、岡崎太一(阪神)、岡本和真(巨人)、廣岡大志(巨人)、前川右京(阪神)
京都国際…曽根海成(広島)、清水陸哉(ソフトバンク)、上野響平(日本ハム)、中川勇斗(阪神)、森下瑠大
奈良 京都
春 1勝 0勝
夏 1勝 2勝
計 2勝 2勝
対戦成績は春は奈良勢が、夏は京都勢がリード。
2016年の選抜準決勝では龍谷大平安と智辯学園が対戦。甲子園通算100勝まで後1勝だった平安が、エース左腕・市岡の好投で1点をリードしていたが、最終回に智辯学園が4連打を浴びせてサヨナラ勝ち。勢いに乗って決勝でもサヨナラ勝ちし、同校として初の全国制覇を成し遂げた。
一方、夏は1993年の2回戦で郡山・大内、京都西・細谷の好左腕対決が実現。終盤に青山の逆転2ランが飛び出した京都西が4-2と競り勝ち、この大会ベスト8まで勝ち進んだ。
また、記憶に新しいところでは、2021年夏の準決勝で今回対戦する智辯学園と京都国際が激突。智辯学園が先発・小畠の先制3ランで主導権を握り、投げては小畠が手元で動くボールを武器に京都国際打線をわずか3安打に抑え、1失点完投で同校初の決勝進出を決めた。
思い出名勝負
2016年選抜準決勝
龍谷大平安
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2× | 2 |
智辯学園
龍谷大平安 市岡
智辯学園 村上
2016年の選抜大会は近畿勢が非常に好調な大会であり、ベスト8に前半をすべて近畿勢が占めたため、2回戦の中盤で早くも近畿勢から決勝進出校が出ることが決まっていた。そんな状況の中、準決勝第1試合で顔を合わせたのは、ともに準々決勝で同じ近畿の初出場校(滋賀学園、明石商)を退けた常連校2校であった。
智辯学園は前年は春夏ともにライバル天理に行く手を阻まれたが、1年時に甲子園のマウンドを経験したエース村上(阪神)が最終学年となり、近畿ベスト8ながら投手力の高さを買われて選出された。甲子園では開幕戦で福井工大福井を完封して初戦突破すると、2回戦では鹿児島実を相手に福元の2ランなどで逆転勝ち。
2年生の太田、福元が成長したことで秋に中軸を務めた高橋、村上、大橋を下位に回すことができ、打線に厚みができてきていた。準々決勝では不振だった1番納が4安打を放って復調し、エース村上も今大会2度目の完封勝利を挙げるなど、投打ともに調子を上げてきていた。
対する龍谷大平安は2013年から4年連続の選抜出場。前年までは高橋奎(ヤクルト、元氏と強力な左腕2枚看板がおり、守りが安定していたが、今年のエース左腕市岡はコントロールが課題。近畿大会準決勝では滋賀学園にまさかのコールド負けを喫し、強力打線とは引き換えに、守りで不安を抱えていた。
しかし、走り込みを重ねて制球が安定した選抜では初戦で明徳義塾を相手に1失点完投すると、打線も橋本・岡田の2者連続アーチなどで15安打7点を挙げて豪快に発進。2回戦、準々決勝は相手投手の好投の前に打線が苦しんだが、市岡は2回戦を完封、準々決勝は延長12回1失点完投と見違えるような好投を見せた。3試合で防護率0.60の頼れるエースに引っ張られ、甲子園通算100勝まであと1勝と迫っていた。
智辯学園・村上、龍谷大平安・市岡の両エースが先発マウンドに上がったが、お互い手の内を知り尽くしているもの同士ということもあり、両校の打線が序盤から積極的に打って出る。特に龍谷大平安は2回戦以降看板の打線が湿りがちであり、100勝のかかった子の試合こそはという気迫が伝わってきた。
3回表、平安は1アウトから2番久保田がヒットで出塁すると、2アウト後に4番橋本はストレートを強振してレフトに痛烈な打球を運ぶ。これを本来内野手ながらこの日は外野でスタメンに入っていた中村がはじいてしまい、その間に久保田が一塁から長駆ホームイン。平安が1点を先制する。しかし、続く2アウト2塁からの5番市岡のセンター前ヒットは、センター青木がダイレクト返球で2塁ランナーを刺し、追加点は与えない。
智辯学園はここまで3試合で14得点の打線がこの日は市岡の前に沈黙。低めに落ちるチェンジアップを決め球に市岡が貫禄の投球を見せる。1回から6回まで毎回のようにランナーを出すが、スコアリングポジションにランナーが進んでからの投球がまた素晴らしく、スコアボードには0が並び続けた。
これに対し、3回までに5安打を浴びた智辯学園・村上も中盤以降は立て直しに成功する。右肩の開きの少ないフォームから右打者のインサイドを正確に突き、龍谷大平安の強打者に踏み込みを許さない。平安としては村上攻略のキーマンだった左打者の岡田を7番に入れていたが、3四球でなかなか勝負してもらえなかったことも痛かったか。
すると、終盤に入って徐々に智辯学園が市岡を捕まえだす。7回裏、智辯学園は四球の7番大橋を犠打で進めて2アウト2塁とすると、9番青木が市岡の高めに入ったボールをレフトにはじき返す。2塁ランナーは3塁を回ってホームを狙うが、今度は平安のレフト岡田が好返球を見せてホームタッチアウトに。お互いに外野手の好返球で得点を阻止し、試合は1-0のまま進む。
だが、イニングが進むにつれて村上に封じられていった平安に対して、智辯学園は攻勢を強めていく。8回裏にも1番納のヒットを足掛かりに1アウト1,3塁のチャンス。ここは市岡が渾身の投球で4番福元、5番高橋を連続三振にきってとるが、確実に疲れが忍び寄っている投球であった。
そして、9回裏ついに智辯学園が市岡を完全に飲み込む。1アウトから7番大橋、8番中村がともに高めに浮いた変化球をセンターに返し、1,2塁。さらにここまで2安打の9番青木には強攻を指示すると、右に打ち返した打球はライト線にポトリと落ちるヒットになり、1アウト満塁とチャンスを拡大する。
ここで打席には1番納。大会序盤の不振から完全に断ち直ったトップバッターは市岡の0-1から甘めに入ったスライダーを見逃さなかった。センターに奇麗にはじき返した打球はチャージしてきた小川が後逸する間に2者が生還。智辯学園が9回1アウトからの4連打で逆転サヨナラ勝ちを収め、初の決勝進出を果たした。
智辯学園は大会前はエース村上が注目されていたくらいで決して前評判の高いチームではなかった。しかし、村上-岡沢のバッテリーを中心とした堅守をベースに、太田・福元の2年生の主軸が成長した打線が厚みを増したことで、気づけば優勝を狙えるチームへと変貌していた。決勝では高松商をまたもサヨナラで下し、初優勝を達成。決勝打を放った村上は、開幕戦の初球を投じており、まさに「村上に始まって村上に終わった」大会となった。
一方、龍谷大平安はあと2アウトから逆転サヨナラ負けを喫し、この試合での100勝達成はならなかった。しかし、秋にコールド負けを喫したチームが、2年前の全国制覇に続いて上位進出を果たしたことで、ここ数年の勝てなかった流れは完全に払しょくした感があった。2年後の2018年夏の第100回大会で通算100勝を達成し、原田監督は男泣き。今も京都の高校野球の中心に「HEIAN」がいるのは間違いない。
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