大会4日目第1試合
宮崎商
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 | 3 |
0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 2 | 0 | × | 4 |
中京大中京
宮崎商 上山→小野
中京大中京 中井→田中
全国最多優勝の名門校と3年前のコロナ辞退の雪辱に燃える伝統の対決は1点にしのぎを削るクロスゲームに!終盤に再逆転を果たした中京大中京が2015年以来となる夏の甲子園の勝利を挙げた。
試合
中京大中京は昨年から試合経験の多いメンバーが複数おり、今年は激戦の愛知大会を勝ち抜いて7年ぶりの代表切符を勝ち抜いた。左腕エース中井もその一人で有り、182㎝の長身から繰り出す角度のある速球が武器だ。一方、宮崎商は3人の右腕の継投で勝ち抜いてきた。この日は右腕・上山が先発。継投のタイミングがカギを握ると思われた。
1回表、中京・中井は2番平生に四球を与えるも、後続を打ち取って無失点の立ち上がり。一方、上山は2番岡部に初ヒットを打たれると、失策もあって1アウト1,2塁と先制のピンチを迎える。しかし、捕手・谷口が2塁ランナー岡部の盗塁を防ぎ、2アウト。後続も打ち取り、こちらも無失点でしのぐ。名門の仕掛けに対し、バックの落ち着いた守備がエースを支える。
初回を無難に切り抜けたことで、序盤は両投手ともにヒットこそ打たれるものの、安定した投球を展開する。中井は、武器であるスライダーが威力を発揮し、右打者のインサイドに沈むボールで空振りを奪う。3回は連打に暴投が絡み、先制のピンチを迎えるものの、要所を締め、得点を与えない。一方、宮崎商・上山もスライダーを武器に粘投。アウトコース低めを丁寧に突く投球で丁寧に投げる。こちらも2回、3回とヒットを浴びてランナーを背負うが、後続を封じて無失点で切り抜けていく。
ともにスライダーを武器としており、この決め球をどう攻略するか。打者一巡し、先に一歩前に出たのは中京大中京であった。
4回裏、先頭の杉浦がアウトコースに狙いをしぼり、キレイな右打ちで出塁。続く5番仲のエンドランは上山のグラブをはじく当たりとなり、ランナーを進めて1アウト2塁となる。すると、6番村上の打席で杉浦が初回の攻撃に続いて、三盗を敢行。これが捕手の悪送球を誘い、一気にホームを陥れる。名門らしい、実にそつの無い攻めだ。
先手を取った中京はなおも、宮崎商を攻め立てる。村上が杉浦と同じような右打ちで出塁すると、7番福田はタイム明けの初球ストレートを躊躇なく引っ張り、レフトへヒット。二巡目に入り、各打者の打撃に迷いがない。8番中井は犠打失敗に倒れるが、暴投でそれぞれ進塁。9番松山の打球はまたも上山のグラブをはじく当たりとなり、内野安打で2点目を手にする。序盤は、中京が2点リードで試合を折り返す。
しかし、グラウンド整備明けの6回表、今度は宮崎商がペースをつかむ。先頭の3番甲斐がインサイドのスライダーに詰まらされながらも、右方向へ打ち返す打撃で出塁。4番上山が四球でつなぐと、5番倉谷は初球で犠打をきっちり決める。リズムのいい攻撃で1アウト2,3塁とすると、6番日高は初球ストレートをきっちりセンターに打ち返して、まず1点。さらに7番小倉は真ん中寄りに入った速球をとらえると、打球はセンターの頭上を破るタイムリー3塁打!高めに浮いたボールを逃さず、一気に同点に追いつく。中京はここで2番手の右腕・田中にスイッチする。
なおも2アウト3塁の勝ち越しのチャンスは逃すものの、追いついた宮崎商に勢いが出てくる。7回表、注目の好打者の1番中村がストレートを引っ張り、ヒットで出塁。犠打と外野フライによるタッチアップで2アウト3塁となる。ここで、4番上山はカウント2-1からアウトコースの速球が甘く入るところを逃さない。打球は強烈な当たりでレフトの前に弾み、中村がホームイン。ついに宮崎商が逆転に成功する。
こうなると、宮崎商としては継投のタイミングが難しくなる。7回裏、中京は1アウトから1番神谷がセンターへのテキサス性のヒットで出塁。内野陣が外野深くまで追いかけたため、2塁ベースががら空きになったところを逃さず、神谷は2塁を奪う。そつの無い走塁で迫ってくる中京の圧力。2番岡部は投手ゴロで2アウト3塁となるが、3番山田は敬遠気味の四球で歩かせ、逆転のランナーも塁に出る。
一打同点の場面で打席には主砲・杉浦。上山の球数も100球を超える。宮崎商バッテリーも細心の注意を払っての投球だったが、カウント2-2からのアウトコース低めのスライダーを杉浦は、よく我慢して引き付け、うまく三遊間に転がす。決していい当たりではなかったが、杉浦の粘り勝ち。サードとショートの間をしぶとく破り、同点に追いつく。さらに、5番仲は高めに浮いたスライダーを逃さずとらえ、今度はいい当たりのレフト前ヒット。レフト吉田の好返球も2塁ランナー山田が好走塁でホームを陥れ、中京が再び試合をひっくり返す。
逆転に成功した中京は、8回、9回と2番手の右腕・田中が宮崎商打線に一人も出さない好投を見せた。やや変則的なフォームだが、ストレートに非常に勢いがあり、縦に落ちる変化球との高低の差で相手達者を翻弄する。終盤の短いイニングを任せるにはうってつけの投手である。最後は2番平尾をライトフライに打ち取って試合終了。取っては取られの好ゲームを制した中京が、9年ぶりの勝利で2回戦進出を決めた。
まとめ
中京はらしさ全開の野球で、接戦を制し、初戦突破。特に2度にわたって仕掛けた三盗や相手守備陣のスキを逃さず二塁を奪った場面など、すきのない走塁はさすが中京と思わせるものがあった。宮崎商バッテリーに序盤から圧力をかけつづけたことで、終盤にボディブローのように効いてきたことは想像に難くない。4番杉浦を筆頭にコンパクトな打撃も光った。
また、投げてはスライダーが武器の左腕・中井から右腕・田中への継投で、一時逆転は許したものの、3失点でまとめる投球を見せた。タイプの違う2人がつないだことで、効果的なリレーとなった。春夏11度の全国制覇を誇る名門中の名門。この夏ももちろん目指すのは頂点だ。
一方、宮崎商も中京を相手に一歩も引かない戦いを見せ、実に素晴らしい内容の試合だった。上山は丁寧な投球でしぶとい中京打線を相手によく踏ん張り、打線も終盤に一時は逆転に成功。特に攻撃のリズムが非常によく、犠打もしっかり初球で決めて流れるような攻めを見せた。
3年前にコロナで出場辞退となった悲劇を乗り越え、戻ってきた甲子園。雪辱の舞台で勝利こそ挙げられなかったものの、自分たちの力は十分に出し切った戦いだったと言えるのではないだろうか。
コメント