2024年選手権1回戦 大坂桐蔭vs興南(2日目第1試合)

2024年

大会2日目第1試合

興南

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
0 0 3 2 0 0 0 0 × 5

大坂桐蔭

 

興南     田崎→金城

大坂桐蔭   中野

春夏連覇経験校同士の対戦となった第1試合は、大阪桐蔭打線が中盤に興南のエース左腕・田崎を攻略。2年生右腕・中野の好投もあり、投打ががっちりかみ合って、初戦突破を果たした。

試合

興南の先発は最速149キロをマークする本格派左腕・田崎。過去、島袋(ソフトバンク)、比屋根宮城(オリックス)と続いた興南の好左腕の系譜に恥じない、実力派左腕だ。一方、大坂桐蔭の先発は2年生右腕の中野。エースの平嶋やスケールの大きいもう一人の2年生右腕・の陰に隠れてはいたが、しっかりと実力を磨き、この夏はエース格としてチームを牽引してきた。

試合は立ち上がり、興南の先頭打者・山川が基本に忠実なセンター返しでショートへの内野安打を放つ。しかし、続く2番石川の犠打は失敗。中野の球威とキレが素晴らしかったのだが、興南としては攻撃のリズムを作るうえで決めておきたいところだった。その後、4番丹羽も四球でつなぎ、チャンスを広げるが、5番仲野を三振に切って取り、中野の立ち上がりを捕まえきれない。

一方、興南のエース田崎は抜群の立ち上がり。ストレートの最速こそ140キロ台前半だったが、切れ味抜群のスライダーで空振りを奪う。猛者ぞろいの大阪桐蔭打線と言えども、なかなか簡単に攻略できるボールではない。1,2回と一人のランナーも出さず、会心の出だしとなる。対する大坂桐蔭の中野も2回以降は徐々に自分の持ち味を取り戻し、試合は0-0で3回裏に突入する。

この回、先頭の7番岡江が左投手攻略のお手本となるような右打ちで出塁する。8番山路の犠打は失敗に終わり、嫌な形になるが、続く9番中野も四球を選び、1,2塁。打席にこの夏好調の1番吉田を迎える。打者2巡目となり、打線全体で情報共有もしてのバッターボックス。田崎の得意とする低めのスライダーを見極め、カウントは1-3となる。興南バッテリーとしては満塁で上位打線は避けたいところ。カウントを取りに来た速球がやや内寄りに入ると、これを吉田は逃さない。打球は右中間を深々と破るタイムリー3塁打となって大阪桐蔭が2点を先行する。

興南バッテリーとしてはショックの残る失点。さらに続く2番宮本は間髪入れずに初球のストレートをセンターから逆方向に打ち返し、3点目。相手の精神状態も見越しての打撃は、さすがの一言である。

この3点で余裕を得た大阪桐蔭は、4回裏にも興南・田崎を攻め立てる。1アウトから6番増田、7番岡江の右打者がいずれも入ってくるボールに対し、しっかりととらえて連打。さらに8番山路は高めの速球を逆らわずにレフトへ流し打って満塁と、下位打線の3連打で田崎を追い詰める。ここで9番中野は押し出しの四球を選び、4点目。さらに1番吉田の内野ゴロの間に5点目と、そつのない攻撃で着実に得点を重ねていく。

中盤に入って低めのスライダーに手を出さず、高めに浮いたストレートを逃さずとらえる。常勝・大阪桐蔭の野球が戻ってきたと感じさせるような見事な攻撃で、大会屈指の好投手を攻略して見せた。見事としか言いようのない攻撃である。

反撃したい興南は5回表、先頭の6番田沢がライトへのヒットで出塁。内野ゴロ2本の間に3塁へ進み、9番嘉数に託す。その嘉数はやや甘く入った速球を鋭くセンターに打ち返していく。同点かと思われた瞬間、先制打を放っていた1番センターの吉田がダイビングキャッチ。興南の反撃の芽になりかけた打球が摘み取られてしまう。夏までは負傷で苦しんでいた男が、大舞台で攻守にわたって大活躍を見せる。

試合は後半戦に入り、なんとか追い上げを見せたい興南打線だったが、その前に中野がたちはだかる。多彩な変化球で安定してカウントが取れ、ストレートも球威がある。点差も5点あることで、興南らしい細やかな攻撃も使いづらい状況となり、中野は淡々とアウトを積み重ねていく。一方、興南も田崎金城の幼馴染の継投リレーで5回以降は大阪桐蔭打線の攻撃を0封。中盤に失点はしたものの、試合後半は守りのリズムを作る丁寧な投球を二人とも見せた。

中野は最終回に3番久高にこの日4本目となるヒットを許したものの、最後までその安定感ある投球は崩れず。最後は4番仲本をストレートでショートゴロ併殺に打ち取り、ゲームセット。この試合無失策の堅守も光り、1回戦屈指の好カードを制した大阪桐蔭が2回戦進出を決めた。

まとめ

大坂桐蔭は春以降、メンバーの入れ替わりがあり、不動の4番だったラマルはスタメン外、エース番号を背負っていた平嶋も大阪大会では数イニングの投球と、主役が大きく入れ替わった。しかし、逆に言えば、競争が激しく、好調な選手を使う中で、いい緊張感が生まれ、チームを作り直してきたのだろう。この日の好左腕・田崎を攻略した打撃、中野を中心にしたスキのない守りと、優勝を積み重ねてきた大阪桐蔭が戻ってきたと感じさせるような野球を見せた。

常にトレンドが移り変わり、勝ち続けるのが難しい高校野球。そんな中で、常に勝利を求められる立場となった大阪桐蔭は苦しい立場にい続けるのは間違いないだろう。しかし、そんな中でも這い上がって、チームを作り直してきた今年の桐蔭には、逆境を乗り越えてきた強さを感じる。選抜王者の健大高崎など強豪ひしめくブロックに入ってはいるが、今年の桐蔭には優勝の可能性を感じさせる力が、たしかにある。

一方、興南としてはエース田崎が攻略されてしまったが、これは大阪桐蔭打線の対応力の高さを褒めるしかないだろう。惜しまれるとすれば、攻撃で犠打が決まらなかったことか。少ないチャンスを活かしての接戦に持ち込みたかったが、その展開はかなわなかった。しかし、5回以降は大阪桐蔭の攻撃陣を無失点に抑え、きびきびとして守備はさすが興南と思わせるものであった。

我喜屋監督の指導の下、人間力の高い野球を見せる興南。そう遠くないうちに、再び甲子園に帰ってくるだろう。

大阪桐蔭―興南 3回裏【第106回全国高校野球選手権大会】 (youtube.com)

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