2024年選手権1回戦 大社vs報徳学園(5日目第3試合)

2024年

大会5日目第3試合

大社

1 2 3 4 5 6 7 8 9
2 0 0 0 0 0 1 0 0 3
0 0 0 0 0 0 0 0 1 1

報徳学園

 

大社     馬庭

報徳学園   今朝丸→間木→伊藤

選抜準優勝校の報徳学園有利と謳われた試合は、予想に反し、大社が終始試合を支配した。注目の本格派右腕・今朝丸を攻略し、そのリードをエース馬庭の投球で守り抜いた大社が、実に63年ぶりとなる甲子園1勝をつかみ取った。

試合

報徳学園は今大会最注目の長身右腕・今朝丸が先発。一方、大社も絶対的エースの左腕・馬庭が先発のマウンドに上がった。

1回表、大社はいきなり1番藤原が変化球に合わせ、うまくライト線に落とす。しかし、ここはライト安井の好守で2塁を狙った藤原を刺し、タッチアウト。これで報徳学園は乗っていくかと思われたが、2番藤江はサード西村を強襲する内野安打で出塁する。初回から今朝丸の速球に対し、各打者がしっかりミートしている。続く3番石原の打席で盗塁を仕掛けると、捕手・徳田の強肩をかいくぐって成功。大社アルプスは大盛り上がりとなる。

石原は四球で続くと、4番高梨はセカンドゴロになってしまうが、送球を受けたショート橋本がまさかの落球。拾いなおして1アウトは取るが、選抜で再三好守を見せていたショートのミスに動揺が走っただろう。続く5番下条はインサイド低めの速球をとらえると、打球はセンターの前に弾んで大社が1点を先制する。さらに、3塁を狙った1塁ランナーの高梨を刺そうとしたセンターの送球がそれる間に高梨が一気にホームイン。転がった送球を拾いに行くサード西村のプレーが少し緩んだところを逃さなかった。

この2点は数字以上の価値があった。まず、絶対の自信を持つ相手エースを叩いての得点であること。そして、守備に自信を持つチームに2つのミスが出ての得点であること。甲子園の神様が大社に味方するには十分すぎる要因である。

報徳打線は、序盤で1点でも返しておきたいところだが、大社の左腕・馬庭のゆったりとしたフォームから繰り出す、キレのあるボールの前に差し込まれてしまう。序盤からシングルヒットこと出るものの、大社バッテリーの術中にはまるような打撃が続き、緩急とコースの出し入れの前に翻弄される。また、非常にテンポもいいため、報徳の各打者としては考える前に追い込まれてしまう場面が多かった。

ただ、報徳のエース今朝丸も初回はストレートを狙い撃ちされるが、2回以降は変化球の割合を少し増やし、持ち味の速球の生きる投球となる。高めの速球で空振りを奪う、本来の今朝丸のピッチングで、自軍の援護を待つ。

試合は大社の2点リードで後半戦へ。しかし、地元の大声援を受ける報徳学園に対し、次の1点を先に挙げたのは大社であった。

7回表、1アウトから5番下条が変化球をうまく拾い、ヒットで出塁。盗塁は徳田の好送球で刺すが、2アウト後も大社の攻撃は続く。6番高橋がカウント1-3からストライクを取りに来たストレートを狙い撃ち。レフトへのヒットで出塁すると、7番馬庭はアウトコースのストレートを流し打ち、サードへの内野安打とする。報徳はこの日、惜しい守備のプレーがことごとくセーフになる。

2アウト1,2塁。もう1点も与えたくない場面だったが、8番園山馬庭と同じようにアウトコースのストレートを流し打ち。レフトへのタイムリーヒットとなり、大社が大きな3点目に手にする。ここでついに報徳・大角監督今朝丸をあきらめ、2枚看板の一人である間木にスイッチ。間木は後続を打ち取り、終盤の攻撃に託した。

7回裏、早く1点を返したい報徳は、6番山岡、7番徳田が連打を放つ。馬庭のフォーム、ボールにタイミングが取れはじめ、ともに逆方向への打撃で活路を見出す。犠打できっちり送ると、ここで大角監督は勝負をかけ、間木の打順で代打・中川を送る。2枚看板をさげてでも1点が欲しい場面。しかし、ここで中川は無念の三振に倒れると、1番西村はセンターフライに打ち取られる。最低でも1点は欲しいイニングだったが、馬庭が大きく報徳学園の前に立ちはだかる。

苦しい展開となった報徳だが、8回、9回と左腕・伊藤がスコアリングポジションにランナーを背負いながらも、なんとか得点を与えずにしのぐ。選抜までは2枚看板中心に戦っていたが、春から夏にかけて投手陣がさらに分厚くなったところは、報徳の成長した部分であった。

3点差で迎えた最終回。報徳は1アウトから当たっている6番山岡が四球を選ぶも、後続が打ち取られて2アウト。ついに土俵際まで追い込まれる。しかし、ここで8番安田はストレートをセンターに基本に忠実な打撃で打ち返し、チャンスをつなぐ。左打者の多い報徳打線がここにきて馬庭攻略の手がかりをつかみ始める。続く投手・伊藤のところで代打・貞岡が登場。カウント2-2からアウトコースに逃げるスライダーをとらえた打球は、ショートの横を破るタイムリーとなり、ついに報徳のスコアボードに「0」以外の数字が刻まれる。

さらに続くチャンスで打席には1番西村。昨年の選抜の東邦戦ではサヨナラ打を放った選手だ。カウント2-2となり、迎えた5球目、アウトコースのストレートを叩いた打球は、ショート藤江のグラブをはじく当たりに。一瞬オールセーフかとなったが、、、藤江は飛び出した3塁ランナーを冷静に刺し、試合終了。最後は相手の走塁ミスを逃さなかった大社の冷静さが光り、戦前からの島根の伝統校が地元の優勝候補を見事に打ち破ったのだった。

まとめ

大社は投攻守に報徳を上回り、勝つべくして勝った試合だった。初回から今朝丸のストレートにしっかりアジャストし、積極的な走塁も絡めて先取点を奪った。確かに報徳守備陣のミスもあったが、大社攻撃陣の圧力が誘発したものだったとも言えるだろう。やはり、甲子園という大舞台での戦いにおいては、先手必勝という格言が確実に存在しているのだ。

また、投げてはエース馬庭が安定感抜群の投球で報徳打線を翻弄。最終回の異様な雰囲気の中でも冷静に投げ切ったメンタルの強さも素晴らしかった。32年ぶりというブランクを感じさせない戦いぶりで、伝統校が一躍クローズアップされる結果となった。

一方、報徳としては守備も走塁のミスが敗因ではあるが、ペース争いで後手を踏んだこと、エース今朝丸が攻略されたことを考えると完敗と言って差し支えない試合内容だった。今朝丸間木を中心とした投手陣が先行逃げ切りでリードを守り切るのが勝ちパターンだっただけに、今日のような試合展開になると、ひっくり返すのは難しかったのかもしれない。出場4大会連続で上位進出を果たしていた同校だったが、この日は初戦の難しさを感じる結果となった。

大社―報徳学園 1回表【第106回全国高校野球選手権大会】 (youtube.com)

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