2024年選手権1回戦 新潟産大付vs花咲徳栄(3日目第1試合)

2024年

大会3日目第1試合

新潟産大付

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 0 0 1 1 0 0 2
1 0 0 0 0 0 0 0 0 1

花咲徳栄

 

新潟産大付   宮田→田中

花咲徳栄    上原

2017年の全国制覇を経験している花咲徳栄に初出場の新潟産大付が挑む構図かと思われた試合は、新潟産大付が地に足の着いた試合運びで真向から強豪と対峙。腰を据えて試合をひっくり返し、初出場初勝利の快挙をやってのけた。

試合

花咲徳栄は本格派のエース右腕・上原が先発。一方、新潟産大付は県大会を3人の右腕の継投で勝ち上がってきたが、この日はエースナンバーを背負った宮田に託した。

1回表、上原は本格派右腕にありがちな立ち上がりの乱れもなく、新潟産大付打線の攻撃を内野ゴロ3つで退ける。新潟大会で強豪を次々打ち破ってきた力のある打者陣であり、岩井監督も細心の注意を払っていたが、まずは一安心の立ち上がりである。一方、新潟産大付の右腕・宮田も花咲徳栄の強力打線に対し、初回は三者凡退のスタート。1番斎藤のファーストライナーを川口が好捕し、エースを助けた。

先制点の欲しい両チーム。突破口を開いたのは今大会注目の強打者である花咲徳栄の4番石塚であった。2回裏、先頭で打席に入ると、アウトコースのストレートを引っ張ってレフトへのヒットで出塁。打球の速さはやはり別格と思わせるものがある。続く5番田島の打席ですかさず盗塁を敢行すると、その田島の外野フライでタッチアップして3塁へ。ここで6番横山がきっちりセンターへ打ち上げ、石塚が生還する。打撃だけでなく、走塁の判断、スピードも兼ね備えた好選手である。

先制点を奪われた宮田ではあるが、安定したコントロールでコースを突き、花咲徳栄の強力打線に対しても動じるところはない。打撃がいいうえに走力も兼ね備えた選手が多い花朔徳栄だが、バッテリーを中心にしっかり守り、打たれても次の決定打は許さない。ストライクが欲しい場面でも決して置きに行かず、変化球でコーナーを突く。丁寧な投球で自軍にしっかり守りのリズムをもたらしていく。また、バックも3回裏に2塁を狙ったランナーを見事な中継プレーで刺すなど、花咲徳栄のスピード感のある攻撃に決して乱されなかった。

一方、花咲徳栄の上原はストレート中心に強気の投球を展開。140キロ台中盤の速球でぐいぐい押し、新潟産大付打線に対して、強気の投球を見せる。4回、5回にはいずれも複数のヒットを浴びて、ピンチを招くが、後続を打ち取って無失点。ややストライク先行になりすぎたところを狙われたが、最後は勝負所でインコースを強気に突く投球で決定打を与えなかった。

試合は花咲徳栄が1点リードで後半戦へ。しかし、試合前に優位が予想され、強力打線を誇る花咲徳栄としてはやや思い描いていた展開とは違ったか。一方、新潟産大付としては強豪相手に1点差で食らいつく状況。ロースコアに持ち込む狙いを体現しており、また、中盤になって低く強い打球が出始め、上原攻略のヒントをつかみかけていた。

すると、後半戦のスタートのイニングとなる6回表。新潟産大付打線がついに相手エースをとらえる。

この回、先頭の4番多田が高めの変化球をとらえてレフトへのヒットで出塁。中盤まではエンドランなど打って打っての攻撃だったが、ここにきて5番川口に犠打を命じ、勝負をかける。この後、暴投で3塁へ進むと、2アウトから7番千野がこれも高めのスライダーをとらえて左中間へ快打。多田と全く同じような打撃で、試合を振り出しに戻すとともに、新潟産大付の記念すべき甲子園初得点となる。

同点に追いついた新潟産大付は6回から2番手で右腕・田中がマウンドへ。ややスリークオーター気味の変則的なフォームから投じるシュート気味のボールが持ち味。花咲徳栄はその代わり端、2番目黒がヒットで出塁するが、3番生田目が併殺に打ち取られ、チャンスを広げきれない。次が4番の石塚だっただけに、もったいない攻撃であった。

後半になって変わり始めた試合の流れ。7回表になっても新潟産大府の勢いは止まらない。この回、1番戸嶋が逆方向への打撃でライトへのヒットを放つと盗塁で2塁へ。2番平野の投手ゴロでランナーが入れ替わり、3番高橋のセカンドゴロで2アウト3塁となる。序盤は上原のボールの勢いにやや押され気味だったが、初出場の勢いなのか、新潟産大付ナインが確実にジャストミートし始める。4番多田はカウント0-1から内寄りの速球をとらえると、打球はサードの横を痛烈に切り裂くタイムリーとなり、新潟産大付がついにリードを奪う。

逆転を許した花咲徳栄。左打者の多い打線であり、右サイド気味の右腕・田中に対し、タイミングは取りやすいか。勝ち越しを許した直後の攻撃で6番横山が死球を受けると、果敢に盗塁を仕掛け、得点圏にランナーを進める。しかし、田中宮田と同様に決して安易にストライクを取りに行かない。カットボール、スライダーをコーナーぎりぎりに投じ、花咲徳栄打線のスイングをかわす。ボール自体は決して際立ったものではないが、攻めていく姿勢がバッテリーから伝わってくる、そんな投球だった。

また、新潟産大付は勝ち越した後も打線は、攻撃的な姿勢を取り続ける。得点にこそつながらなかったが、8回、9回とランナーが出るとすかさず盗塁を敢行。「挑戦者が守っていてはベルトは取れない」という格言通り、最後まで攻めに攻め抜いた9イニングであった。

試合は新潟産大付の1点リードのまま最終回へ。強力打線のチームを向こうにまわし、1点リードという緊迫した展開でも、田中の投球は崩れる気配がなかった。花咲徳栄は3番生田目からの好打順であったが、徹底してアウトコース低めを突かれ、快打が出ない。最後は5番田島をセンターフライに打ち取って試合終了。新潟産大付が見事な試合運びで花咲徳栄を下し、初めての甲子園で堂々勝利を収めた。

まとめ

新潟産大付は攻守にわたって攻めの姿勢を貫き、優勝経験校を向こうに回して堂々と勝利を収めた。攻撃陣は花咲徳栄のエース上原から11安打を放ち、得点こそ2点どまりだったが、終始圧力をかける攻撃を見せた。戸嶋多田ら上位打線を中心に甘いコースに来たボールはことごとく痛打。中盤はエンドランを多用してぴレッシャーを与え、勝負をかけた6回、7回は犠打でしっかり送るというしたたかさも見せた。

また、投手陣も宮田田中の継投で花咲徳栄の強力打線を1点に抑え、会心の投球を見せた。強打とスピードを兼ね備えた徳栄打線に対し、動揺することなくコースを突き続け、決定打を与えなかった。また、1つ先の塁を狙う攻撃を、冷静な守備で刺したバックの好守も見逃せないだろう。初出場とは思えない落ち着いた試合運び。この勢いと強さは本物だ。

一方、花咲徳栄はV候補に挙げられ、実際にその力はあったと思うが、やはり初戦の入りは難しかったか。勝負所でどうしても打たされてしまい、技巧派右腕のリレーの前にかわされてしまった印象だった。先発した上原は2桁安打を浴びながらも2点に抑え、先発としての仕事は十分に果たしていた。それだけに、やはり攻撃型のチームとして1得点に終わったのは、悔しいところだろう。

ただ、5年ぶりに戻ってきた聖地で、好試合を展開したことは事実。2回に先制のホームを踏んだ4番石塚の強打と走塁など、実力の片りんは見せつけた。この日の悔しさをばねにここから新たな伝統を作っていくだろう。

花咲徳栄―新潟産大付 7回表【第106回全国高校野球選手権大会】 (youtube.com)

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