大会5日目第1試合
早稲田実
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 1 | 1 | 8 |
2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 4 |
鳴門渦潮
早稲田実 中村→川上
鳴門渦潮 岡田
序盤から激しい攻防となった第1試合は、早稲田実が主将・宇野の逆転走者一掃打でペースをつかみ、常に試合をリード。鳴門渦潮の追い上げをかわし、快勝で2回戦進出を決めた。
試合
早稲田実は2年生左腕の中村が先発。西東京大会で22失点と結果だけ見ると、かなり不安は残るが、伸び盛りの投手である。一方、鳴門渦潮のエース岡田は徳島大会をほとんど一人で投げぬいたタフネス右腕。早稲田実の強力打線にどう対峙するのか注目された。
1回表、鳴門渦潮の岡田は先頭の1番三沢を見逃し三振と絶好のスタートを切るが、続く2番にチーム1の好打者の宇野がいるのが早稲田実打線の怖いところ。木製バットを持って打席に入った主将は、2球目の速球を完ぺきにとらえると、さらにレフトの守備位置を見て一気に2塁を陥れる。この回は無得点に終わるものの、早稲田にムードを持ってくるような好走塁であった。
一方、ディフェンスにはやや不安を残す早実。1回裏、中村は1アウトから2番古住、3番森高に連続四球を与える。いずれも制球を乱したわけではないが、鳴門渦潮の各打者がよく見極めたものであった。ここで打席にはエースで4番とチームの顔である岡田。カウント1-1から甘く入ったスライダーをとらえると、打球は右中間に弾むタイムリーとなって1点を先制する。さらに、1アウト1,3塁から5番福山もストレートに詰まりながらもライトへはじき返し、この回2点を先行する。
ただ2点は先制されたとはいえ、早稲田実としてはある程度は想定内の展開だったか。2回表、腰を据えて岡田攻略に取り掛かる。
先頭の6番山中がアウトコース高めの速球をセンターに返し、出塁。犠打と四球で1,2塁とチャンスを広げると、9番瀧本がスライダーをたたきつけた打球はしぶとく1,2塁間を破り、チャンスを広げる。球場はコンバットマーチの大応援。ここで1番三沢を鳴門渦潮バッテリーが三振に打ち取り、2アウトとするが、続く打者は最も迎えたくなかったであろう2番宇野。
宇野はスライダーに狙いを絞りながら、ファウルで粘り、岡田の好球を待つ。そして、10球目、アウトコース高めのスライダーをとらえた打球はレフトフェンスを直撃する逆転タイムリー2塁打に!根競べで勝利したような内容の一打であった。岡田は何球もコーナーにいいスライダーを投じていたが、それでも攻略したところに宇野の打者の底力を感じた。
すると、早稲田実というチームは不思議なもので、あれだけ投手力に不安のあったチームのはずなのに、2回以降、中村が別人のように立ち直る。思えば、2015年の出場時も同じようなチームであったが、甲子園入りしてからの当時のエース松本の成長ぶりは、都大会とはもはや別人と思わせるものだった。2回から5回まで鳴門渦潮打線にヒットはおろかランナーすらも許さない投球を展開。早稲田実に守りからリズムをもたらす。
一方、2回に逆転打を許した岡田も3回以降は四球こそ出しながらも力のある速球とスライダーを武器に、早稲田実打線を無失点に封じていく。ただ球数は5回で早くも99球に到達。細心の注意を払って投げている分、どうしても球数がかさんでいった。同じ無失点でもスイスイと投げている中村と違って、少し後半戦に向かって不安が残ることとなった。
試合は後半戦に突入。6回に入り、ゲームが動き出す。
6回表、早実打線が岡田の打球をとらえだす。先頭の6番山中がセンターの頭上を襲う打球を放ち、これはセンターの好守に阻まれるが、会心の当たりを放つ。続く7番国光は高めのスライダーをセンターに返すと、8番内園には強攻策を指示。センターに落ちるヒットとなり、1塁ランナーは好走塁で3塁を陥れる。打撃だけでなく走塁も鍛えられており、しかも下位打線からのチャンスメーク。やはり怖い打線である。続く9番瀧本の内野ゴロの間に1点を追加。4-2とリードを広げる。
しかし、6回裏は鳴門渦潮も上位から。1アウト後、3番森高がセンターへのヒットを放ち、初回以来、久々のランナーとして出塁する。暴投で2塁へ進むと、打席には最も頼りになる4番岡田。初回はスライダーを右中間に引っ張られただけにバッテリーも警戒していたが、またもアウトコースのスライダーを拾われ、技ありの打撃でセンターへのタイムリーとなる。この日、2本目のタイムリーは、初回が「剛」ならば、「柔」のタイムリーであった。
食らいついていく鳴門渦潮だが、終盤に入り、岡田の球数は優に100球を超える。先頭の怖い宇野は打ち取るが、3番高崎、4番石原にいずれもセンターへのヒットを浴びる。今年の早稲田実打線はこのセンターへの意識が非常に強い。5番中村は投手ゴロとなるが、併殺崩れでランナーが残ると、6番山中、7番国光とレフトへ連続タイムリー。この当たりも決して無理のないコンパクトな打撃である。終盤になってボールの浮き始めた岡田にとっては真綿で首を絞めるような、じわじわとした攻撃だった。
7回裏、鳴門渦潮も四球で出た8番端村を内野ゴロで進塁させ、1番藤原のタイムリーで1点を返すが、早実は攻撃の手を緩めない。8回、鳴門渦潮守備陣の乱れにも付け込んでchanceを得ると、3番高崎の内野安打の間に2番宇野が好走塁で2塁からホームを陥れる。相手にダメージを与える機動力での追加点であった。9回にも得点を挙げた早稲田実が点の取り合いとなった試合を8-4で制し、2回戦へとコマを進めた。
まとめ
早稲田実は、スラッガータイプの打者は少ないが、上位から下位まで切れ目がなく、勝負どころでは好走塁で先の塁を奪う攻撃が光った。木製バットで快打を連発した宇野も2度にわたって、2つ先の塁を奪う場面があり、相手守備陣のスキを逃さないしたたかさが光った。投げては都大会で不安の残った左腕・中村が7回まで4失点の粘投。全国の舞台にきて、柱になる存在が出てきたのは非常に心強いだろう。
甲子園に出てくると強さを増すのが、早稲田実の伝統。過去幾度も大舞台で躍動してきたエンジのユニフォームが今年も暴れまわるのだろうか。
一方、鳴門渦潮も打力の高さは見せたのだが、エースで4番とチームの柱である岡田が、早稲田実の執拗な攻撃の前に攻略されてしまった。9回で球数は185球に達し、1イニング換算で20球以上を投じる結果に。それだけねちっこい早稲田実の攻撃がすごかったということなのだろう。ただ、打撃では2本のタイムリーを放ち、存在感を放つと同時に、鳴門高校に押され気味だった近年の徳島の高校野球において確かな足跡を残した1年になった。
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