大会1日目第1試合
滋賀学園
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
3 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 4 | 2 | 10 |
0 | 0 | 1 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 6 |
有田工
滋賀学園 脇本→高橋侠
有田工 石永→田中
2024年のオープニングゲームは、終盤まで同点で推移する好ゲームに。8回に集中打で突き放した滋賀学園が、15年ぶりの大舞台で夏の甲子園では初となる勝利を挙げた。
試合
ともに県大会では安定した投手力をベースに勝ち上がってきた両チーム。しかし、開会式直後の緊張感が残る雰囲気の中、序盤から荒れ模様の試合展開となる。
1回表、有田工の先発はチームの絶対的支柱である左腕・石永。粘り強さの光る投手。しかし、先頭の1番多胡にじっくりと選球されて四球を与えると、犠打で2塁へ進まれる。ここで注目の3番岩井は真ん中寄りに入ったスライダーをライトへ引っ張り、1,3塁とチャンスを拡大すると、4番岡田はアウトコース寄りのストレートを痛烈にセンターに返す。この打球が予想以上の伸びを見せて、センター井崎の頭上を越え、ランナー2人が一気に生還。滋賀学園が貴重な先制点を手にする。
有田工としては早めに落ち着きを取り戻したいところ。しかし、2アウト後に6番東坂の投手ゴロを石永がはじいてしまい、1.3塁とピンチが広がると、続く7番作田の打席で暴投が飛び出し、3点目が入る。やはり、開幕ゲームの初回の入りは、守りに自信を持っているチームでも難しいのだろう。
3点の援護をもらった滋賀学園の先発は、右腕の脇本。少しスリークオーター気味の腕の振りから繰り出すキレのある速球とスライダーを武器に、落ち着いた投球を見せる。特にスライダーは打者の左右を問わず、いつでもストライクが取れ、有田工打線を1,2回と3者凡退。機動力のある打線に対し、立ち上がりランナーすら許さない。
しかし、2回、3回と有田工は石永がランナーを出しながらも粘りの投球でリズムを作る。もともと四死球は多い方ではあるが、緩急をうまく駆使し、打たせて取っていく。ストレートもナチュラルにシュートするため、滋賀学園の打者のバットの芯を微妙に外されてしまう。
すると、3回裏、有田工打線が2アウトから反撃を開始する。9番大古場のサードゴロが悪送球を誘ってランナー2塁へ進塁。脇本が初めてセットポジションでのピッチングになると、続く1番丸田はインサイドの速球に詰まらされながらも、ライトへのテキサス性タイムリーとし、1点を返す。バッテリーとしては、狙い通りの打たせ方だったが、振り切った分、打球が外野まで飛んだ。
打者一巡目は、打ち取られながらも、脇本のボールをしっかり見極めていた有田工打線。4回裏、一気に脇本をとらえる。先頭の2番川尻がたたきつける打撃で内野安打をもぎ取ると、3番井崎にはバスターを指示。カウント0-1から打ち返した打球は脇本のグラブをはじき、打球は野手の間に転がって再び内野安打となる。ここで4番山口にもバスターエンドランを指示。アウトコース寄りの速球をとらえた打球は、1,2塁間を破る見事な右打ちとなり、有田工が1点差に迫る。
コンパクトな打撃に機動力を絡めた見事な攻撃。さらに、1アウト後、6番畑元の打席で捕逸が飛び出して同点になると、7番石永は自らライトへ勝ち越しのタイムリーを放つ。脇本はセットポジションになってやや制球が甘くなった面もあったか。それにしても、2巡目に入ってきっちりストレートに対応しだした有田工の攻撃は見事だった。滋賀学園サイドはこの回で、脇本を下げ、左腕・高橋俠に継投する。
逆転を許した滋賀学園だが、1回から4回まで毎回ランナーを出しており、石永に完全に抑え込まれている感はない。逆転を許した直後の5回表、好調な中軸が石永を再びとらえる。1アウト後、好打者の3番岩井がライトへこの日2本目となるヒットを放ち、出塁。変化球をしっかりためてとらえていく。続く4番岡田が死球を受け、1,2塁となると、打席には先ほど右中間への3塁打を放っている仲田が入る。アウトコース寄りの速球をややひっかけたような打撃になったが、打球は三遊間を破り、レフトへのタイムリーに。流して引っ張ってと、自在の打撃で試合を振り出しに戻した。
その後は、両左腕が踏ん張り、同点のまま試合は終盤へ。有田工・石永、滋賀学園・高橋俠と2人共軟投派の持ち味を出し、緩急と左右の出し入れでランナーを出しながらも、要所を締めて得点を許さない。
取って取られてのクロスゲーム。試合が決したのは8回表だった。この回、先頭の6番東坂がアウトコースのスライダーをうまくとらえてセンターへのヒットで出塁。すると、続く7番作田、8番高橋俠の犠打を有田工バッテリーが立て続けに処理ミスしてしまい、あっという間に無死満塁とピンチが広がる。ここで9番杉本が打席に入るが、2ストライク0ボールとなったところで、何と有田工が投手を1年生の田中に交代。カウント途中での交代は、あの常総学院の木内監督を思い起こさせるような驚きの継投である。
しかし、この交代に動揺することなく、杉本はアウトコース寄りのボールを見事にセンター返し。これが2点タイムリーとなり、滋賀学園が大きな勝ち越し点を手にする。さらにこの後、2番国仲も見事な流し打ちで2点タイムリーを放ち、8-4。有田工としてはチャージした外野手がいずれも打球をはじいてしまい、この日はどうしても守備からリズムを作れなかった。
9回にも2点を加えた滋賀学園は、最終回のマウンドにも左腕・高橋俠が上がる。しかし、有田工打線も8回に2アウト満塁のチャンスを作るなど、徐々に高橋俠のピッチングに合い始めていた。9回裏、8番前田、9番大古場が連打を放つと、1アウト後に2番川尻、3番井崎が連続タイムリーを放つ。高橋俠の緩急に苦しんできたが、ここにきてストレートも変化球も呼び込んで自分のポイントでとらえられるようになってきていた。積み上げてきたヒットはついに滋賀学園を上回る13本となる。
球場は、佐賀北のがばい旋風を豊富ととさせる異様な雰囲気に。なおも打席には4番山口が入る。しかし、最後はアウトコースのスライダーをとらえた二遊間寄りの打球がショート岩井の好守に阻まれ、併殺でゲームセット。両チームの打線が活発に打ち合った打撃戦を制し、滋賀学園が2回戦はコマを進めた。
まとめ
滋賀学園としては、序盤から先手を取り、逆転を許した直後もすぐに追いつく展開で、相手に流れを渡さない試合運びが光った。打線は、石永の緩急をつけた投球に打たされる場面もあったが、しっかり呼び込んで好球を叩く打撃を徹底し、終わってみれば10得点の猛攻であった。また、犠打の失敗がほとんどなかったところも、有田工より一歩先んじた要因だろう。投げては脇本が2巡目で捕まったが、左腕・高橋俠が見事な火消し役を完遂。緩いボールをうまく使い、脇本とのタイプの違いを活かした投球を見せた。
ここ数年は近江の黄金時代が続いていたため、なかなか出場機会のなかった滋賀学園。しかし、常に県上位を争い、力を蓄えてきていた強豪が、開幕ゲームでその地力の高さを発揮した試合となった。
一方、有田工は中盤に脇本をとらえた打撃と機動力が見事。バスターを駆使して、速球をコンパクトにとらえた打撃は素晴らしいものがあった。また、石永も立ち上がりに失点をしたとはいえ、持ち味の打たせて取る投球で、2回以降はエースとしての役割をしっかり果たしていた。惜しむらくは県大会で5試合3失策の守備陣は7失策と乱れたことか。ただ、開幕戦の緊張もあったゆえ、致し方ないところだろう。この日、1年生でマウンドに上がった田中など下級生も非常に多いチームであり、この悔しさを晴らす機会は来年につながっている。
コメント