大会3日目第3試合
菰野
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
1 | 0 | 1 | 1 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 6 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 2 |
南陽工
菰野 栄田
南陽工 阿部
甲子園初勝利を狙う菰野と久々の勝利を狙う南陽工の対戦。序盤からエース栄田の安定した投球と勝負強い打線でリードを奪った菰野が試合をリード。春夏4度目の甲子園でついに初勝利を手にした。
試合
菰野は県大会を5試合4失点にまとめた投手力が自慢。エース栄田は小柄ながらコントロールよく140キロ台の速球と変化球を配し、33イニング余りを投げてわずか2失点に抑えた。一方、南陽工は攻守に粘りが持ち味。県大会決勝ではV候補の下関国際を相手に食らいつき、終盤に見事の逆転勝利を挙げた。
どちらが持ち味をだせるかという中、立ち上がりに主導権を握ったのは菰野だった。
1回表、南陽工は先発に右腕・阿部がマウンドに上がる。こちらもストレートに力のある好投手だが、1アウトから2番菊地がストレートの四球を選び、出塁する。続く3番加瀬の打席で菰野ベンチはエンドランを指示。これに加瀬が応え、低めの難しい直球をライト前に運ぶ。1,3塁となって打席には4番野田。痛烈に打ち返した打球はピッチャーの阿部のグラブに収まり、併殺かと思われたが、ショートの送球がそれてしまい、3塁ランナーがホームイン。この後、5番松山にもヒットが続き、阿部の速球に対して、各打者がしっかりアジャストする。
その裏、菰野はエース左腕・栄田がマウンドへ。躍動感あるフォームからキレのある速球とスライダーを配し、立ち上がり、粘り強い南陽工打線を3者凡退に打ち取る。決して体格に恵まれているわけではないが、バランスのいいフォームからリリースにだけ力のこもった理想的な投げ方をしている。2回裏に初ヒットは浴びるものの、後続を連続三振に切って取る。
栄田の出来を考えると、南陽工は我慢の展開になるが、3回に菰野打線に再び阿部が捕まる。1アウトから初回にヒットを放っていた3番加瀬が今度はレフトへ流し打ち。阿部の得意とするストレートを2打席連続でとらえる。さらに、4番野田も速球をセンターに返すと、1塁ランナーの加瀬は3塁を狙う。ここでセンターからの送球がそれてしまい、加瀬が一気にホームイン。南陽工としては痛い失点を喫してしまう。
阿部の投球スタイルをしっかり研究してきたことを伺わせる菰野の攻撃。スライダーを見切り、カウントを取りに来た速球をきっちり痛打していく。4回表には7番栗本、8番梶谷と右打者がいずれも逆方向への打撃で連打。下位打線からでも打って攻略できるという手ごたえがあったのだろう。犠打で進塁させると、内野ゴロの間に栗本が生還。じりじりと菰野がリードを広げていく。
なんとか反撃したい南陽工だが、4回には盗塁を刺されるなど、菰野の堅い守備にも阻まれて、糸口がつかめない。スイスイと投げていく、栄田の小気味いい投球の前に5回までは無得点。菰野が完全に試合を支配し、前半戦を3-0で折り返す。
後半の仕切り直しの6回表。しかし、この大事なイニングでも菰野打線が鋭く南陽工・阿部を攻め立てる。この回も7番栗本がセンターから逆方向への打撃で出塁。8番梶谷にはまたしても強攻策で死球となると、犠打でそれぞれ進塁。3点目を挙げた4回と全く同じような攻撃パターンとなる。ここで1番中川の内野ゴロがエラーを誘い、4点目が入ると、続く2番菊地も内野ゴロを放って加点。実にそつの無い攻撃で2点を加え、試合の流れを完全に掌握する。
厳しい試合展開となった南陽工だが、終盤にきてやっと反撃のチャンスを得る。中軸から始まる7回裏、3番伊藤がサードへの内野安打で出塁。サード中川もよく取ったが、送球がそれてしまった。続く4番長嶺はショートゴロで1アウトになるが、5番阿部がヒットで入ってきたスライダーをしっかり呼び込んでレフトへはじき返す。阿部はこの日3安打。左投手攻略のカギを握る右打者がきっちり仕事を果たす。すると、ここから6番佐伯、7番宮脇がじっくり選球し、押し出しで1点を返すことに成功。南陽工らしい粘りを見せる。
その後は後続が倒れて1点どまりだったが、8回裏にも2アウトランナーなしから粘りを発揮。3番伊藤が見事なセンター返しで出塁すると、盗塁で2塁へ。ここで4番長嶺が逆方向を意識した打撃で粘り、カウント2-2からの6球目、アウトコース寄りに逃げていくボールをうまくとらえ、レフトへのタイムリーとして2点目を返す。なおも2アウト2塁で打席には今日3安打の阿部。しかし、ここで長嶺が三盗を試みるも、菰野の捕手・栗本の好送球でタッチアウト。この日、果敢に盗塁を仕掛けた南陽工だったが、5つのうち4つは栗本に刺され、失敗。菰野の扇の要が南陽工の前に大きく立ちはだかった。
3点差に迫られた菰野だったが、最終回に栄田が自ら3塁線を鋭く破るタイムリー2塁打を放ち、1点を追加。打撃でも非凡なものを持つエースが、その実力の片りんを見せた一打だった。南陽工も最終か、2人のランナーを出して最後まで食い下がるが、最後は代打・岩本がショートゴロに打ち取られてゲームセット。菰野が投打で南陽工を上回り、2回戦進出を決めた。
まとめ
菰野は序盤から打線が相手エース阿部の特徴をよく理解し、ストレートをコンパクトなスイングでとらえて、タイムリーを積み上げた。また投げては左腕エース栄田が好投。リリースが安定しており、コントロールよくキレのいいボールを投げ込むため、ミート打法の南陽工打線をもってしてもなかなか攻略は難しかった。投打に大物はいなくとも、エース栄田を中心に小粒でもピリリと辛い印象の菰野。今大会の台風の目となるか。
一方、南陽工は終盤に粘り強い攻撃など持ち味は出ており、エース阿部もいいボールは投じていた。しかし、惜しまれるのはやや配球がアウトコース寄りになったところを狙われたことか。攻撃に関しても、終盤に見せた打撃をもう少し早く見せられていればあるいは結果が違ったかもしれない。それでも、故・津田恒美さんの「弱気は最大の敵」を合言葉に実に14年ぶりに聖地に帰ってきたナインの戦いぶりに、試合後、万雷の拍手が送られた。
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