2024年選手権1回戦 西日本短大付vs金足農(3日目第2試合)

2024年

大会3日目第2試合

金足農

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 0 0 0 0 0 4 4
1 0 0 0 4 0 0 1 × 6

西日本短大付

 

金足農     吉田→花田

西日本短大付  村上

強力打線と好投手の対戦となった第2試合は、西日本短大付打線が金足農のエース吉田を攻略。最終回の反撃をエース村上がしのぎ切り、2010年以来となる勝利を挙げた。

試合

金足農は2018年に旋風を巻き起こした時のエース吉田輝(オリックス)の弟の吉田大が先発。注目の2年生右腕がついに聖地に降臨した。一方、西日本短大付はこちらもエース村上が先発。安定感のある技巧派右腕だ。

西短の右腕・村上は初回、抜群のコントロールを活かし、先頭の高橋を三振に切って取ると、2番近藤にヒットは許すものの、けん制でタッチアウトに。落ち着いたマウンドさばきを見せる。狙ったコースにきっちり投げ分けられており、激戦区の福岡を勝ち上がった実力を見せる。

これに対し、1回裏、金足農は注目の吉田がマウンドへ。しかし、1番にアウトコースの変化球をうまく合わされ、レフトへのヒットを許す。続く2番井上蓮の打席で暴投が飛び出すと、1塁ランナーのは躊躇なく3塁へ。いきなりピンチを迎える。ここで井上蓮はスライダーをきっちりとらえ、三遊間を破るタイムリー。西短が欲しかった先取点を手にする。この回、さらに暴投、失策が飛び出し、ややバタバタした入りになってしまったが、後続は吉田がなんとか打ち取る。

先取点をもらった西短・村上は2回以降も安定感のある投球を展開。リリースポイントが安定しており、投球フォームのバランスもいい。緩急とコースの出し入れで金足農打線を翻弄し、ランナーを出しても簡単に進塁を許さない。まさに勝てる投手という印象だ。

一方、金足農の吉田も2回以降は無失点ピッチングを展開。140キロ台の速球を軸に強気に押し、村上とは対照的な「剛」の投球で相手打線に立ち向かっていく。2回から4回まで毎回ランナーは出すものの、お兄さん同様、回転のいい真っすぐで空振りを奪う。変化球の制球も取り戻していき、彼本来のピッチングになってきていた。

次の1点を奪うのはどちらかという試合展開だったが、序盤は金足農打線に村上攻略の気配がない。吉田が踏ん張っている間に、なんとか同点に持ち込みたいところだったが、完成度の高い投球でとにかくつけいるスキを与えず。スピードこそ130キロ台だが、逆に言えばスピード以外のすべてを兼ね備えているような投球といえる。そのストレートも非常にキレがあり、狙い球を絞るのが難しかっただろう。テンポも非常のよく、あっという間に追い込まれてしまう。

すると、5回裏、1回からじわじわとプレッシャーをかけ続けていた効果が出たか、西短打線が一気に吉田を攻略する。4回ですでに球数は80球に達していた。

この回、先頭の2番井上蓮が3打席連続となるヒットで出塁。インサイドのストレートに差し込まれたのだが、テキサス性の当たりでセンター前に落ちる。すると、吉田のリズムに再び狂いが生じる。3番古賀、4番高峰といずれも追い込むのだが、とにかく西短の打者がしぶとい。速いボールはカットし、低めの変化球には手を出さない。塁上のランナーも再三スタートを切り、バッテリーの集中をかき乱していく。このあたりはさすが激戦区を勝ち上がった代表校である。

気付けば、塁上がすべてランナーで埋まり、無死満塁の大ピンチに。ここで5番投手の村上がきっちり犠飛を打ち上げ、1点を追加すると、6番斎藤がストレートを痛烈に流し打ってタイムリー。さらに7番安田の四球を挟んで、今度は8番山下がスライダーを引っ張って1,2塁間を突破し、この回大きな4点を追加する。球数が増えてやや球威も落ちていた感があり、西短打線の攻撃が実った形となった。

追う金足農は、流れの変わりやすいと言われる6回表、8番佐藤、9番那須がいずれも逆方向への打撃で連打を放つ。村上攻略の糸口となるようなバッティング。しかも下位打線がつないだチャンスで上位に回り、絶好の反撃のチャンスとなる。しかし、ここで1番高橋はレフトフライで1アウト。さらに2番近藤の打席でスタートを切った2塁ランナーが西短守備陣に見抜かれてしまい、サードでタッチアウトになってしまう。近藤も打ち取られ、この回無得点。痛い走塁ミスでチャンスを逸してしまう。

終盤になっても、村上の投球は崩れる気配がなく、0行進は続く。金足農も吉田が6回、7回と踏ん張りを見せるが、8回に2番手の花田が3番古賀にタイムリーを浴びて6点差。さすがに勝負は決まったかと思われたが、、、

何かが起こる最終回。6年前の金農旋風が記憶に新しい「雑草軍団」が猛攻を見せる。先頭の2番近藤が詰まりながらもレフトへテキサス性のヒットを放つと、3番薮田は苦しんできた村上のスライダーをとらえ、三遊間を破る。犠打主体の野球の金足農だが、ここは打って繋ぐしかない。大音量のGフレアが流れる中、4番中嶋はアウトコースのストレートを見事な流し打ち。打球は1,2塁間を破り、なおノーアウト2,3塁とチャンスは続く。

5番相馬がレフトへ犠飛を放ち、2点目を手にすると、西短守備陣にも動揺が走る。村上の暴投でランナーが3塁へ進むと、代打・菅原のサードゴロがエラーを誘い、3点目。金足農はイケイケの雰囲気になってくる。1塁ランナーに代走の佐藤涼を送ると、すかさずスチールを敢行!得点圏に進むと、7番武藤はセンターへの抜けるタイムリーを放ち、佐藤涼が生還。ついに2点差にまで迫る。完封負け目前からの怒涛の大反撃。観衆もあのミラクルを起こした2018年を思い起こしていただろう。

2アウト後、9番那須も四球を選び、打席には1番主将の高橋。6年前に横浜戦で逆転3ランを放った高橋選手の弟である。一打同点、逆転の場面であったが、西短・村上がカウント2-1からアウトコースのスライダーに食らいついた打球は、セカンドのグラブに収まり、試合終了。金足農の驚異的な追い上げを振り切った西日本短大付が、僅差で逃げ切り、14年ぶりの凱歌を上げた。

まとめ

西日本短大付は攻撃陣が金足農のエース吉田を前半戦で攻略。コンパクトなスイングで140キロ台の速球、スライダーともに攻略し、甘いボールを確実にコンタクトした。派手さはなくとも、試合が進むにつれて圧力をかけていく攻撃は、まさに強豪校のそれであった。

また、投げてはエース村上がテンポとコントロールのいい投球を見せ、8回まで無失点、この村上の投球があったからこそ、攻撃にもリズムが生まれたと言えるだろう。実戦力の高いチームである、今年の西短。他校にとっては実に不気味な存在と言えそうだ。

一方、金足農は絶対的エース吉田が攻略され、攻撃陣も8回までは村上に打たされる展開で劣勢になってしまった。9回の攻撃を見ると、決して実力で劣っていたわけではないが、ペースの握り合いで後手に回ってしまったか。

ただ、それでも最終回の反撃はすさまじいものがあり、あわや同点の場面まで追い込んだのは見事としか言いようがない。吉田もまだ2年生であり、金足農の逆襲の機会はまだまだ残されている。

金足農―西日本短大付 9回表【第106回全国高校野球選手権大会】 (youtube.com)

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