大会8日目第2試合
小松大谷
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 3 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
大坂桐蔭
小松大谷 西川
大坂桐蔭 森→平嶋
優勝候補の一角に挙げられた大阪桐蔭と今大会で初勝利を挙げた小松大谷の試合は、エース西川の好投で小松大谷が大阪桐蔭に完勝。西川はマダックス(球数100球以内での完封勝利)を達成し、チームを初の3回戦進出に導いた。
試合
小松大谷は初戦に続いてエース西川が先発。一方、大坂桐蔭は2年生のWエースの一角である剛腕・森をマウンドに送った。
試合は序盤、静かな入りを見せる。森は大阪大会決勝で完投勝利を挙げたが、その時よりも状態はよさそう。1回表、好調な小松大谷の上位打線に対し、140キロ台後半を記録する速球を武器にどんどん押していく。ストレートに威力があるため、どうしてもポイントを前に置きがちになり、初戦でともに3安打を放った3番田西、4番東野をいずれも三振に切って取る。
これに対し、小松大谷のエース西川は初戦で興南の好左腕・田崎を攻略した大阪桐蔭打線に対する。1番から左打者がずらりと並ぶが、インコースを果敢に攻める投球で簡単に踏み込みを許さない。カウントが悪くなっても簡単に四球を出さない粘り強さもあり、また、一球ごとにテンポも変えるなど、見た目以上に打ちづらさを感じさせる投手だ。初戦は、明豊打線に初回に3点リードをすぐ追いつかれてしまったが、この日は無難な立ち上がりを見せる。
2回以降も、両チームとも四死球、ヒットなどでランナーは出すが、あまり得点の気配は漂ってこない。大阪桐蔭は2回裏にエラーと内野安打で1,2塁とチャンスを作るが、丁寧に低めを突く西川の前に後続が続かず。3回裏にも2アウトながら3塁までランナーを進めるが、4番徳丸を痛烈なライトライナーに打ちとる。内外、高低をきっちり突き、一球一球に意図のあるボールが続く。非常に考えた投球で、これぞ勝てる投手と思わせる内容だ。
一方、大坂桐蔭の森も強打の小松大谷打線に対し、無失点投球を続けていく。昨年の秋から春にかけてはとにかくストレートの質の高さが騒がれていたが、この夏はアウトコース低めへ丹念に変化球を集められるまとまりの良さも出てきている。同じ学年にライバルの中野がいることも大きな成長の要因だったのだろう。安心して先発を任せられるだけの安定感が出てきた。4回、5回と単打は打たれたものの、こちらも大事なところでの一本は許さず。0-0のまま試合は後半戦に突入する。
強力打線同士の対戦だけに、予想外のスコアレスドロー。この展開は、挑戦者と見られていた小松大谷に有利なメンタリティーをもたらしていたかもしれない。グラウンド整備後の6回も両チーム得点はなし。特に、大坂桐蔭打線は中盤から交えられ始めたチェンジアップによる緩急にも苦戦し、左打者陣が特に苦戦を強いられていた。
ともに4安打無得点で試合は7回へ。こういう時に勝敗を分けるのは、四死球、失策、一発長打とはよく言ったものだが、その恐れていたプレーが出たのは大阪桐蔭の方だった。
7回表、小松大谷は先頭の8番西川が真ん中寄りに入ったストレートをセンターに返すヒットで出塁。続く9番山本晴の犠打は失敗に終わるも、1番山本悠が2球目のカットボールがやや内寄りに入ったところを叩く。レフトへのヒットでチャンスを拡大すると、2番石浦も初球攻撃。打球はファーストへのゴロとなるが、併殺を狙ったセカンドの送球が高投となり、2塁ランナーがホームを駆け抜けて1点を先制する。
大坂桐蔭にとっては痛すぎるエラー。昨秋の神宮大会で1試合5失策と乱れた悪夢がよぎる。さらに、続く打席には強打の3番田西。暴投でランナーが3塁に進むと、田西はカウント1-2からカウントを取りに来たストレートを素直にセンターに返す。打球は二遊間をやぶり、タイムリーとなって貴重な2点目を奪う。
先制点をもらった西川は、7回裏、先頭の7番岡江に痛烈なライトライナーを浴びるが、これもライト石浦がスライディングキャッチし、1アウト。3回裏の徳丸の打球の好捕にしろ、7回の先制につながった一打にしろ、この日のラッキーボーイと呼べる選手だ。大阪桐蔭は2アウト後に、とっておきの代打・ラマルを送るが、とらえたかに思えた打球は、左中間へのフライに。以前のバットならあるいはスタンドまで到達していたかもしれなかったが、失速して野手のグラブに収まった。
大坂桐蔭は8回表からエース番号の平嶋をマウンドへ。春までエースとしてチームを引っ張ってきた投手に、試合の流れを変える投球を期待したのだろう。しかし、小松大谷は1アウトから四球で出たランナーをきっちり犠打で進めると、ここでも暴投が飛び出してランナーは3塁へ。続く8番西川の打球は高いバウンドで弾み、平嶋のグラブに収まるも、ファーストのベースカバーが不在。またも、守備の乱れが出て決定的な3点目が入った。
この日の西川にとって、3点は十分すぎる援護。終盤に入っても、間合いの変化、緩急、内外の出し入れと打者のタイミングを外すいくつもの武器を駆使し、大坂桐蔭打線を牛耳った。9回裏は1アウト1塁から6番山路を併殺に打ち取り、試合終了。小松大谷が戦前の予想を大きく覆し、大坂桐蔭に夏の甲子園初の完封負けという記録までつけて、見事3回戦進出を決めた。
まとめ
小松大谷はエース西川の見事な完封劇で、優勝候補に完勝。驚くような球速や変化球がなくとも、工夫次第で強敵を封じれることを示した一戦となった。このピッチングは全国の高校球児に勇気を与えるものになったと言っても過言ではないだろう。また、打線は序盤に大阪桐蔭・森の球威に苦しんだが、終盤は好球必打で若いカウントから打っていき、剛腕を攻略。試合前に西野監督が思い描いていた展開を攻守で実現させ、勝利をつかみ取った。
投打にわたって圧倒しての甲子園2勝目。これからの小松大谷というチーム自体にも有形無形の財産を残した勝利であった。
一方、大坂桐蔭は昨秋以降、打撃が課題と言われ、その弱点を克服してきたかに見えた夏だったが、最後は完封負けで力尽きた。これまで剛腕投手や左腕に苦戦する傾向が強かったが、今回の西川のような右の技巧派にここまで抑え込まれた敗戦は、近年の記憶をたどった限り、ちょっと思いつかない(一番最近だと2016年の関大北陽の清水投手か)。低いライナー性の打球も出てはいたのだが、やはり大事な場面でフライアウトになるケースが多く、これは新基準のバットの影響もあったのかもしれない。
数年単位でトレンドがかわり、スタイルの塗り替え合いが進むのが高校野球界の常。そんな中でずっと頂点を求められる同校のプレッシャーは想像を絶するものがあるだろう。ただ、来年以降も、この新基準バットでの試合は続いていくわけで、名将・西谷監督のもとで捲土重来を期す大阪桐蔭がどんな戦いを見せてくれるのか、注視していきたいと思う。
大阪桐蔭 vs 小松大谷 【夏の甲子園 2回戦 全打席ハイライト】 まさかの展開に甲子園が沸きに沸いた! 2024.8.14 阪神甲子園球場 (youtube.com)
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