2024年選手権2回戦 広陵vs熊本工(6日目第1試合)

2024年

大会6日目第1試合

広陵

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 0 0 0 2 0 0 2
0 0 0 0 1 0 0 0 0 1

熊本工

 

広陵    高尾

熊本工   山本→幸

高校球界屈指の伝統校同士の対戦となった2回戦最初の試合。熊本工が先制するも、広陵がエース高尾の好投と勝負強い打線でひっくり返し、しびれるクロスゲームをものにした。

試合

広陵はエース高尾が先発。これで4季連続での出場となる、泣く子も黙る高校球界屈指のエースだ。最後の夏、集大成となるピッチングを見せたいところ。一方、熊本工は3年生エース広永が負傷離脱するなか、2年生のエース山本が好投。熊本大会決勝では秋の九州王者の熊本国府に快勝し、3年ぶりに甲子園に戻ってきた。

1回表、熊本工・山本が3者凡退と落ち着いた入りを見せたのに対し、広陵は熊本工の1番松永の当たりをサード土居がはじいてしまう。優勝候補としてのプレッシャーもあったのか。ただ、その後、犠打で1アウト2塁となってから、3番上田のライトライナーをライトの田村がスライディングキャッチ!飛び出した2塁ランナーも刺し、好プレーでエースを盛り立てる。

機動力を絡めて活路を見出したい広陵打線。2回表、先頭の4番只石がショート深い位置への内野安打を放ち、犠打で2塁へ進む。しかし、コントロールに優れる山本は、多彩な変化球を低めに集め、広陵打線に決定打を許さない。実戦に非常に強い投手と言える。打たせて取る投球で広陵打線を翻弄する。

一方、広陵のエース高尾は2回裏に、先頭の4番菊山に高めに浮いたカットボールをとらえられ、右中間への2塁打を浴びる。集中打が売りの熊工打線に対し、連打を許したくないところ。さらに、犠打と四球で1アウト1,3塁となるが、ここで続く7番小川の打席、1塁ランナーの盗塁を内野陣が落ち着いて刺し、難を逃れる。エースが痛打を浴び、動揺が走ってもおかしくない場面だったが、さすがに4季連続出場中の常連校。冷静に対処し、この回を無失点にしのぐ。

この流れに乗って広陵は3回表、1アウトから9番高尾のヒットと1番浜本のサード前でイレギュラーする当たりでチャンスを作る。山本の投球に対し、いかに打たされないようにするかが広陵打線の狙い。しかし、続く2番田村のとらえた当たりはセンターの正面。さらに3番土居は低めのスライダーにバットが空を切り、山本を捕まえきれない。とらえられそうでとらえられない、素晴らしい投手だ。

その後もやや広陵が押し気味で、機動力も絡めながら先制のチャンスを伺うが、あと一本が出ない。ショート浦上が好ポジションでヒット性の当たりを好捕するなど、こちらも守備でエースを盛り立てる。すると、5回裏、踏ん張り続ける2年生エースについに打線が応える。

この回、先頭の5番浜口がアウトコースのストレートをとらえた打球は右中間に弾み、好走塁で2塁を陥れる。2回裏と同じような先制のチャンス。犠打で3塁へ進むと、2アウト後、8番山本が自らセンターへタイムリーを放ち、1点を先行する。インサイドのボールに詰まらされながらも、センターへの意識があったからこその打撃であった。

優勝候補を相手に奪った先制点。このリードを守りたい熊工は6回表、キーとなるイニングも3者凡退で抑える。優勝候補がこのまま敗れるのかという、少しざわつきも出始めた甲子園。しかし、広陵のエース高尾は1点こそ取られたものの、安定したコントロールで、味方のエラーにも崩れることなく投げ続ける。

すると、7回表、広陵は先頭の7番酒井がアウトコースの変化球を二遊間へ鋭く打ち返し、セカンドへの内野安打で出塁。続く代打の白髪はじっくりと山本のボールを選球する。春まではスタメンを張っていた打者。犠打の構えでも揺さぶり、2年生エースをじわじわと追い込む。カウント1-3から四球をもぎ取ると、9番高尾の犠打でそれぞれ進塁。ここで1番浜本が、これまたアウトコースのスライダーをうまく合わせて右方向へ打ち返すと打球はライト前に弾むタイムリーに!2者が生還し、一気に試合をひっくり返した。

しかし、逆転としたと言っても点差は1点。7回裏に熊本工は先頭の5番浜口がこの日2本目となるヒットで塁に出る。しかし、この場面で高尾は6番小城をあっという間に追い込み、犠打を行う余裕すら与えず、見逃し三振に。後続も打ち取り、ランナーの進塁すら許さなかった。やはり、勝負所で一段ギアを上げるところは、歴代の甲子園の好投手にも通ずる、「エース」の投球だ。

攻め立てる熊工は8回裏にも先頭の代打・松永が内野安打で出塁し、犠打で二進。続く2番浦上はアウトコースのボールをシャープに振りぬくが、打球はセカンド正面の痛烈なライナーとなる。コースを突いているがゆえに、正面に飛ぶのだろう。3番上田も痛烈なファーストゴロを放つが、瀬戸口の好守で得点に繋げさせない。

両チームとも1点が欲しい試合展開。広陵は9回表、先頭の代打・松村がスライダーをとらえると、打球はセンターの頭上を破る2塁打となる。犠打で1アウト3塁となると、ここで熊工バッテリーは当然慎重な配球になる。ここを広陵の各打者にじっくり見られ、連続四球で1アウト満塁となる。広陵としてはここで1番浜本、2番田村と最高の打順を迎える。

すると、熊工・田島監督は2番手で同じく2年生の右腕・をマウンドへ。押し出しも許されない場面でフルカウントと苦しい状況になるが、好打者の浜本を相手にインローの真っすぐで見逃し三振を奪う。やや狙ったコースとは違ったが、腕を振った分だけ、ボールに勢いがあった。さらに続く2番田村もストレートで押してレフトフライに打ち取り、3アウト。救援した2年生右腕が素晴らしい仕事をやってのけた。

9回裏、熊工の「サンライズ」が鳴り響く中、広陵は先頭の4番菊山のショートゴロを一瞬はじいてしまい、出塁を許す。甲子園の魔物が顔をのぞかせるような流れ。続く5番浜口は犠打の構えから初球を打ち返すと、打球はセンターの前に弾む当たりとなってサヨナラのランナーも出る。九州の雄が大歓声に乗り、広陵守備陣に迫ってきていた。

犠打で1アウト2,3塁となり、打席には7番山口。しかし、ここからが高尾の真骨頂であった。7番山口に対し、スライダーで追い込むと、最後はインローに146キロの真っすぐで見送り三振。この最終盤にこの日最速となるボールで、相手に手を出させない。球場の空気を自らの投球で引き戻すと、続く代打・山口には変化球から入る冷静な投球。カウント2-0と追い込むと、最後もアウトコースに逃げる変化球を振らせて空振り三振。

広陵が粘る名門校をすんでのところで振り切り、4季連続での初戦突破を果たした。

まとめ

広陵のエース高尾はこの日は決して本調子ではなかっただろう。しかし、投球の幅の広さと勝負所でギアを上げるあたりは、さすが高尾と思わせる投球だった。打線は熊工の先発・山本の前に苦しんだが、7回のワンチャンスを活かす勝負強さは、中井監督が目指してきた野球だっただろう。右打者がアウトコースのボールをしっかり逆方向へ狙い打っての攻略だった。

4季連続出場で優勝を目指す中国地区の強豪が、まずは大きな一歩を踏み出した試合だった。

一方、熊本工は最後まで大会屈指の好投手に食い下がり、名門校の意地を見せる戦いだった。高尾相手に県大会のような集中打は難しかったが、4番菊山、5番浜口の2人は長打を放ち、打撃の熊工たるゆえんを見せた。また、投げては2年生右腕・山本が逆転は許したものの、広陵打線の良さを出させない投球で中盤まで主導権を握った。スピードこそ130キロ台だが、こういう投球をすれば勝てるという見本のような投球だった。

最終回にリリーフした右腕・も2年生であり、2枚看板をはじめとして多くの下級生が残る熊本工。来年にも期待ができそうだ。

熊本工―広陵 7回表【第106回全国高校野球選手権大会】 (youtube.com)

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