2024年選手権2回戦 智辯学園vs健大高崎(8日目第1試合)

2024年

大会8日目第1試合

智辯学園

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 1 0 0 0 0 0 0 1 2
1 0 0 0 0 0 0 0 0 1

健大高崎

 

智辯学園   田近

健大高崎   杉山→仲本→石垣

春夏連覇を狙う健大高崎と常連校の智辯学園。2回戦屈指の好カードは、実力伯仲の内容で1-1の同点のまま最終回へ。1番佐坂の決勝タイムリーが飛び出した智辯学園が、エース田近の好投で選抜王者を振り切り、2年連続で2回戦進出を決めた。

試合

健大高崎は左腕・杉山を先発に指名。リリーバーに回す石垣の負担を減らすためにも、イニングを稼ぎたいところ。一方、智辯学園は初戦に続いてエース左腕の田近を先発に送った。

智辯学園は初戦から大きく打順を変更し、主将の知花を3番、1回戦で4安打と好調の山崎を5番に挙げ、上位打線での得点を試みる。これに対し、健大高崎の杉山は1回表、大きく縦に割れるカーブを武器に、打たせて取る投球を見せ、内野安打1本を打たれたものの、無難に無失点で立ち上がる。

すると、1回裏、初戦で5安打1得点に終わっていた健大高崎打線が幸先よく先取点を奪う。智辯の好左腕・田近に対し、1番田中が高めに浮いた変化球をうまく拾い、ライト線への2塁打で出塁。低めのボールを振らせる田近に対し、その変化球が浮いたところを逃さないあたりはさすがである。犠打でアウト3塁とすると、3番高山はストレートをたたきつける打撃で三遊間を破り、1点を先制。まずは試合の主導権を握る。

リードを奪った状態で石垣に繋げたい健大高崎だったが、今大会の智辯学園打線は下位から攻撃で得点が入る。

2回表、先頭の5番山崎が今大会早くも5本目となるヒットで出塁。ここから犠打失敗や7番小泉が右中間を破った打球で2塁を狙い、憤死するなど、智辯学園サイドも攻撃がかみ合わない形で2アウト3塁となる。しかし、8番西川が粘って四球を選ぶと、9番田近はカウント2-0と追い込まれながら、スライダーをうまく拾い、センターへのタイムリーを放つ。ここは追い込んでいただけに、捕手・箱山はボールを要求していたが、やや内寄りに入ってしまった。

失点直後の同点でリズムを取り戻した田近は勢いに乗る。選抜優勝校の打線に対し、低めに落とすチェンジアップで泳がせ、キレのある真っすぐでコーナーをついて詰まらせる投球で真っ向勝負。健大打線にヒットこそ打たれるものの、要所を締める投球で失点はせず、特に4番の箱山に対しては徹底してチェンジアップを低めに投じ、相手の攻守の要に対して、仕事をさせない。

一方、同点には追いつかれたが、健大高崎の扇の要にはこの男がいる。4番で主将・女房役と一人三役をこなす箱山は、3回表には2番国島にヒットを打たれるが、続く3番知花の打席で仕掛けてきた単独スチールを見事に刺す。相手の犠打の構えにも惑わされることなく、余裕をもってアウトにして見せた。

健大高崎は4回から2番手で右腕・仲本をマウンドへ送る。時折右サイドの投げ方を混ぜる技巧的な投球が光る右腕だ。この仲本もできるだけ長いイニングを投げて石垣に繋ぎたいところだったとは思うが、智辯のエース田近の出来が、青柳監督に1点勝負の展開を想起させたのだろう。5回表、智辯学園打線が粘って2つの四球を選び、ランナーをためたところでついに石垣をマウンドへ送る。イニング数としては、先の二人は十分仕事を果たしたとは思うが、青柳監督としてはもう少し後ろまで行ってからつなぎたかった気持ちもあっただろう。

その石垣は150キロを超す速球とスライダーを武器に、その圧倒的な球威で智辯学園打線を抑え込む。グランド整備を挟んで6回表には2本のヒットでランナーを許すが、ここでまたしても箱山が素晴らしいけん制球で飛び出した1塁ランナーを出す。バッテリーがつないだ流れで、健大高崎にいつもの勝利へのムードを呼び込む。

勝ち越し点の欲しい健大高崎。しかし、智辯学園のディフェンス陣もしぶとい。6回裏に1塁ランナー箱山の盗塁を刺すと、7回裏には1アウト3塁のピンチでスリーバントスクイズを失敗させる。盗塁、暴投で進めてきたランナーであり、このチャンスを得点に結びつけられれば大きく流れを引き寄せられるところだったが、低めを丹念に突き、コースもなかなか間違えない田近の投球の前にあと一押しができない。

両者譲らない展開は同点のまま最終盤に。8回裏にも健大高崎は2アウトランナー2塁から4番箱山がチェンジアップをとらえながら、レフト中道の好守備に阻まれ、得点を挙げることはできない。ただ、箱山はチェンジアップに徐々にタイミングが合い始めており、智辯バッテリーとしても次の打席が回ると危ないと感じ始めていただろう。

タイブレークを目前に控えた9回表、智辯学園は1アウトから7番巴田が四球を選ぶ。続く8番西川は守備が評価されてレギュラーをつかんだ選手だが、アウトコースのストレートを打ち上げた打球は、ふらふらっと上がってレフトの前にポトリ。智辯に流れが傾いていることを表すような一打でチャンスを拡大する。続く9番田近の犠打が、またしても箱山の好フィールディングで刺され、2アウトとなるが、その後に生じた一瞬のスキを1番佐坂は逃さなかった。初球、石垣のスライダーが甘く入ったところをとらえると、打球はセンター前に弾むタイムリーに!西川がホームを駆け抜け、智辯が待望の勝ち越し点を手にした。

援護をもらった田近は9回裏、健大高崎の攻撃を2人内野ゴロに打ち取って2アウト。7番斎藤にはたたきつける打撃で内野安打を許したが、最後まで落ち着いたマウンドさばきは崩れなかった。最後は代打・川名を伝家の宝刀・チェンジアップで三振に仕留め、ゲームセット。健大高崎の春夏連覇の夢を止め、智辯学園が昨年に続いてベスト16の座を射止めた。

まとめ

智辯学園の勝因は何といってもエース田近の好投だろう。機動力も長打力も兼ね備え、多彩なバリエーションを誇る健大高崎の攻撃陣に対し、冷静さを失わず、低めとコーナーに丁寧に投げ続けた。特に右打者のアウトコースに逃げながら落ちるチェンジアップは天下一品。狙っていてもなかなか攻略できず、困った時に頼れるボールがあるからこそ、思い切った投球を可能にした。

また、打線は1回戦に続いて9回に貴重な一打が飛び出し、粘りの攻撃で勝利を手にした。昨年と比較すると、決して大物打ちがいるわけではないが、小阪監督の言葉通り、「束になってかかっていく」スタイルで、際どい試合をものにしてみせた。しぶといチームカラーで昨年の成績に並んだ智辯学園。今後に向けても大きな手ごたえを得る一戦になったことだろう。

一方、健大高崎は自慢の打線が2試合でわずか2得点と不発に終わった。大会前にエース左腕の佐藤が離脱したことで必要以上にプレッシャーもかかってしまったのかもしれないが、やはり初戦の英明・清家、そして、この日の田近と全国クラスの好投手を相手に得点を挙げるのはそう容易ではなかったということだろう。投手陣はこの日も2点に抑え、仕事をしていたが、青柳監督も継投を含めた投手起用にやや苦しさがでたことは否めなかった。

ただ、石垣佐藤を含め、多くの下級生が残り、新チームも間違いなく全国トップクラスの力を有していることだろう。来年以降も、健大高崎を中心に高校球界がまわっていくことになりそうだ。

健大高崎―智弁学園 9回表【第106回全国高校野球選手権大会】 (youtube.com)

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