大会7日目第4試合
滋賀学園
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 3 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
花巻東
滋賀学園 脇本
花巻東 小松→葛西→田崎
49代表校最後の登場となった花巻東と開幕戦勝利で勢いに乗る滋賀学園の対戦は、滋賀学園打線が序盤から花巻東の投手陣を攻略。エース脇本も完封と投打ががっちりかみ合い、3回戦進出を決めた。
試合
花巻東が昨夏の甲子園でフォークボールを武器に好投を見せた右腕・小松が先発。一方、滋賀学園は初戦に続きエース右腕・脇本がマウンドに上がった。
小松は初回、いきなり1番多胡に対して148キロをマークし、観衆の度胆を抜く。持ち味のフォークボールも冴え、高低を活かした攻めで滋賀学園の打者を翻弄。3番岩井に四球こそ与えたものの、盤石の内容で無失点に抑える。
これに対し、滋賀学園・脇本は1番簗田に高めのチェンジアップをセンターにはじき返される。花巻東の機動力を活かした攻めが見られるか、と思った矢先、簗田が仕掛けた盗塁が滋賀学園守備陣に一瞬早く見切られ、飛び出してけん制タッチアウトになってしまう。花巻東としては痛いプレー。その後、2番千葉の死球と1年生ながら4番に座る古城のヒットでチャンスを拡大するが、無得点に終わる。立ち上がり、脇本の制球がやや定まっていなかっただけに、ここで得点を挙げておければ展開も違ったか。
すると、2回表、初戦から好調を維持する滋賀学園打線が小松をとらえ始める。先頭の5番仲田が高めのフォークをセンターに打ち返して出塁。続く6番東坂が3塁線へ絶妙なセーフティバントを転がすと、これが小松の悪送球を誘って、無死1,3塁とチャンスを拡大する。ここで7番作田が低めのフォークをうまく拾ってセンターへのタイムリー。滋賀学園が貴重な先制点を手にする。花巻東バッテリーとしては一番やられたくない打撃だっただろう。
さらに1アウト後に9番杉本が犠打を決めて、2アウトながら2,3塁とすると、ここまで大会無安打だった1番多胡が、初球の高めに浮いたフォークを引っ張ってレフトへタイムリー。続く2番国仲も初球攻撃で今度はストレートをとらえて左中間へタイムリーと、好球必打の攻撃でこの回一挙3点をもぎ取る。初回の小松の出来を見ると攻略は難しいかと思われたが、滋賀学園打線がコンパクトな打撃でフォークボールに対応。花巻東・佐々木監督はこの回で小松をあきらめ、2番手で左腕・葛西をマウンドに送った。
この3点のリードは滋賀学園・脇本に落ち着きを取り戻させる。初戦はストレート主体の投球が、打者2巡目で有田工打線の逆方向への打撃に捕まったが、この日は変化球の制球が良く、再三ランナーを出しながらも得点を与えない。花巻東は、3回裏、1アウト1,2塁から2塁ランナーが飛び出してけん制タッチアウト。さらに4回裏にも1アウト1,3塁からセーフティスクイズが失敗と、持ち味の機動力が空回りし、チャンスを逸する形となった。
3回表から花巻東のマウンドには2番手で左サイドハンドの葛西が上がる。こちらも昨夏からマウンド経験のある投手であり、落ち着いたマウンドさばきで滋賀学園打線の勢いを止める。ただ、小松とのタイプの違いを活かすためにも、もう少し後ろのイニングで継投したかったのは否めない。交代後、打者一巡は滋賀学園打線を抑えていたが、二巡目に入り、葛西のストライクゾーンの横幅を活かした投球に滋賀学園打線が対応し始める。
5回表、滋賀学園は1アウトから4番岡田がアウトコース低めのボールに食らいつき、センターへのヒットで出塁。さらに5番仲田は初球攻撃でアウトコースから入ってくるスライダーをライト線に打ち返す。左投手攻略のお手本となる打撃で、2,3塁とチャンスを広げる。続く6番東坂の打ち上げたフライはショート森下が背走キャッチし、2アウト。超のつくスーパープレーでピンチを脱しかけたかに見えたが、ここから7番作田、8番脇本が連続タイムリーを放ち、2点を追加。5-0と大きくリードを広げた。
この回、いずれもヒットが出たのは右打者。左サイドの葛西としてはインサイドを突いたうえで外のボールを泳がせたかったところだが、滋賀学園打線がしっかりポイントまで引き寄せ、少しアウトコースのボール気味の球に対してもしっかりミートしてはじき返した。相手投手の好球を逃さない積極性も光っており、花巻東が誇る経験値の高い左右の両輪を序盤5回で攻略することに成功。完全に主導権を握った。
すると、序盤は少し高めに浮いたボールを痛打されていた脇本が、後半に入って完全に立ち直る。多彩な変化球に加えてストレートも走り出し、コーナーいっぱいのボールで見逃しも多く取り始める。5点という点差が花巻東打線の攻撃の選択肢も狭め、6回、8回はいずれも併殺を取って3人で攻撃終了を封じた。結局、6回から9回の攻撃を打者12人で片付ける圧巻の投球を見せ、花巻東打線を6安打完封。初戦の悔しさを晴らすエースの快投と積極的な打線がかみ合い、滋賀学園が3回戦進出を決めた。
まとめ
滋賀学園は、上位から下位まで切れ目のない打線で花巻東投手陣を攻略。小松のフォークボール、葛西の左右コーナーを使った投球はともに全国上位レベルのものだったが、高めに浮いたボールを逃さない積極性が攻略につながった。また、決して大振りしないでコンパクトに逆方向へ打ち返す姿勢も相手投手を追い詰める要因になっただろう。この日は先発全員安打と、どこからでもつながる打線になっている。
また、投げてはエース脇本が6安打で完封。序盤に花巻東の機動力を絡めた攻撃をうまくかわせたことが大きく、中盤に捕まった反省も活かし、この日は試合の中で投球パターンも変えながら、1試合トータルをうまくマネジメントした。投打で花巻東を上回っての甲子園2勝目は、ナインに大きな自信を与えたことだろう。
一方、花巻東は実力的には滋賀学園に全く見劣りしないものを持っていたが、やはり49代表校で最後の登場というのは調整が難しかったか。1回、3回とランナーが飛び出して挟まれてしまい、脇本に立ち直りのきっかけを与えたことが、試合の趨勢を決めた。小松、葛西の両投手も持ち味は出していたが、やはり昨年から出場しているぶん、研究もされやすかったのかもしれない。
ただ、それでもベンチ入り15人が出場し、1年生の主砲・古城を中心に来年に向けて多くの下級生が残る。聖地で得たこの貴重な経験を活かし、再び雪辱を果たしに戻ってきてくれるはずだ。
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