2024年選手権2回戦 霞ケ浦vs智辯和歌山(7日目第3試合)

2024年

大会7日目第3試合

霞ケ浦

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
0 1 0 0 2 0 0 0 0 0 2 5
0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 1 4

智辯和歌山

 

霞ケ浦     市村→真仲

智辯和歌山   松倉→渡辺

延長タイブレークにもつれ込んで好試合は、霞ケ浦が智辯和歌山の追撃をしのぎきって逃げ切り勝ち。春夏計4度目の出場で念願の甲子園初勝利をつかんだ。

試合

霞ケ浦は技巧派左腕・市村、智辯和歌山は本格派右腕・松倉がそれぞれ先発。対照的な両投手の投げ合いでスタートした。

1回表、智辯和歌山の松倉は140キロ台のストレートにカーブを交え、エンジン全開の投球を見せる。2番森田のヒットと3番羽成のセカンドゴロエラーでピンチを迎えるものの、後続を併殺打に打ち取り、無失点で立ち上がる。

一方、霞ケ浦の先発左腕・市村は、緩いカーブを武器とする技巧派左腕。非常に落差のあるボールであり、智辯は1番福元、2番藤田と連続でフライに打ち取られる。強豪校が苦戦する緩急を活かした投球。内に速く、外に緩くの投球を実践し、4番花田も三振に取って、霞ケ浦バッテリーとしては最高のスタートを切る。

すると、2回表、先取点は霞ケ浦が奪う。1アウトから6番雲井がストレートを狙い撃ち、センターの横をやぶる2塁打で出塁。続く7番鹿又はインサイドの変化球に詰まらされるが、これをサードがグラブに当ててはじいてしまう。ボールがレフト線よりに転がる間に2塁ランナーが好判断で一気に生還。球場のムードが霞ケ浦寄りになるような序盤の攻防である。

先取点をもらった市村は、技巧派の良さを存分に発揮した投球で、智辯和歌山打線を封じ込める。カーブで目線を上げさせてフライを打たせ、ストレートで差し込む。狙い通りの投球を実践し、春夏計4回の甲子園制覇を誇る強豪を相手に全く自分の打撃をさせない。初めての甲子園でこれだけの投球ができるのは本当に素晴らしい。

対する智辯和歌山・松倉は、不運な形で失点はしたものの、3回・4回と無失点投球を展開。自軍の打撃から全く得点の気配がないなか、我慢強く投げる。しかし、5回に入り、霞ケ浦打線が打順3巡目で松倉を攻略し始める。

簡単に2アウトを取られるが、2番森田がたたきつける打球で二遊間をやぶるヒット。ここで最も頼りになる3番羽成がインサイドの速球をとらえると、打球はライトの前に。これを一度下がったライトが前進するも捕球しきれず、打球は転々。1塁ランナーの森田が一気にホームを陥れ、2点目を奪う。さらに4番大石もインサイド寄りのストレートを引っ張って3塁ランナーの羽成を迎え入れるタイムリー。智辯バッテリーの傾向を読み取り、インサイドを突いてくるボールを積極的にたたいた。

智辯としては守備のミスも絡んでの2失点が絡み、3点のビハインド。5回以降、ヒットは出始めるが、6,7回と2イニング連続の併殺に打ち取られ、得点を挙げるに至らない。打撃内容としては徐々に攻略の兆しも見えていたが、イニングが進むにつれて焦りが募る展開となる。2022年夏の国学院栃木戦、2023年選抜の英明戦を思い起こさせるような、そんな状況であった。

しかし、それでも6回から6回から登板した2年生右腕・渡辺が霞ケ浦打線にヒットを浴びるも、なんとか無失点でしのいでいく。7回表には2アウト1,2塁からレフト前ヒットを浴びるも、途中出場のレフト高桑が好返球でホームタッチアウトに。8回のピンチも併殺で切り抜け、苦しい状況のなかでも守備で踏ん張る智辯の野球で、ビハインドを3点にとどめていた。

すると、8回裏、ついに智辯和歌山の強力打線が目を覚ます。それも2者連続三振で2アウトランナーなしから。2番藤田がセカンドゴロエラーで出塁すると、打席には先ほど好返球を見せた3番高桑。終盤にややボールが高くなり始めていた市村の高めの速球をとらえると、打球はライナーでレフトスタンドへ飛込み、一気に差は1点に。さらに、霞ケ浦のタイム明け、続く4番花田も初球の変化球をとらえると、高桑と全く同じような弾道で打球はレフトポール際に着弾。2者連続のホームランで一気に試合を振り出しに戻した。

霞ケ浦は、ここで市村をあきらめ、2番手の右腕・真仲にスイッチする。1回から劣勢の続いていた智辯にようやくムードが傾いてきた終盤戦。代わり端、5番松嶋に2塁打を打たれる。続く6番上田は打ち取るも、9回表には、2番手の渡辺が連続三振を奪って3者凡退にしのぎ、流れは完全に智辯和歌山であった。

しかし、ここで霞ケ浦の2番手・真仲が素晴らしい踏ん張りを見せる。9回裏、先頭打者に死球を与えるも、続く打者の犠打は武器であるスライダーを投じ、失敗に終わらせる。さらに続く打者の犠打で2アウト2塁となるが、注目の1番福元は再びスライダーで空振り三振。タイブレークに持ち込み、相手に向いていた流れを引き戻す。

10回表、霞ケ浦は打順が中軸だったため、打たせるも3者凡退。智辯のサヨナラのムードが漂うが、ここでも真仲はスライダーを武器に2番の犠打を失敗させる。終盤に登板する投手はやはり、このボールなら抑えられるという球種を持っていると心強い。続く打席には先ほど連続ホームランを放った高桑花田が入るが、落ち着いた投球で打たせて取り、サヨナラのピンチをしのぐ。

すると、11回表、耐えに耐えていた霞ケ浦に再び勝利の女神がほほ笑む。先頭の6番雲井がきっちり送り、2,3塁。7番鹿又は痛烈なファーストライナーに倒れるも、8番捕手の片見の放った打球は三遊間への説妙なゴロになる。これをショート山田がはじいてしまい、1点を勝ち越し。さらに9番投手の真仲が引っ張った打球は3塁線を強襲するタイムリーとなり、決定的な2点目を挙げる。下位打線ながら粘り強い打撃を見せたバッテリーの勝利であった。

11回裏、智辯和歌山は当たっている5番松嶋に犠打を指示し、1アウト2,3塁に。打たせる選択肢もあったが、霞ケ浦の挙げた2点目が攻撃の選択肢を絞ったと言える。内野ゴロの間に1点を返されるも、最後は7番井口をショートゴロに打ち取ってゲームセット。霞ケ浦が終盤二転三転した好ゲームをものにし、初の甲子園1勝を手にしたのだった。

まとめ

霞ケ浦は、「柔よく剛を制す」、茨城勢の良さが前面に出た野球で智辯和歌山を下した。選手個々の能力、体格では明らかに智辯和歌山の方が上だったが、序盤に先手を取る積極性、相手のミスに付け込むしたたかさ、終盤大事な場面で守備・走塁のミスをしないという「勝てる野球」をできていたのは霞ケ浦のほうであった。

また、終盤2発を浴びたとはいえ、市村の投球も勝利の一因だ。緩急を駆使し、相手打者に自分の打撃をさせない老獪なピッチングは、どこか元オリックスの星野伸を思い起こさせるものがあった。投打にらしさを出した霞ケ浦ナインが、同校の歴史に名を刻む1勝を手にした。

一方、智辯和歌山はこれで全国制覇後は3季連続で初戦敗退。中谷監督にとっても悔しい敗戦となった。終盤に2ホームランで追いついたあたりは、ここ2大会とは違い、智辯和歌山らしさを見せることができたが、やはり終盤のバントミスが痛かった。高嶋監督時代もそうだったが、打撃のチームと言えども、やはり勝敗のカギを握るのは守備と犠打の精度である。全国上位を見据えていた今大会だったが、また厳しい宿題を持ち帰る大会となった。

霞ケ浦―智弁和歌山 8回裏【第106回全国高校野球選手権大会】 (youtube.com)

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