大会4日目第1試合
宇治山田商
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 1 | 0 | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 5 |
0 | 0 | 1 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 |
東海大福岡
宇治山田商 加古→田中→中村
東海大福岡 佐藤
取っては取られの接戦となった第1試合は、宇治山田商が常に先行する展開に。追いすがる東海大福岡打線の反撃を、アクシデントにも負けずに振り切り、2008年以来の選抜で16年ぶりの勝利を挙げた。
試合
東海大福岡の先発は長身の右腕・佐藤。ボールに力はあるが、制球力にやや不安のあるとの評だった。そんな中、初回はカーブがよく決まり、ストライク先行の投球で上位3人を三者凡退に。上々のスタートを切る。
これに対し、宇治山田商の先発は2年生右腕の加古。昨秋に最もマウンド数を踏んだ、伸び盛りの右腕だ。こちらも初回、東海大福岡打線のなかでも最も注意が必要な1番光冨、2番宗翔の2人を打ち取り、こちらも三者凡退。スリークオーターからのスライダーを武器に打たせて取っていく。
攻撃型のチーム同士ながら静かな試合の入りとなる。しかし、2回表、やはり試合は序盤から動く展開となった。
この回、先頭の4番小泉を相手に佐藤は変化球主体に追い込んでいたが、カウント2-2からのストレートが高めに入る。これを小泉が逃さずはじき返すと、打球はレフト線を抜ける2塁打となる。犠打でしっかり3塁へ進めると、6番郷がきっちり打ち上げて小泉が先制のホームイン。東海大福岡の中継プレーも無駄がなかったが、一瞬早くホームを駆け抜けた。この回、得点にこそつながらなかったものの、7番中瀬・8番加古も連打を放ち、佐藤攻略の足掛かりを作る。
これに対し、東海大福岡打線は2回裏に、2者が四球を選び、右スリークオーターの加古に対してじっくり選球する。とくに左打者のアウトコースへのボールがやや流れ気味であり、入ってくるボールに絞りやすくなっているため、福岡の打者も狙いは絞りやすそうである。
そんな中、3回表に宇治山田商は2アウトから3番中川が頭部に死球を受けてしまう。大事を取って退場となり、やや不安な雰囲気が流れる。
直後の東海大福岡の攻撃で8番佐藤が自らヒットを放ち、出塁。犠打失敗、内野ゴロで2アウト1塁となるが、入れ替わった1塁ランナーの光冨が盗塁を決めてチャンスを広げる。ここで2番宗翔がセンターへのヒットでつなぐと、3番山本はインサイドを狙ったストレートが甘くなるのを逃さず、レフトへタイムリー。加古はなかなかインサイドを突き切るボールが少ない中、東海大福岡の各打者がコースの甘くなったボールを逃さずとらえた。ここで宇治山田商はエースナンバーの田中にスイッチ。けん制タッチアウトを奪い、難を逃れる。
同点に追いつかれはしたものの、はじめから継投を意識していた宇治山田商にとっては想定内の展開だっただろう。取られたすぐ後に突き放しにかかる。
4回表、1アウトから先制犠飛を放った6番郷が高めの速球をとらえて左中間へ2塁打。立ち上がりからカーブはよく決まっている佐藤だが、ストレートが時折高く入る。さらに7番中瀬が絶妙なバントヒットを決めて、1.3塁となると、盗塁も決めて1アウト2,3塁。ここで8番田中のショートゴロが野選となって1点を勝ち越し。さらに続く9番加藤の犠飛を再び野選にしてしまい、満塁になると、佐藤の投球が立て続けに暴投となって2点を献上。この回、あまりにもったいない形で3点を勝ち越される。
東海大福岡にとっては惜しまれる展開。4回裏には2アウトから6番唐崎、7番井上の長短打が飛び出すが、ライト中瀬の好返球でタッチアウトとなる。3回のセンター山本の送球もそうだが、外野陣の守備が非常に鍛えられている。
これで流れを作りかけたかに見えた宇治山田商だったが、5回裏、エース田中が捕まる。タイプとしては、加古と同じ右スリークオーターなだけに、東海大福岡打線も対応しやすかったのかもしれない。この回、またも先頭の8番佐藤が内野安打で塁に出ると、犠打で二進後に、四死球で2アウトながら満塁に。東海大福岡の右打者はアウトコースに目付をしてファウルで粘り、四球をもぎ取っていく。
ここで東海大福岡は左打席に4番藤本。バッテリーのストライクが欲しい心理を見透かしたかのようにインサイドの速球をとらえてライトへのタイムリー。2点差に迫ると、今度は5番の野上がアウトコースの変化球をきっちりミートして、レフトへ同点の2点タイムリーを放つ。右打者がじわじわとチャンスを広げ、左打者が仕留める、打線のつながりを見せて、再び試合を振り出しに戻す。
4-4で試合は後半戦に。しかし、東海大福岡・佐藤は得点をもらった直後に踏ん張り切れない。この日当たっている6番郷を四球で出すと、犠打で二進。ここで8番田中、9番加藤にいずれもストレートをミートされ、連続ヒットとなって郷がホームを駆け抜ける。ストレートの高さはやや調整できるようになってきていたが、宇治山田商の打者の巧打が上回った。
この日、3度目のリードを奪った宇治山田商。しかし、試練は続く。6回裏、1アウトからレフトライナーを処理した郷が捕球時に足を負傷し、ベンチへ。今日当たっていたラッキーボーイだけに、村田監督にとっても痛い交代となってしまう。
荒れた内容の試合となったが、終盤は一転して両チームの投手が好投を見せる。福岡の佐藤はストレートが低めに決まるようになり、カーブとの組み合わせで宇治山田商を翻弄。一方、宇治山田商も2番手で上がっていた田中が、ほぼアウトコース一辺倒の配球ながら、外の低めを丹念について打たせて取っていく。ランナーがほとんど出なくなり、最終盤へと進む。
宇治山田商は、8回裏から3番手で右腕・中村がマウンドへ。エース田中は下がったため、この投手を攻略できれば、東海大福岡の勝利が見えてくる。しかし、最後を任された右腕が最も長身でボールに角度と力のある投手であった。カーブを武器に、先ほど連続タイムリーを放った4番藤本、5番野上を連続三振。9回に先頭打者がヒットで出るも、後続が三振ゲッツーとなり、万事休す。最後は代打・伊藤をファウルフライに打ち取り、宇治山田商がアクシデントにめげず、全員で守り切って1勝をつかんだ。
まとめ
宇治山田商はクロスゲームになったが、常に先手先手を取って試合を優位に運べたのが大きかった。しかも、相手に同点に追いつかれた直後に、2度突き放しており、やはり取られた後の攻撃、取った後の守りは大事だと改めて感じさせられた。強力打線はこの日、ヒットこそ7本だったが、相手の守備ミスや制球が甘くなったところを逃さないしたたかさが光った。
また、投げては3人の右腕による継投策で逃げ切り勝ち。特に、中盤捕まりかけながらも、自分の投球を取り戻したリリーバーの田中の働きは大きかった。試合前のアクシデントもあって3人が予期せず入れ替わる苦しい試合だったが、辛くも逃げ切り勝ち。同校史上初のベスト8へ向けて、まずはおおきな一歩を踏み出した。
一方、東海大福岡はエース佐藤が前年秋と比べるとカーブの制球に磨きがかかり、成長している様がうかがえた、それだけに4回の暴投やストレートが高めに入る場面がもったいなかったか。終盤は得点はおろか、ほとんどランナーも出さない完ぺきな内容であり、これが彼の本来の持ち味だったのだろう。打線は、狙いを絞った打撃に2度追いついたが、時折、意図せずシュート回転して入ってきたボールを打たされたのが悔やまれたか。それでも投打に収穫は多く、夏へ向けて手ごたえを感じた一戦だったのではないだろうか。
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