新バット解禁から一年が経過し、高校野球界の勢力図も昨今の傾向から変わりつつある。
昨年は健大高崎、京都国際と近年甲子園に台頭してきた高校がついに全国の頂点を極めた。新しい時代の頂点を目指し、今年も楽しみな顔ぶれが春の聖地に降り立つ。
優勝候補先頭集団
優勝争いの中心になりそうなのは以下の3校だろう。神宮王者・横浜、そして、その王者を関東大会と神宮大会で追い詰めた東西の強豪2校が戦闘集団となる。
横浜は、あの松坂大輔(西武)を擁した1998年以来となる「公式戦無敗」で秋の大会を締めくくった。村田監督就任以来、1点にこだわる横浜野球が戻ってきている感があり、ここに投打でタレントが揃って、強豪復活を印象付ける。
投手陣は左腕・奥村頼と新2年生右腕・織田の左右両輪が軸。キレのあるボールが軸の奥村頼は大事な場面で相手のチャンスを封じ込める役割を果たし、先発・リリーフともに重要な仕事を果たしてきた。一方、伸び盛りの右腕・織田はすでに150キロ近くを計測しているストレートを武器に力で相手をねじ伏せる。この2人以外にも力のある投手が揃っており、投手陣全体の力では頭一つ抜けた存在だろう。
一方、打線は秋の戦いでは数字上、目立ったものはないが、上位打線を中心に横浜らしい勝負強さを兼ね備えている。1番に座る主将・阿部葉は2年生から主将に就任した生粋のリーダー。卓越した選球眼を武器に出塁し、為永とのキーストンコンビで相手守備陣をかき回す。小野、奥村頼とミート力の高い打者が揃い、高いレベルでの戦術にもついてこれる打線だ。
伝説の「98年・横浜」の再現へ、準備万端だ。
東洋大姫路は名将・岡田監督が就任し、着実にチーム力がアップ。攻守にスキのないチームとなり、選抜の舞台に帰ってきた。
エース阪下は最速140キロ台後半の速球はもちろんのこと、多彩な球種、コントロール、フィールディングと投手としての能力の五角形がほぼ満点に近い、完成度の高さを誇る。特に、試合の中で相手を見て配球を変えることができる臨機応変さは、出場校の投手の中でも群を抜いた能力だろう。左腕・末永も秋の大会を通じて成長。クロスファイヤーを武器に、神宮では二松学舎大付の強力打線にも好投した。
一方、岡田監督就任以来、最も伸びたのは打線の部分だろう。体格のいい選手が並び、パワーが打球に伝わっているのがわかる。また、打席での積極性を植え付け、好球を振っていくスタイルが浸透してきたのか、序盤から相手投手に襲い掛かる試合が多かった。見村、木村の中軸を中心に振り切れる選手が多く、近畿大会で対戦した平安・原田監督を驚嘆させた。上位打線に左打者が並んでおり、対左投手への対策が課題か。横浜の奥村頼のような一線級の左腕を相手に攻略できるかが、本戦でのカギになりそうだ。
過去、甲子園に出場すれば、かなりの確率で2勝以上を上げてきた同校。しかし、今大会ではその更に上の「優勝」を狙っていく。
健大高崎は昨年の選抜に続いての連覇を狙う。史上4校目の快挙なるか。
投手陣の軸は右腕・石垣。昨年の優勝投手の佐藤龍はTJ手術の影響で登板できなくなったが、そのぶん投手陣の柱としての自覚が芽生え、今や高校球界でもトップクラスの右腕に成長した。等々力球場での158キロは少し補正してみる必要があるが、それを差し引いてもstraightの平均球速は150キロ近い。昨年の経験値もあり、難攻不落の存在だ。左腕・下重など、他の投手にもめどが立っており、投手力に不安はない。
一方、打線はタレントぞろいだった昨年から多くの選手が抜けたが、それでも秋の大会での得点力は落ちなかった。加藤、石田の1,2番を中心に繋ぎ意識が高く、どちらかと言えば、元祖・機動破壊に戻ってきた印象のあるチームだ。練習試合も含めた50試合を戦った秋でわずか2敗しかしていないように、ベンチ入りメンバーまで層が厚いのも強みだ。
悲願の全国制覇を果たし、着実にステップアップを果たした強豪が、さらなる飛躍を目指す。
追随する第二集団
追う第二集団は以下の4校。それぞれ伝統と地力を備えたチームであり、V戦線に割って入る。
敦賀気比は5年連続の選抜出場だが、ここ4大会はすべて初戦敗退している。しかし、常総学院・広陵・大阪桐蔭・明豊と全国屈指の強豪と初戦から顔を合わすこととなり、広陵戦以外はすべて接戦だ。経験値十分なチームであり、今年の神宮の戦いを見ても期待が持てるチームだ。
菅田、五十子の左右の両輪が軸となる投手陣は、まだ成長途上の感はあるが、ポテンシャルは十分。過去、幾多の好左腕を輩出してきた同校のエースナンバーを背負う菅田は、多彩な変化球を軸に打たせて取る投球が持ち味。昨年のエース竹下にも実力では劣らないだろう。五十子もコントロールが安定しており、試合を壊さない安心感がある。その他にも楽しみな投手が多く、一冬を超えて誰が台頭してくるか楽しみだ。
一方、チームの代名詞でもある強力打線は今年も健在。神宮大会でも2試合で20得点をたたき出したように、一度つながりだすと止まらない破壊力は抜群だ。1番岡部、2番河村を中心に強打も足もあるため、相手にミスが出ると得点が倍増する。神宮大会準決勝の広島商戦で終盤に5点差を追いついたのが好例だ。北信越大会の決勝でも逆転勝利を収めており、最後まであきらめない姿勢で強力打線が食らいつく、その迫力は全国トップクラスだ。
2015年に初優勝を果たした同校。2度目の快挙へ向け、虎視眈々だ。
広島商は神宮大会で準優勝を果たし、優勝した横浜にも善戦。目立った選手はいないが、投打に高いレベルでまとまった好チームだ。
投手陣の軸は右腕・大宗と左腕・徳永の両輪。大宗は神宮準決勝で敦賀気比を相手に180球以上を投じたタフネスさが武器。キレのある速球と多彩な変化球をコーナーに投げ分けることができ、大崩れする心配がない。豊富な投手層を誇る同校の中でも安定感はNo.1だろう。左腕・徳永は球威が武器の好投手であり、大宗とは全くタイプが異なる。この2人を中心に完投も継投もあるチームで、相手は起用が読みづらいだろう。堅守・広島商の伝統を守るべく、神宮で乱れた守備をもう一度見直したいところ。
一方、打線は犠打を絡めたHIROSHO野球からスケールアップし、令和の時代に適合して打力UPを図ってきた。状況に応じてエンドラン、盗塁など型にはまらない攻撃パターンを持ち、ここに個々人の高い打撃技術を融合して一気に試合のペースを握る。神宮でも外野の頭を超す打球が目立ち、新基準のバットにもいち早く対応していると言えるだろう。主砲・名越、強打の2番西村を中心に序盤から得点を重ねていきたい。
ここ2年は広陵の独壇場だった広島の高校野球。県内2強の一角の意地を見せ、久々の選抜制覇といきたい。
智辯和歌山は夏春連続の甲子園出場。直近3大会でいずれも初戦敗退しているが、投打にタレントは揃っており、個の力は間違いなく出場校中トップクラスだ。その力を試合での結果に昇華できるか。
投手陣は昨年の甲子園を経験した渡辺、宮口の両右腕が軸となる。ともに140キロ台中盤の球速を誇り、球威・スピードともに十分。コントロールも安定しており、試合を作れる安定感がある。特に宮口は最速で150キロをマークしたこともあり、中谷監督も期待値の高い剛腕だ。そのほかにも奥、田中、中井とタイプの違う右腕が勢ぞろいしており、全員右投手ながら豊富な陣容を誇る。
一方、打線は今年もパワフルさを兼ね備えており、一発長打の魅力がある。特に2番に長打力のある福元を置いているところが売りで有り、初回から複数得点を狙えるのが強みだ。昨夏の甲子園で霞ケ浦の軟投派左腕を相手にフライが続いてしまった経験を活かし、試合の中で攻撃・スイングのスタイルを柔軟に変えていけるかがカギとなる。はまれば怖い打線なのは間違いなく、今年こそ爆発させたい。
投打のポテンシャルは全国でもトップクラス。初戦の呪縛から解き放たれれば、一気の快進撃もあり得る。
高松商は秋の四国大会で準優勝ながら、その力は勝利した明徳・馬淵監督も認める、怖いチームだ。
投手陣は末包旬と行梅の2人の右腕が軸。2人とも投球回数に近い奪三振を記録しており、コントロールもいいため、失点を計算できる。そのほかにも計算できる投手が2人ほどおり、投手層に長尾監督も自信を見せる。準優勝を果たした2016年の投手陣も多彩な陣容だったが、その時を上回る力を持つ。
一方、伝統となりつつある強力打線は今年も健在。2022年の主砲・浅野(巨人)のような超高校級の選手は不在だが、3番橘を中心に上位から下位まで切れ目なくつながる攻撃で相手バッテリーに圧力をかける。四国決勝で対戦した明徳の池崎-里山の好バッテリーに対しても、終始攻め続け、3-5と惜敗したものの、その分厚い攻撃力で上記の馬淵監督のコメントを言わしめたのだろう。
長尾監督就任以来、一時代を築きつつある伝統校。令和の時代で栄冠を勝ち取るべく、腕を撫す。
地区大会優勝校
秋の地区大会王者の6校ももちろん優勝候補の一角だ。
東海大札幌は速球派左腕・矢吹と右腕・高橋が左右の強力2枚看板を形成。秋の大会でもほとんどの試合で失点を2点以下に抑えており、難攻不落の投手陣を誇る。バックで支える守備陣も安定しており、守りあいには絶対の自信を持つ。打線はチーム打率2割7分台とやや数字の上では低かったが、遠藤監督の東海大相模時代のコーチ時代から受け継いだアグレッシブベースボールが徐々に浸透しつつある。準優勝した2015年のようなロースコアの試合をものにできれば、一気に躍進する可能性は十分だ。
聖光学院は2018年以来となる秋の東北チャンピオンに輝いた。ハイライトは何といっても、準々決勝の仙台育英戦だろう。タレントぞろいのチームを相手に、最少失点でしのぎ、数少ないチャンスを相手のミスにもつけこんで活かすという、THE・聖光学院の野球でものにした。大嶋-菅野と左右のタイプの違う投手リレーで守りを固め、小技を駆使した野球でコツコツ得点を挙げるのが持ち味だ。名将・斎藤監督の采配に注目したい。
二松学舎大付は2年ぶりとなる選抜出場。今年も自慢の強力打線は健在だ。パンチ力と俊足を兼ね備える1番入山を核弾頭に公式戦打率4割越えの打者がずらりと並ぶ。長尾、大橋など経験値の高い打者が並んでおり、監督の采配意図をしっかり理解して攻撃に繋げていく。また終盤の粘り強さも光り、逆転勝ちが多いのも特徴だ。河内、及川と力のあるW右腕が守る投手陣も大崩れする心配はない。ここ数年の選抜は初戦敗退が続いているが、今年は一気のブレイクスルーも期待できる陣容だ。
大垣日大は高橋新監督になって初めての甲子園出場。東海大会では中京大中京とのV候補対決でしびれる投手戦を制したように、しぶとさを発揮して優勝を勝ち取った。東海大会では打力の高いチームとの対戦が続き、失点がかさんだが、谷之口、中野の左右2枚看板が計算でき、ディフェンス面に大きな不安はない。打線は機動力豊かでスタメン全員に機動力が使えるのが強み。終盤勝負の大事な場面で足を使った攻めができるか。貝原、西河の中軸の前にチャンスで回せれば、理想的だ。相性のいい選抜で上位進出を狙いたい。
明徳義塾は夏春連続の甲子園出場。池崎-里山の下級生バッテリーがそのまま残り、鉄壁のディフェンス陣も含めて守りには不安がない。池崎は変化球を自在にあやつる制球力に長け、相手打者の狙いを外す洞察力もある。失点の計算できる投手だ。一方、打線はやや上位偏重のきらいがあり、下位までのつながりをいかに出していけるか。馬淵監督の巧みな采配も後押しし、選抜では初となる優勝を狙う。
沖縄尚学は2年ぶりの選抜出場。一昨年は好右腕・東恩納を擁して完成度の高いチームだったが、今年は2年生エースを中心にまだまだ伸び盛りの印象が強い。秋はその末吉が好投し、伸びのある速球を武器に九州大会を制したが、神宮では敦賀気比の強力打線につかまり、打ち負ける結果に。もう一人の左腕・久高が台頭してくれれば、さらに層が厚くなる。打線は、九州大会で7割越えの打率を残した比嘉が軸。チャンスの場面でことごとく結果を残し、急成長を見せた。主将の眞喜志が出塁して比嘉で返すのが得点パターンだ。下位打線まで含めた打線全体の力をどこまで伸ばしていけるか。3度目の選抜制覇へ向け、調整に余念がない。
不気味な常連組
選抜では地区大会での結果をもとに優勝争いを占うが、その地区大会で優勝を逃した常連校が選抜の優勝旗をかっさらったケースも過去に幾度も存在した。
青森山田は昨年春夏ともに好結果を残し、今東北で最も勢いに乗っているチームだ。投手陣はすべての試合を乕谷→菊池統→下山の順番での投手リレーでまかなうという珍しいやりかたで失点を防いできた。方針が定まっている分、各投手の役割も明確で準備がしやすいだろう。速球派の乕谷、長身の菊地統、安定感のある下山とそれぞれタイプも異なり、継投の威力が増す。打線は昨年の甲子園でホームランを放った佐藤洸を中心に破壊力十分。課題の守備を鍛え上げられれば、3季連続での上位進出は現実的な目標となりうる。
花巻東も夏春連続の出場。こちらも昨夏からのmemberが複数残り、チーム力は高い。昨夏に1年生で主砲を務めた4番古城がどっかり座り、スタメン全員がしっかり振り切る意識で打席に立ち、相手バッテリーに圧力をかける。足の速い選手も多く、花巻東らしい細かい攻撃も見られそうだ。大型右腕の金野、技巧派左腕・萬谷とタイプの違う2人の投手で形成する投手陣も安定しており、失点が計算できる。昨夏はペースのつかみ合いで負けた感があったが、そもそもの地力は高く、この春はリベンジに燃える。
山梨学院は3年連続の甲子園出場となる。一昨年が県勢初優勝、昨年がベスト8と選抜には好相性のチームで、吉田監督曰く、「春に勝ち上がりやすいチーム」である。その要因はやはり安定したディフェンス力だろう。今年も長身右腕の菰田がエースとして君臨し、角度のある速球を武器に相手打線に立ち向かう。関東大会では強打の東海大相模打線を相手に真っ向勝負を挑み、V候補を下した。また、打線も4番捕手の横山を中心にパワフルなスイングを見せ、新基準のバットでありながらも、打って勝つ姿勢を崩さずに挑む。今や全国屈指の強豪となった同校が3年連続の上位進出を狙う。
早稲田実は昨夏ベスト16のメンバーが数多く残り、戦力を保持しながら秋の戦いに臨むことができた。エース左腕・中村は甲子園で一皮むけた印象があり、ゆったりしたフォームから繰り出す伸びのある速球を武器にエースとしてチームを牽引した。バックも6試合で5失策と堅守を披露。ブルドッグ守備など、選手たちが自ら考えて動くことができ、守りから崩れる心配はない。打線は、中村・山中・國光と昨年の主軸がごっそり残り、公式戦打率は3割3分台をマーク。投打ともポテンシャルが高く、伝統のコンバットマーチに乗って2度目の選抜制覇を目指す。
好投手擁し、上位へ
選抜と言えば、投手力。昨年から導入された新基準バットの影響でロースコアの試合が増えており、好投手を擁するチームはおのずと優位になる。
日本航空石川は2年連続の選抜出場。昨年は雨中の戦いで、常総学院との接戦に敗れたが、今年はそのリベンジに燃えている。エース蜂谷は経験豊富な右腕であり、最速145キロの速球を武器に試合を作る安定感、ピンチで踏ん張る勝負度胸とも、大会屈指の存在だ。カットボールを武器にする右腕・長井、野手兼任のキャプテン及川もおり、投手陣は非常に分厚い。打線は、1番北川・2番菅野の2人の切り込みで突破口を図る。完封負けを喫した昨年の悔しさを晴らすべく、安定した守りをベースに優勝戦線に絡んでいきたい。
浦和実は同校史上初となる甲子園出場。昨年はエース左腕・石戸の好投と勝負強い打撃で関東4強に食い込み。神宮王者の横浜とも1点差の接戦を演じた。石戸は独特の間合いと変則的なフォームから繰り出す癖球で相手打者を翻弄。スピードがなくとも抑えることができるという見本のような投手であり、初見で攻略するのはなかなか難しいだろう。本格派左腕の駒木規との左の2枚看板で相手を3点以内に抑えることができそうだ。打線は三島、野本の中軸の前にいかにランナーを置けるかがカギ。先制して守り切る必勝パターンに相手を引きずり込めれば面白い。
千葉黎明は今大会の初出場校の中でも最も地力が高いチームだろう。秋の公式戦では実に7人の投手がマウンドに上がり、多種多様な陣容で相手打線を時には押し込み、時にはかわした。フォークが武器の右腕・田代、長身右腕の飯高など、それぞれに個性があり、相手の特徴に合わせて適材適所でマウンドに挙げた。どこか昨春に4強入りした中央学院を思い起こさせるチームだ。打線は、機動力があり、エンドラン・盗塁を駆使して相手バッテリーをかく乱する。2年連続で千葉勢の快進撃が見られるか。
米子松陰はエース右腕・新里の好投で中国大会準優勝。公式戦のほとんどを一人で投げぬいた絶対的エースだ。身長は150㎝台と小柄ながら、打者に向かっていく姿勢と内外に散りばめるコントロールを武器に、厳しい試合をものにした。2番手投手とはやや力の開きがあり、新里の右腕にすべてがかかっている。一方、打線はランナーが出たら犠打で確実に得点圏に進め、一本でホームを突くというシンプルなスタイル。大物うちはいないが、四死球などで粘って出塁を勝ちとり、タイムリーを呼び込んだ。昨夏の隣県の大社に続く旋風を山陰から届けたい。
エナジックは念願の初出場。2008年に浦添商を4強に導いた名将・神谷監督の野球が浸透し、近年では県内・九州でも強豪の地位を確立していたが、昨秋に一気にブレイクした。エース左腕の久高は140キロ台の速球と多彩な変化球を投げ分ける好投手。試合によっての好不調の波を抑えられれば、本大会でも好投する可能性が高い。打線は、ノーサイン野球を掲げ、思考力を求める。1番イーマンを中心に機動力も絡めて、崩しに行く。県決勝、九州決勝ともに沖縄尚学に敗れたが、その他の相手には負けておらず、初勝利からの一気の上位進出を狙う。
強力打線引っ提げ
自慢の攻撃力を武器に他校を脅かすのが以下の3校。
常葉大菊川は、伝統の攻撃力を武器に2年ぶりの出場権を奪取。昨秋の東海大会では3試合連続の2桁安打を記録したように、持ち味の振って振って合わせていく打撃で、活路を見出す。1番橘木、4番児玉を中心に5人の左打者が並び、強打であいてを呑み込みたい。投手陣は技巧派左腕・大村が軸。丁寧に打たせて取る投球で、守備からリズムを作る。継投を基本線に置いており、同じく左腕の石黒や野手兼任の佐藤大加を後半に出して、相手打線の目先をかわす。菊川らしい野球で、初優勝を果たした2007年以来の快進撃を狙う。
天理は3年ぶりの甲子園切符を獲得。中村監督から永年天理大を率いていた藤原監督に交代し、より攻撃型のチームにシフトしてきた。昨夏も強力打線が看板だったが、ライバル智辯学園に2-5と敗戦。得点力を上げるため、新チームからは足も使った攻撃でよりその威力を増してきた。打率4割台後半の1番赤埴、主砲・富田を中心に前年の悔しさを引き継いだ好打者がずらりと並んでいる。投手陣は下坊、伊藤、酒井とタイプの違う右腕をそろえ、継投も自在。伝統校が2021年以来となる上位進出へ牙をとぐ。
西日本短大付は夏春連続の出場。昨夏からの正捕手である山下と新エース中野のバッテリーを打線が強力援護し、九州4強へ駆け上がった。1番奥、3番斉藤を中心に打って走れる選手がずらりと並んでおり、相手にスキがあれば一気に畳みかけて大量点を奪う。読みが鋭い打撃の山下を6番に置けるのも、相手バッテリーにとっては怖いだろう。中野は昨夏のエース村上と同様に打たせて取る投球が持ち味。テンポのいい投球で守りから攻撃へのリズムを作る。まずは、昨夏あと一歩で逃したベスト8を狙い、聖地に乗り込む。
ディフェンス力高い
傑出した存在のエースがいるわけではないが、守備面を含めてディフェンス力に自信を持つのが以下の3チームだ。
至学館は昨秋の愛知大会で強豪とのロースコアの接戦をことごとくものにし、しぶとい守りで出場権を勝ちとった。2年生投手陣が非常に層が厚く、抜群のコントロールを誇るエース尾崎をはじめとして、右腕・磯村、左腕・加藤と計算のたつ投手が多い。特に尾崎は66イニング余りを投げて防護率0点台と難攻不落の存在である。一方、野手は数字上は高くはないものの、1番武藤、2番船橋の2人を中心に足と小技を絡めての攻撃が出来る。新基準バットの時代においては、強みとなる攻撃だ。春夏計3回目の出場で念願の初勝利を狙う。
市立和歌山は伝統のディフェンス力を中心に和歌山3位から近畿4強入り。伝統の手堅い野球で3年ぶり9度目の出場をつかんだ。真骨頂と言えたのは、準々決勝の立命館宇治戦。京都1位のチームを相手にエース土井がキレのあるボールで低めを丹念につき、ゴロの山を築けば、打線はセンターから逆方向への打撃で単打を連ね、終わってみれば10-0のコールド勝ちで大一番を制した。ここ3大会はいずれも初戦を突破しており、持ち味の守り勝つスタイルを貫き通せれば、面白い存在だ。
滋賀学園は昨夏に続いての出場。ベスト8入りの快進撃を間近で見た面々が残り、この春はさらなる躍進を狙っている。長身から角度のあるボールで相手打線をねじ伏せるエース長崎、昨夏の甲子園でも好投を見せた本格派右腕・土田悠と強力2枚看板を擁し、近畿大会では高校球界の王者・大阪桐蔭を相手に3-2で接戦をものにすることができた。打線は今年もコツコツとミートしてつなぐ打撃を徹底しており、気づいたら得点が刻まれている感がある。投手陣が守りを固め、野手陣が1点1点積み重ねる、滋賀学園の野球で今年も旋風を巻き起こしたい。
ダークホース
過去に何度も吹き荒れた選抜でのアップセット。21世紀枠の2チームを含め、以下の4校にも十分上位を伺う力はある。
滋賀短大付は昨秋の近畿大会で最もサプライズを起こしたチームだ。初戦は強豪・履正社との対戦となったが、技巧派左腕・櫻本は独特のテークバックから繰り出す120キロ台の速球を速く見せる投球術に長け、チェンジアップやカーブでタイミングを外す。4番捕手の大窪の好リードも光り、あうんの呼吸で相手打線にリズムを与えなかった。打線でも軸となる大窪は捕手のリードを活かした読みで相手バッテリーのボールを捕まえに行く。全体的に小柄な選手が多いが、そのぶんつなぐ意識に長けており、「山椒は小粒でもぴりりと辛い」野球で大物食いを狙う。
柳ヶ浦は今大会の出場組でも最も読みにくいチームかもしれない。というのも、昨秋は投手・野手ともにけが人が非常に多くベストメンバーを組めなかったからだ。しかし、そんな中でも、投手陣は2年生左腕の宮城が急成長を見せ、投手陣の柱ができつつある。野手陣はチーム打率が2割4分台と当たりが出ていなかったが、コツコツと後ろに繋ぐ攻撃で秋は活路を見出した。正捕手の眞子をはじめとしてけが人が戻ってくれば、一気に総合力が増す可能性があるチームだ。
壱岐は昨秋の九州大会で8強入りし、離島からの甲子園出場を達成。一般枠のチームとの力の差は少ないだろう。エース浦上は抜群のコントロールを武器としており、内外角を丁寧に投げ分けていく。一冬超えて、球速・球威が増せば、大会でも面白い存在になりそうだ。シュートを武器にする右腕・山口との継投のタイミングも重要だ。打線も県内・九州で強豪を相手に互角の展開に持ち込んだ。小西、岩本の1,2番を筆頭に機動力豊かで、しかも判断能力の高い選手が多い。冬場の練習を超えて「打力」がアップできていれば、なお一層侮れないチームになりそうだ。
横浜清陵は神奈川勢で初となる21世紀枠をつかみ取った。右サイドからくせ球を繰り出す右腕・内藤と速球派左腕・西田はともに公式戦防御率1点台と安定感があり、神奈川大会では東海大相模の強力打線を相手に5点で踏ん張った。一方、打線はやや力強さに欠ける面は否めない。変化球対策を徹底するなど、一冬超えてどこまで成長できているか。なんとか3点勝負に持ち込み、少ないチャンスをものにしていきたい。
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