大会9日目第4試合
浦和実
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 計 |
0 | 0 | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 8 | 12 |
0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 |
聖光学院
浦和実 駒木根→石戸
聖光学院 古谷野→菅野→大嶋→沼田
互いに持ち味を出し、継投でエースが登場した試合は、両者譲らずにタイブレークに突入。10回表に見事な集中打を見せた浦和実が聖光学院を一気に突き放し、初出場で4強進出を決めた。
試合
聖光学院は、ここまで登板の無かった左腕・古谷野が先発。一方、浦和実は2回戦に続いて左腕・駒木根の先発となった。
聖光学院の古谷野は、エース大嶋と同様、左のスリークオーター気味の腕の振りから緩いボールを武器に、緩急を活かす。ベースの最も一塁よりを踏み、横の角度をつけた投球で1,2回とうまく立ち上がる。対する浦和実・駒木根も2回戦は高めの速球を痛打されたが、この日はコントロールに気を付けている様子が伝わってくる投球で、無難な立ち上がりを見せる。
両者ともリードを取って、エースに繋ぎたいところ。打者二巡目に入り、成長著しい浦和実の打線が、古谷野をとらえる。
1アウトから2番佐々木がインコースの速球をとらえると、打球は背走するセンターのはるか頭上を越え、佐々木は一気に3塁へ。続く3番山根も速球を引っ張り、早くも古谷野の投球に対応して1点を先行する。緩急を活かしたい古谷野だが、この回はややリズムが単調か。浦和実打線の振り切る打撃がそれを逃さない。4番三島にはスライダーをとらえられて、いよいよ追い詰められると、5番野本もスライダーを捕まえて、右方向でライトオーバーに運び、2-0。この回、さらに犠飛が飛び出し、一気に3点を先行する。
浦和実の各打者がコンパクトでもしっかりスイングをかけることで、技巧派の古谷野にとってはやりにくかっただろう。それにしても、昨年からの新基準バットへの高校生の対応力たるや凄まじい。
しかし、1,2回戦と逆転で勝ってきた聖光学院もしぶとい。取られた直後、8番仁平が駒木根のインサイドの速球をとらえ、レフト線を破る2塁打で出塁。続く9番古谷野には代打を送り、斎藤監督も勝負に出る。その代打・佐々木は三振に倒れたが、1番猪俣もストレートをとらえてレフト前へ。右打者が入ってくる真っすぐに対し、いずれもタイミングがばっちりあっている。ここで2番芳賀がセカンドゴロを打ち、セカンド深谷は好守を見せるも、併殺崩れの間に1点。聖光学院が相手に行きかけた流れを呼び戻す。
聖光学院は4回から右腕・菅野をマウンドへ。昨秋は主にリリーバーとして活躍し、ロングも可能な投手だ。ただ、甲子園に来て浦和実の各打者の成長度合いは素晴らしいものがある。5回表、バスターの構えから低めの変化球を拾うと、打球は突っ込んだセンターが捕球できずに、外野を転々。2打席連続となる3塁打でチャンスを作ると、1アウト後に4番三島が打ち上げた打球はちょうど前進守備のショートとレフトの間に落ち、4点目を上げる。バッティングもそうだが、野手のいないところに落ちるあたりは、甲子園の女神に愛されている感じがする。
一方、この日は2回戦以上に緩急を意識して打たせて取っていた浦和実の駒木根。ここまで完全に浦和実ペースとなっていた試合のリズムを作ってきた。しかし、わからないもので、6回裏に一気に暗転してしまう。
6回裏、先頭の1番猪俣がまたストレートを引っ張ってヒットで出塁。この日は、聖光学院の右打者×駒木根の速球、という観点で見るとタイミングが合っている。1アウト後、3番菊池は理想的な逆方向への打撃で繋ぐと、4番竹内も打ちとられながらも、いい当たりのレフトフライを放つ。おそらく、両チームの脳裏に、石戸の登板がちらついていたことだろう。辻川監督としてはできるだけ駒木根を引っ張りたかったのは、致し方のないところだ。
ここで、打席には5番の細谷。カウント1-0から緩急を意識して、駒木根が投じたカーブ。しかし、これを細谷が待っていたかのようにとらえると、打球はレフトポール際に最短距離で飛び込むような当たりで同点の3ランとなる。呆然とする駒木根。しかし、これが高校野球、これが甲子園なのだろう。
こうなると、両チームとも後には引いていられない。聖光学院は大嶋、浦和実は石戸が7回からマウンドに上がる。さすがに前日の疲労はある状況だが、大嶋・石戸ともに、もう大舞台で自分の実力を発揮できるメンタルとしぶとさは持ち合わせている。ランナーこそ出るものの、大事なところで両者コントロールを間違えなかった。
試合は、9回で決着がつかず、延長戦に。浦和実としては、10回裏の聖光学院が上位打線なだけに。この回で勝負を決めるという集中力の高さがあった。
10回表、先頭の6番工藤は、カウント2-1と追い込まれながら、サードに取らせる見事なバントで無死満塁のビッグチャンス!まるで昨夏の大社を思い起こさせる犠打と球場のうねりだ。ここで7番橋口は、スライダーを見事にとらえて、センターへタイムリー!貴重な勝ち越し点をあげると、好守の8番深谷はこれもスライダーを救い上げて、左中間を深々破る。塁上の走者を一掃する3点タイムリー2塁打!完全に勝負を決定づける値千金の一打だった。
なおも止まらない浦和実はさらにチャンスを広げて、1番斉藤、2番佐々木が連続タイムリー!打者二巡目に入り、完全に大嶋の投球に対応していた。要所で決める犠打の精度も見事であり、これが大会前に攻撃に難ありと言われたチームの攻撃だろうかと驚嘆させられる。この回、ついに大嶋をKOし、大量8点で試合を決めた。
そして、最終回のマウンドにはもちろん、この人だ。エースの石戸は結局、この試合も失点はなしで、甲子園に来て、18イニング無失点。聖光学院に一人ランナーは出したものの、後続をきっちり打ち取り、初出場でベスト4という快挙を堂々成し遂げて見せた。
まとめ
浦和実は、変幻自在の攻撃で、この試合はなんと19安打で12点。コンパクトでかつ振り切れるスイングと小技の精度、上位から下位まで抜け目なくつながる流れは誰にも止められなかった。大会前は3点以内に抑え、3点を取ることを目標という戦い方かと思っていたが、なんのなんの3試合で23得点の猛爆ぶりである。4番三島が軸だが、2本の3塁打を放った2番佐々木など、大会が進むにつれてラッキーボーイと呼べる存在も出てきた。
また、投げては石戸がこの試合も無失点で18イニングを0封。正直、立ち上がりはボールが走っていない印象だったが、投げるにつれて自分の投球を取り戻していった。独特なフォームによる打ちにくさはもちろんだが、大舞台で実力を出し切れるメンタルも好投の要因だろう。好調な打線と難攻不落のエース。2つの強烈な剣を持つ浦和実がもはや誰も無視することのできない存在感を放ち、頂点まであと二つのところまで勝ち上がってきた。
対する聖光学院は、細谷の3ランで追いつくなど、こちらも巧みな試合運びと粘りで応戦したが、タイブレークでは浦和実の勢いに飲み込まれてしまった。ただ、それでも新チーム結成当初は、個々の力がないチームと言われたところから、12年ぶりの8強入りを決めたのは見事。エース大嶋の好投と、劣勢から盛り返す打線の粘りは素晴らしかった。斎藤監督の信念のもとで作り上げられた実直なチームが、選抜の舞台で輝いた春であった。
聖光学院 v s浦和実 【センバツ 準々決勝 全打席ハイライト】 激闘!初の4強をかけた死闘、タイブレーク決着 2025.3.26 甲子園 高校野球 選抜高校野球 高校野球ニュース
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