大会10日目第2試合
浦和実
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
2 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | × | 5 |
智辯和歌山
浦和実 石戸
智辯和歌山 渡辺→宮口
名門校と初出場校という対照的な顔合わせとなった準決勝第2試合は、智辯和歌山が序盤から難攻不落の左腕・石戸を攻略。投手陣も渡辺→宮口のリレーで浦和実打線を0封し、盤石の試合運びで決勝進出を決めた。
試合
智辯和歌山はこの日も先発は右腕・渡辺。一方、浦和実はエース石戸が初戦以来となる先発マウンドに登った。辻川監督も勝負に出たのだろう。
1回表、浦和実は1アウトから2番佐々木がセンターへのヒットで出塁。続く3番山根の打席で渡辺はかなり多めにけん制を入れ、浦和実に簡単に仕掛けを許さない。このあたりは、準々決勝の聖光学院戦のタイブレークから続く浦実打線の流れを断ち切りたい気持ちもあっただろう。結局、山根を投手ゴロ併殺に打ち取り、初回を無失点で切り抜ける。
そして、1回裏、マウンドにはここまで18イニング無失点の石戸。強打の智辯和歌山打線がどう攻略するのか。注目の勝負が始まった。
まず、打席には強打の1番藤田。カウント1-0から速球をとらえた当たりは、ピッチャーの勝ちと言える打球。しかし、レフト前にふらふらっと上がり、突っ込んだ佐々木の前にぽとりと落ちる。ボールが転がる間に藤田は2塁へ。いきなりのハードラックで石戸がピンチを背負う。動揺したのか、続く2番奥に死球を与えると、3番山下の犠打で1アウト2,3塁。ここまでわずか5球という電光石火の攻撃だ。
打席には、準々決勝から当たりの戻り始めた4番福元。カウント0-1からの高めの速球をとらえると、打球はライトの前に弾む先制タイムリー!ここまで0を並べ続けた石戸のスコアボードに初めて、それ以外の数字が刻まれた。続く5番荒井の打席でボーンヘッドがあったか、3塁ランナーが飛び出してしまい、挟殺で2アウト。嫌な流れになるなか、ここで荒井が緩いカーブをしっかり呼び込んでレイトへ打ち返し、2点目を手にする。
この場面、これまで対戦校が苦しんできた落差のあるカーブに対し、きっちり呼び込んで上からたたいた一打であった。智辯が徹底したかった打ち方で取った得点という意味では、1点目よりさらに意味のある得点だったかもしれない。
今大会はじめてリードを許した浦和実。3回表には8番深谷がピッチャー強襲の当たりでヒットを放つが、後続が犠打を決められない。絶対的エースが失点した焦りからなのか、普段の自分たちのリズムにするのが難しかっただろう。
すると、3回裏、再び智辯打線が石戸をとらえる。先頭の3番山下がアウトコース高めの速球を流し打ち。右中間に飛んだ打球を見て、好判断で2塁を奪う。続く4番福元はこれもアウトハイの打球をコンパクトに流し打ち。打球は三遊間を破って、1,3塁とチャンスを広げる。ここで、5番荒井のレフト線への打球を佐々木が前進してダイビングキャッチ!素早く送球したが、山下のホームインが一瞬早く、智辯が貴重な追加点を上げる。この打球は捕球しに行くかの判断も難しかっただろう。
ただ、浦和実としてはここがほぼdeadlineだが、まだ戦えない点差ではない。しかし、続く6番山田にも高めの速球を左中間へ運ばれてピンチが広がると、2アウト後に8番渡辺のファーストフライを三島が落球。この間に2者が生還し、両者にとって大きな2点が追加された。堅守で試合を作る浦和実としては、点差以上に流れも失った失点であった。
点差が5点に広がった智辯は、渡辺が5回を被安打3の無失点で投げ切ると、6回からは宮口にリレー。速球主体の投球でランナーこそ背負うものの、最後は力でねじ伏せていく。浦和実も7回表に先頭の6番工藤がこの日も見事なセーフティバントを決めると、智辯のエラーも絡んで、1アウト2,3塁のチャンスを作る。しかし、ここで宮口はベース寄りで構える左打者に対して動揺することなく、ストライク先行の投球。9番石戸は三振、1番斉藤はショートゴロに打ちとり、無失点で切り抜けた。
浦和実は8回表には4番三島、9回表には6番工藤と今大会を沸かせてきた選手たちがヒットを放ち、チャンスメーク。しかし、5点という点差はやはり何かを仕掛けていくには難しい点差であった。智辯和歌山・宮口も過去2試合と比較して、最もまとまった内容で4イニングを無失点。与四死球は1と危なげない内容であった。
安定した投手リレーと強打で試合を支配した智辯和歌山が、浦和実に5-0と完勝し、7年ぶり5度目の決勝進出を果たしたのだった。
まとめ
智辯和歌山は、石戸対策でハイボールをきっちりとらえ、カーブに対しては呼び込んで上からたたくという打撃を徹底した。初回の得点は、これで4試合連続であり、投手陣にリードをもたらして、優位な試合運びを可能にした。特に準々決勝から当たりの出だした4番福元は、この試合で4打数4安打の大暴れ。決勝戦に向けて非常に心強い材料だろう。
また、投げてはエース渡辺から宮口へのリレーでしつこい浦和実打線を7安打で完封。バックも堅守で投手陣を援護し、最後まで旋風を起こしてきた浦実打線を着火させなかった。中谷監督が就任し、野村監督の教えなど、プロで学んだ内容を落とし込んで、鍛えてきた智辯和歌山。ここ3大会連続初戦敗退という負のスパイラルを乗り越え、華麗に復活を遂げた真紅の常勝軍団が、2度目の選抜制覇に王手をかけた。
一方、浦和実は、この試合は敗れたものの、ここに至るまでのプロセスは素晴らしかった。エース石戸の投球は、スピードがなくとも投球術と作り上げた独特の投球フォームで、全国でも充分勝負できることを証明していた。また、攻撃陣も目立つ選手は少なくとも、ミートに徹し、逆方向への打撃で活路を見出してみせた。
決して、選手が集まるような環境でなくとも、工夫と知恵でここまで勝ち上がれる。浦和実のベスト4という結果は、全国の高校球児に勇気と指針を与える、何物にも代えがたい快挙であった。
智弁和歌山 vs 浦和実業 【選抜 高校 野球 準決勝 全打席ハイライト】 近畿勢の意地を見せるか!勢い止まらぬ浦実旋風!決勝進出をかけて激突! 甲子園 高校野球 選抜高校野球
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