大会3日目第3試合
東洋大姫路
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 0 | 1 | 5 | 0 | 1 | 0 | 0 | 7 |
2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
壱岐
東洋大姫路 阪下→木下
壱岐 浦上→日高
近畿王者と21世紀枠の対戦となった試合は、初回から東洋大姫路の注目右腕・阪下が不調で捕まる予想外の展開に。しかし、継投した右腕・木下が好投を見せると、打線も中盤以降に壱岐のエース浦上を攻略。終わってみれば、7長打を放つ攻撃で試合を支配し、7-2で2回戦進出を決めた。
試合
1回表、壱岐の小柄な右腕・浦上に対し、東洋大姫路は1アウトから2番伏見がたたきつける打撃で内野安打。続く3番高畑は高めの速球を強引に引っ張り、連打で1,2塁とチャンスを広げる。好球を積極的に振ってくる姫路打線。しかし、浦上は冷静な投球で4番木村、5番白鳥を打ち取り、先制点は許さない。
すると、1回裏、マウンドには注目の右腕・阪下。しかし、大会前から不調がささやかれていたように、ボールが走らない。1番日高、2番岩本と2者連続でストレートの四球を与え、明らかに本来の彼の投球ではない。犠打で進塁すると、変化球主体の投球で4番小西は三振に取るが、5番山口にはその変化球を狙われ、1,2塁間を破る2点タイムリーに!大歓声の中、不利が予想された壱岐が先制点を奪う。まるで昨夏に同じ兵庫の報徳学園が大社相手に初回の失点で敗れた試合を思い起こさせるような光景である。
失点を取り返したい東洋大姫路。直後の2回表には先頭の6番見村が初球をとらえて、左中間を流し打ちで破る2塁打を放つ。パワーも技術も兼ね備えた、さすがの打撃である。犠打で3塁へ進むが、続く8番桑原の打席で見村が飛び出してしまい、挟殺されてしまう。岡田監督としても、ここまでは実に嫌な展開だっただろう。
この流れを変える救世主になったのが、2番手で2回から登板した右腕・木村。注目右腕の阪下を早くも降板させたことで球場はざわめいたが、この判断が吉と出る。140キロ台も記録するキレのある速球でコースを丹念に突き、壱岐打線の勢いを止める。ケガの影響で昨秋の登板はなかったが、本来はレベルの高い姫路投手陣でエース争いをする実力の持ち主。3回にはヒットを許すものの、バックが落ち着いて盗塁を阻止し、守りからリズムを作る。
すると、4回表、落ち着きを取り戻した近畿王者の強力打線が火を噴く。浦上のインサイドを狙った変化球が高めに入ると、振りぬいた打球はあっという間にライト頭上を破る2塁打に。セカンドゴロで3塁へ進むと、7番渡辺裕がアウトコースの変化球をとらえた打球は広く空いた右中間を破り、タイムリー2塁打となって1点を返す。直前にインサイドを突かれたにも関わらず、お構いなしで踏み込んでの一打はさすが東洋大姫路である。
逆に流れを取り戻したい壱岐だが、4回裏、痛いプレーが出る。先頭の4番小西がヒットで塁に出るが、続く5番山口の犠打がフライとなり、飛び出したランナーが戻れず併殺に。犠打も絡めた機動力野球を標榜する壱岐だが、ここは少し焦りが出てしまった。
このちょっとしたスキ、流れの変わりそうな機微をV候補は逃さない。5回表、先頭の9番木下が流し打ちでレフトの横をやぶる3塁打を放つ。今大会のここまでの推移を見ても、9番打者がこのような打球を放つ打線はなかなかない。続く1番渡辺拓が低めの変化球を拾って、ついに同点。さらに犠打で二進すると、ここから3番高畑、4番木村、5番白鳥の中軸が3者連続のタイムリーを放って、一気に相手を突き放す。
この回、浦上の投球もやや高かったものの、飛ばないと言われたバットの影響を全く感じさせない打球が続いた。この東洋大姫路のイニングだけは、バット基準が変わる前の、2023年までの高校野球に戻った様。その後、後続も失策や死球で続き、犠飛で1点を追加して、大量5点のビッグイニングとした。
追う展開となった壱岐は、6回裏、失策と死球でランナーをため、食い下がるが、木村の力のあるボールをとらえるまでには至らない。これが本当にここまで騒がれていなかった投手なのかと思わせるほどの球威・スピード・コントロール・変化球の精度であり、結局8イニングを投げて許したヒットは2本、四死球も1つとつけ入るスキを与えなかった。
東洋大姫路は7回表にも5番白鳥の長打を足掛かりに犠飛で加点。白鳥はこの日長打3本の暴れっぷりだった。阪下という絶対的エースの注目度が高かった東洋大姫路であったが、終わってみれば強打と控え投手陣の「べらぼう」な層の厚さを見せつける格好となり、まずは順調に初戦突破を決めた。
まとめ
東洋大姫路はエース阪下が不調のため、初回のみで降板というショッキングなスタートだったが、終わった時にはそんなことを忘れてしまうほど、投打にパワフルな内容を見せた。特に打線のスイングの強さは素晴らしく、打線単体で見たら、ここまで出場したチームの中でもNo.1ではないだろうか。岡田イズムが注入された強力打線が全国を震撼させる打撃を見せた。
次戦以降、阪下の登板があるかどうかは不明だが、まだ本格派左腕・末永も控えており、投手陣全体でみると、不安よりも楽しみの方が多い。想定外のアクシデントも力に変え、西の横綱が優勝へ向けての一歩を踏み出した。
一方、壱岐は最終的には力負けになったものの、初回のスタートは素晴らしかった。本格派右腕・阪下に対し、冷静に選球して、初ヒットとなるタイムリーで仕留める攻撃は、素晴らしいの一言であった。投げてはエース浦上が中盤に捕まったが、前半戦に変化球を多く使って強力打線をかわした投球は、今後に向けてのヒントになりそうだ。勝利はならなかったものの、多くの収穫を持ち帰り、夏の長崎大会へ臨むこととなった。
壱岐 vs 東洋大姫路 【センバツ 1回戦 全打席ハイライト】 甲子園が大歓声に揺れた!優勝候補の近畿王者に挑む21世紀枠🔥 2024.3.20 甲子園 高校野球 第97回選抜高校野球
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