大会2日目第3試合
青森山田
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 3 |
0 | 0 | 1 | 0 | 5 | 0 | 0 | 0 | × | 6 |
沖縄尚学
青森山田 乕谷→菊池統→下山
沖縄尚学 末吉
2005年以来20年ぶりとなった南北の強豪対決は、中盤に沖縄尚学打線が青森山田の投手陣を攻略。沖尚のエース末吉が、青森山田打線の反撃をしのぎきり、2年前に続いて初戦突破を果たした。
試合
沖縄尚学は左腕エース末吉が先発。一方、青森山田は昨秋の戦い方の通り、継投を視野に入れて、乕谷を先発のマウンドに送った。
1回表、青森山田の先頭は注目の1番佐藤洸。昨夏甲子園でホームランを放った強打者だ。これに対し、左腕から繰り出すキレのある速球を武器とする末吉は、佐藤洸に粘られながらも、フルカウントからの速球で打ち取る。ピッチャー返しの打球だったが、末吉がなんとかグラブに当て、セカンド比嘉のバックアップもあってアウトにしてみせた。続く2番佐藤隆には四球を与えるも、3番伊藤をストレートで差し込み、注文通りの併殺打に。末吉が快調なスタートを切る。
これに対し、青森山田の先発・乕谷は速球が武器の本格派。ストライクをポンポン投げ込んでいくが、1番真喜志がファウルで粘り、四球をもぎ取る。犠打で二進後、3番新垣瑞がスライダーを巧みに流し打って1,3塁とチャンスを広げる。しかし、ここで青森山田バッテリーは真っ向勝負。ストレート主体の攻めで4番比嘉を三振に切って取ると、5番阿波根もセンター佐藤隆の好守でセンターフライに打ち取り、無失点でしのぐ。
互いに初回は無得点も、各打者がファウルで球数をかせぐ、ハイレベルな攻防。しかし、この展開は、継投で粘りたい青森山田の方が嫌だったか。
2回表も青森山田は4番蛯名のヒットを足掛かりにランナーを出すが、末吉が後続を打ち取り、無失点。立ち上がり、変化球の制球がやや定まらない印象だったが、ピンチをしのぎながら、徐々に制度を増してくる。
すると、3回裏、沖縄尚学は先頭の1番真喜志が乕谷のアウトコースの速球を見事にとらえると、打球は右中間を破る3塁打に。1アウト後、3番新垣瑞がこれもアウトコースのストレートを流し打ち。今度は左打者のレフトへの快打となり、沖縄尚学が1点を先行する。青森山田としては乕谷がおそらくこの回までの予定だったとは思うが、投げ切る前に1点を取られる結果となった。
先制点をもらった末吉の投球は、中盤以降、徐々に勢いを増してくる。やや荒れ球な感はあるが、躍動感のあるフォームから繰り出すストレートの球威・伸びが、青森山田の打者陣のバットを押し込んでいく。また、スライダーの制球も徐々にまとまってきた感がある。時おり四死球こそ出すものの、大事な場面で差し込まれてしまうため、決定打が出そうな雰囲気がない。
相手投手が乗ってきた中、青森山田は2番手で長身の右サイド・菊地統が登板。代わり端の4回裏はなんとか踏ん張ったが、5回裏に捕まる。
この回、2アウトランナーなしから2番宮城、3番新垣瑞が粘って四球を獲得。二人で15球を投じさせ、菊池統の集中力を揺さぶる。ここで4番比嘉はカウント0-2からアウトコース寄りの速球を狙い通り、右方向への打撃でタイムリーに!大きな追加点をあげると、5番阿波根、7番安谷屋、8番山川といずれも懐に呼び込んで打ち返し、3本のタイムリーでこの回、一挙5点を上げる。
長身のサイドからの緩いボールに対し、自分のポイントまで引き付けて打つのは、見た目ほど簡単な事ではないが、さすが沖縄尚学の打者は鍛えられている。青森山田とすれば、20年前に剛腕・柳田(ロッテ)が攻略された時を思い出してしまうような集中打であった。昨秋から3イニングずつの継投を徹底していたこともあり、兜森監督としても交代の判断がやや遅れたのかもしれない。
リードを広げられた青森山田だが、序盤からしつこい攻めで末吉に球数は投げさせていた。その攻撃が、終盤にきて実る。
7回表、先頭の4番蛯名が四球で出塁。5番菊地伊がスライダーをうまく流し打ってつなぐと、2アウト後に8番平沢も四球を選び、満塁のビッグチャンスを迎える。この回で100球を超え、さすがに末吉にも疲れが見える。ここで3番手で登板していた9番下山が、高めに浮いたストレートを左中間に打ち返し、2者が生還!球威に負けずに振りぬいた見事な打撃であった。さらに、続く注目の1番佐藤洸は内寄りのスライダーを振りぬいてレフト線を破るタイムリー2塁打とし、この回3点を上げる。
試合の行方は全く分からなくなり、青森山田の3番手の下山も安定感抜群の投球で沖尚打線を封じ込める。なんとか点差を縮めたい青森山田は8回表、先頭の3番伊藤がスライダーをとらえ、ヒットで出塁。末吉の軸となるボールであるストレートとスライダーの両方をとらえ始めていた。しかし、ここで4番蛯名は粘りながらもストレートをとらえた打球は、サードゴロ併殺に。サード安谷屋の好守に阻まれる。その後、5番菊地伊も四球を選ぶが、後続が打ち取られて得点ならず。上位打線のこの回に1点でも入れておきたかった。
末吉は結局、9回は一人のランナーも出さず、157球の熱投で完投勝ち。終盤苦しい場面を耐えて投げぬいた2年生左腕が、沖縄尚学に2年ぶりの選抜1勝をもたらした。
まとめ
末吉は球数がかさみながらも、粘りの投球で青森山田の強力打線を3失点で完投。昨秋の神宮大会は、中盤以降に敦賀気比の強力打線に捕まったが、今回は同じ轍は踏まなかった。また、打線も中盤に相手のサイド右腕に対し、呼び込んでセンターから逆方向へ打ち返す打撃で見事に攻略。攻守に鍛え上げられた力を見せつけた。
秋は優勝したものの、成長途上の感もあり、課題も多かった沖縄尚学。しかし、この日の戦いぶりには強豪対決の勝者になれるだけのエッセンスが存分に詰まっていた。3度目の選抜制覇へ向け、次戦は神宮王者に対して堂々とぶつかることができそうだ。
一方、昨年は春夏ともに躍進を果たした青森山田だったが、この日は持ち味の継投策がうまく機能しなかった。打線も、全国屈指のタレント力があったが、沖縄尚学の左腕・末吉の球威の前に前半戦は力負けした感があった。やはり、全国区の投手を攻略するのはそう簡単なことではないだろう。
それでも、3季連続の出場で、十分存在感を放つ戦いぶりを見せたのは事実。昨年は選抜初戦で破った京都国際が全国制覇を果たしており、今年は青森山田がその流れを作りたいところだ。その力は十二分にあるチームだ。
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