2025年選抜1回戦 浦和実vs滋賀学園(5日目第3試合)

2025年

大会5日目第3試合

浦和実

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 0 3 0 0 0 0 3
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

滋賀学園

 

浦和実   石戸

滋賀学園  長崎→土田

初出場校vs昨夏8強の対戦となったカードは、浦和実の技巧派左腕・石戸が好投。滋賀学園打線に自分たちの打撃をさせず、6安打で完封し、初出場初勝利を手にした。

試合

浦和実は変則左腕の石戸が先発、滋賀学園は2枚看板の一人である長身右腕の長崎がスターターに指名された。

滋賀学園の長崎は長身から繰り出す速球が武器。ややテークバックが短めであり、より角度がついている印象だ。決して強力とは言えない浦和実打線を相手に、序盤から球威で押して打ち取っていく。

浦和実としては、エース石戸の好投が勝利に向けては必須。その石戸が全国の舞台でついにベールを脱いだ。昨夏8強の滋賀学園の打線に対し、独特の見えづらいテークバックから120キロ台のキレのある速球と縦に割れるカーブを投じ、滋賀学園打線のタイミングを外す。体重移動のタイミングもまた独特で有り、余計に打者はタイミングを計るのが難しそうだ。

序盤は両エースの好投でなかなか得点の気配は漂ってこない。3回裏に滋賀学園は、1アウトから死球のランナーを出すと、続く打者の犠打が失策を誘発。堅守の浦和実としては嫌なランナーの出し方だったが、ここでも石戸は崩れない。セットポジションでややボール自体は高めに入っているのだが、そもそもタイミングが正確に取れないため、とらえた当たりにならない。

バッティングというものは、そもそも打者が本来の自分のスイングをすることが前提で成り立つものであり、石戸の投球はその前提を崩しにかかるものである。相手を抑えるには、速いボールや凄い変化球を投げるよりも、「タイミングを崩す」ことが先決で有効である。投球の神髄を見せるような、石戸のピッチングであった。

そうはいっても、序盤は滋賀学園の長崎の方が浦和実打線を完ぺきに封じ込めている印象があり、前半はなんだかんだ滋賀学園が押している感があった。しかし、中盤の5回、数少ないチャンスを活かして勝ち上がってきた浦和実が本領を発揮しだす。

この回、7番橋口が極端にバットを短く持ち、長崎の高めの速球をコンパクトに振りぬく。打球はライト前に弾むと、球場の雰囲気が変わり始める。犠打で二進すると、2アウト後に1番斉藤は変化球をしっかりとらえて、これもライト前へ。チャンスを拡大すると、2番佐々木に対し、カウント0-1から滋賀学園バッテリーは高めのボールを要求。これを佐々木が上からしっかり叩きつけてセンターへ返し、浦和実が1点を先制する。滋賀学園サイドとしては高めのボールで力負けを狙ったが、佐々木がその目論見をあざ笑うかのように見事なバッティングを見せた。

さらに3番山根が四球で歩き、満塁となると、続く4番三島の打ち上げた打球はレフト線へ。これが追いかけたレフトとショートの間にぽとりと落ちるテキサスタイムリーとなり、浦和実が大きな大きな2点を追加した。

まだ、回は中盤であったが、この3点が滋賀学園に重くのしかかる。なかなか石戸攻略の糸口が見つからない中、突然降ってきた3点のビハインド。それまで長崎の投球が安定感抜群だっただけに、余計にショックは大きかっただろう。

中盤以降、高めのボールを捨て、低めのボールに狙いを定めるが、どうしても縦に割れるカーブを前に目線がぶれる。7回裏に5番吉森のヒットと四球を足掛かりに一打二点の場面を作るが、ここも後続が連続三振。高低をうまく使い分ける石戸の投球の前に決定打を奪えなかった。

結局、石戸は8,9回にもヒットは許しながらも、完全に攻略された感はなし。最後までポーカーフェイスで自分の投球を貫き、前年ベスト8の強豪を相手のホームを踏ませることはなかった。初出場の浦和実が3-0と完封勝ちで甲子園初勝利!聖地に大きな足跡を刻み付けた。

まとめ

浦和実は、1にも2にもエース石戸の好投に尽きるだろう。変則派の左腕で打ちにくい投手というのは過去にも何人もいたが、実際に持て見ると、「これはなかなか打てない」と思わせるエッセンスが詰まっている投手だった。テークバック、体重移動、高低の使い方、ピンチでの冷静なマウンドさばきと、相手にとって打ちにくい要素をいくつも持ち、選抜へチームを導いたのも納得の好投手であった。

打線も5回に相手投手が少し乱れたところを逃さず、3得点。決して、強打ではないが、自分たちのできる攻撃を貫き、背伸びしないで攻撃していく姿勢は非常に好感がもてるものだった。山椒は小粒でもぴりりと辛いという表現が適切かはわからないが、投打にらしさを発揮した新鋭が、聖地での1勝を手に、次戦へ臨むこととなる。

一方、滋賀学園は打線が試合前から狙いを持って攻撃に向かっていたが、想像以上に初見で攻略するのが難しい投手だった。これは滋賀学園を責めるわけにはいかず、むしろ今大会出場校の打線でもいったいいくつのチームが、この石戸を攻略できるのか、と思わせるほどの投球内容だった。惜しまれるとしたら、3点を許した回の配球とテキサス性のタイムリーだが、野球にそういう要素は付き物である。

昨夏は自分たちらしさを出して3勝を上げる快進撃を見せた滋賀学園だが、この春は聖地が厳しい宿題をつきつける結果となった。

滋賀学園 vs 浦和実 【センバツ 1回戦 全打席ハイライト】 注目の技巧派左腕 vs 強力な左打者が揃う昨夏8強の強力打線! 2025.3.22 甲子園 高校野球 選抜高校野球

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