大会1日目第2試合
米子松陰
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 |
3 | 0 | 3 | 2 | 0 | 0 | 1 | 1 | × | 10 |
花巻東
米子松陰 新里→佐谷→井田
花巻東 金野→万谷
好投手vs機動力野球の対決が注目された試合は、花巻東打線が序盤で米子松陰・新里をKO。強力打線が火を噴き、同校初の2桁得点で2018年以来の選抜勝利を上げた。
試合
花巻東は長身右腕の金野が、一方、米子松陰は絶対的エースの新里がマウンドに上がった。
金野は初回、ややボールが荒れ気味。ストレートにはさすがの力があるものの、米子松陰打線の巧みな選球眼もあり、2四球を与える。しかし、5番佐谷は球威で押し込んでセカンドゴロに打ち取り、無失点。24球と球数はかさんだものの、無難に立ち上がる。
すると、花巻東打線が初回から米子松陰の新里に襲い掛かる。昨夏からの4番古城を故障で欠いているが、そんなことは感じさせない。1番高橋朔が粘って7球目の変化球を引っ張り、レフトへのヒットで出塁。犠打と四球でチャンスを拡大すると、4番赤間は低めの変化球を思い切りすくいあげる。打球は、長打警戒だったセンターの頭上を越し、タイムリー2塁打となって先制点をもたらす。
古城の代役ということで、プレッシャーもあっただろうが、見事な一撃である。さらに5番高橋蓮がきっちり犠飛を上げると、2塁ランナーも抜け目なく3塁へ。このあたりは、さすが花巻東だ。すかさず6番山崎が高めの変化球をレフトへ運び、この回3点を先行する。
新里としては内外の出し入れで勝負したかったところだが、初回、ボールがことごとく高めに入ってしまう。レフトの好返球で4点目は阻止したが、自分の思っていた投球ではなかっただろう。
思わぬビハインドとなった米子松陰だが、2回も2四球を選んだようにしっかり金野の縦の変化球に対し、選球はできている。反撃体制が実ったのは3回表。先頭の2番久白が高めのスライダーをとらえると、打球は右中間へ。守備が乱れる間に久白は一気に3塁を陥れる。続く打席には、このチームで最も期待ができる3番惣郷。カウント2-2から、これも高めに浮いたスライダーをセンターに打ち返し、1点を返す。
ただ、続く4番杉山の内野ゴロで2塁ヘ進んだ後、5番佐谷の打席で惣郷が戻り切れずにけん制でタッチアウトに。さらに、佐谷がヒットでつなぐも、盗塁は捕手・高橋蓮の好送球で阻止される。機動力が武器の米子松陰が、前のめりになったところをすかさず刺していった花巻東の守備陣は見事。昨夏に滋賀学園相手にやられたことを、そのまま返したような守備で有り、前年の反省がしっかり活かされている。
この流れを今度は攻撃へ。3回裏、1アウトから2番新田、3番赤間がそれぞれ四球を選ぶ。相手が乱れたというよりは、もぎ取った感のある四球だ。外野フライによるタッチアップで2アウト1,3塁とすると、6番山崎がストレートをとらえた打球は、さしこまれながもセンター横をやぶり、2点タイムリー2塁打に。しっかり振り切ったことで生まれた一打だった。さらに、7番森下も基本に忠実なセンター返しで6点目。ここで、中国地区屈指の好投手・新里をついにマウンドから引きずり下ろした。
新里は三者凡退の2回を見ても、立ち直りかけていたが、強引に不調ゾーンへ引きずり込んだような花巻東の攻撃であった。
大量リードをもらった金野は4回以降は、スイスイとイニングを重ねていく。時折、ヒットは打たれるものの、球威のある速球と縦割れの変化球で作る、「高低の攻め」で米子松陰打線に決定打を与えない。多少のばらつきはあったものの、今大会での成長が楽しみだ投手だ。
また、打線はセンターから逆方向への打撃が目立ち、代わった左腕・佐谷からも得点を重ね、終わって見れば、14安打10得点。高めに浮いたボールを素直に打ち返す打撃が目立った。また、走塁面でも抜け目なさが目立ち、花巻東伝統の走塁をこのチームもしっかり引き継いでいると言えるだろう。
米子松陰も最終回、2番手で登板した左腕・万谷を攻め、1アウトから代打・杉本、代打・谷田貝の連打で1点を返す。打力にやや不安との評だったが、花巻東の2枚看板から放った10安打は、大きな自信になるだろう。しかし、最後は万谷が2番久白を併殺打に打ち取り、ゲームセット。花巻東が10-2と大勝で2回戦はコマを進めた。
まとめ
花巻東は昨夏は、力を発揮しきれなかった印象があったが、この日は投打ともにらしさ全開。4番を欠いてもなんのそのと言った感じでチームの底力を見せた。特に打線は、相手の失投を逃さず、ことごとく長打・タイムリーにし、力のあるところを見せた。体格のいい選手が多く、しっかり呼び込んで打ち返す打撃は迫力満点であった。また、投げてはエース金野が持ち味を発揮して7回1失点と好投。投打ともに上々の滑り出しとなった。
さらに、その合間合間に見せる好走塁や抜け目のない守備も、花巻東の良さである。外野フライの間のタッチアップやけん制でアウトを奪うなど、1つ1つの進塁やアウトの積み重ねが野球の成否を分ける。そのことを非常によくわかっているチームだ。OBの大谷翔平や菊池雄星の派手なプレーが目立つが、この日のような細かいプレーを徹底したことが、今日の彼らを作っており、花巻東というチームを全国区に押し上げたのは間違いない。2009年にあと一歩で逃した優勝を目指し、まずは最初の一歩を踏み出した。
一方、米子松陰としては昨秋にチームを牽引した新里が本来の投球ができなかったことがすべてか。守り勝つというチームの「前提」が崩れてしまった。ただ、やはり全国の舞台で力を発揮することはそう簡単なことではないだろう。また、ビハインドを背負う中で、2桁安打を放ち、強敵に立ち向かった打線は、秋から格段に成長したことはっ間違いない。今日は勝利はならなかったが、収穫と課題を得て、春夏連続出場を目指す戦いが、明日から始まっていくことだろう。
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