2025年選抜1回戦
広島商vs横浜清陵
53% 47%
中国王者の広島商と21世紀枠の横浜清陵の対戦。投打に充実する広島商が試合をリードしそうだ。
広島商の投手陣は質量ともに非常に充実している。エース右腕の大宗は神宮で180球を投じたようにタフネスさが売りの投手だ。腕が長いため、打者寄りでボールを離すことができ、キレで相手打者のバットを押し込める。また、本格派の左腕・徳永は球威のあるボールで右打者の懐を突くことができ、神宮では完封勝利を上げた。この二人以外にも神宮決勝で好投した片岡虎らが控え、誰が登板しても好投が期待できる、充実の布陣だ。
対する横浜清陵打線は、強力とは言いにくいのが正直なところ。秋の大会でも打順が定まらず、試行錯誤した感はあった。しかし、成長著しい高校生だけに一冬超えて打力がUPしている可能性はある。特に出塁率の高い1番長谷川はミートがうまく、選球眼も優れている。各人が自分にできることを積み重ね、選球や犠打などの小技を着実に遂行できれば、広島商投手陣相手でも得点を挙げることはできるはずだ。
一方、横浜清陵の投手陣は、右サイドの内藤。オーバースローから転向したことで制球力が増し、内外を丁寧に突く投球で、相手打線を封じ込めた。スピードはそこまでではないが、変化球との配合で緩急をつけ、相手打者に強いスイングをさせない投球を心がける。また、左腕・西田、右腕・松嶋とその他の投手もバックアップ体制は万全。守り勝つ野球を体現するため、内外野も含めたディフェンス陣全体で失点を抑え込みたい。
対する広島商打線は、犠打を絡めた従来の野球からスケールアップし、令和の時代に適合して打力を向上させてきった。状況に応じてエンドラン、盗塁など型にはまらない攻撃パターンを持ち、ここに個々人の高い打撃技術を融合して一気に試合のペースを握る。神宮でも外野の頭を超す打球が目立ち、新基準のバットにもいち早く対応していると言えるだろう。主砲・名越、強打の2番西村を中心に序盤から得点を重ねていきたい。
横浜清陵の強みとしては、県大会で東海大相模と対戦しているように、強豪県でもまれたため、名前負けをする心配がないことだ。自分たちの守りの野球を貫ければ、伝統校・広島商相手でも好勝負ができそうだ。
主なOB
広島商…達川光男(広島)、鶴岡一人(南海)、三村敏之(広島)、大下剛史(広島)、柳田悠岐(ソフトバンク)
横浜清陵…斎藤由貴(女優)
広島 神奈川
春 2勝 4勝
夏 2勝 6勝
計 4勝 10勝
対戦成績は春夏とも神奈川勢がリード。特に夏の大会ではここ4年で3度対戦し、いずれも神奈川勢が勝利と相性の良さを発揮している。
2003年の選抜では広陵と横浜が決勝で対戦。この大会は横浜側の山に強豪校が固まったこともあり、3回戦での明徳義塾との延長12回の死闘など、激戦が続いた。その影響もあってか、1番主将の荒波(横浜)は骨折で不在、エース左腕の成瀬(ロッテ)は爪のケガで本調子ではなかった。そんな中、試合が始まると広陵打線は先発の2年生右腕・涌井(中日)、リリーフした成瀬に猛打を浴びせ、15得点で圧勝。特に1番上本(広島)、2番片山、3番藤田の上位3人で12安打10打点をたたき出す暴れっぷりであった。広陵としては春3度目の全国制覇であった。
一方、2023年の夏3回戦では慶応と広陵が対戦。V候補同士の一騎打ちとなった試合は、広陵・高尾の立ち上がりを攻め、慶応が3点を先行する。しかし、徐々に落ち着きを取り戻した広陵も反撃を開始し、終盤で同点に追いつく。3-3の同点で延長戦に突入した試合は、10回表に慶応打線が再び奮起。広陵内野陣の乱れに乗じて内野ゴロの間に勝ち越すと、5番延末のタイムリーでダメ押しし、6-3で大一番を制した。この勝利で勢いに乗った慶応は実に107年ぶりとなる全国制覇を果たすこととなる。
思い出名勝負
2008年夏2回戦
広陵
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
1 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 4 |
0 | 1 | 1 | 2 | 1 | 2 | 0 | 0 | × | 7 |
横浜
広陵 森宗→中田→前田
横浜 土屋
2008年夏の選手権で2003年選抜の決勝カードの再現となる試合が実現した。
広陵は前年夏に野村(広島)-小林(巨人)のバッテリーを中心に準優勝したが、この年は1番上本(広島)、3番林を中心とした攻撃型のチームに変貌。広島大会決勝では前年夏に競り勝った総合技術に一時2-9と大量リードを許したが、好投手・水野から打線が集中打を放ち、まさかの逆転劇で代表切符をつかみ取った。この試合で3本の犠飛を放つなど、好機で確実に外野へと運ぶ打者の技術の高さが光った。
一方、投手陣は速球派右腕・中田(広島)、技巧派右腕・前田、春季中国大会で20三振を記録した左腕・森宗の3本柱。ともに高いポテンシャルを誇るが、好不調の波が激しいのが難点。甲子園初戦の高知戦では一時5点のリードを集中打で追いつかれるなど、粗さも見られた。ディフェンス主体だった前年のチームと違い、やや守りには不安を覚える戦いぶりだった。
対する横浜は松本、小川、筒香(ドジャース)ら左の強打者を並べた打線とエース土屋(ロッテ)の好投で秋季関東大会を優勝。神宮でも順調に勝ち進み、敗れはしたものの決勝で常葉菊川と4-5と接戦を演じた。ところが、選抜ではセオリーをかわす強攻野球の北大津にかく乱され、2-6とまさかの完敗で初戦敗退に。チームは立て直しを迫られた。
カウント0-3からでも打ってくる北大津野球に再度自分たちの緻密な野球を再考させられた横浜。小倉コーチのもとで足元を見つめなおしたナインは、南神奈川大会を順当に勝ち抜いて優勝。県予選で不調だった筒香は甲子園初戦の浦和学院戦で7番に下がるも、先制2ランを放つ活躍を見せて復調。エース土屋も14安打を浴びながらも5失点で踏ん張り、まずは選抜の借りを返す初戦突破を果たした。
試合は初回からいきなり動く。広陵のトップバッター上本崇が土屋の高めのストレートをたたくと打球はレフト席に飛び込むホームランとなり、1点を先制。2003年夏には兄の上本博(阪神)もホームランを放っており、史上初の兄弟での先頭打者ホームランを達成した。この後、さらにランナー1,2塁と攻め込むが、土屋はなんとか後続を断つ。
2回に入っても調子の出ない土屋に対して、広陵はランナー1塁からエンドランを決めて1アウト1,3塁のチャンスをつかむ。ここで再び上本がインハイのボールをたたいて左中間を破り、1点を追加。しかし、1塁ランナーはホームまで生還できず、続く2番下川のセンターフライでホームへ突っ込むもタッチアウト。序盤アップアップだった土屋に2回までで5安打を放ちながらも1点止まりだったのは痛かっただろう。
広陵の先発は初戦で登板のなかった左腕・森宗。左打者が主力の横浜に対して登板させたが、こちらも序盤からコントロールがばらつく。2回に8番小田にタイムリー2塁打を許すと、3回には復調した2年生4番筒香に同点タイムリーを許し、早くも3回でマウンドを降りる。
土屋が徐々にリズムを取り戻す中で横浜は4回裏に2番手で登板した速球派右腕・中田を攻略。元気者の1年生大石のタイムリー3塁打で勝ち越すと、広陵守備陣の乱れを突いて一気にホームインする。1年生の一打で波に乗った横浜に対し、広陵は序盤に主導権を握り損ねた形でビハインドを背負うこととなる。
それでも、攻撃力に自信を持つ広陵は5回表に当たっている9番長谷部のヒットからチャンスを作り、3番林のタイムリーで1点を返す。ところが、横浜内野陣の一瞬のスキを突いて積極的に2塁を狙った林がセカンドで刺されてしまい、1アウト1,3塁のはずが2アウト3塁に。後続も打ち取られて結局チャンスを活かしきれなかった。
5回裏にもそつなく1点を追加した横浜が5安打5点なのに対して、広陵は8安打で3点。横浜のそつのなさが広陵の積極性を上回った形となった。
すると、後半は横浜がじりじりと差を広げていく。元来速球に強い打者の揃う横浜の打者はストレートで押す中田の投球をとらえて6回に4安打を集中。ついにヒット数でも広陵を上回り、7-3と大きくリードを広げる。
なんとか反撃したい広陵は8回に1点を返すも、横浜の二遊間の好守備に阻まれてチャンスを拡大できず。最終回にもランナーを出したが、最後は1番上本が打ち取られてゲームセットとなり、3-15で敗れた2003年の選抜のリベンジを果たす形で3回戦進出を果たした。
横浜はその後、仙台育英・聖光学院を下して4強に進出。準決勝で優勝した大阪桐蔭に敗れたが、東の横綱として存在感を示す大会となった。横浜高校が夏に8強以上に進んだのはこの年が最後となっており、小倉コーチが部長としてベンチ入りした最後の夏の甲子園でもあった。常連校ばかりを相手に4つの勝利をマークし、緻密でそつのない横浜野球を存分に見せつけた年だった。
一方、広陵にとっては何とも惜しまれる敗戦となった。積極的なミスは責めないという広陵の方針通りに果敢に攻めていったが、この試合では結果的に裏目に出る形となった。野手陣のポテンシャルでは前年を上回るかもと言われたこの年のチームだったが、それだけでは勝てないのが野球の難しさ。この後、如水館や広島新庄の台頭もあり、夏は準優勝した2017年まではなかなか勝ち上がれない年が続くこととなる。
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