2025年選抜1回戦予想 智辯和歌山vs千葉黎明

2025年

2025年選抜1回戦

智辯和歌山vs千葉黎明

51%  49%

常連校に初出場が挑む構図だが、両者の間に大きな力の差はない。

 

今年の智辯和歌山の強みは、投手陣が安定していることだろう。すでに甲子園を経験済みの渡邉と同じく本格派の宮口の2枚看板はともに球威・スピードとも十分な速球を武器に相手を推していける。昨夏、敗れはしたものの、霞ケ浦との死闘を経験したことも大きなアドバンテージになるはずだ。捕手出身の中谷監督に鍛え上げられた1年生捕手の山田は攻守でチームの要となる存在だ。懸念があるとすれば、7試合で9失策だった守備陣か。ここを冬の間にどこまで鍛えられたかが成否を分けそうだ。

対する千葉黎明打線は、足を使った攻撃が持ち味。どこか昨年の中央学院を思い起こさせるようなチームだ。上位から下位まで切れ目がなく、低いライナー性の打球を放って、ヒットエンドランなどで好機を拡大する。新基準のバットに適した打線と言えるだろう。特に3番ショートの山本は長打力と確実性を併せ持ち、チームの攻撃の軸となる存在だ。智辯和歌山投手陣の速球に対し、打線全体でシャープなスイングを行って攻略に結び付けたい。

 

一方、千葉黎明の投手陣は非常に層が厚く、様々なタイプが揃っている。本格派右腕・田代、長身からの角度が光る左腕・飯高、同じく左腕でも強気な投球の光る米良など、それぞれ特徴のある投手であるため、継投策の効果がより増してくる。近年の智辯和歌山は技巧派投手にあまり相性が良くないため、飯高の先発も選択肢の一つかもしれない。いずれにせよ、相手打線に捕まる前に先手先手でつないでいくことが勝利をぐっと引き寄せるだろう。また、関東大会で乱れた守備陣の整備にも注目したい。

対する智辯和歌山打線は今年もパワフルな陣容に仕上がっている。中でも1番藤田、2番福元の2人は足も長打もある怖いツートップであり、相手投手からしたらいきなりクリーンアップを迎えるような迫力があるだろう。また、2年生にも前述した山田や荒井など伸び盛りの選手が多く、打線の破壊力は大会出場校中でも上位なのは間違いない。懸念があるとすれば、淡白な攻撃でフライを続けるような形にならないかというところ。ここ数年の反省を活かし、今年は序盤から先制して流れを掴みたい。

 

パワーという点では智辯和歌山に分があるのは否めないが、近年の甲子園ではそのパワーをうまく発揮しきれていない展開が続いている。そして、千葉黎明にもそのパワーを出させない「上手さ」はありそうな予感だ。4大会ぶりの初戦突破か、初出場初勝利か、Cブロック全体の未来をも占う闘いが幕を開ける。

主なOB

智辯和歌山…岡田俊哉(中日)、西川遥輝(ヤクルト)、黒原拓未(広島)、黒川史陽(楽天)、細川凌平(日本ハム)

千葉黎明…須田涼平(セガサミー)、渡部翔太朗(鷺宮製作所)

 

千葉  和歌山

春  2勝  0勝

夏  3勝  3勝

計  5勝    3勝

千葉vs和歌山の強豪県対決の歴史は、ほぼ「千葉勢vs智辯和歌山」の歴史でもある。夏の対戦はすべて、平成に入ってからの智辯和歌山の試合であり、数々の名勝負を繰り広げてきた。

1992年夏はラッキーゾーン撤廃初年度であり、また、前年の沖縄水産・大野投手の連投による故障で、高野連が複数投手性の導入を呼びかけるなど、エポックメイキングな年でもあった。そんな流れの中で、智辯和歌山と拓大紅陵が対戦。智辯和歌山が藤田の3ランで3点を先行したが、4人の力のある投手の継投で勝ち進んできた拓大紅陵が継投で流れを引き戻す。中盤の集中打でひっくり返すと、最後は1点のリードを守り切って見事な逆転勝ち。智辯和歌山にとっては出場4大会連続初戦敗退という苦しい時代であった。

そこから月日は流れ、1994年春・1997年夏と2度の全国制覇を果たしてすっかり強豪校となった智辯和歌山は2000年の選抜でも準優勝を達成。同年夏も記録的な猛打で中京大中京・高橋、PL学園・朝井(近鉄)、柳川・香月(近鉄)、光星学院・根市(巨人)と好投手を次々に打ち込んで、決勝へ進んできた。

その決勝の相手は東海大浦安。エース井上が故障で春先に離脱するアクシデントがありながら、セカンドを守っていた「背番号4のエース」浜名がシュートボールを武器に相手打線を封じ込め、波に乗って一気に決勝まで勝ち進んできた。決勝は連投で制球に苦しむ浜名を打線が援護し、東海大浦安が先手を取って試合を進める。

しかし、浜名の前に立ちはだかったのはこちらもチームの主将である2番堤野であった。浜名の甘く入ったボールを2打席連続でスタンドに放り込むと大量5点をあげた8回の攻撃でもタイムリーを放つ大活躍。11-6と智辯和歌山らしい逆転勝利で2度目の夏の全国制覇を果たし、チームメイトを厳しく引っ張ってきた主将が歓喜の涙を流した。

ちなみにこの両県は昨年も激突。中央学院打線が耐久の好右腕・冷水を攻略し、7-1と快勝。勢いに乗って4強まで駆け上がった。今回はどちらに軍配が上がるか。

思い出名勝負

2008年夏2回戦

智辯和歌山

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 1 0 0 3 0 1 0 0 5
0 2 0 0 0 0 0 0 0 2

木更津総合

 

智辯和歌山   岡田

木更津総合   田中→淡路

沖縄尚学/聖望学園/東洋大姫路など、選抜上位校がことごとく予選で敗退し、本命不在の様相を呈していた2008年の選手権大会。優勝争いが混沌とする中、2回戦でV候補同士の一騎打ちが実現した。

智辯和歌山は3季連続の甲子園出場。前年夏から主軸の浦田・芝田・勝谷・坂口(巨人)が残る打線は破壊力十分であり、特に坂口はこの世代でも屈指の強打者であった。前年夏は初戦で敗退したものの、仙台育英の注目右腕・佐藤由(ヤクルト)から強烈な一発をお見舞いしていた。

ただ、選抜では3回戦で決勝点につながる2塁打を放ったものの、全体では14打数3安打とやや低調であった。打線全体も湿りがちで、どちらかと言えば、2年生左腕・岡田(中日)、右サイドの林、経験豊富な3年生左腕・芝田の投手陣の安定感の方が光る戦いぶりだった。

しかし、夏の和歌山大会では主砲・坂口が大会記録となる4試合連続ホームランを放つなど、大活躍。打線の状態が上向きとなり、1回戦では済美との強豪対決も、坂口のタイムリー2塁打などで先手を奪い、岡田の6安打完封の好投もあって、3-0で制した。ただヒット14本で3点とやや拙攻になったのは、気がかりではあった。

対する木更津総合は五島監督が就任して徐々に千葉県内でもその存在感を増してきていた。2003年に好投手・小泉を擁して出場を果たすと、その後も安定して上位には進出。そして、選抜大会の終わった2008年の春季大会で驚愕の快進撃を見せた。

剛腕・斎藤(巨人)を擁し、選抜大会で4強入りしていた千葉経大付との一戦で、エース左腕・田中がノーヒットノーランを達成。打線も爆発し、何と17-0の大差で県大会優勝を飾ったのだ。この結果は全国に驚きとともに広がり、関東大会では神宮準Vの横浜、大田泰示(日本ハム)を擁した東海大相模と、神奈川2強もくだし、勢いそのままに優勝。田中に加えて、右腕・淡路も安定しており、その強さは本物であった。

迎えた夏の千葉大会では最多失点が1という投手陣の安定感が光り、危なげなく優勝を飾る。本大会でも優勝候補の一角に上がると、1回戦では鳥取西の剛球左腕・鈴木と田中の投げ合いになったが、終盤8回に一気の攻めで5点を奪取。田中がホームランの1点のみで鳥取西打線を抑え、6-1と快勝で2回戦進出を決めた。

 

さて、2回戦で早くも実現した優勝候補対決。焦点はもちろん智辯和歌山の強力打線を木更津総合・田中が抑えられるかであった。タレント揃いの智辯和歌山打線だが、序盤はややエンジンのかかりが遅い傾向もあり、このあたりを木更津総合の好捕手・地引がどうとらえるかも見どころであった。

1回は木更津総合にヒットが飛び出すものの、盗塁アウトで結果的に両者とも3人で終わる結果に。智辯和歌山・岡田、木更津総合・田中と、二人とも快速球とスライダーが武器で三振を奪えるという、似たタイプの左腕だが、初回は好調な滑り出しを見せる。

試合が動いたのは2回表、智辯和歌山は1アウトから5番森本がヒットで塁に出ると、2アウト後に7番田甫が右中間を破るタイムリー2塁打を放って、1点を先制。下位に高橋、田甫と長打力のある打者が並んでおり、この年の智辯和歌山打線のレベルは歴代でも上位に入る破壊力である。

しかし、東の雄も負けてはいない。その裏にすぐ反撃を開始。1アウトから5番荒川が四球を選ぶと、2アウト後に7番杉崎がフルカウントからライト前へ。打ったらGOでスタートし、3塁を狙った荒川を刺そうとした智辯和歌山野手陣の返球が乱れる間に一気にホームへ帰り、同点に追いつく。さらに続く8番田中はすかさず初球のスライダーを引っ張り、今度は2塁ランナーの杉崎が好走塁。返球をうまくかいくぐってホームを突き、勝ち越しに成功する。

木更津総合ペースで進むかと思われたが、3回表に今度は智辯和歌山が猛反撃。先頭の9番西川(ヤクルト)がセーフティバントを決め、1年生らしからぬしたたかさで出塁すると、犠打失敗の1アウト後に2番芝田、3番勝谷が連打を放って満塁のチャンスを築く。ここで打席には主砲・坂口。しかし、1打席目と同様にスライダーでカウントを整えられ、最後は内角のスライダーにバットが空を切る。続く5番森本もショートフライに打ち取られ、あと一押しができない。

2-1と木更津総合リードで試合は中盤戦へ。木更津総合バッテリーとしてはスライダー主体の投球で序盤はうまく智辯和歌山打線をかわしていた。ただ、智辯和歌山・岡田の調子もしり上がりに上昇しており、ミートのうまい木更津総合打線だが、差し込まれる打球が目立っていた。得点はそう多くは望めないなか、1試合トータルの配球を考慮し、中盤にストレートを多めにしていった判断は決して間違いではなかっただろう。しかし、これが智辯和歌山打線の波長とばっちり被ってしまうこととなる。

5回表、先頭の1番浦田が打席に入ると、アウトコース高めの真っすぐを素直に右方向に打ち返す。打球は右中間を深々破る3塁打となって反撃ののろしを上げると、続く2番芝田は左打者のインサイドを突いたストレートを芸術的な流し打ちでレフト線へ運び、あっという間に試合を振り出しに戻す。続く3番勝谷は基本に忠実なセンター返しで芝田を返し、逆転に成功。さらに4番坂口にも強烈なヒットが飛び出すと、その後、満塁から併殺の間に1点を追加し、智辯和歌山が4-2とリードを奪う。

このイニングはもう少し点数が入っても良かったかという回ではあったが、木更津総合にとっては絶対的エースが4点を奪われたショックは大きかっただろう。勝利への基盤が崩れてしまったような、そんなイニングであった。

智辯和歌山はその後、7回にも3安打を集めて1点を追加。この試合も17安打を放ちながら5点とやや拙攻気味ではあったが、この日の岡田には十分なリードであった。自ら3安打を放って乗っていた左腕は、130キロ台ながらキレのある真っすぐとスライダーで木更津総合打線を翻弄。後半はほとんど危なげなく、最終回は3者連続三振を奪ってFinish。5-2というスコア以上の差を感じさせる内容で3回戦進出を決めた。

 

その後、智辯和歌山は3回戦で8回に大量11点を奪う逆転劇を見せ、8強まで進出。しかし、準々決勝では逆に常葉菊川打線の猛攻を浴びる結果となり、高嶋監督曰く「勝てた試合」だったものの、追い上げ及ばずに敗退となった。この年は決勝まで行く力はあったとの指揮官の弁の通り、力のあるチームだっただけに惜しまれたが、それでも甲子園の大観衆を沸かせる試合を春から何度も見せてくれたチームであった。

一方、木更津総合は力及ばずに敗れたものの、この大会を皮切りに、以後は安定して甲子園に姿を見せている。2012年の黄本、2016年の早川(楽天)、2017年の山下(ヤクルト)と毎年のように好投手を輩出し、勝負強い打線が支える形で千葉大会、そして甲子園を勝ち抜いていった。戦国の様相が強かった千葉で一時代を築き上げた功績は素晴らしく、五島監督の手腕は確かなものだったと言えるだろう。

智弁和歌山対木更津総合 2回表

常葉菊川vs智辯和歌山 2008年夏 | 世界一の甲子園ブログ

智辯和歌山vs駒大岩見沢 2008年夏 | 世界一の甲子園ブログ

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