2025年選抜2回戦
早稲田実vs聖光学院
52% 48%
〇8-2 高松商 〇4-3 常葉大菊川
伝統校同士の対戦だが、投打ともに早稲田実が上回るか。聖光学院が初戦と同様に、ロースコアの接戦に持ち込みたい。
早稲田実の中村は昨夏の西東京大会→夏の甲子園→秋大、そしてこの選抜と成長曲線が凄まじい。特にストレートの質が非常に高く、あの強打者ぞろいの高松商打線をもってしても、狙っていながらストレートをとらえきれなかった。キレが良くて手元で差し込まれるうえに、球質も重いため、はじき返すのは容易ではない。初戦はスライダー、チェンジアップが高めに浮いて打たれる場面があったが、これが低めに決まりだすといよいよ難攻不落だ。投球フォームから見て、連投も問題なさそうだ。
対する聖光学院打線は、初戦は延長タイブレークに入ってからは持ち味を存分に発揮したが、9回までは常葉大菊川・大村のチェンジアップの前に翻弄された。基本的にミート力の高い打者が揃うが、低めの見極めができないと相手の術中にはまりそうだ。良かった点としては、延長12回のバスターのように、聖光学院らしい細かくかき回す野球を見せられた点。次戦に向けて勢いに乗る格好となり、2回戦の序盤にこの流れを持っていきたい。3番菊池を始め、長打力のある中軸に当たりが戻るかも重要だ。
一方、聖光学院のエース大嶋は、技巧派左腕の本領を発揮。スライダーを武器に、低めを丹念について相手打線を封じた。基本的に攻め方は同じでいいとは思うが、相手の早稲田実は非常に選球眼に優れているため、左打者の外のボールを見極められたときにどうするか。多少危険を冒してでも、左打者のインサイドに突っ込む勇気は必要だろう。右腕・菅野は延長で失点はしたものの、甲子園のマウンドを1回経験できたのは大きい。バックの堅守も含め、ディフェンス陣全体で失点を最少に抑えたいところだ。
対する早稲田実打線は、初戦で高松商の速球派投手を次々に攻略。アウトコースのボールへの対応が素晴らしく、際どいボールを見極めて、甘く入ったボールをセンターから逆方向へ打ち返す。まさに理想の攻撃で、相手を沈めた。また、7番に4安打の中村が座っているのも、相手にとってはこの上なく怖いだろう。上位打線はいずれも1安打ずつと大当たりではなかったが、昨夏からの経験者が並び、野球IQが高い印象だ。実戦に強い打線であり、抑え込むのは容易ではない。
聖光学院としては、勝利に向けて3点以内の試合に収めることは絶対条件だ。初戦は延長に入ってから継投したが、次戦は9回の内での交代もありそう。斎藤監督のタクトが重要となる。早稲田実としては、上を見据えた場合に中村以外の登板の可能性もなくはないが、試合巧者の聖光学院は侮れない相手だ。中村のスタミナ面も含め、投手起用に注目だ。
主なOB
早稲田実…王貞治(巨人)、荒木大輔(ヤクルト)、斎藤佑樹(日本ハム)、清宮幸太郎(日本ハム)、野村大樹(西武)
聖光学院…佐藤都志也(ロッテ)、船迫大雅(巨人)、岡野祐一郎(中日)、湯浅京己(阪神)、山浅龍之介(中日)
東京 福島
春 0勝 1勝
夏 0勝 4勝
交流 1勝 0勝
計 1勝 5勝
対戦成績は福島勢がリード。特にここ3年で3度対戦し、すべて福島勢が勝利と相性の良さを発揮している。
1971年の選手権では磐城の小さな大投手・田村がV候補筆頭の日大一打線を完封して1-0で勝利。試合前に磐城の選手たちが偵察に訪れても、日大一サイドはお構いなしで見ることを許したそうだが、これが完全に裏目に出た。磐城は、この大会で福島県勢初の準優勝に輝き、歴史に語り継がれる快進撃となった。
一方、2020年の交流試合では国士舘と磐城が激突。1点を争う好ゲームは、エース中西の力投と機動力野球で国士舘が制した。磐城の健闘も光り、21世紀枠と一般枠の差を感じさせない好試合であった。
思い出名勝負
2012年夏1回戦
日大三
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 |
1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | × | 2 |
聖光学院
日大三 斎藤→大場
聖光学院 岡野
2012年初戦の組み合わせの中でも注目の好カードとなったのが、聖光学院vs日大三の試合であった。
聖光学院は春夏連続の甲子園出場。夏の出場に限っても2007年から6年連続の出場であり、すっかり常連校と呼べる存在になっていた。前年はエース斎内(阪神)を擁した大型チームながら2回戦で敗退。そのチームに比べて今年は個の力ではやや劣っていたが、聖光学院らしいつながりのいいチームに仕上がっていた。
エース岡野は抜群の制球力を誇っており、特にアウトサイドの出し入れには定評があった。選抜でも鳥羽打線をわずか2安打で完封するなど、全国での実績も十分であった。打線も2年生の4番園部(オリックス)を中心に破壊力を増し、夏の福島大会を危なげなく制覇。まず目指すは2年前の夏に続く8強入りであった。
一方、日大三は前年夏に10年ぶりの全国制覇を達成。2010年~2011年にかけて黄金期を築き上げたが、ほとんどが3年生であったため、残ったのは2番金子と準決勝で先発した右腕・斎藤くらいであった。秋春の都大会はともに早期敗退し、今年の日大三は危ないかという声もちらほら聞こえ始めていた。しかし、2年生のトップバッター森の成長やエース斎藤の踏ん張りもあって、チームはついに決勝まで勝ち進む。
決勝の佼成学院戦では0-1と1点ビハインドで迎えた9回に2アウトながらランナーを2人置いて打席に3番主将の金子を迎える。凡退すれば夏が終わる場面で金子がとらえた打球は右中間を真っ二つ。2者が脱兎のごとく生還し、土壇場で日大三が逆転に成功した。最終回を無失点で切り抜け、薄氷を踏む思いで勝利した日大三ナインは、連覇を目指して甲子園に乗り込んできた。
聖光学院は岡野、日大三は斎藤が先発のマウンドに上がった。
1回表を岡野が無失点で抑えると、その裏、聖光学院が先制攻撃を仕掛ける。1番安西がいきなりセンターへのヒットで出塁すると、犠打と四球で1アウト1,2塁に。続く4番園部の打席で2塁ランナーの安西が三盗を成功させ、聖光学院らしさを見せる。ここで園部は高めの速球を強引にセンターへ打ち上げ、犠飛で聖光学院が1点を先制する。
聖光学院の岡野は春と同様に抜群のコントロールを誇り、アウトコースのボールの出し入れで日大三の打者を翻弄する。インコースをいかに使うかが投球の生命線になることが多いが、これだけ精密に投げ切れればアウトコース一本でも十分と思わせる投球である。
しかし、聖光学院も2回以降はなかなか得点が挙げられない。4回には1回と同じようにランナー3塁の場面で外野フライが上がったが突っ込めず。このあたりは聖光学院らしくない攻撃でチャンスを逃す。
打者一巡して岡野のボールに慣れ始めた日大三打線は5回表、5番山中、7番村井のヒットなどで1アウト満塁のチャンスをつかむ。ここで打席の9番齋藤にスクイズのサインを出すが、これを斎藤が痛恨の見逃し。打力に自信がない中での選択であったが、結果的に大きなチャンスを逃すこととなった。
その後も両投手が踏ん張って投手戦の展開に。日大三は7回途中から2年生の右腕・大場に継投し、流れを引き戻しにかかる。
ところが、8回裏、聖光学院は1アウトから4番園部が左中間を深々と破る当たりで一気に3塁を奪う。ここで打席には5番齋藤。ここまで日大三の先発・斎藤のスライダーに全くあっていなかったが、日大三バッテリーは大場の得意な真っすぐを選択する。これを迷わず振り抜いた打球はセンターへのタイムリーとなり、聖光学院が貴重な1点を追加した。
2点差を追う日大三は9回表、先頭の3番金子が岡野の珍しく甘く入ったボールをセンターバックスクリーンへ運び、土壇場で1点を返す。西東京大会の決勝と言い、金子の最終回の打棒は脅威の一言だ。しかし、一発だったことで岡野も気持ちを切り替えやすかったか、後続の3人を落ち着いて打ち取って試合終了。聖光学院が3年連続となる初戦突破を果たした。
聖光学院としてはエース岡野の好投が何より光った試合。打線は走塁面のミスで追加点を上げられなかったのは痛かったが、大事な場面で主軸にきっちり一本が出て競り勝った。2010年の広陵に続き、強豪校を相手に勝利を挙げたことは、聖光学院というチームに大きな自信を与える結果となった。
一方、日大三は2年連続の初戦突破はならなかったが、メンバーがほぼ入れ替わった中で、激戦の西東京大会を連覇したことがまず素晴らしかった。特に主将の金子は苦しい状況の中でもチームを引っ張り、苦しい時にチームに必要な一本を出し続けた。彼の存在があったからこそ、日大三の伝統が引き継がれたことは間違いない。翌年も森、大場を中心に勝ち抜き、西東京3連覇を達成することとなる。
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